表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
真相編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/45

邂逅

魔王城に連れてこられてから、3日間ほど経過する。

ムジカ・デラフィーネの解読は私の体力を見ながら進めていたため、少しずつ進んでいるといった具合だ。というのも、解読の後にディーフラッツが“人間を学ぶ”という名目で、私の身体をあれこれと触れるのだ。その両方を一日でこなしているため、あっという間に体力を奪われてしまう。

彼曰く、“中”にいる亮も(エセル)と交わる事を強く望んでいるため、魔王の邪魔する気はないようだった。ともあれ、縛魂及び魔封じの術で抵抗の術がない私は、精神(こころ)が折れそうな想いで何日か過ごしていた。


「…此度も、お疲れさまでした」

「私、また…」


3日が経過したある日、目が覚めた場所はここ数日軟禁場所として滞在している部屋だった。

視線の先には、イルジオが立っている。


因みに、ここ数日間は四天王以外の魔族が私に食事等の世話をしていた。その中には、なんと私やザックが在籍していた王立ガファイ高等学院に潜入していた魔族(やつ)もいたようだ。


 あれ…?なんか、体の中がスカスカというか…へんなかんじ…?


意識がはっきりしてきた私は、普段の自分と何か違う感覚がした。


「先日、魔王様がおっしゃっていた通り…貴女に“面白きもの”をお見せしようと思いましてね」

「…え…!!?」


イルジオが説明をしながら視線を向けた先を私も見ると、目を見開いて驚く。


私が腰かけている一人用ソファーの斜め前にある壁に、一人の人物が磔のような状態で拘束されていた。その人物とは、“私”と同じ顔をした女性だ。


「まさか…」

「…そう。貴女の中に眠る、もう一つの魂です」


私が視線を一旦イルジオに向けると、彼は首を縦に頷きながら答えた。


今起きているのは、私の中に眠る“本来のエセルの魂”が具現化して、目の前で拘束されているという事だ。このような芸当ができるのは、魂の扱いに長けたイルジオだけだろう。


「…便宜上、今この場では貴女を寛。彼女を、エセルと呼ばせて頂きます。…では、エセル。起きているのでしょう…?」


どちらも見た目は同じ顔をしているため、イルジオは名前を呼び分けて口にする。

すると彼の一声を聞いたのか、壁に拘束されているエセルが閉じていた瞳をゆっくりと開ける。


「…本来、こうして直に話すことはないと思っていたのだがな…」


瞳を開いたエセルは、苦笑いをしながら(わたし)を見据えていた。


「…あんたとちゃんと話すのは、これが本当の初めてってことね」

「あぁ。私がずっと眠りについていた事で、寛には迷惑をかけたな…」


本来ならばあまりよくない状況かもしれないが、こうして”本来のエセル“と直に話ができるようになったのは、何だか感慨深い気がしていた。


「…で、此度はどういうつもりで私を目覚めさせたんだ?」

「…聡明な貴女のことだ。大体把握しているかと思ってましたが…」


一瞬瞬きしたエセルは、近くにいるイルジオを睨みつけながら話す。

しかし、殺気立った()も、この魔族には一切通用しないようだ。彼は、(わたし)を一瞥してから口を開く。


「…良い機会なので、エセルの方から寛とわたしに向けて説明をしてほしいのですよ。部下からの報告を聞く限り、貴女は早くに魔族(われわれ)の存在に気が付いていたようですしね」

「…断ると言ったら…?」

「…エセル。貴女は、寛が貴女達()の身体に転生を果たした事から、“自分はもう消えてしまっても問題ないだろう”と考えているかと思います。しかし、それは間違っていますよ」

「なに…?」


イルジオの要求をエセルが断ろうとしたが、彼は何故か違う話題を持ち出す。

その後、彼は思いもよらぬ事を教えてくれた。


転生者———もとい、この世界では”異界からの来訪者“と呼ばれる存在がこの世界の生物に宿ると、一つの肉体に二つの魂が宿っているという事になる。転生者の魂が”表“に出るかマリアーノやディーフラッツのように元の魂が”表“に出てくるかは個人差がある。いずれにせよ、どちらかの魂が消失した場合はもう片方の魂も身体を動かせなくなり、結果肉体も魂も滅んでしまうという。


「貴女達二人は、お互いの意思疎通が取れなかったようですが…。寛が宿ってからも、エセルの魂は消滅せずに眠りについていただけです。よって、エセルの魂が消失してしまうと、それは同時に寛の死を意味するのです。…己のせいで、この娘が死ぬのは嫌でしょう…?」

「……この屑野郎…!!」


イルジオは、語りながらソファーに腰かける(わたし)の肩に自身の手を添える。

それを目にしたエセルは、拳を強く握りしめながら彼を睨んでいた。


 これは…お互いが人質ってことなのね。もし(わたし)が死のうすれば、それはエセル自身の魂の消滅を意味する…。イルジオが言いたかったのは、そういう事ね…!


一方で、(わたし)にとっても彼女が盾にされているようで、物凄く不愉快に感じていた。


「…では、エセル。話して戴けますね?」

「…仕方ないな」


穏やかだが不気味な笑みを放つイルジオが、エセルに話すよう促す。


彼女の台詞(ことば)を皮切りに、(わたし)が覚醒するまでの出来事をエセル本人が説明する事になる。



エセルの生家であるウィザース侯爵家の人間は、ある一定のジャンルで天才的な才能を有する者が多く生まれる家系であった。そのため、エセルも記憶力や知識を得る脳のキャパシティーが、常人と比べるととてつもなく広い。7歳くらいになると、現在の高等学院で現役の学生が学んでいることを理解して覚えるようになっていたのである。

しかし高等学院に入学後、周囲で起きている事を偶然知って、考え始める。


 自分が入学してから…。いや、おそらくはそれ以前から一部の生徒の失踪事件が多発している。行方不明になった生徒は、学年やクラスはバラバラだが一つだけ共通点がある…な


エセルは、失踪事件の事を独自で調べていた時に思い当たるふしがあった。

その共通点とは、“音楽の座学ができる事”か、“文武両道に近い優秀な生徒”だったのである。本来ならば、ある程度本気を出せばエセルの学力だと学年主席も容易だ。しかし、学年主席になるという事は、周囲から認知されやすい。失踪事件を起こしている相手によって、標的とされてしまうだろう。


 …敵とやらに目を付けられぬよう、周囲に悟られない程度に学力や実技を手抜きしておこう。あとは…


エセルは、表向きにはごく普通の生徒として振舞ったが、一方で魔法や歴史について改めて勉強に励みだす。


「…かなり古そうな文献だ。何か、調べものでも…?」

「オーウェン…」


ある日、学院の図書室で調べものをしていると、ザック———当時はまだ雪斗が覚醒していない”本来のザック“が、エセルに声をかけていた。


「…まぁな。一応、魔法使い志望なんでね」


エセルは苦笑いを浮かべながら、読んでいる本に視線を落とす。


この時ザックには説明しなかったが、エセルが読んでいた本は古代魔法の種類が載っている本だ。“魔法使い志望だから”と言えば大抵は納得すると解ってて発した台詞(せりふ)だが、本来古代魔法を学ぶには学院の許可が必要なのだ。


「…なぁ、ウィザース。お前、もしかして…」

「…あぁ、すまない。自室に、この後使う講義の資料を忘れてきてしまったな。なので、ここいらで失礼する」

「…ぁ…」


ザックが何か言おうとした所をエセルは制止し、その場を立ち上がる。

そうして彼女は、逃げるように図書室を去っていったのである。


エセルはそれから色々な観点から、魔族が人間に成りすまして高等学院に潜入していること。魔族特融の化ける魔法がある事等を突き止める。同時に、自身の身体に対して何か勘付いてきていた。


 魔族が人族の国に、魔法を使ってまで侵入する理由…。何かを捜しているのか、あるいは…


ある日、いつものようにエセルは図書室で調べものと自習をしていた。

彼女は、脚立に上って本を探しながら考え事をする。

話を聞いていて(わたし)が驚いたのが、“本来のエセル”も持つ鑑定スキルを駆使し、自身の中に別の魂が宿っているのではないかという仮説まで至っていた事だ。


「ザック…」


エセルは、小声で同級生の名前を口にする。


 ザック…。おそらく彼は、私が本来の実力を見せないでわざと平凡な学生を演じている事に気が付いているだろうな…


エセルは、その場でフッと哂う。

この時彼女は、ザックが自分を気に掛けるのは彼が学年主席であり、私が本来の実力を発揮しない事に気に食わないからだと解釈していた。しかし、エセルはザックが彼女に対して向ける想いについては、まだ理解していない年頃だったのである。


「…っ…!!?」


エセルが探していた本を見つけて棚から取ろうとした刹那、事は起きた。

学院の備品である脚立の柱が折れ、バランスを崩したエセルはその場所から落下してしまう。


「う…」


脚立から落ちて頭を強くぶつけたエセルは、意識が朦朧としていた。

落下する際ほんの一瞬だったが———自分のいた所から少し離れた本棚のところに、ただならぬ気配を一瞬だけ感じていた。


 …いちかばちか…!!


“このままでは、自分も自分の中に眠っているかもしれない魂も消滅してしまう”と直感で感じたエセルは、心の中で叫んだ後に意識を失うのであった。



「…脚立から落ちた後、私は縋るような想いで自らの魂を“裏”にひっこめたわ」

「裏…?」


エセルが語る中、(わたし)は彼女の意味深な単語(ことば)に対して、首を傾げる。


「”自身の魂が無理やりにでも眠りにつけば、寛の魂が目覚めやすくなる“…と踏んでのことですか?」

「流石は、眩惑のイルジオ様。よくご存じで」


イルジオが会話に加わると、エセルは嫌味口調で言葉を紡ぐ。

ともあれ、エセルによる“(わたし)が覚醒するまでの話”は終わりを迎えた。


「まぁ、これで部下による報告と一致しました」

「ちょっと、イルジオ!!この後、エセルをどうするつもり…!?」


話を聞いて納得したような表情(かお)をするイルジオに対し、私はこの後、彼女をどうするのかが気になって仕方なかった。

相手を威嚇するようなまなざしでこの大魔族を睨みつけるが、相手は当然のことながら全く動じない。


「魂があまり長く肉体の外へ出ていると、今後の在り方に問題が生じます。なので、ちゃんと貴女達の身体に戻しますよ」

「あ…!!」


イルジオがそう口にしながら、左手で私の視界を覆う。

その時相手を眠らせる魔法を発動していた事に気が付いた私は、次第に意識が遠のいていくことになるのであった。


いかがでしたか。

魔族の手を借りてというのが皮肉ではありますが、寛はエセルとの邂逅を果たしたかんじですね。

今回エセルより明かされた回想が、エルフの里・ドワーフの村編で語られた寛がエセルの中で覚醒した直後の話に繋がるかんじです。

そして、本来のエセルはかなり優秀な女の子だったけど、恋愛はまだ疎いみたいっすねwww

寛が目覚めなかったら、年相応の恋愛をしていたのかな?と思いますが、運命とは本当残酷ですよね。

さて、次回はそろそろザック達や勇者一行の動向について描かれる事となります。

どんな展開が待っているか…お楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ