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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
真相編

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28/45

対面

ザック達が勇者一行や、剣武神・グンニルと対談していた頃————当の私は、魔王城に連れてこられていたのである。


「では、参りましょうか」

「え…えぇ…」


城の中にある部屋で目覚めた私は、二本の細長い角を持つ大魔族——眩惑のイルジオに促されて、その部屋を出る。


ドワーフの村でラゴウという魔族に捕えられた私は、気絶させられて今いる場所に連れてこられたらしい。

このイルジオという大魔族は、私が目覚めた時に現状をある程度説明してくれた。本来ならば縄で拘束されてもおかしくない状況だが、私は一切拘束されていない。しかし、その理由もしっかりと説明してくれたのである。


 魔法が使えないこの感覚…。本当、気持ち悪いわ…!


私は、イルジオの後ろを歩きながら内心で文句を述べる。


彼曰く、気絶している私に丸一日眠り続ける魔法をかけた後、魔封じ及び縛魂の術を私に施したという。

縛魂の術とは、文字通り対象の魂を縛り付けて操る術だ。高等学院時代にその名前だけは聞いたことがあったが、使いようには対象を廃人に追い込んでしまうほど危険な魔法のため、学院で学ぶことは禁じられていた。

この魔法には段階があるらしく、今私が自由に思考・発言ができるという事は、対象の身体のみを自由自在に操れる段階(レベル)で私に術を施しているようだ。その絶妙な魔法の調整力を見る限り、このイルジオという大魔族は相当な魔法の使い手だと思われる。


「あら」


廊下を歩いていると、反対側から灰色の翼を持ち、鳥のような足を持つ女の魔族が歩いてくる。


「お疲れ様です、ロキサーヌ。報告を終えたところですか…?」

「えぇ、そうよ。…あら、その()が件の魔法使いちゃんね」


イルジオがロキサーヌという魔族に声をかけると、相手は答え同時に私の方に視線を向ける。


 イルジオから感じる魔力は静かすぎて怖いくらいだけど…。この魔族(ひと)、獰猛な肉食動物のように怖い魔力を放っている…!!?


私は、相手の顔を見ただけでそこから感じる魔力に対して恐怖した。

魔法使いは魔力感知が他の職業の冒険者より優れているため、強い相手というのは一目見ただけでもわかる場合がある。後で知ることになるが、彼女はエルフの里を襲撃していた四天王の一人・“烈風のロキサーヌ”だったのである。


「…ふふ、可愛らしい表情(かお)。あの方のご所望でなければ、私が可愛がってあげれるのにねぇ…」

「…気持ちはわかりますが、あまり怖がらせないでください。この娘は、あの方の所有物(もの)となるでしょうから」

「わかってるわよ、じゃあね」


ロキサーヌの手が私に届きそうになったところで、イルジオが止めに入る。

相手の魔力で恐怖していた私は、二人の会話がほとんど頭に入ってこなかった。


「…ふぅ。では、行きますよ」

「…わかったわ」


ロキサーヌが反対側へ歩いて行った後、イルジオはため息交じりで声を出す。

その後、再び私達は歩き出した。



「魔王様、件の娘を連れて参りました」

「入れ」


あれから数分程廊下を歩き、私とイルジオは大きな扉の前にたどり着く。

そうして彼が扉の前で大きな声を出すと、扉の中からかなり低めの声が響いてくる。


 あれが…あそこにいるのが…!!


大きな扉が開かれて中に入ると、そこは玉座のある謁見の間だった。

そして、その玉座には私を連れてくるようイルジオや他の魔族に命じた張本人———魔王・ディーフラッツがいた。


「イルジオ、ご苦労であったな」

「はっ…もったいなきお言葉…」


魔王は、イルジオに対して労いの台詞(ことば)をかける。

すると、彼は右手を胸の前に寄せて深々とお辞儀をしていた。


玉座に座る魔王は、男の魔族である事は違いないが、頭上には太くて長い2本の角。そして、腕だけは只人の男性よりも明らかに大きい———そんな歪な身体をしている。

ただし、両足がまだ顕現していない五体不満足といった状態だ。


「エセル……という名だったな。そこでは、見えにくい。もっと近くへ来るがよい」

「あ…!」


魔王は私に視線を落とすと、指で手招きをする。

すると、私の身体が一人でに動き出したのだ。


自分の意思に反して、私の足は魔王の前へと一歩ずつ近づいていく。


 先程遭遇したロキサーヌとは、比べならない程の強い魔力…!声を聴くだけでも気を失ってしまいそうなのに…これでも、まだ万全じゃないなんて嘘でしょう…!!?


私は、今にも押しつぶされそうな魔力の強さを見ただけでなく声でも感じ取っていた。

一方、私が持つ“鑑定”スキルが久しぶりに発動し、今目の前にいる魔王が五体不満足という事も含め、まだ全体の40%くらいしか魔力が回復していない事を突き止めていたのである。


「くく…何、取って食ったりはしないので、安心するといい。なかなか美味しそうな魔力ではあるから、寿命が尽きてからのお楽しみとしておこう」

「…何が目的で、私を攫うよう命じたの…!?」

「…あぁ、そうだな。早いところ“作業”にも入ってほしいし、本題に移るとしようか」


私は圧倒されないように強気な態度を取るが、魔王はそれが返ってお気に召したのか怒ることもなく不気味な笑みを放ちながら話し出す。


「改めて、自己紹介をしよう。わたしは、ディーフラッツ。魔族の王で、この城の主だ。そなたを連れてきたのは、他でもない。一つ目の理由は既に察しているかもしれんが、別室にて保管している“あの楽譜”を解読し、わたしの完全復活を手伝ってもらう事だよ。これまで、何人か君のように音楽の知識を持つ人族を連れてきては試しに解読をさせてみたが…。どいつもこいつも、使い物にならなくてね。“譜面や複数の楽器演奏経験がある君ならば絶対にできるだろう”と、“ある者”からの進言を経て、君をここへ連れてくるよう命じたのだ」

「ある者…?」


私は、魔王の話を聞きながら違和感を覚えていた。


 この場所が魔王城だと知らされた時…ムジカ・デラフィーネが関係しているのは、すぐに察しがついた。でも、ザック達を含めて限られた人間しか、私が音楽の知識や楽器演奏経験が多い事を知らない。…魔王(こいつ)は、誰の進言で知ったというの…?


話を聞く中で、私は考え事をしていた。

そのため、魔王がその大きな指で私の顎を持ち上げている事に気が付かなかったのである。


「先に述べておくと…わたしは、そなたが”異界からの来訪者“である事を知っている。そして、わたしの中にも…”異界からの来訪者“とやらの魂が眠っているのだ」

「えっ…!!?」


魔王が述べた衝撃的な事実に対し、私は目を丸くして驚く。


改めて魔王の顔を正面から見たところ、確かに強大な魔力が目立っているため一見しただけでは分からないが、僅かに同じ転生者と感じられる部分がある。


「聞くところによると、これまで“異界からの来訪者”はそなた達人族の中にのみ現れる存在だったようだね。今思えば、私が部分的に復活できたのも“あの者”の魂がわたしに宿った故かもしれぬ」

「魔族では…あんたが、初…ということ…?」

「…いかにも」


私が魔王を“あんた”呼ばわりした事で、入口付近に控えているイルジオが黙ったまま私の方を睨みつけている。

しかし、不敬な態度を取られても魔王は特に気にも留めていないようだ。


「実際に、その()で見てもらった方が早かろう。…わたしの場合、己が望めば、“あの者”と好きなタイミングで入れ替われる事が可能だからな」

「…っ…!!」


そう口にした魔王は、一旦私の顎を持ち上げていた自身の手を離す。

彼の場合は、マリアーノと同じで”本来の身体の持ち主“と”転生者の魂“が自由に”表“へ出てこれることを指すようだ。


「やっと…」

「え…?」


ディーフラッツが右手で自身の顔を覆って下を向いていると、魔王とは思えないような柔らかい声が響いてくる。

私は、その態度の変わりっぷりに対し、転生者が“表”に出てきたのを感じた。


「やっと逢えたね、寛。俺だよ…」

「……え…!!?」


魔王・ディーフラッツの顔をした者が発した第一声に対し、私は驚く。


心臓の鼓動が早くなり、あまりの衝撃で声がうまく出ない。

転生者が多く存在するこの世界だが、“寛”という転生前(いぜん)の名前を知っているのはごくわずかだ。運命の女神・ウルヴェルドや、3人の仲間達。そして————


「貴方は……まさか……(りょう)…!!?」


ひどく動揺した私は、何とかその台詞(ことば)を絞り出す。


そう、転生前の名前を知る残りの一人は、かつての夫・亮だ。すなわち、私と一緒に事故で死んだ後、魔王の身体に転生を果たした事になる。

それは勇者一行が倒すべき敵が、(わたし)の身内という残酷な現実である事を意味していた。



いかがでしたでしょうか。

今回、エセルにとってはストレスで胃が持たれそうな出来事ばっかりでしたね(;´Д`A ```

そして、魔王の中に転生者がいたとは…!!という衝撃的な事実。

ただし、転生者がいるかもと匂わせる部分がこれまでの話にちょこっとだけ出てきていました。どの回だったから、お判りでしょうか?

今回、1話分として短いかもしれませんが、ここいらで区切らないと次がどこまでになるかわからんので、ここいらで区切りましたのであしからず…

次回も、寛・亮の対談はもう少し続きます(もちろん違う展開にも移行しますね)が、はたしてどんな会話が繰り広げられるのか!?

次回も、お楽しみ★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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