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夏休みの予定

「もうすぐ夏休みだね」

「もうすぐ?まだ6月入ったばっかじゃん」

「でも後1ヶ月ちょっとだよ。海行きたいから早めに予定決めときたい」


 今日はカフェでお茶をしていた。来夢は行った回数が多い場所程安心するみたいで今はすごくリラックスしている。


 なんでこういう所では100万人目のお客さんにならないのか心配しないんだろう。不思議だけど、せっかくの落ち着ける場所がそうじゃなくなってしまう可能性があるから聞けない。


「俺は海よりプール派」

 予定を決めるイコール水着を買いに行くって感じだからプールでも全然オッケーだけど、なんとなく引っかかる。


「来夢は海の方が似合いそうだけど。それに海の家のご飯も美味しいからやっぱり海がいいな」

「プールでも似合うし、でっかいプールだったらフードコートあるしそっちのがいいだろ?」

 もしかしてって思ったけど本当にそうとは思わなかった。


「プールより海の方が異世界に飛ばされそう?」

 基本的に私に合わせてくれる来夢が意地になる時は100%異世界絡みだ。

「そりゃそうだろ」

 あまりにも勢いよく言われたから思わずそうだよねって言いそうになった。


「波にのまれたらマジで終わる」

 それはなんとなく想像がつくし、実際にそういう作品があった。見た事あったんだから気付けばよかった。


 言われたらそう思うけど、やっぱり普段異世界を意識して生活をしていないからそこまで気を回せない。


「でもさ」

「なに?」

「なんでもない。プールにしよ」

 プールもウォータースライダーが異世界への入り口になってるかもしれないよって言いたかったけど、それを言ったらプールも止めとこって言われそうだからなんとか耐えた。


「気になんだけど」

「もしもだけど将来子供が出来て海に行きたいって言われたらどうするのかな?って思って」       

 上手く誤魔化せた。来夢は異世界に対しては色んな事に疑いの目を向けるのに他の事に関しては素直に受け取る。


「まずは海の危険を教える」

「波にのまれたら異世界に行っちゃうって?」 

「ちげーよ。サメとかそっちだよ」

波に流される怖さとかだと思っていたから急に出て来たサメというワードに笑ってしまった。


「笑い事じゃないから。サメに食われたら人生終わるから」

「それは分かってるけど、波にのまれるとかそっち系だと思ってたからいきなりサメが出て来てビックリして笑っちゃったの」

 あぁ、確かにって感じで来夢は照れ隠しをする様にレモンティーに口をつけた。


「ずっと気になってたんだけど、友達といる時はどうしてるの?」

 幼稚園から中学卒業までずっと同じクラスだった友達だけには話したっていう話しは聞いた事あった。


 つまり他の人には話していないって事だ。普段の来夢を見ていると隠しきれているとは思えない。


「頑張ってんだよ」

「頑張って海にも行くの?」

「そう」

「私には頑張ってくれないの?」

「大人数対1人と1人対1人だったら見せれる部分変わるだろ」

「それは分かるかも」


 1人だったらまだ我慢出来るけど、数人にからかわれるのは確かに嫌だ。


「それに頑張ったら次の日熱出る時あるから嫌なんだよな」

「それは大変だ」

 絶対に笑ってはいけないとカップに口をつけて必死に口元が緩んでいるのを隠す。


「だから俺が彼女に求める1番の条件は異世界恐怖症を受け入れてもらう事なんだよ」

「そこは大丈夫。だけどちょっとずつでもいいから克服していって欲しいなって思う」

「その頃には俺じいさんになってそう」

「おじいさんになる前に克服しないと心臓止まっちゃうよ」


 今も何回も驚いたり我慢したり。来夢はきっと他の21歳に比べて寿命が短いと思う。


「慣れる日って来んのかな」

 それを聞いて絶対に言ってはいけないけどどうしても言いたい事が頭に浮かんでいた。もう言いたくてしょうがないから来夢ゴメンって思いながら言う事にした。


「異世界に慣れたなって思ってたら次はデスゲームものが流行ってデスゲームが始まるかもしれない恐怖に怯える日が来るかもね」

「それは見なけりゃいいだけの話しだよな?」

 雨の中こんな顔をした子犬がいたら絶対に連れて帰ってしまうって思うぐらいの顔を来夢はしていた。


「私に聞くんだ?」

「この前探さない、見ない、気にしないって言ったの心優菜だろ?」

「そうだったね。うん、見なかったら大丈夫」


  流行って避けようと思っても目に入って来てしまいそうな気がする。ってか避けようとすればする程目に入りそうだ。


「どうせならもっと可愛い恐怖症だったらいいのにね」

「恐怖と可愛いってアンバランスじゃね?」

「だからこそだよ。犬になるかもしれない恐怖症とかだったら普通に克服出来そうじゃない?」

「どういう事?」

「横断歩道の白だけ渡ったら犬になるよって言われてもなにそれ?ってなるでしょ?」

「確かに」

「あっ、なら異世界もかわ」

「それは無理」

 言い切る前に被せて言われてしまった。そりゃそうだよねって思う。そう思えるならとっくに異世界恐怖症は克服できているはずだ。


「夏はプールだけ?」

「花火大会は?俺去年野球仲間と行こうとしたけど台風で中止だったんだよな」

 来夢から言うって事は花火大会は大丈夫って事だ。花火を見上げていて気付いたら私がいなくなっているパターンだって考えられるんだけど。


「いいね。私、お祭りの屋台好き」

「後は野球観戦って心優菜は興味ないか」

「ルール教えてくれるなら行ってみたいかも」

 ただ純粋に楽しむ来夢が見たくてそう言った。


「マジ!?ドームの試合だったら暑くないし行こーぜ」

 分かりやすく目を輝かせた来夢を見ていると海もプールも諦められる気がした。


 きっとこれからも皆は普通にしてるのにって不満に思ったりもどかしく思ったりする事があると思う。それでもまだ私は来夢との時間を過ごしていきたいって思った。

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