塔の遺跡内部
「あそこにあるのは、エレベーター…?」
以前訪れたダンジョンで見つけた鉱石のおかげで、私達は塔の遺跡内部へ入ることができた。
この台詞は、内部を観察した時に私が発した言葉だ。
古い建物なのであちこちで埃や汚れは当然あるものの、予想していた内部と比べるとだいぶ綺麗な印象だ。入口入ってすぐのこの場所は、日本の高層ビル等にあるエントランスのような場所だろうか。少し類似したような空間は、結構な広さを感じる。
「エセル。エレベーターとは、なんじゃ?」
「人が数人入れて動く箱…と言えばいいのかな。今回みたいな高さのある建物の上層部を目指す際、エレベーターに乗っていくと階段を上り続けるよりも楽なのよ!」
「この世界だと、転送装置や転移門と似たようなジャンルかもね」
「あれがエレベーターだとすると…。この世界にも、はるか古代辺りで俺達がいた日本みたいな技術があったのかもな…」
マリアーノに問いかけられて答えると、そこからスルタンの補足やザックの呟きが入ってきた。
一通り会話を終えた後、周囲に魔物や魔族がいないか警戒しながら、先へと進む。そうしてエレベーターの元へたどり着き、中へ入ってボタンを押す。
「最上階はー…って、これって本当に最上階なの…!?」
エレベーター内部にあるボタンを押した時、スルタンが不思議そうな表情をしながら首を傾げる。
「おそらく…エレベーター1台では最上階が無理とかで、もう一台乗り継ぎをしろって事なのかもな」
「成程のぉー…」
ザックがその台詞に応えると、マリアーノが感心していた。
そんな中、無事に動きだしてエレベーターは私達を上へ運んでいく。
多分、皆感じていると思うけど…。上へ向かっていく内に複数の魔力を感じ取った。数からして、他の冒険者達が徒党を組んでいるんだろうけど…。どうか、魔族や魔物ではありませんように…!
皆が緊張した面持ちでエレベーターのドアを見つめる中、私も考え事をしながら同じような面持ちでその場に立っていた。
「わっ!?」
「ギャッ!!?」
最初のエレベーターが目的の階へ到達し、ドアが開いた直後にお互いが声を張り上げていた。
「やぁー、すまんすまん!周囲を探索していたら、エレベーターが動いている音がしたから警戒しちまって…」
「…まぁ、乗ってくる奴が話の通じる奴でない可能性もあるしな…」
私達全員がエレベーターを降りた後、声を張り上げた男性の冒険者は苦笑していた。
対するザックも、相手に悪気がないのはわかっていたので、普通に応答していたのである。
上の階で遭遇した冒険者は、二人だった。一人は今ザックと会話していた剣士で、魔法剣士という魔法と剣術を両方使えるらしい。そうしてもう一人の冒険者は、フードを被った男性の魔法使い。魔法剣士曰く、道中で偶然出逢い目的地が一緒なので臨時の徒党を組んだようだ。
エレベーターに乗っている時に感じていた魔力は、この二人の魔力だったのね。感じた魔力量に差があったのは、片方が魔法剣士という特殊な職業だったからかな…?
私は、ここで出逢った冒険者達を観察しながら考え事をしていた。
「君らはさしずめ、この遺跡にあるであろうお宝目当てかい?」
「もちろん。冒険者たるもの、冒険してお宝を探し出すのは日常茶飯事さ!」
「…それにしても、この遺跡へ入るのには苦労したのではないかの?」
「…あぁ。それについては偶然、彼が鍵となる鉱石を持っていたのですよ。貴方達もそうですよね?」
初対面なので男性口調で話すスルタンと魔法剣士が会話し、マリアーノが扉のことを尋ねると、男性魔法使いが答えてくれた。
「…因みに、この遺跡にあるお宝が何かは知っているの?」
途中、私も彼らの会話に入り込む。
すると、魔法剣士と男性魔法使いは私を見て一瞬驚くが、すぐに元の態度に戻って話し出す。
「流石に、わからん。まぁ、入口の仕掛けがあんなかんじだったから、古代の音楽関係のお宝だろうな!」
「お宝が楽器だったら、売るの…?」
「んー…物によるかな。もしかしたら、演奏できるかもしれないし」
「かもしれない…?」
以前にあった出来事を考えながら私が問いかけると、魔法剣士は一瞬考えてから答える。
そして、その回答の曖昧さにザックが反応する。
「出身地の村にて音楽の座学少しはやったんだが、どうやら俺は他の奴らよりも音感があるらしい」
「…そう」
魔法剣士の台詞に対し、スルタンが元の女性口調に戻ってしまったところでこの会話は終了となる。
せっかくだからと、会話を終えた私達は遺跡の奥まで共に進んだ。お宝が盗られる危険性も捨てきれないが、皆で協力した方がよいという状況もあるかもしれない。そんな打算を皆が考えながら進んでいくと、まさに協力が必要になる場面に遭遇する事になる。
「石人形か…おそらく、“核”はあそこじゃな…!!」
敵を見据えたマリアーノが、声を張り上げる。
奥へ進んでいくと、最上階へ繋がると思われるエレベーターを見つける。しかしその前には、石でできた巨大なゴーレムが門番のように立ち塞がっていた。
おでこっぽい部位に、ゴーレムの核がある…。でも、あんなに大きくて激しく動く敵をどう仕留めれば…!!?
私は敵を観察しながら考えていると、不意にどこか一点を見つめるザックを見つける。
「ザック…?」
私が声をかけると、彼は我に返ったような表情になる。
「いや、“ザック本人”が見つけたんだ。あそこにあるの…古代楽器とやらじゃね?」
そう口にしながら、ザックは指さす。
彼が指さした先は、ゴーレムが突っ立っている場所の左端にある壁際だ。確かに目を凝らしてみると、ギターやドラムのような楽器が置かれている。
「皆さん、これ…!」
すると、男性魔法使いがすぐ目の前に“P”と刻まれたボタンを発見する。
それは、遺跡の入口で見かけた物と一緒だった。
「そのボタン、押してみてくれ!」
「は、はい…!」
魔法剣士も入口にあった物と気が付いたようで、すぐに男性魔法使いへ押すように促す。
ボタンを押すと、入口で聴いた曲とは全く違うものが流れる。
アップテンポの曲…。ジャンルはロックに近い…。あれ、でもこの曲…
周囲から響いてくる曲は、先程と打って変わって音程はずれていない。そして、ゴーレムが流れてきた曲に反応しているのを目視した後、私は何か足りない事に気が付く。
「この曲、楽器が少し足りない…?」
「…彰彦曰く、ギターとドラムの音が足りないそうじゃ」
「マリアーノ…!」
曲を聴いた時に感じた違和感を私が口にすると、思いがけないところから返事が返ってくる。
「という事は…。俺と彰彦があの楽器を演奏することで、曲が完成するって事か。だが、俺らが抜けると前衛が…」
この後するべき事を悟ったザックだったが、問題があることも気づいていた。
それは、前衛であるザックとマリアーノが楽器演奏をするとなると、後衛である私とスルタンだけでは戦いづらいのだ。
「…ならば、ゴーレムを引き付けるのは、俺が引き受けるよ!なので、剣士の兄ちゃん戦士のおっちゃんが楽器演奏やらをしてもらって、嬢ちゃん達は俺の援護を頼めるかな?」
「あぁ、任せてくれ」
状況をすぐに察したのか、魔法剣士が敵を引き付ける役割を買って出てくれた。
それに答えたのは、すっかり男性口調に戻ったスルタンなのである。
後衛も一人増えるから、頼もしいわ…!!
私は、出逢って間もない二人の冒険者に対して感心しながら、改めて敵の姿を見据えるのであった。
いかがでしたか。
さて、今回もバトル前に終了になってしまいましたね…。
書き続けることもできるのですが、ページ配分を考えると、このへんで区切るのがよいかなと思った次第だす。
今回は、モブですが臨時で仲間が増えた展開になりましたね。次回は、ザックとマリアーノによるバンドセッション的な展開をしつつ、エセル達が戦う展開になりそうです。
次回もお楽しみ★
ご意見・ご感想があれば、宜しくお願いいたします。




