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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
エルフの里・ドワーフの村編

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3本の剣が意味すること

今回は話の都合上、途中からエセル→マリアーノに視点が変わります。

転換する所は”※”を入れているため、注意してご覧ください。

そうして、時間は元に戻る。

私とマリアーノの前には、4()本の腕で3()本の剣を操り、下半身が蛇の身体を持つ男の魔族がいた。


「貴様…!!よくも、ワシの同胞を…!!」


敵の魔族を目の当たりにしたマリアーノは、深刻そうな面持ちで叫ぶ。

串刺しにされた見張りや斬り殺された者達は、皆が彼と同じドワーフであり親しかった者もいる。そのため、憤りを感じているのだろう。


「一口だけ…と思ったが、ドワーフの肉は硬いからな。食らうのは、ひと段落してからの方が良さそうかもしれない」


蛇の魔族は串刺しにした見張りを食らおうとしたが、ひとまず何もせずに剣から死体を抜き取って地面に落とした。


「っ…!!」


ドワーフの死体が地面に落ちた時、私は恐怖で鳥肌が立つ。


 冒険者になってから、魔物を倒す機会は増えたけど…。人族の死体は、やっぱり慣れないよ…!!!


当然のことだが、転生前も人の死に立ち会う事はほとんどなかった。事故や事件に遭遇したこともない。転生後では、ギルドの合同作戦で魔族の討伐に参加した時くらいだろう。冒険者として場数を踏んでいるマリアーノと比べると、内面においても私なんてまだまだひよっこだった。

そのため、人族を惨殺した敵の魔族に対して恐怖を感じてしまったのである。


「わたしは、眩惑のイルジオ様にお仕えするラゴウと申す者…」

「…戦士マリアーノじゃ」


気が付くと蛇の魔族は自身の名を名乗り、それに倣ってマリアーノも名乗った。


 ラゴウという魔族…。名乗った後に、何か口にしようとしていた…?


私は、敵が名乗りをあげた直後に何か言おうとしてしたのを唇の動きで気が付いたが、途中でやめてしまったため何を言おうとしたのか分からなかった。


「ドワーフの戦士か。この気迫…。少しは、楽しめそうだな」

「ご期待に沿えるかどうかは、わからんがな!!!」


彼らの一言を機に、戦闘が開始される。



戦闘が開始され、そこから幾何の時間が経過したかはわからない。武器を持って現れたドワーフ達が見守る中、マリアーノとラゴウの一騎討ちは続く。


「マリアーノ!!加勢するぞ…!!」

「いや、皆は手を出すな!!!」


武器を持ってきた村民がマリアーノに加勢しようとするが、彼はそれを制止した。


敵は全部の腕で剣を持っていないとはいえ、3本の剣だけでもかなりの脅威だ。これまで私達の徒党(パーティー)ではザックと共に前衛の要として活躍していたマリアーノだが、相手の実力も高いため苦戦を強いられていた。


 そもそも、あんな重そうな剣をどうして軽々扱えるの…!?いや、それよりも…!


私は、彼らの一騎討ちを見守る事しかできなかった。


敵の動きが図体が大きい割に素早い中、マリアーノも小柄な肉体を生かして敵の猛攻を避けたり自ら攻撃も加えている。どちらも接近戦である上に、この村は他にも人がいて、かつマリアーノの故郷でもある。下手に大規模の魔法を使ってしまうと、マリアーノや他の村民に魔法が直撃しかねない。そのため、私は攻撃魔法が使えない状態であった。


 そうだ、これなら…!!


見ているしかできなかった私だが、不意に村の中でもできる魔法がある事を思い出す。直接的な攻撃にはならないが、敵の隙を作りだすには最適だろう。


「マリアーノ!!他の皆も、耳を塞いで…!!!」

「…!!」


私は、その場で手拍子を数回する。

所定の回数分だけ手を叩きながら、そこに魔力を注いだ直後に人差し指を親指で弾いて音を鳴らした。


「ぐっ…!!」


私が指で鳴らした音は、魔力で音量が増幅され音波として村中に響き渡る。

音を鳴らした方角にしか効果がでないので私自身は問題ないが、もろにその音波を受けたラゴウは耳の鼓膜が破れるくらいの衝撃を受けただろう。直撃したせいか、敵はつらそうな表情を見せた。


因みに今実行した魔法は、以前に訪れた村でウルヴェルドの加護を持つ女性・ノルズから教わった音魔法の一つだ。手拍子をして両手に魔力を込める事が、魔法発動の条件となる。


「小癪な真似を…!!」


一瞬の隙を見逃さなかったマリアーノの斧が、ラゴウの脇部分を斬りつける。

致命傷とはいかなかったが、敵にはそれなりに深いダメージを与えただろう。


「うおっ!!?」


気が付くと、ラゴウは持っていた剣の内一本をマリアーノに向かって投げつけていた。

紙一重で躱せたものの、あと少しずれていたら彼の頭部に直撃していただろう。


「!!エセル…!!」


マリアーノに剣を投げつけた直後、ラゴウは目にも止まらぬ速さで私のいる元へと移動していた。

蛇の身体を持つからか元々の身体能力かはわからないが、わずか1秒程の短い時間で、敵は私の目の前にたどり着いたのである。


 ()られる…っ!!


一気に間合いを詰められたため、私に魔法を発動する余裕はない。

遠距離での攻撃に強い魔法使いだが、当然弱点もある。それは、敵が至近距離まで近づいてしまった時だ。どんなに詠唱から魔法の行使までのスピードが速くても、間合いを詰められてしまえばどんな熟練の魔法使いでも成す術がない。

私は、思わず自身の()を無意識の内に閉じていた。



「…っ…あ…!!」

「エセル…!!」


魔族との戦いのさ中、全く予想外の事が起きる。


ワシ——マリアーノは、その事態を目の当たりにして動揺を隠せなかった。

ワシに剣を投げつけた直後、音魔法を行使したエセルの目の前にたどり着いたラゴウは彼女を斬り殺しはせず、剣を握っていない手で首を締めあげるように掴みあげたのだ。

下半身に蛇の身体を持つ事で通常の魔族より大柄だったラゴウの腕は、エセルを軽々と顔付近へと持ち上げる。


「…ひとまず、捕獲成功…か」

「貴様…!!その娘を離せ…!!!」


敵の台詞(ことば)を遮るかのように、ワシは声を張り上げた。


強気な口調で言い放っているが、内心ではとても焦っていた。ドワーフは手先が器用なため武器防具の作成が得意であり、使い方も熟知している。故に、武器を持って戦う事にも長けているため、雑魚程度の魔物ならばほとんどの村民は倒せるだろう。しかし、三刀流もしくは四刀流の魔族と渡り合える同胞は、ワシを覗くとあまり多くはいないからだ。

また、敵に捕まったエセルの表情は、首を絞められている事もあって相当苦しそうな表情をしている。そして、その一つの行動が魔法による反撃を防ぐ意味もあるのだろう。


「わかっているとは思うが…。戦士マリアーノ、それ以上動かない方がいい」

「くっ…!!」


ラゴウは、持っている剣の切っ先をエセルの後頭部に近づける。

言葉にはしていないが「下手な動きを見せたらこの娘の安全は保障しない」という意思が、明白だった。


 こういう時、スルタンやザックがいれば…!!


ワシは、この場に他の仲間がいない事が悔しくて仕方なかった。

スルタンであれば僧侶の魔法で敵の隙を作りだし、ワシはザックと共に敵へ攻撃を加えることもできただろう。己の不甲斐なさを恥じる一方————ワシの脳裏に、嫌な仮説が生まれる。


「…ラゴウ様、お疲れ様です!」

「なっ…!!?」


しかし、自身の斜め後ろの方から響いてきた声を聴いた直後、脳裏に浮かんだ思考は一瞬にして吹っ飛んだ。


それはおそらく、この場にいる他の同胞達も同じであろう。

ゆっくりと確実に後ろから歩いてきたのは、ワシの叔母にあたるドワーフ———パウラだった。


「パウラ…どうしてここに!!?」


戦いを見守っていた同胞の一人が、パウラが何故この場にいるかを問いかける。

普段なら、訊かれればすぐ答えるだろう。しかし、今ワシの目の前にいる彼女は全く答えなかった。


「そなたもな」

「…あぁ、ラゴウ様!そんなに首を絞めては、窒息死してしまいますよ!生きたまま連れて行かなくてはいけない訳ですし、その()には眠ってもらった方がいいと思いますよ」

「…それもそうだな」


エセルを捕えている敵の前まで歩いてきたパウラは、ごく当たり前のようにラゴウと会話をしている。

その光景が信じられず、ワシは声が全く出なかった。


「…っ…!!」

「エセル…!!」


しかし、ラゴウが剣の柄でエセルのうなじを突いた直後、ワシは我に返る。

その一瞬で気絶したエセルは、剣を持っていない手を使って抱き上げられていた。


「あ、そうそう。もうこんな格好している必要はないんだった!」


あまりにも飄々とした態度で話す”パウラの姿をした誰か“は、ワシや他の同胞の方に向き直る。


「な…!!」


パウラの姿形をした者は、一瞬にして別の姿へと変貌した。


背格好はドワーフよりは少し大きい只人の子供くらいの体型で、頭上に2本の小さな角がある魔族だったのだ。即ち、ワシとエセルが村にたどり着いてからずっと、この偽パウラと行動をしていたという事になる。


「お主…本物のパウラを、どこへやった!!?」


ワシは、魔族達に本物のパウラの安否を訊きだそうとする。

すると、子供姿の魔族はフッと哂ってから口を開く。


「おじさん達ドワーフは、肉も頭も硬いのかなぁ?土の精霊共が魔族(ぼくら)や魔物の侵入に反応するのは知っていたから、当然村人に化けたんだよ。で、人族に成りすます時って、大体は自分が食べた人肉に残る魂の情報を元に化けるにきまってるじゃん!」

「…!!!」


ごく当たり前のように敵は答えていたが、嫌な予感が的中した事でワシの顔面は真っ青になる。


 “食べた人肉”…。じゃあ、本物のパウラは…!!


「貴様らぁぁぁぁっ!!!」

「マリアーノ!!落ち着け…!!!」


ワシは、怒りのあまり敵に立ち向かいそうになったが、近くにいた同胞が無理やり止めてくれた事で事なきを得る。


両親を幼くして亡くしたワシにとって、叔父夫婦は唯一の身内だ。最も、パウラの場合は血のつながりはないものの、ワシにとっては母や姉のような存在であった。そんな人物が、食い殺された——我を忘れて激昂するには、十分な理由だった。


「目的を達成した以上、もうこの村に用はない。…帰還するぞ」

「はい!」


ラゴウは、子供姿の魔族に早くこの場を去ろうと促す。

そうして瞬間移動の魔法陣を描き始めた時、エセルを抱きかかえたラゴウはこちらに視線を落とす。


「何故、この娘を捕えたかは言えぬが…。ひとまず、食べるためではないとだけは告げておこう。そして、エルフの里へ向かった我が同胞達も同じことを申しているかもしれん」

「何…!!?」


最後の方でかなり大事なことを告げた敵に対し、ワシは思わずしかめっ面をする。


 まさか、スルタンらのいるエルフの里も、魔族の襲撃を受けている…という事か…!!?


そうして思考を巡らしている間に、エセルを連れた二人の魔族は瞬間移動の魔法陣を使ってドワーフの村を去っていくのであった。



いかがでしたか。

まさかの、怒涛の展開。

そして、前回のスルタンに引き続き、エセルの方でも音魔法が登場しましたね!

魔法使い向けに教わったこの魔法、原理は全く異なりますがなろう発の某作品を参考に考えたものになります。なろう発で魔法が使われる作品はそれなりにあると思いますが、メディアミックスを果たしている作品となると限られてくるでしょう(笑)

因みに、今回敵として登場している魔族・ラゴウは某少年漫画に出てくる魔族を参考にしてます。

さて、何故エセルが魔族に拉致されたのか?

また、同じく魔族の襲撃を受けたザック達の安否は如何に!!?

そろそろ新章に切り替わるかもしれません。。

次回もお楽しみの★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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