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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
諸国の旅路編

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14/45

法の神殿より呼び出されて

「…その曲、何ていう曲…?」

「んー…?」


私は、冒険者になってからのとある夜に転生前―—————寛として生きてきた頃の夢を見ていた。

生前にいた夫とは音楽という共通の趣味を持ち、お互いが自分の楽器を持っていた。

夫のアコースティックギターはともかく、私が持っていたアルトサックスは、騒音の都合上自宅で演奏できないため、時折仕事が休みの休日にカラオケボックス等で弾いたり吹いたりしていたのである。

この会話はその時、夫がハミングをしながら何気なくギターを弾いていた時のものだ。お互い音楽の好きなジャンルを把握していたため、彼が何気なく演奏していた曲はこれまで聴いた事がない(もの)だ。


「この曲は…」


彼がその先を口にしようとした直後に夢が終わり、私は()の内容を忘れてしまうのであった。



「こんにちは、エセルさん」

「こんにち…は?」


カルラ率いる魔物達の討伐依頼を終えた翌日、私達が泊まる宿屋の一室にギルドの受付嬢が訪ねてきた。

彼女の手には、1通の手紙が握られている。


「…ギルドの受付嬢が、何の用だ?」


寝起きで不機嫌そうなザックの辛辣な物言いが、部屋内に響く。


「寝起きのところ、すみません!今朝、ギルド宛てに手紙が届きまして…。僭越ながら内容を確認させて戴いたところ、エセルさん達一行宛てと判明しましたのでお届けに参りました」

「届けてくれてありがとう、お嬢さん。あの坊やは独り寝坊しただけだから、気にしないでくれ。…ギルドへ先に届いたという事は、一見しただけでは誰宛てか解らなかったという事で間違いないかな?」

「はい、そうですね!では、中身を確認して戴き、おそらくはギルドへお越し頂く事になりそうです」

「了解した。では、確かに受け取ったぞい」


受付嬢が手紙の説明をし、それにスルタンが男性口調で応え、マリアーノが手紙をしっかりと受け取った事でその場の会話は終了した。

受付嬢が部屋を去った後、私達は渡された手紙の封を切る。


「えっ…」

「なんじゃこりゃ…!?」


すると、先に手紙を読み始めたスルタンとマリアーノが目を見開いて驚く。


「私にも見せてー」


その驚きように対して不思議に思った私は、彼らから手紙を受け取ってから読み始める。

読む時、いつの間にかザックが私の横に来ていた。


私達宛てに届いた手紙の内容は、こうだった。

“魔王軍の残党討伐任務に参加する冒険者の中で、隣国の高等学院出身の魔法使いと剣士。及び、エルフの僧侶とドワーフの戦士がいる徒党にお願い申す。法の神殿にて、大司教様にお会いになってほしい。遣いの者と馬車を寄越すので、神殿までの足として利用すること。用件については、下にある文字が解読できればわかるであろう”


 この手紙を書いたのはおそらく、法の神殿にいる司祭とかの下っ端だろうな…。そして、スルタンとマリアーノが驚いた理由は…


私は、手紙を読み進めながら、二人が驚いたであろう文面を見る。


「これは…!!?」

「筆跡が、最初の文と異なる…。ということは…!!」


手紙の下の方に書かれた文面を読んだ時、私とザックも目を見開いて驚く。


そこに書かれていた内容としては、“自分が仕える雷神・トージンがお主らの知る運命の女神・ウルヴェルドより言伝を得ている。また、私も君達同様、転生者である”という文面だった。内容と同時に、その文面だけが私達転生者が知る日本語で書かれていた事に対して驚いていたのである。


「仕える…という事は、最後の文面を書いたのが依頼者に当たる大司教なのじゃろうな」

「エルフの里で聞いた事あるんだけど…。確か、法の神殿にいる大司教は代々雷神・トージンに仕えていて、有事の際にはトージンが大司教を依り代として神々の言葉を人族に伝えるらしいわ」

「日本でいうところの、巫女のような存在かもね」

「そんなかんじだな」


手紙を読み終えた私達は、各々が内容について語る。


「他の神が、ウルヴェルドから伝言を頼まれているというのも、気になる所よね…」


私がその場で呟いた後、その場にいる全員が少しの間だけ考え事をする。


「ひとまず、身支度を終えたらギルドへ向かおうかの。ギルドの受付嬢(じょうちゃん)の言い方から察するに、遣いの奴はギルドに顔を出すであろうからな」

「そうだな、すぐ仕度するか…」


しかし考えてもそれ以上の答えが出ない以上、行動を起こすしかない。

マリアーノや溜息まじりで呟くザックの台詞(ことば)を皮切りに、私達は身支度をして宿屋を後にする。




「おぉ…大きな街…!!」

「法の神殿のお膝元だからかもしれないわね」


それから数時間後―——————————身支度をしてギルドへ向かうと、予想通り神殿から来た使者達と遭遇。そのまま馬車に乗せてもらい、法の神殿があるという城塞都市へ向かう。

馬車の後輪辺りから外の景色を覗くと、大きな壁が周囲を囲んだ都市が見える。少し離れたこの荒地から見ても全体がよく見えるという事は、それだけ規模の大きな都市だろう。もしかしたら、私が住んでいた国の王都ぐらい大きな街かもしれない。


「到着しましたぞ」

「助かった」


そこから都市の入口を通り、法の神殿の前で私達を降ろしてくれた。

ザックが御者に挨拶をすると、私達を乗せていた馬車は元来た道へと戻っていく。おそらくは、馬車を停めている位置が決められているだろうから、そこへ戻ったのかもしれない。


 地球で言うところの、ギリシャやローマにありそうな建造物って雰囲気ね…


馬車を降りた所から神殿の中へと、私達は足を踏み入れる。

法の神殿は、雷神・トージンを祀り法に纏わる施設が集まっている場所のため、中はとても広い。聞くところによると、裁判所みたいな施設があったり、世界各国の王族が一生に一度は必ず訪れるというくらい政治的な意味合いの強い場所らしい。


「あら…?」


奥へ進んでいくと、雷神・トージンを模したと思われる銅像が存在する祭壇のような広間へと到達する。

その銅像の付近に、一人の女性らしき人影を見つける。その人物は、私達の存在に気が付いたのか、こちらを振り向いた。


「あ…!あの…大司教様と、見受けられるようですが…」


私は、相手の目を見た途端、しどろもどろになる。


それもそのはず――――――――――――法の神殿の大司教とは、日本でいうところの企業の代表取締役みたいに一番偉い人だからだ。

この世界にビジネスマナーなるものは存在しないだろうが、上の立場の人と話すのはどうにも慣れていない私であった。


「えぇ、そうですよ。あら、もしかして貴方達…」

「左様、わしらは先日貴殿より文を頂戴して、参上した」

「お初にお目にかかります、大司教様…」


女性は私達が何者か気付いたらしく、それを見計らっていたのかマリアーノやスルタンが挨拶をする。

お辞儀をする二人に倣って、私やザックもお辞儀をする。


 (わたし)ですらこうだから…高校生だった雪斗(ザック)辺りは、本当に緊張していそう…


私は、大司教に対してお辞儀をしながらそんな事を考えていた。

その後、お互いに形式的な自己紹介を終えてから、本題へと移る。


「俺達に送って来た手紙…。最後の方に記された、文面…。あれの意味と、今回俺達を呼び出した理由を教えてほしい」

「そうですね。では…」


真剣な眼差しで述べるザックに対し、大司教はその場で瞳を閉じて一呼吸を置いてから口を開く。


「改めまして、私は結奈(ゆいな)。貴方達と同じ転生者で、今はこの法の神殿で大司教をやっているの」

「…!!」


大司教が転生前(いぜん)の名前を名乗った事で、彼女も転生者である事を私達は再認識する。

そして、最初の敬語は大司教としての態度だったことが今の話し方で解った。


「私自身の事は、ひとまず置いておくわね。今回、貴方達を呼び出した理由も手紙に書いた通り、大司教(わたし)が仕えるこの世界の神・トージンが運命の女神・ウルヴェルドから伝言を頼まれたのよ。ただ、雷神曰く…神々はこの世界の生物に干渉するには、ちょっとした“縛り”があるらしいの」

「“縛り”…?」


大司教が一気に話し出したところ、私は首を傾げながらそこで出てきた単語を口にする。

すると、彼女は首を縦に頷いてから話を続ける。


それによると、この世界の神々がそこで生きる民へ干渉するのは、一定の人物や物以外はしていけない決まりがあるらしい。この神殿の大司教が雷神・トージンに仕えてその言葉を人々へ伝えるように、他の神々もその加護を持つような人族や物体に対してのみ干渉ができるようだ。


「という事は…。ウルヴェルドが人族に干渉する術があまりないから、雷神を通して私達に何かを伝えようと」

「そういう事!…ってか、貴方って外見が男性(それ)で中身が女性って、ニューハーフみたいね…!」

「言っておくけど、“本来のスルタン”は男よ。ただ…結奈だったら、別に男言葉使わなくてもいいかなーって思ってね」


大司教の説明を聞いたスルタンが、内容について反応する。

そこで同調する大司教は、スルタンと転生者らしい会話を繰り広げていた。


「お呼びでしょうか」


ある程度会話が進んだ後、大司教は近くに置いていた小さなベルを手にしてその音を鳴らした。

すると、神殿の人間が二人程現れて、彼女の前で首を垂れる。


「私は、トージン様を“お迎え”してから向かうので…。彼らを、“過去世(かこぜ)の鏡がある部屋”へ先にお連れして頂戴」

「大司教様…!?」

「あ…あの場所は、本来は世界各国の王位継承者のみが出入りする場所…。それを何故、一介の冒険者なぞを!?」


結奈が命を下すと、二人の部下はかなり驚いていた。


 “世界各国の王位継承者のみ”…?何だかその話、どこかで聞いた事あるような…


私は、大司教とその部下達の会話に耳を傾けながら考え事をしていた。


「確かに異例の事態ですが、全てはトージン様からの命ですよ。故に皆様、先程お伝えした部屋にて雷神・トージン様と会話してもらいます」

「成程な…。という事は、そのなんちゃらの鏡がある部屋へ向かうには目隠しでもした方がよいかの?」

「…話が早くて助かります。そうですね、本来一般人は立ち入る事が許されない場所なので、場所を知られぬよう目隠しをして移動して戴きます」


大司教の説明に納得したマリアーノは、話ながら彼女の部下達に視線を向ける。

説明する前に察してもらえた事で、この部下である人達もため息交じりで上司の提案を受け入れる事にしたのだろう。


「…私が、どのようにして神をこの身におろしているか…。これについても企業機密なので、私は後から行きますね」

「わかった。ちなみにその部屋で、何をするんだ?」


企業機密という単語(ことば)をすぐに理解したザックは、大司教の提案に同意する。

それと同時に、私や他の二人も考えていたであろう事を彼は代弁してくれた。


「詳しくは、あとでトージン様からも聞けると思うけど…」


大司教は、そう口にしながら私の方に視線を向ける。


「貴方達の中で、エセルさん…。貴女の転生前の記憶を、いくつか思い出してもらいます」

「なっ…!!?」


そう告げる大司教の瞳には、目を見開いて驚く私の顔が映り込んでいるのであった。


いかがでしたでしょうか。

今回は、寛だった頃の夢の話から始まり、大司教に呼び出されたり新たな転生者が現れたり…と、怒涛の展開でしたね。

因みに、作中で出てきた“過去世”とは、仏教用語で「過ぎ去った世」や「前世」を意味します。

実は、皆麻の過去作品でも使用したことのある単語で、使うのはかなり久しぶりだなぁと(笑)

この法の神殿でのお話は魔族や魔物とのバトルのないエピソードですが、今後の展開に決行な意味を持たせそうなかんじはあるかもしれません。

なので、もう少しお付き合い戴ければなと。

次回もお楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します<(_ _)>


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