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他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
諸国の旅路編

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遺跡への道中と中での遭遇

 もしかしたら、話しかけるべきか迷ってるのかな…?


ある時、私はソワソワしているザックを見てそんな事を思った。


王都の宿屋で一泊した後、マリアーノが持ち込んできた同胞(ドワーフ)からの依頼に関係する場所へ移動するため、私達4人は馬車に乗っていた。

今回、彼が持ってきた依頼は、近年発見された遺跡の調査と奥に隠されている可能性が高い宝を見つける事。いかにも“冒険”といえる依頼内容なので、少し楽しみにしている自分がいた。

移動のために乗った馬車は、街道を経て辺境の街まで人や物を運んでいる。転生前にいた日本でいうなら、路線バスに近いだろう。それは、私達だけではなく他の冒険者や辺境の街に用事のある人族も何人か相席で利用するからだ。


「ザック…。もしかして、あの向かいに座っている人達の“持ち物”が気になっている…?」


私は、隣に座るザックに対して小声で話しかける。

対するザックは、黙ったまま首を縦に頷いた。


「袋にしまっているからわかりにくいが…あれはおそらく、ギターみたいな弦楽器だろうなって。それを持って移動…という事は、旅芸人の一行だろうと思ってな。…触らせてはくれないだろうけど、せめてその音色聴いてみてぇなー…」


ザックは、向かいに座る5人くらいの一行をチラ見しながら小声で答える。


「なぁ、君達。ちょっといいかな?」


私達の会話を横目で聞いていたスルタンが、向かいに座る旅芸人の一人に話しかける。


 スルタン…!!?


突然、スルタンが話しかけていたので、私とザックは目を丸くして驚いていた。

そして、隣でうたた寝をしていたマリアーノが、今の一言で目を覚ます。


「…何でしょうか?」

「常々気になっていたのだが…。旅芸人(きみたち)は楽器を演奏する際、楽譜とかは持っているのかい?」


楽器を持った中年男性は突然声をかけられたので、スルタンを見上げながら口を開く。

対するスルタンは、物腰柔らかそうな口調で話す。

また、旅芸人一行の中で他の4人もスルタンに気が付いたらしく、紅一点だった女性は彼の容姿を一目見るなり見とれていた。


「…簡単な譜面(もの)なれば、ありますよ」

「では、わたしの仲間に少しだけ見せるか聴かせてやってはくれないか?彼は、弦の心得があるのでね」

「まぁ、構わないが…」


スルタンは、ザックが楽器演奏できる事を少し持ちかけた。

すると、芸人の男性は少し渋々した態度ではあったが、こちらのお願いを聞いてくれたようだ。

その後、ザックは弦楽器を持つ旅芸人の側へ行き、話し始める。


「…初対面には、ちゃんと男性口調使っているんだね」

「そりゃあね。この世界ではニューハーフの概念がないみたいだし、不審者と思われて衛兵に通報なんざされたら、たまったものじゃないからね」


その後、スルタンの隣へ移動した私は、彼に小声で話しかける。

すると、彼は美都紀(みづき)の口調に戻って答えてくれた。


「ほぉ…」

「あら、うまくやっているみたいね」


それから数分後、旅芸人の男性が弦楽器を軽く演奏していた。

隣で座っていたザックは瞳を閉じながらそれに聴き入り、私達も耳を澄ませる。


 旅芸人(あちら)の男性と、仲良くなれたのかもね…。そして、やっぱり音楽っていいなー…


私は、彼らを見つめながらそんな事を考える。

同時に、私はまた別の事を考えていた。


 こうやって、よく弾き語りしてくれたよなー…


そう考える私の脳裏には、転生前は夫婦だった元・夫の顔が浮かんでいた。

(わたし)がピアノとアルトサックスの経験者であったのに対し、夫はギターの経験者だったのである。そのため、同じギター経験者の雪斗に関しては、少し思う所があったのも事実だ。


 …そういえば、寛としての最期を全然覚えていないんだよね…。転生している訳だから、どこかしらで死んだのだろうけど…


黙ったまま考え事をしていた私を、スルタンやマリアーノが少しだけ様子を見ていた。

そうして弦楽器の音色が響く中、馬車は目的地へと移動していく事になる。



「到着したな」

「だな」


あれから数時間が経過し、ようやく目的地である遺跡へ到着する。


そう口にしたマリアーノやザックは体力オバケと言えるくらい持久力もあるので元気だが、後衛組である私やスルタンは、少し息があがって疲れていた。


「…思えばマリアーノって、斧の先端を担いで移動しているんだろ?持ち手はどうしているんだ?」


その後、入口で水分補給の休憩を入れた後に私達は遺跡の中に入る。

この台詞(ことば)は、歩きながらザックが口にしたものだ。


「具体的な種明しはできんが、ドワーフによる鍛冶技術の賜物ってところだな。いざ戦いで使うという時に、先端付近を持つと持ち手が一人でに伸び縮みするようになっておる」

「ドワーフが、他の人族より背が小さいから生まれた技術なのかな…」

「エセル…。儂はともかく、他のドワーフの前でその台詞(ことば)を言わんでくれよ」


マリアーノの説明に対し、私が会話に割って入ってくる。

すると彼は、怪訝そうな表情(かお)をしながら横目で私に注意をした。


「因みに私は、魔法で杖を出したり消したりが可能なの!」

「俺も、剣をどこかに収納できれば楽だが…。それをやってしまうと、冒険者っぽく見えないし、何より腰に何もないと落ち着かないからできない芸当だな…」


そこから、各々が持つ得物の収納方法の話題で盛り上がる。

また、僧侶であるスルタンは天地創造の神・ユヴェルがもたらした聖典を戦いで使用するため、鞄にしまっておけるから出し入れには苦労しないようだ。


「あれ…?」


話ながら遺跡を進む内に、大広間のような少し広い場所に到着する。


目の前に広がるのは、大きくて頑丈そうな扉。その扉に近くには何やら物体があるようだが、その物体を見つめる人の姿があった。


「お主、冒険者か?」


人影を確認したマリアーノが、その人物に声をかける。


「えぇ、単独(ソロ)で旅をする冒険者ですね」


振り向いた人物は女性で、背中には弓と矢を背負っていたため、弓闘士だろう。


この遺跡は近年発見されたばかりなので魔物は棲みついていないが、ダンジョンに入ると他の冒険者と遭遇する確率は割とある。


 …何か、違和感があるけど気のせい…?


私は、この弓闘士の女性を見つめた時に首を傾げたが、それより先に仲間達が口を開く。


「ところで、君。何を見ていたのかな…?」

「はい…。そこの扉を開けるのに、ここにある物を使って何かをするというのはわかっているんですが…。難しくて途方に暮れていた所です」


男性口調にしているスルタンが問いかけると、女性は腕を組みながら答えてくれた。


「どれどれ…」


私とスルタンが、壁際にある物に目を向ける。

「…エセル。この文字…!!」

「ひとまず、このボタン押してみようか」


そう口にする私とスルタンの表情は、驚きと共に緊張感漂うような表情をしていたかもしれない。


壁際には文字が彫られていて、“ボタンを押して”と日本語で書かれていたのだ。

この世界における言語は英語に似たような言語(ことば)で、書類等の文字表記もアルファベットが多い。因みに、転生者ならではのスキルかもしれないが、この世界の言語がわからなくても転生前の魂がこの世界の人間だからか、知識がなくても読み書きは自然とできていた。そのため、“言葉の意味がわからない”という不便な想いは今までしてこなかった。


「壁から、何か出てきおった…!」

「これは……楽器?」


ひとまず壁際のボタンを押してみると、地響きのような音がこの空間内に響き、壁から何かが出てきた。


それを目の当たりにしたマリアーノや冒険者の女性は驚き、出てきた物を目にしたザックはそれが何かを口にする。

私やスルタンもまじまじと観察してみたところ、形は私達がよく知る楽器(もの)とは異なるが、ユーホニアムのような管楽器のようだ。


「もしかして…古代のユーホニアム?」

「ユーホニアム…とは…?」

「確か、金管楽器の一種だったよな?スルタン」

「えぇ、そうよ」


私が呟くと、そこに冒険者の女性とザックが会話に入ってくる。

そうして、ザックがユーホニアム経験者であるスルタンに確認をとると、私の呟きが正しいという事が証明された。


「ちょっと持ってみるわね…」


そう口にしたスルタンは、壁に立てかけてあったユーホニアムっぽい楽器を手に取った。


今回遺跡で見つけた楽器は、ユーホニアムのベル辺りが少し変形しているようにも見える。見慣れない模様も彫られている事から、はるか古代に作られた楽器だろうと私は悟った。


 でも、ただ音を鳴らせば扉が開く…なんて単純な仕掛けではないよね…


私は、腕を組みながら考える。

その間に、スルタンは見つけた楽器がちゃんと音が出るのか指を動かして確認していた。


「思ったのじゃが…」

「マリアーノ…?」


少しの間だけ沈黙が続いた後、最初に口を開いたのがマリアーノだった。

私はこの時、自分の視線が彼に向いていたのである。


「この扉に彫られている、木の形をした彫刻…。そこに埋まっている文字らしき物体(もの)は、先程後衛組2人が読み明かした言語ではないか?」

「あ…!!」


スルタンに言われた事で、私・ザック・スルタンの3人は気が付く。


その後、私達はこの先へ続く扉に彫られている物の中で、再び日本語のひらがなが含まれている事に気が付く。

その見つけた文字を組み合わせた文が何を意味するか気が付いた後、少しだけ運指の確認を行う。扉を開ける一番の要になるのはスルタンが持つ楽器のため、失敗は許されない。

そんな私達の後ろにて、この遺跡で出逢った冒険者の女性は、密かに不気味な笑みを浮かべていたのであった。


いかがでしたでしょうか。


今まで主人公達が冒険する話はいくつか執筆してきましたが、今回みたいに割とのんびり移動しているシーンは初めてだったかもしれません。

なので、書いててのどかな風景が浮かんだ気がします。(笑)

さて、今回登場した旅芸人や、遺跡の中で遭遇した冒険者ですが、彼らのようにその時々でのみ出逢う人々については、キャラ名はつけていないかんじとなってます。

ただし、後者はなんか怪しい予感が…?

次は、スルタン辺りの活躍が見れそうです

お楽しみに★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します<(_ _)>



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