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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
共闘編

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打ち破るために奮闘する者

今回は特例で、視点がマリアーノ→彰彦と変わります。

他の登場人物同様、”※”が変換地点で表記されているため、注意してご覧ください。

「マリアーノ…!!」


意識が飛んでいたワシは、バッシュの声で我に返る。


「な…!!?」


辺りを見回してみると、無残な光景が広がっていた。


魔王城の玉座があるとされる広い空間の中で、血まみれになって倒れ伏している人族——それは、バッシュを除く勇者一行3人の死体と、ワシの仲間であるスルタンやザックの死体だった。


 一体、何が…!!?


あまりの出来事に対し、ワシは声が出ない。唯一生き残っている勇者・バッシュは魔王と一対一の戦いを繰り広げていた。


「まさか…魔王が、完全復活した…!!?」


剣を構えるバッシュの先には、五体満足となり自由に動き回る魔王ディーフラッツがいた。

完全復活を果たした事で上機嫌となった魔王の近くには、意識を失っていると思われるエセルが()を閉じて玉座に突っ伏していた。


「マリアーノ…。あんただけでも…ぐあっ!!」

「忌々しい勇者よ…。もう味方はほとんど残っていないぞ…!!」


聖剣を持って戦うバッシュだが、全身は傷だらけだ。疲労も相当蓄積されているのだろう。


 これは…幻…!!?じゃが、こんなにも生々しいものか…!?


ワシの頭の中は混乱している。

「この光景は幻影だ」と頭で理解していても、あまりにリアルな感覚がこれを現実と告げているようでどう対応すべきかわからない。ましてや、どうやって打ち破ればよいかも——


 くそ…彰彦…!!?


ワシの中にいるあろう彰彦にコンタクトしようにも、ここは深い幻影の中だからか応答はなかった。

その後、謁見の間に少しずつ魔物が入ってくる事でワシの余裕は余計になくなっていくのであった。



「マリアーノ…!!おい、返事をしてくれ…!!」


一方、現実世界では久しぶりに僕———彰彦が“表”に現れていた。

“本来のマリアーノ”が魔法で作られたと思われる鏡みたいな物体による映像で気を取られている隙に、大魔族イルジオが彼に幻影魔法を仕掛けたのである。


 …未だに慣れないよ、このドワーフの肉体(からだ)


僕は右手を開いたり閉じたりして、身体の動作確認をしていた。応答しないマリアーノの事で手一杯だったが、その近くでは少し驚いた表情(かお)で僕を観察するイルジオが立っている。

また、マリアーノと共に進んでいた魔法使いフレイプは、灰色の立方体みたいな形をした結界らしき物体(もの)の中にいた。


「…って、わぁ!!びっくりした…!!!」


気が付くと少し距離は離れているものの、ほぼ真正面にイルジオが立っていた。


「おかしいですね…。僧侶でもない貴方に、わたしの幻影魔法が効いてない…?しかし、口調が明らかに先程とは違う…。これは、まさか…」


イルジオは、僕を観察しながらぶつぶつと何かつぶやいていた。


「あ!!ってか、そこの姉ちゃん!!あんたの仕業か…!!?」


僕はようやく、フレイプが何か結界魔法みたいな物体(もの)に閉じ込められている事に気が付いた。


「…あぁ、彼女の事ですか。流石、勇者一行の魔法使いですよね。魔法の撃ち合いではどうあっても決着がつかないだろうと思い…全ての魔法を吸収する結界魔法に閉じ込め、そこで窒息死してもらう事にしたんです」


イルジオは普段の態度に戻り、フレイプに何をしたのかを語った。


「窒息…」

「本来ならば、結界の中に人族にとって有害な物質を流し込んで殺したかったのですが…。やはりなかなか上手の魔法使いが相手だと、そう上手くはいきませんね」


僕は、結界魔法に閉じ込められたフレイプを見た途端、何故苦しそうな表情をしているのかがすぐにわかった。


彼女はエルフで(マリアーノ)はドワーフだが、身体の構造はどちらも只人と同じだ。酸素が薄い場所にいて、かつ自身の出した二酸化炭素が他へ移動せずその場にとどまり続けていると人は窒息する。イルジオの使っている結界魔法がフレイプの四方八方全部を立方体で塞いでいるのは、人族にとって必要な酸素を遮断するためだろう。

攻撃魔法や幻影魔法がフレイプには効かないからだろうが、何ともねちっこい魔法を使うなと僕は感じていた。


「おい、あんた!!この姉ちゃんもそうだが、エセルにかけた魔法を解けよ!!」

「子供のような口調…。成程、今の貴方は”異界からの来訪者“ということですね…」


僕は改めてイルジオにこちらの用件を伝えるが、向こうと全然会話がかみ合っていない。

苛立った僕はマリアーノの斧を手に持つが、やはり手慣れていないために他人から見れば持っているだけで斧を構えられていないドワーフのように見えるだろう。


「ふ…実に面白い。ラゴウを倒したドワーフの戦士がどのような方かと思いましたが、あのエセル同様“一つの肉体に二つの魂が同時に存在している”状態なんですね」

「一応そういう事になるけど…何か変な言い方だね」

「では、もう一人の貴方のために、改めて自己紹介をしましょう。わたしは、イルジオ。四天王の中ではあらゆる魔法に精通する者でして、魂を操る魔法にも長けています。なので、エセル…いえ、“エセル”と“寛”両方の魂と対話をしたことがあるのですよ」

「!!?」


イルジオが僕に向けて自己紹介してきたが、最後の方で口にした台詞(ことば)に対し、目を丸くして驚いていた。

声は聞こえないが、結界に閉じ込められたフレイプも僕らの会話を唇の動きから察して驚いているようだ。


 マリアーノの記憶を遡ると…。確かに、このイルジオって魔族(やつ)は幻影魔法や縛魂の術等に長けているって話が出ている。…まさか、それを使って転生者と元の魂を分離したって事…!?


僕は、とても嫌な予感を胸に抱きつつ、口を開いた。


「もしかして…“本来のエセル”を…殺したのか!?」

「いいえ。あの娘は魔王様の所有物ですし、対話した後は元の状態に戻してますから双方どちらも無事ですよ。ただ…」

「!!」


会話の中で、突然イルジオの周囲にある空気が変わったような気がした。


「うわっ!?」


突然、魔法による光の刃が僕の頬を掠った。

何とか避けた僕は、地面に降り立った後に敵を見据えた際、その不気味な表情に鳥肌が立ったのである。


「“異界からの来訪者”は人族に多いとはいえ、なかなか直接お会いする機会はありませんでした。あの娘が無理ならば、貴方がわたしの実験材料になってもらいましょうか…!」


そう口にしながら浮かべるイルジオの笑みは、不気味すぎて血の気が引くような想いだった。


「くそっ…!!」


その後、イルジオが無詠唱で複数の魔法を放っている。

マリアーノ本人ならばもっと上手に避けていただろうが、あまり“表”へ出ていなかった僕にとっては敵の攻撃を避けるだけの行動ですら容易ではない。


 マリアーノが応答しないのは、イルジオの魔法にかかっているからだろうし…。だからといって、僕にこの幻影魔法を解呪できるはずもないし…!!


僕は、“表”に出たものの、どうすればいいか八方塞がり状態だった。唯一の味方であるフレイプも、敵が仕掛けた結界魔法のせいで魔法を放つ事もできない。


「ぐっ…!!」


追い詰められた僕は、イルジオの放った拘束魔法で全身を草のツタみたいな物質で縛られてしまう。


「…わたしの部下を殺したお礼もしたいですしね。今の貴方と幻影魔法にかかっている貴方の魂を分離し、片方を実験魔獣の餌に。もう片方は、永遠に消えることのない魂を切り刻む魔法の実験にでも使いましょうかね…!」


眼下から、イルジオの声が聴こえる。

その口調は落ち着いていたものの、言葉の端々に殺意を感じられた。一応、部下のことを考える感情は魔族も持っているということだろうか。


 ちっくしょう…!!


僕は、心の中で叫びそうになっていた。「もうここまでか」とあきらめかけた時、事態は思わぬ方向へと動いた。



「!!?」


気が付くと、目の前に地球でいう小太鼓(スネアドラム)に模した古代楽器が宙に浮いていた。


 フレイプが出したのか…!!?


突然で驚いたものの、何とか魔法使いの方へ視線を向けると————結界魔法で窒息しかけていたフレイプは、息切れを起こしながら唇を動かしているのを見える。


「歌い…ながら…叩…け…?」


フレイプの声自体はこちらに届かないため、僕は彼女の唇の動きを読んだ。

思わず声に出てしまったが、かなり小声だったため敵に全部聞かれる心配はないだろう。


「…?何か言いましたか…?」


ただし、僕の様子がおかしいと感じたイルジオは、視界に入ってきた古代楽器を見据える。


「…あの魔法使いが寄越したのでしょうか。いずれにせよ、壊してしまった方が良さそうですね…!?」


宙に浮く古代楽器をイルジオは破壊しようとしたが、その後起きた事に対して目を丸くして驚く。


僕がその場で思いついた歌————転生前(いぜん)に地球で好きだったアーティストの曲を口ずさむと、その小太鼓(スネアドラム)は一人でにリズムを刻み始めていたのだ。

この仕組みは、この世界の楽器ならではのものらしい。五体満足ではない身体の不自由な者でも楽器が演奏できるようにという名目で、“歌い始めた曲に合ったリズムをたたく”らしい。

これは、古代楽器をいくつか手に入れた際にエセル達とも実際に音が出るのか実証済みだ。最も、僕と違ってマリアーノ本人は音楽をやっていないため、歌を口ずさむのも正直へたくそだったが————


「くっ…!その楽器が放つ音は、かなり耳に響きますね…!!」


僕の目の前にいたイルジオは、右手を使って右耳を塞いで苦しそうな表情をしている。


小太鼓(スネアドラム)の音に慣れている僕に対して、あまり聞き慣れていない者にとって打楽器の音を間近で聞くのはかなり煩いと感じるだろう。

イルジオがかなり取り乱し始めた事で、僕にかけられた束縛の術及びフレイプがかけられた結界魔法の威力が弱まっていく。同時に、離れた場所にいる“彼女”にかけられた魔法に対しても、“ある程度の弱体化”が見られる事を意味していたのであった。


いかがでしたか。

これまで、エセル達と違ってほとんど”表”に出てこなかった彰彦。今回、マリアーノがピンチになった事でだいぶ頑張りましたね!

外見はそれなりに歳のいったドワーフなのでわかりにくいですが、彰彦自身はまだ12・3歳くらいの少年です。かなりのプレッシャーもあったかも?

ともあれ、音楽経験に関しては申し分なさそう。あと、古代楽器のスペック結構高いですね(笑)

さて、彰彦の奮闘によって、エセル達側にも動きが見れるでしょう。

次回は本来のエセルかその周囲にいる登場人物視点になりそうなので、お楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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