表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪事を働くたび、私は聖女に祭り上げられる。〜性悪だった私が転生したのは、悪の概念がない「優しい世界」でした〜  作者: かわうそくん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/16

第十一話:聖女、自らの「悪意」を証明するため、世界の「悪意の封印」に挑む。〜私の破壊工作、世界の清浄をもたらす「創世の儀式」らしい〜③

聖域の泉で、「悪意の再誕」の儀式(指を傷つけ血を流す)を敢行したアリアは、結果として「血の誓約」を果たし、聖女としての地位と世界の清浄を究極的に強化してしまった。


(私の悪意は、もう、この世界では存在そのものが許されない……。肉体的な行動も、呪詛も、血までもが、最高の善行に変換されるなんて!)


泉の前で、神官たちの熱狂的な祈りに包まれながら、アリアは絶望していた。悪役としての道は完全に閉ざされた。


しかし、悪役としての誇りを捨てることはできない。彼女に残された、この世界への最後の抵抗は、精神的な破壊だった。


(この世界が、私の言葉をどう解釈しようと関係ない。私は、聖女の口から、世界が滅亡する、絶対的な『絶望の預言』を吐き出してやる!そして、希望に満ちた彼らの心を、根源から打ち砕いてやる!)


アリアは、まだ祈りを捧げている神官たちの前に立ち上がった。その顔は、極度の疲労と、悪役としての最後の執念が入り混じった、壮絶な表情をしていた。


筆頭魔術師は、アリアの前にひれ伏しながら、声を張り上げた。


「おお、聖女様が立たれた! 血の誓約を終え、我らに聖なるお言葉を賜るおつもりだ! 皆の者、心して聞くように!」


全神官と警備員が一斉に沈黙し、アリアに注目した。アリアは、泉の光を背負いながら、最大限の憎悪と絶望を込めて、声を張り上げた。


「静かにしなさい! 貴方たちに、絶望的な真実を教えてあげるわ! 私が泉で見たのは、破滅よ! この世界は、すぐに闇に飲まれて滅亡する!」


アリアは、目を見開いて続けた。


「貴方たちの平和と努力は無駄! どんなに希望を口にしても、全て無意味になる! 貴方たちに救いは無い!」


アリアの絶叫は、洞窟の中にこだました。神官たちは、その言葉を聞き、顔を上げた。彼らの表情は、絶望ではなかった。


彼らは、喜びと確信に満ちていた。


筆頭魔術師が、感動に打ち震える声で、泉に向かって叫んだ。


「ああ、なんと優しく、深遠なる預言! 聖女様は、私たちの慢心を心から案じていらっしゃる!」


「『闇に飲まれて滅亡する』とは、今の小さな幸福に胡坐をかくな、という厳しくも優しい忠告なのだ! 我々が感謝の心を忘れた瞬間に、平和は音を立てて崩れる、という教訓を、命懸けで伝えてくださった!」


「『平和と努力は無駄』とは、結果を求めるのではなく、努力し、愛し合う過程そのものにこそ、真の価値があるという、精神的な豊かさを教える、最高の訓示だ!」


神官たちが、口々にアリアの預言を解釈し、その深遠な愛に涙する。


「『救いは無い』とは、安易な他者依存を戒め、自らの手で未来を築け、という、自立を促す、健気なメッセージだ!」


アリアの、世界への憎悪を込めた「絶望の預言」は、完全に「国民への愛と、自立を促す希望のメッセージ」として機能してしまったのである。


そして、その「預言」は、聖域から瞬く間に王都へ広がり、国民は「聖女アリア様の愛の預言だ!」と、これまでの悪行(善行)以上に彼女を讃え始めた。この預言により、人々は慢心を捨て、より一層感謝し、助け合うようになった。


悪役としての最後の試みも、世界に希望と団結をもたらすという、最も皮肉な結末を迎えた。


アリアは、泉の前で、自分の存在が完全にこの世界の「善」の歯車の一部として組み込まれてしまったことを悟った。自分の悪意は、もはや世界をより良くするための燃料にしかならない。


彼女は、静かに、そして激しく、涙を流した。


それは、悪役としての敗北に対する悔しさの涙だった。 だが同時に、自分の悪意が、図らずも多くの人々に幸福と希望を与えてしまったという、強烈な罪悪感の涙でもあった。


(私は……私は、悪役になりたかっただけなのに……! なんで、この身体は。こんなにも……優しい涙が止まらないのよ……!)


アリアは、世界を救ってしまったという重い事実と、その結果として芽生えた「人々の幸福への貢献」という名の罪悪感を抱きながら、聖域の丘を後にした。


彼女はまだ、優しさに目覚めたわけではない。しかし、彼女の魂に刻まれた「悪役の道」は、もはや「健気な聖女の道」と表裏一体となってしまったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ