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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
冒険者スタート編

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応接室での密談

「さて、当人らも来た事だし…話を始めようかしらね」


この台詞(ことば)を皮切りに、一人の“男性”が話を始める。


ギルドの応接室で私とザックを待っていたのは、二人の冒険者。一人は、割と華奢だが私より背の高い中性的な顔立ちをするエルフの男性。背格好的に、僧侶だろう。もう一人は、背は低いが立派な顎髭を持ち、年長者のような威厳を持つドワーフの男性。こちらは、兜をかぶり背中に斧を担いでいるので戦士だろう。


「まず始めに、私はスルタン・ガシエフ。見ての通りエルフの冒険者で、僧侶よ。…こんな口調をしている理由(わけ)は、おいおい説明するから待って頂戴ね。そして…」

「儂は、マリアーノ・カチョ。ドワーフの戦士で、そこのスルタンとここ最近は徒党を組んでいる、しがない冒険者だな」

「私は、エセル・サラ・ウィザース」

「俺は、ザック・キャンベル・オーウェンだ…」


先方が自己紹介をしてくれたので、私やザックもすぐに自身の名前を名乗った。


こうして、話が本題へと切り替わる。


「ザック…よね。貴方、この国の学院を主席で卒業した人間で間違いないかしら?」

「あぁ…そうだけど…。何故、それをあんたが知っているんだ?」

「えっとね…」


私達が貴族から冒険者になったといった事情を知っているのだろうと察したザックは、スルタンに問いかける。


スルタン曰く、ガファイ高等学院を卒業して冒険者になる若者についてはこのギルドで噂になる事が多いらしい。とはいえ、外見やどんな家柄の人間かまでの詳細までは噂されていないため、彼らがザックの事をすぐにわかった理由としては、これだけでは不十分である。


「エセル…だったな。見た所魔法使いのようだが、音を遮断する術の心得はあるかな?」

「えぇ、あるわよ。…かけたほうが良さそうな内容ってこと?」

「そうだ。盗み聞きするような輩はいないだろうが、念のためな」

「…了解」


機会(タイミング)を見計らっていたのか、マリアーノが私に対して音を聴こえづらくする結界魔法をかけてほしいと打診してくる。

そこで私はすぐに、「この先が重要な話になる」と察し、この応接室全体を以前に学院でも使用した結界魔法をかけた。


「ザックの事については、故郷にいる占い師から外見や私と同じ転生者である事を聞いていたかんじかしら。まぁ、エセルの事はあまり聞けてなかったけど…」

「“私と同じ”って、もしかして…」


スルタンの台詞(ことば)に思い当たる節がある私は、恐る恐る彼らを見上げる。

すると彼らは、二人共黙ったまま首を縦に頷いた。


「無論、私も貴方達と同じ転生者よ」

「ついでに、儂もな!」

「…!!!」


結構重要な話なのに彼らはあっさりと口にしたため、私とザックは驚きの余り声が出なかった。

その後スルタンとマリアーノからは、転生前がどんな人間だったかの話を聞く事となる。それに対して、私やザックも転生前(いぜん)の事を彼らに話した。


 まさか、向うから私達を見つけてくれるとは、思いもしなかったわ!!…それに、私やザックとまた状況が違うなんてこともあるのね…


彼らの話を聞いているさ中、私はそんな事を考えていた。


スルタンは、転生前の名前は美都紀(みづき)という日本人女性。25歳だったらしく、転生前は大学卒業まで吹奏楽部でユーホニアムを担当していたという。しかし、転生後に宿ったスルタンはれっきとした男性の身体なので、現状はニューハーフのような状態になっている。また、転生するまで宿っていた肉体の持ち主であるスルタンの魂とは意思疎通が全くできない―――――――私と同じような境遇だ。

対するマリアーノは、転生前は彰彦(あきひこ)という15歳の中学生だったようだ。私達人間と歳のとり方がドワーフは異なるため、現在は88歳(人間年齢でいうと30歳くらい)だ。

同じ理屈でいうと、スルタンらエルフも同様。エルフはドワーフ以上に長命種のため、スルタンは現在200歳(人間年齢だと20歳くらい)らしい。

マリアーノの話に戻るが、彼は転生前(いぜん)転生後(いま)の年齢が大幅に異なるので、ある意味私と同じ境遇だ。しかし、私ともザックとも違う一面がある。

それは―――――――――――


「…僕が彰彦。でも、基本はマリアーノ本人が“表”に出ているから、僕と話すことはあまりないよ」

「わお…!!」


話のさ中、ほんのひと二言だけだが、マリアーノの口から全く異なる人格と思われる声が響いた。

何故このような事態が起きたのかというと――――――――マリアーノの場合、転生前(いぜん)の人間が転生後(いま)の人間と意思疎通が取れるのはザックと一緒だが、こうして転生前と転生後の魂が交互に“表”へ出てくる事が可能らしい。

しかし彰彦の場合、シャイなのか別の事情があるのかがわからないが、基本人と関わるのはマリアーノ本人に任せているようだ。

いずれにせよ、今までにない転生者の事例だったため、私とザックは驚きの連続だった。


 しかも、スルタンは転生前ユーホニアムで、マリアーノが元パーカッションだなんて、残りの二人を早速見つけちゃったかんじ…!?


多くの情報を得て頭が混乱しそうになったが、早くも残りの転生者二人が見つかった事に対し、私は驚きと一緒に安堵もしていたのである。


「本題に入る前に、一つ確認。…ザック、貴方はギターのコード譜以外で読める譜面ってあるかしら?」

「いや…。所謂“音符”は読めないな…」

「そう…。じゃあ、エセル」


飄々とした態度から一変したスルタンは、まず始めにザックへ音楽の事を尋ねる。

そうして彼から答えが返って来た後、今度は私に声をかけてきた。


「貴女は、ピアノとアルトサックスの経験者…。という事は、CとEs(エス)の譜面が読めるという事で合っているかしら?」

「そうね。なので、ソロ・連弾・弾き語り譜。フルスコアも、一応読めるよー!」

「……それは、心強いわ」


私の台詞(ことば)を聞いたスルタンは、一瞬目を見開いて驚いたものの、すぐに元の笑みを浮かべた表情(かお)に戻る。


因みに、会話に出てきた内容は音楽における楽譜の種類の話だ。ザックは、転生前にギターをやっていたそうなのでコード譜が読める。私の場合、ピアノとアルトサックスという音階が記譜音と異なる楽器の経験者及び吹奏楽の経験も相まって、複数の楽譜が読めるという具合だ。

スルタンやマリアーノの場合、前者はユーホニアムで後者は打楽器(パーカッション)。打楽器の譜面は曲目によってパート譜か異なり、ユーホニアムはクラリネット等と同じB♭の楽器だが、ピアノと同じCの譜面であるという状態だ。そのため、私やザックは彼らにはない知識を持っているという事になるだろう。


「まず、始めに…。二人共、今から60年前に当時の人族達や勇者によって魔王が倒されたって話は…歴史で学んでいるわよね?」


再び真剣な眼差しに戻ったスルタンから、私とザックは問いかけられる。


当然、その話は学院で習った世界史にて誰もが知っている事実(こと)だ。

そのため、私とザックは黙ったまま首を縦に頷いた。


「…只人の歴史では、“魔王は勇者によって倒された”とされているけど…。私の属するエルフや、マリアーノのドワーフの間では、“倒された”のではなく“封印された”と伝えられているの」

「えっ…!!?」

「お主ら只人の王達が、民の不安を和らげるために作った作り話だろう。実際、魔族達との大戦争で最も損害が大きかったのが只人(おぬしら)の種族だしな」


スルタンの思わぬ台詞(ことば)で私とザックは動揺するが、その後にマリアーノが少し補足をしてくれた。


 まぁ、国を治める人間からすると…。不安要素を“隠した”ではなく“消滅した”と伝えた方が内政も落ち着くという打算があったんだろうな…


私は、話を聞く中でそのような事を考えていた。


「魔族の残党はまだ存在するとはいえ、ひとまず仮初の平和を手にした私ら人族だけれど…。最近、魔王が復活したのではないかという疑惑が浮かびそうな出来事が起き始めたのよ」

「疑惑…?」

「詳しい事は私の口からは言えないけれど…。言える範囲でいうと、魔族が変な動きをしているって所かしら。とはいえ、まだ確証もない。…そこで、エルフの王とドワーフの王は考えたのよ。“もしもに備え、こちらも力を蓄えなくてはならない”と」

「それと、俺やエセルがご指名を受ける事とどう繋がるんだ…?」


続く会話で私が首を傾げる中、“力を蓄える”という単語についてザックがスルタンに問いかける。


「…知っているかもしれないけど、私達エルフは貴方達只人よりも音楽の研究が少し進んでいてね。なので、音楽に纏わる遺跡や古代楽器を収集する事で、新たな魔法の発見や研究も進んでいるという訳」

「…という事は…。遺跡を巡ったり楽譜を捜したりする事で、新たな力や知識を得られるという認識でいいのかしら?」

「…そういうこと。そこで、日本からの転生者だと音楽について知っている人間もいるのかなーと思って、貴方達にあたりをつけたの。…結果は、期待以上の知識を持っているようで嬉しいわ」


ここまで話を聞いた事で、ようやく納得がいった。

そうして、彼らにならば運命の女神・ウルヴェルドから聞かされた“あれ”の存在について明かしてもいいだろうという結論に私は至る。


「スルタンとマリアーノは、“ムジカ・デラフィーネ”の存在を…知ってる?」

「…っ…!!!」


私の台詞(ことば)を聞いた途端、スルタンとマリアーノの表情がこわばる。

同時に、神妙な面持ちでザックは私の話を聞いていた。


「当然、実物は見た事ないけど……エルフの先達から聞いた事あるわ。でも、どうして只人の貴女がそれを知っているの…?」


私に問うスルタンの姿は、明らかに動揺していた。

隣に座っていたマリアーノも、真剣な眼差しでこちらを見つめている。


「あんたらが俺達を捜していたように…。俺達も、あんた達を捜していたんだ」


すると、黙っていたザックが口を開く。

驚く二人を尻目に、ザックが私から聞いたウルヴェルドから聞かされた使命の事を、スルタンとマリアーノに話した。


「…成程…。わし等が転生前の記憶を思い出したのはおそらく、ザックが思い出した時と連鎖反応したってところじゃな」

「連鎖反応…?」

「私とマリアーノが前世の記憶を唐突に思い出したのが…ちょうど、今から半年くらい前なの。それって、ザックが学院で前世の記憶がよみがえった時より少し後になるからね!」

「成程…」


マリアーノが連鎖反応という単語(ことば)を口にしたので私が首を傾げていると、スルタンがその理由を説明してくれた。


 捜し出す転生者の記憶については…実際に思い出してくれるまでかなり時間がかかると予想していたから、連鎖反応で皆思い出してくれてよかったわ…


私は、冒険者に登録する前に考えていた問題が解決して、少し安堵していた。



ウルヴェルドの話をしたところで、この応接室での会話を一旦終わらせた。それは、ギルドで長話していると職員に注意されることや、私が行使している音を聴こえづらくする結界魔法がもう少しで効果が切れそうという事にも起因している。

ともあれ、捜し出すべき転生者が全員揃い、今後はこの4人で旅をする事になるだろう。

どんな冒険が待ち受けているのか――――――――――――不安要素もあるが、楽しみを胸に私は3人と一緒にギルドの建物から出るのであった。


いかがでしたでしょうか。

今回、久しぶりに音楽的用語が出てきたかんじかな。

だいぶエセルによる説明的部分が多かったかもしれませんが、ここではちょいと補足。

エセルが言っていた譜面の種類。会話の都合上省略した言い方をしていましたが、実際はソロ譜・連弾譜・弾き語り譜と“譜”とつく名前が正式名称になりますね!

余談ですが、私もエセルと同じく複数の譜面が読めます。フルスコアもちょこっとだけ…(笑)

また、マリアーノがエセルやザックの事を「只人」と言ってましたが、この世界における人間の事を指します。

人間・エルフ・ドワーフ・獣人等をまとめて「人族」と呼び、魔族や魔物はそのままで呼ばれていて人族とは相反する存在といったところですかね。

ムジカ・デラフィーネはアルファベット表記だとmusica della fineと書きます。

日本語でいうと「終焉の音楽」というのですが、この曲についてはまた追い追い書かせて頂きます。


無事に残りの転生者二人と合流できたエセルとザック。

これから始まるであろう冒険で、何が待ち受けているのか。

お楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します<(_ _)>


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