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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
共闘編

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形勢一変

今回は、マリアーノの視点で話が進みます。

 …まさか、この冒険者人生の中で魔王城に侵入する事になるとは思わんかったな…


先を急ぐ中、ワシ———マリアーノはそんな事を考えていた。


エルフの魔法使い・フレイプの瞬間移動魔法を使い、ワシらは無事に魔王城へ転移できた。そうして、勇者一行の僧侶・アイウィッグによる魔力隠蔽魔法を使って、魔王城の侵入も容易にできた。

魔王城の敷地に入ると、魔物の気配がそれなりにあった。場所によっては魔物達(そいつら)の目の前を通り過ぎるなんてこともあったが、彼女の魔法のおかげで見つかってしまう事はなかったのである。


「魔法が使えないのは、何とも歯がゆいけど…。このまま、一気にエセルやムジカ・デラフィーネを見つけられるといいわね…!」


魔王城の入口を通り抜けた際、スルタンが小声で呟く。

アイウィッグの魔力隠蔽魔法は、少し話す程度であれば敵にばれる事はない。しかし、魔力隠蔽魔法を使った状態で魔法を行使すると、その事象まで隠すことはできない事も相まって、すぐに効力を失ってしまうという。そのため、この魔力隠蔽魔法(まほう)を使って進んでいる間は、術師達は魔法を使えない状態であった。


「しかし、魔王封印で廃墟と云われていた魔王城(ここ)だが、今は…」

「…魔物や魔族の気配が、プンプンしよるな」


廊下を歩きながら、ザックが不意に呟く。

それに対し、ワシも同調の意を示した。城の中に入ってからも、魔物や魔族は割といる。


 ワシら3人だけでは、道に迷って途方にくれる事になっていたかもしれんが…


ワシは、考え事をしながら前方で先導している勇者・バッシュを見上げた。

彼は、聖剣に宿る剣武神・グンニルとコンタクトをしながら進んでいく。グンニルは、伊達にこれまでの勇者一行の行く末を見てきた訳ではない。この魔王城を訪れるのも回数を忘れるくらいには訪れているそうなので、正しい道をある程度覚えているらしい。

また、勇者一行(かれら)が魔王討伐を旅の目的としているだけあり、この魔王城の古い地図を何かしらの手段で手に入れていたようだ。

バッシュの横にいる武闘家の青年・ゲルトの手には、古い物ではあるが魔王城(このしろ)の地図が握られていた。


「…まだまだ全然、上があるんですね…」


進んでいる途中、一度外に出て進む渡り廊下のような場所へ出た際、アイウィッグが呟く。


ワシらは順調に進んでいる事は喜ばしかったが、まだ魔王の玉座があると思われる最上階までの道のりが険しい事が、この渡り廊下に立つとわかる。


 建物だけでいえば、だいぶ立派なんじゃが…。魔族が棲みついてなければなぁー…


ワシは、上を見上げながらため息をつく。

手先の器用なワシらドワーフは、武器防具の作成が得意であり、一方で独特の建築様式や文化を持つ。故に、立派な建造物を見ると「自分達も造ってみたい」もしくは「この建物に住んでみたい」と思うのが常である。しかし、この立派な建造物も魔族や魔物が棲んでいるとなると、一気に興味を失う。耳長族(エルフ)ほど潔癖ではないが、ワシらドワーフも魔族や魔物を嫌う者が多いのであった。


「よし、次の所に入るぞ…!」


先導しているバッシュが渡り廊下の先にある扉に到達後、後ろから来るワシらに振り向いて声をかける。

「このまま敵に気づかれぬまま、目的地へ到達できれば幸いだ」なんて事をワシは考えていたが、ダンジョン探索にアクシデントは付き物。そう上手くいくはずはなかった。


「なっ…!!?」

「これは…」

「…地震!!?」


地面にある石ころが軽く跳ねたと思いきや、次第に大きな揺れがワシらの足元から感じるようになる。


”異界からの来訪者“である雪斗(ザック)美都紀(スルタン)。そして、彰彦の記憶を持つワシはこの現象が”地震“である事はすぐに理解できたが、地震を知らない勇者一行は目を丸くして驚く。


「きゃあっ!!」

「うおっ…!?」

「兎に角、中へ急げ!!」


娘っ子二人は、その激しい横揺れで転倒し、男衆は足元をふらつかせていた。

一方で「この場所に留まるのは危ない」とすぐに判断したのか、扉の前にはすでに猛ダッシュしていたザックが声を張り上げていた。


 確かにこれだけの揺れがあれば、この渡り廊下が崩れるやもしれん…!!


そう思ったワシは、すぐさま転ばないように走り出す。

スルタンもワシと同様走り出していたらしく、ちょうど目の前にいた。ワシら3人が中に駆け込んだのを見た勇者一行達も、急いで扉の中へと入ったのである。


「この世界…も、地震起きる…のか…?」

「さぁ?…少なくとも、スルタンの記憶にはなさそう…よ」

「ワシも、彰彦より聞いてはおったが…。実際に体験したのは、今回が初じゃな…」


中に駆け込んだ後、ザック・スルタン・ワシの3人は息切れをしながら今起きた出来事について触れる。


『この、大地が揺れた感覚…。魔王(やつ)め、“片足”が元に戻ったのかもしれん…!』

「片足…?」


勇者一行も息を上げる中、グンニルが言葉を紡ぐ。

その意味深な台詞(ことば)に対し、バッシュが首を傾げる。


「…もしかして、魔王は今の揺れを起こせるほど魔力が回復してきているという事…!?」

『…その可能性は、大いにある。魔王(やつ)が両足で立った際は、大陸の半分近くが揺れたという話を後から聞いたことがある』

「なっ…!!」


グンニルの台詞(ことば)を聞いたワシらは、全員が目を丸くして驚く。

彼曰く———揺れがこの程度で収まったのは、回復したばかりの片足だけで地面を一度叩いた程度の動きだったためらしい。しかし、それだけでもかなりの威力を持っていることが、今この場で判明したのだ。


「…皆さん、すみません。先程、私が気を乱した事で魔力隠蔽魔法(まほう)の威力が弱まり……気配を捕捉されたようです」

「!!!」


数秒ほど黙った後、アイウィッグが申し訳なさそうな表情(かお)を浮かべながら、全員に声をかける。

彼女は途中言葉がたどたどしかったが、最後の方で何が起きたのかを全員が察知した。


「流石は、魔王様。片足だけで、あれだけの威力を出せるなんて…!」

「はい、ロキサーヌ様。おかげで、イルジオ様が彼らの魔力を察知できたようですよ」


前方より、一組の男女の声が響いてくる。


 あやつは…!!


そして、ゆっくりとこちらへ近づいてくる彼らを見た途端、ワシは心臓の鼓動が徐々に早まる。

ワシらの前に現れたのは、背中に灰色の翼を持ち、脚が猛禽類のように鋭い爪を持つ3本足を持つ女型の魔族。男の方は、下半身に蛇の身体を持つ魔族————ドワーフの村を襲撃し、エセルを捕えた張本人ラゴウだった。


「…また会う事になるとは、思わなかったぜ。四天王さんよ…!」


バッシュは皮肉めいた笑みを浮かべながら、視線の先にいる女魔族を見据える。

皆の反応を見る限り、あの女魔族が行方不明となっていた四天王の一人“烈風のロキサーヌ”のようだ。


「下半身が蛇の魔族…。という事は…!!」

「あぁ。奴が、エセルを攫った敵じゃ…!!」


ラゴウを見たザックは、普段の冷静な表情(かお)から次第に怒りをむき出しにしていく。

その台詞(ことば)に同調するワシも、心の中から憤怒がこみあげてきていた。気が付くと、この場にいるワシら全員が戦闘体勢に入っていた。


「あら!エルフの里で見かけた、可愛いらしい男の子じゃない…!…それでいて、私の可愛い部下を殺した忌々しい勇者様もご一緒のようで…」


ロキサーヌはザックを見て面白そうな反応をするが、バッシュに対してはかなりの殺気を放っていた。


ここにいる人族は皆、ある程度の場数を踏んだ者達が多い。そのため、敵の殺気に吞まれることはないが————素人の冒険者であれば、恐怖で身体がすくんでいたことだろう。それだけ、この場に現れた魔族2人は強い敵であることがよくわかる。


「あぁ、先日ドワーフの村では失礼をした」

「…なんじゃと!?」


すると、ラゴウがワシの存在に気が付いたらしく、こちらに視線を落としながら口を開く。


また、到底謝っているような態度には見えないものの、敵が述べた台詞(ことば)の意味が理解できない者も多い。しかし、わしは反応とは裏腹に自分があの時浮かんでいた仮説が正しかった事を、この台詞(ことば)で悟る。


「それは無論、前回は手を抜いていた事だ。“あの娘がドワーフの村を訪れていた場合”において捕まえるための手を確保するために、全部の腕で剣を所持しなかったのだ。だが、今回は…手を抜かず、全力で行かせてもらおう」

「その口ぶりだと…。やはり、マリアーノの身内がどうのという文を寄越したのはあんたたちの仕業?」

「…えぇ。そこのドワーフが行くのは解りきっていたけど、魔法使いちゃんがドワーフの村へ一緒に行くかエルフの里に残るかの可能性は、五分五分だったしね」


ラゴウの台詞(ことば)を聞いたスルタンが、深刻そうな表情(かお)をしながら魔族に問いかける。

すると、スルタンの問いをロキサーヌが答えていた。


 エセルを手に入れた今、手の内を明かしても問題ないという事じゃな…!


ワシは、当たり前のように真相を教えてきた敵に対し、腹立たしさが募る。

その後ロキサーヌは、こちらが訊いてもいない事を語る。エセルがワシについていくか否かは定かではないため、ロキサーヌ側とラゴウ側で同じ命令を魔王及び参謀でもあるイルジオから命じられていたらしい。「娘を見かけた方が、当人を拉致して我の元に連れてこい」と————


「…さて。答え合わせやらが終わったところで、そこをどいてくれないか?正直なところ、魔王(やつ)と戦うために体力温存したいんだが…」


ワシらの会話を聞いていたバッシュが、聖剣の塚に手をかけたまま呟く。


その飄々とした態度に対し、魔族二人は瞳を数回瞬きしていた。しかし、ラゴウが4本の剣を構えているところから察するに、退く気はないようだ。


「…まぁ、勇者様と剣士君辺りは、別に通してあげてもいいわよ?それぞれ、魔王様(あのかた)と魔法使いちゃんが気になるだろうし…」


ロキサーヌは、クスクスと不気味に笑いながら話す。


「…戦士マリアーノ。せっかくの、再会だ。前回の続きを是非しようではないか」

「…望むところじゃ…!!」


ラゴウが放ったのは、ある意味挑発ともいえる台詞(ことば)だ。

しかし、これに乗らないという思考()はワシにはない。


「…フレイプとゲルト」

「なに?」

「どうした…?」


バッシュは、不意に自分の徒党(パーティー)にいる魔法使いと武闘家に声をかける。


「奴らは、俺達全員は通す気はないみたいだし…。マリアーノとスルタン辺りに加勢してやってくれないか?」

「別に構わないけど…って、成程」


勇者の提案で、ワシにはフレイプが。スルタンにはゲルトがサポートする事が決まりそうだが――――フレイプがスルタンの方を見ると、バッシュが提案してきた理由がよく理解できた。


 後ろ姿なので、表情は見えないが…。スルタンの奴、相当殺気立っているな…


ワシも殺気を放っていただろうが、自分以上に憤怒がまとわりつくスルタンを見てそんな事を考えていた。


エルフの里でザックから聞いた話だが、ロキサーヌとその部下が里を襲撃した際に遠距離移動魔法を行使する“糧”として、スルタンの同胞が殺されたらしい。そのため、敵に対して憤りを感じるのは当然の事だろう。

スルタンも自分と同じく同胞を殺された想いを抱いているとわかった事が、ワシにとっては一種の励ましのように感じていた。


「…二人とも、無茶はするなよ」


先へ進むことになった3人の内、ザックがすれ違いざまにワシやスルタンに声をかける。

ザックも、本当ならばワシらと残って戦いたいという想いがあっただろう。とはいえ、例え勇者一行と共闘しようとも魔王やもう一人の四天王・イルジオはそう簡単に勝てる相手ではない。彼はおそらく、少しでも早くエセルを助け出すために自身の感情を押し殺している可能性は高い。


「お主も、早くエセルを取り返しておいてくれ!」

「私達も、さっさと終わらせて追いつくから…!!」


ザックの台詞(ことば)に対し、ワシやスルタンが応える。


スルタンは背中越しに聞こえたので表情は見えなかったが、いつもの美都紀(スルタン)らしい口調だった。そのため、少しは冷静さを取り戻したと思われる。


「よし、先を急ごう…!」


先導するバッシュの台詞(ことば)を皮切りに、バッシュ・ザック・アイウィッグの3人が敵の先に見える道へと駆け出して行ったのである。


そしてこの後、ロキサーヌ対スルタンとゲルト。ラゴウ対ワシとフレイプの戦いが、幕を開けるのであった。


いかがでしたか。

今回のタイトル「形勢一変けいせいいっぺん」は、物事の成り行きや様子が急に変わることを指す慣用句です。

アイウィッグによる魔力隠蔽魔法で順調に進んでいたマリアーノ達でしたが、魔王が起こした地震によって一気に状況が変わることからつけました。

バトルスタートかな?と思いきや、本当のバチバチは次回以降かな?

視点の順番的には、まだ何とも言えないですが…

とにかく、スルタンはかなり怒っているのでしょう。表情見えないだけに、なおの事…

バッシュが気を利かせてサポート人員寄越してくれたのは、グッジョブですね!

さて、次回はどうなるか…お楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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