合同作戦
自分の鑑定スキルって、こんな使い道もあるんだな…
私は、歩きながら考え事をしていた。
宿屋で一泊した翌日―————————魔族・魔物退治の依頼を請けた複数の徒党は、街の所定の場所に集合し、敵のいる村へと徒歩で向かっていた。
自分以外の人族がどんな人物か、転生者か否か等の人や物の情報がわかる「鑑定」スキル。ウルヴェルドに言われていた転生者達を集め終えて以来使っていなかったため、久しぶりに発動させたという具合だ。
そこで見えたのは、どの人物が同じ徒党であるかという区別がつく記号のような物体だ。
今、私の瞳に映っている他の冒険者達の頭上には、徒党の何かを象徴するような物でかたどった物体がある。その物体は、その近くを歩く何人かの冒険者同士が同じコマンドを持ち、それすなわち同じコマンドの者同士が同じ徒党であることを示していた。
あれ?あれって…
すると、私は一つの徒党の頭上に浮かぶ物体が目に入る。
その冒険者達の物体は、剣の形をしていて周囲に光の粒らしきものが見える。他の冒険者達のコマンドが逆三角形や星といったわかりやすい形に対し、その剣が見える冒険者達は、単純そうで少し細かい造りをしているようだ。
何だろう…どこかで見た事あるような…?
私は、その物体を初めて目にしたはずなのに、どこかで見た事があるような―――――――――所謂、デジャブを感じていた。
しかし、歩きながら考えていたがすぐに答えは出ず、今はこれから起こる事に集中しようと考える事を止めた。
ただし、この件に関する真相については、しばらくあとで知る事になる。
「まもなく、目的地へ到着する!各自、事前に伝達した陣形になってから村へ突入する!!」
目的地である村が遠目に見えてきた辺りで、今回の指揮をするちょび髭のある戦士が私達に指示を出す。
今回、この髭のある冒険者を筆頭に8つ程の徒党が参加している。
トータルで30人前後かぁー…。これをまとめあげるなんて、すごい奴もいるんだなー…
私は、事前に指示のあった場所へ移動しながら考える。
「エセル、またあとでね!」
「うん、またあとで!」
動く際、私はスルタンと一言交わしてから動き出す。
この作戦において、自身の職業によって立ち位置が変わる。攻守整っている私達の徒党は、必然的に4人が別行動となるのであった。
…ひどい有様…
あれから目的地の村へ到着し、まず目にしたのが空気に交じって感じる血や死骸の腐臭。そして、食い散らかされた村人のむごたらしい姿だった。
建物は窓ガラス等の一部は割れていて破片が飛び散っていたりするが、建物自体の崩壊はほとんどない。
しかし不思議なのは、村を襲った狼及びそれを従えている魔族の姿が見えないことだ。私は、不思議に感じながら他の冒険者達と共に、所定の位置へと移動していた。
「…俺様は、灼熱のアズークス様の配下・カルラだ。思いのほかたくさん来たな!!」
「!!」
村の中心部に当たる小さな広場みたいな場所にて、その魔族がいた。
着ている服は村民のを奪ったのか、人間とさして変わらないような服を身に着けている。
このカルラいう魔族は、頭上に二本の角がある男の魔族だ。そして、周囲には10数匹の狼がこちらを見据えていた。
因みに、”灼熱のアズークス”とは、かつて魔王直属の部下だった大魔族・四天王の内の一人だ。この四天王と呼ばれる4人の魔族は、古代の戦いおいて内2人は勇者一行よって倒されている。そのためカルラは、この倒された大魔族のかつての部下といったところか。
「あれは…!!?」
「おいおい、まじかよ…!」
標的を目にした冒険者達は、次々に驚愕する。
それは、同じく前方にいたザックとマリアーノも一緒だった。
依頼人の貴族、伝達ミスしやがったわね…。見栄っ張りにしても、こういう時は情報を正確に伝えてくれないと…!!
割と後方に待機する私は、思わず舌打ちしそうになった。
というのも、カルラの近くには所々を狼に引っかかれて破れていたものの、貴族の子女が身に着けていそうな綺麗な洋服を着た若い女性が倒れているのだ。明らかに村民ではない服装は、今回の依頼をギルドにした貴族の身内だろう。
当初は“魔物に遭遇した”だけで、殺された・大けがをした・無事だったいう情報が一切なかったのだ。しかし現状を見る限り、娘を人質にとられたと口が裂けても言えなかったのが真実だろう。
「別に、この女を人質して何かを要求しようとか思った訳ではねぇから、好きに動いてくれていいぜ…?ただ、そのままにしておいたら、いずれ狼達が食っちまうだろうけどな」
「くっ…!」
カルラの台詞を聞いたリーダーの戦士は、拳と一瞬だけ強く握る。
しかし、すぐに平静を装って冒険者達に指示を出す。
「各自、わたしに続け!!!」
「お前ら、ご馳走が向こうらやってきたぜ!!!」
リーダーの戦士とそのカルラの一声によって、戦いの火蓋切られる。
「くそ…ちょこまかと…!!」
「慌てるな、ザック!!指示通り動け!!」
前衛のザックやマリアーノは、真っ先に魔物と対峙していた。
向こうから襲い掛かって来た際は爪や牙に気を付けつつ一撃で仕留められるものの、狼は全体的に素早い個体が多い。
戦闘経験がまだ浅めなザックは苦戦しつつも、マリアーノと共に魔物へ攻撃を仕掛けていく。
「此度、弓矢もいるからな!心強い…!!」
弓闘士が魔物に矢を当ててくれたことで、動きが遅くなり倒しやすくなっている魔物
いた。
一方で、素早くて仕留められない個体に関しては、前衛は追いかけずにむしろ挑発してとある位置へ誘導している姿があった。
しかし当然、味方側も無傷という訳にはいかない。
「そことそこ!!まとめて止血するから、こちら来て!!!」
前衛が戦う一方、怪我をした者はスルタンを含む僧侶達の元へ移動していた。
『魔物が、うまいこと移動しましたね。今です!!』
戦いが始まってから一定の時間が経ち、私の脳裏に精神感応能力による声が響く。
その台詞を合図に、所定の位置に潜んでいた私を含む魔法使い達は、手渡されていた木の板を手で軽く叩き、直後に魔力をこめる。
「なに…!!?」
魔力を感じ取ったのか、カルラの表情が変わる。
すると、一定範囲内にいた魔物達が、お互いに共食いを始めた。
これが、音魔法…!!!
私は、事象の結果を目の当たりして感激していた。
今回、私を含む魔法使いに手渡されたのは、ある魔法を発動するために必要な魔法陣の一部が描かれた木の板だ。効果範囲が広い分複数の魔法使いが必要になってしまうという手間はあるものの、この木の板を「利き手で軽く叩き、魔力を注ぐ」だけで発動するため、戦闘経験が浅い私にでもきる芸当だ。
こういった音を出す事を媒介にして発動する魔法を”音魔法”と呼び、魔法使いのリーダー格である女性が発案したようだ。
音魔法は、高等学院では文献がなくて学べなかったからね…。そして、この魔法を提案した冒険者は、凄腕の魔法使いなんだろうなー…
私は、共食いして弱った魔物を前衛たる戦士や剣士達が仕留めていく様を見ながら、音魔法を教えてくれた魔法使いの方角を一瞥した。
その女性の魔法使いとは、村へ到達する前に「鑑定」スキルで垣間見た剣のシンボルが見えた徒党の一人だった。
「くっ…そがぁ…!!!」
魔物達が共食いする中、流石のカルラも魔法が少し効いたせいか、苦悶の表情を浮かべている。
「やった…!」
敵がふらついている隙をついて、弓闘士の一人が手負いの令嬢を抱えてその場を脱出していた。
それを目にしたスルタンは、少しばかりか歓喜の声を漏らす。
「がっ…!!!」
「…っ…!!?」
敵が怯んだ隙をついて、リーダー格の戦士がカルラの心臓を剣で突く。
それとほぼ同時に、私の身体に鳥肌がたつ。
この感覚は、一体…!!?
私は二の腕に現れた鳥肌を見下ろしながら、周囲を見渡す。
皆が戦いに集中していたため、誰一人として怪しい行動はしていないはずだ。しかし、他の冒険者達に紛れていたその存在は、私やザックの事を観察していた。
「倒した…倒したぞぉぉぉぉ!!!」
カルラを倒し肉体が消滅したのを確認したリーダー格の戦士が、剣を持つ腕を高く掲げて叫ぶ。
それを聞いた他の冒険者達は歓喜に湧き、残った魔物達は自分達を統率していたリーダーがやられた事で、確実に怯んでいた。
「ふー…ひとまず、よかった…」
私は安心したのか、腰が抜けそうになっていた。
先程の鳥肌、何だったんだろう…?
私は自分達が見られていることには気づかなかったが、先程何故鳥肌が立ったのかを考えながら、その後の展開に身を任せる事となるのであった。
いかがでしたか。
今回、音魔法なるものが出てきましたが、音楽とはほぼ無関係。
ただ、音楽が登場するこの世界ならではの魔法かもしれません。
因みに、四天王の名前は四神の一柱・朱雀のアナグラム的なかんじでつけています(笑)
ひとまず、魔族・魔物討伐は無事できたようですが、何だか不穏な動きも…
まだまだエセル達の旅は続く…ってかんじですかね。。
次回もお楽しみに★
ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します<(_ _)>




