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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
音楽の旅路編

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19/45

結界魔法で隠された村

「すごい霧…」


私は、周囲を見渡しながら呟く。


塔の形をした遺跡を出た私達は、“ムジカ・デラフィーネ作曲者の出身である村”を捜すべく、遺跡から1日ほど歩いた場所にある山道を登っていた。

途中までは普通の山道だったが、進んでいく内に周囲を霧が立ち込め、少し先の木々が見えないくらいになっていたのである。


「おい、耳長!本当に、この辺りに村があると…?」


あまりの視界の悪さに対し、マリアーノが不平不満を口にしていた。

それもそのはず———白い霧が立ち込めているという事は、魔物や魔族の気配も探りにくいという事だ。魔族達(やつら)はいつ何時に人族を襲うかわからないため、冒険者は常に敵がいないかを警戒しなくてはならないからだ。


「えぇ。同胞による、確かな筋の情報よ。多分、そろそろ…」

「うわっ!?」


スルタンがその先を口にしようとすると、私達の顔面に強い風が一瞬でぶつかる。

ある意味突風だったそれに対し、ザックは瞳を瞬時に閉じながら声を出していた。


 …何か、音が聴こえた…!!?


閉じていた瞳を開いた私は、突風が顔面を通過した際に何か聞き覚えのあるような音が聴こえた気がしていた。

腕を組んで考え事をしていると、それを目撃したスルタンが口を開く。


「エセルは、何か音みたいなのが聴こえたみたいね」

「音…?ワシには、風の音しか聴こえんかったが…」


スルタンが感心していると、その側でマリアーノが首を傾げていた。


「…スルタン。同胞から届いた手紙には、村を捜すためにすべき事とかは書いてないの?」

「…“この場所を訪れる”こと。そして、“周囲の音をよく聴いて聴こえる音に対して、楽器を奏でる”の2つだけね」

「成程…」


私がスルタンに問いかけると、依頼の手紙に書いてある内容を教えてくれた。

返答を聞いた私は、再び口を閉じて周囲の音を聴き始める。


 風に紛れて、何か音が流れているって事…?注意深く、注意深く…


私が瞳も閉じたまま黙り込んだため、仲間達は私が周囲の音を聴いているのだと察したらしい。そのため、数分間ほど沈黙が続く。


 あ…


私の耳に、かすかにだが風の音に交じった音が響いてくる。

それに気が付いた後の行動は早く、遺跡で手に入れたアルトサックスを収納魔法にて取り出して構える。

踵を地面につけたまま、右足のつま先で何回か地面をたたく。これは身体でリズムを取る時に行う典型的な行動で、リズムを刻むメトロノームがない時、アンサンブルやセクション練習等を行う際によくする仕草だ。楽器と同時に出現したシングルリードを吹き先に取り付け、身体でとったリズムを刻みながら音を奏で始める。


「ほほぉ…。これは、なかなか…」


サックスのベルから音が聴こえ始めると、その吹いている様を見たマリアーノが感心していた。


しかし、スルタンが黙ったまま人差し指を口に当てたことで「静かにして」のジェスチャーと理解したマリアーノは、すぐに口を閉じた。

一方で、ザックは黙ったまま私の演奏を聴き入っていたのである。


「…!!!」


その後、私達は目を見張った。

演奏を続けていく内に霧が晴れ、村が現れたのだ。今まで目にした事のない現象だったため、この場にいる全員が目を見開いて驚いていただろう。


「この霧も…。魔法で生み出された結界の一部だった…という事か」

「そうみたい…ね」

「それにしても、ビブラートを用いた演奏が“回答”だったとは…。この徒党(パーティー)に、エセルがいてくれて助かったわ」


出現した村に対してザックや私が語る一方、スルタンは私がアルトサックスで演奏した曲について語っていた。


因みにビブラートとは、歌や演奏において音を上下に揺らすテクニックの事を指す。

私達4人の内、マリアーノ以外の3人が持つ楽器はいずれもビブラートをする事が可能な代物だ。しかし、楽器によってビブラートのかけ方は異なるため、ザックやスルタンは今のところ習得していないようだ。

だからこそ、スルタンは「私がいてよかった」と述べたのである。


「演奏方法のことも然り、エセルはよく結界に使われた曲が“それ”と解ったのぅ?」

「曲名はわからないけど…。もしかしたら、若い頃に演奏した数多の曲のいずれかだったから演奏できたのかもしれないわね」


マリアーノから話しかけられた時、自分でも何故演奏できたのかが解らなかったため、少し曖昧な返答をしてしまう。


「ひとまずは、行こう。どのような村かよく分らんが、警戒されている可能性も捨てきれない」

「そうね」


ザックやスルタンの台詞(ことば)を皮切りに、私達は村へと足を踏み入れる。



村の建物が見えてくると、周囲では走り回って遊ぶ子供や家の前を掃き掃除する老婆の姿などごく普通の村の雰囲気だった。


 ただ、村の空気に交じってほんの少し魔力が溢れているのを感じるな…


私は、周囲を観察しながらそんな事を考えていた。


「お待ちしておりました」


すると、私達の前に村人と思われる女性が現れる。


ザックが少し警戒した表情を見せると、現れた女性はそんな彼を一瞥してから口を開く。


「まずは、村長がお待ちしています。そして、ウルヴェルド様より貴方がたのことは伺っていますので、そう警戒なさらずに」

「えっ…!!?」


穏やかな笑みを浮かべながら、女性は私達を案内するために背を向けた。

しかし、最後の方で口にした台詞(ことば)に驚いた私は、少し緊張した面持ちでその後をついていく事になる。



「さて…。目隠しの結界魔法を“正しく”解除する者が現れたのは…実に、300年ぶりくらいじゃな」


村長の家に案内されると、そこには100歳超えていそうな老人が私達を出迎えてくれた。


この村の民家に入ったのはこれが初めてだが、周囲には楽器や楽譜のような物が家具に混じって置かれていたのが目に入る。


「“正しく”…という事は、無理やり解除する事もできたのか?」

「一応な。じゃが、無理やり解除した者には五体満足とはいかないようになる反撃の魔法がかけられておる」


マリアーノが何気なく問いかけると村長は答えてくれたが、その内容は結構不穏な内容だった。

そのため、私やスルタンは血の気が引いたような表情を浮かべていたのである。


「気を取り直して…。そこにエルフの者もいるようじゃし、この村へ参った理由などを伺おうかの」

「…では、エルフの里長より賜った内容を伝える」


村長がスルタンを一瞥すると、それに応えるかのようにスルタンは男性口調でこの村を訪れるきっかけとなった同胞から届いた手紙の内容を一部話し始める。

法の神殿で話を聞いた時はほんの概要だったが、エルフの里側からこの村の長に対して伝言のようなものがあったらしい。

内容としては、①ムジカ・デラフィーネが作曲された経緯を聞き、現在の所在を教えてほしい。②“名もなき楽譜”の所在について③スルタンや私に音魔法を伝授してほしい————という、3つの内容だった。


「“あの曲”の作曲経緯については、私も知りたかったし納得できる内容だけど…。“名もなき楽譜”って…?」


スルタンが村長に伝える中、私は途中で会話に入ってくる。


すると、村長が口を一瞬つぐむ。私達を案内してくれた女性が村長の側に控えていたが、長の様子を見て何かを察したようだ。私達の方に視線を向けて、口を開く。


「すみませんが、貴女…。風貌から察するに、魔法使いですよね?音を遮断する魔法の心得は…」

「もちろん、あるわ」


私は「この魔法を使用する機会が多いな」と思いながら、すぐに音が周囲に聴こえにくくなる魔法をこの部屋全体にかけた。


その様子を見守っていた村長は、一呼吸おいてからゆっくりと口を開く。


「エルフの方々は、そのあたりの情報を掴んでおったのじゃな…。だがしかし、“名もなき楽譜”は残念ながら…この村にはなく、所在もわからんのじゃ」

「それって、よほど重要な楽譜なのか…?」


村長の返答に対してスルタンが遠い目をする一方、私と同様それがどんな物か解らないザックが会話に入ってくる。


「その楽譜はな、ムジカ・デラフィーネがもたらす効果を相殺し、最終的には楽譜を消滅させるための…いわば、“運命の曲”じゃ」

「なっ…!!?」


村長からの返答に対し、ザックは目を見開いて驚く。

しかし、それは私やスルタン。マリアーノも同じだった。


「因みに、今わかっている話でいうと…。“ムジカ・デラフィーネ”と“名もなき楽譜”…。作曲者は違えども、2曲ともこの村出身の者が作り上げているんですよ」

「そういえば…」


村長の側で控える女性が口を開いた事で、私は村の入口で話しかけられた時のことを思い出す。


「少し、話が逸れるのですが…。先ほど、運命の女神・ウルヴェルドと面識があるような物言いをしていましたね。…貴女は一体、何者ですか?」


私は、少し疑いの()でその女性(ひと)を見つめる。

対する女性は、「そんな事も言ったかもしれない」と言いたげそうな表情をしていた。


「…では、その件も含めて順を追って話そうかの。順番が違ってしまうと、何を話して何を話しておらんか…解らなくなるからな」

「うむ、頼む」


双方の空気が少し張りつめているのを察したのか、村長は穏やかな表情を浮かべながら話す。

それを垣間見たマリアーノが、元気そうな声で応えていたのである。


この後、村長と付き添いの女性から、村の外では話せないような多くの事をその口から聞く事になるのであった。


いかがでしたか。

今回は、演奏技法として有名なビブラートが登場しましたね。

作中でエセルが述べた「どの楽器もビブラートかけれる」というのは割と一般論ですね。

余談ですが、皆麻が学生時にやっていた吹奏楽ではサックスを含む木管楽器の方がビブラートかけやすいように見受けられました。金管楽器は確か、物理的に何かしてビブラートを出す場合が多いですしね。

さて、長くなるのでここいらで割愛しますが…

次回は、エセル達の旅の目的であるムジカ・デラフィーネについて語られます。

運命の女神・ウルヴェルドと面識のある女性の件も、気になりますよね。

お楽しみ★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


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