S級冒険者に出会いました
誤字脱字など読みにくいこともあると思いますが、よろしくお願いします。
今回少し長くなります。
雑貨と薬の店サニーも3年目となり、経営も軌道に乗りつつある。
あの日助けた冒険者の皆さんはちゃんとポーションと魔力回復薬の効き目を冒険者ギルドで広めてくれた。
おかげさまでその後チラホラ増え出した冒険者のお客さんは、今では毎日ひっきりなしにやってくる。
ジェイドをはじめ、従業員のみんなも慣れてきたようだ。
実は先日ジェイドとミリーが結婚した。
仲がいいなとは思っていたが、気がつかないうちに愛が育まれていたらしい。
これからも夫婦仲良くお店を切り盛りしていってくれるといいな。
ところで私とお師匠様は、またまた魔物の森に素材採集にきている。
今回は付与魔法用の魔石を取るのと、お店のポーション用の薬草を取りにきたのだ。
事は数日前、お姉様から王太子様用の付与魔術ネックレスを頼まれた。
近々大きな討伐があるので、その前に渡したいらしい。
もちろんお姉様は王太子様用の魔石も準備してくださった。
しかし詳しく聞くと、第一騎士団も一緒に討伐に出るらしい。
それなら、ルークとお兄様にも新しい付与魔術のアクセサリーを渡そうと思う。
お兄様にはネックレス、ルークはあまりネックレスが好きではなさそうなので、またピアスにしようと思う。
例の赤のショルダーバッグを斜め掛けし、私は張り切って森にきたのだった。
もちろんバッグにはランチも入っている。
のんきにピクニック気分で出かけていた私はまさかあんなことになるなんて全く予想もしていなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ」
息が上がる。
後ろの岩場ではお師匠様が血だらけになって倒れている。
私はキッと目の前の敵を睨みつける。
グリフォンだ。
噂でしか聞いたことのないAランクの魔獣に、いつもの森で会うなんて思いもよらなかった。
グリフォンは、お師匠様とオークを狩っていた時突然現れた。
お師匠様は私をかばって防御が間に合わず、弾き飛ばされてしまった。
そのあとオークがグリフォンに1撃で仕留められ、狙いは私に移った。
早くお師匠様の無事を確かめたいが、グリフォンの鋭い爪を氷魔法で防ぐので精一杯だ。
今世で命の危険を感じたのは初めてだ。
家族のみんなやルーク、マリア達の顔が頭に浮かぶ。
ひょっとしてこれって走馬灯?
せっかくもらった第2の人生、こんなところで魔物にやられて死にたくない。
私は精一杯の力を振り絞ってグリフォンの頭に最大火力の魔法をぶっ放した。
お願い!やられて!
もくもくとした煙が晴れるとグリフォンはまだその場に立っている。
「ウソ…」
多少のダメージは与えたようだが、魔力も少なくなってきた、これ以上どうしたら…。
その時だった。
空から大剣を構えた人物が、グリフォンに向かって落ちていくのが見えた。
バシュ!!
周りにグリフォンの血が飛び散り、私の顔やドレスにかかる。
その人物はグリフォンの爪を避けながら、すごい速さで切り込んでいく。
「あとは、まかせろ」
私はハッとして、お師匠様のいる方向へ走った。
お師匠様は岩場の影に倒れていた。
グリフォンの爪によってできた深い傷がある。
「お師匠様、お師匠様!!」
私が呼びかけると、
「なんとか生きてるぞ…」
と返事があった。
私は急いでバッグからポーションを出すとお師匠様を座らせて口元に持っていった。
「お師匠様!早く飲んでください」
お師匠様がポーションを飲み干すとシュワシュワという音とともに傷が徐々に塞がり始めた。
まだ顔は青いがもう大丈夫だろう。
「グリフォンはどうした?」
お師匠様が尋ねた。
「今冒険者の方が戦ってくれています」
私はバッグから魔力回復薬を取り出して一気に飲んだ。
「私も手伝ってきます」
お師匠様は何かいいたげだったが、静かに頷いた。
冒険者の男性はグリフォンの翼の風で近づけず、なかなか仕留め切れないようだ。
「加勢します!」
私はそういうと、グリフォンの目を狙って氷の槍を撃った。
グリフォンが怯んだ隙を逃さず、冒険者はグリフォンの喉元を切りつけた。
ズドン!!
大きな音を立ててグリフォンが倒れた。
やった!倒した。
「あぁ〜、血でベトベトだな」
冒険者は若い男性のようだ。
全身グリフォンの血で顔も服もドロドロだ。
「ありがとう、ございました。助かりました」
私はペコリとその冒険者の男性に頭を下げた。
「イヤ〜、元々オレが追いかけてたグリフォンがお嬢ちゃん達の方へ逃げちゃってさ」
彼はポリポリと頭をかいた。
「連れの人は大丈夫?」
「はい、ポーションを飲んだので大丈夫です」
彼と私はお師匠様のところまで行った。
「あれ?オズワルド様じゃん?奇遇だね〜」
師匠は岩にもたれて休んでいた。
「シンだったか。きてくれたのがお前で助かった」
お師匠様の知り合い?
「元々オレが逃しちゃったグリフォンなんだよね」
「イヤこの森で気を抜いていたわしの落ち度じゃ」
お師匠様が私に向き直った。
「アンジェもよく持ち堪えてくれた。ありがとう」
「お師匠様がご無事で良かったです」
私ももっと強くならなきゃ。
私は溢れそうになった涙をグッと堪えた。
「シン。悪いが冒険者協会までわしを連れて行ってくれないか?まだ血が足りなくて歩いて帰れる気がせんわ」
「それくらいお安い御用だよ」
シンさんは師匠を軽々とおぶった。
「あ、でもグリフォンどうしよう」
「心配いらん。アンジェ、持って帰ってくれるか」
「はい」
私はショルダーバッグにグリフォンの死体を入れた。
「便利だね〜」
シンさんは私のバッグを見て少し驚いた様子だった。
帰り道、お師匠様がシンさんを紹介してくれた。
「アンジェ、こいつはS級冒険者のシンだ。まだ若いが、凄腕だ」
この人が噂に聞くS級冒険者か。
あの剣捌きに身のこなし、スゴイはずだ。
「初めまして、お師匠様の弟子のアンジェです」
私は歩きながらペコリと頭を下げた。
「この子が噂のオズワルド様の弟子か〜。オズワルド様が人前に出さないからどんなヤツだってみんな噂してたけど、まさかこんなかわいい女の子だとは」
「見たところ腕もかなり立つみたいだけど、何級なの?」
「あ、冒険者登録はしてなくて」
さすがに侯爵令嬢が冒険者になってはお父様の立場がまずい。
「え?ウソ?なんで冒険者登録してないの?」
「アンジェは貴族でな。色々事情があるんだよ」
オズワルド様がシンさんの背中からそう言った。
「そうなんだ。もったいないね〜」
シンさんはそれ以上追求しないでくれるようだ。
「まぁ人には色々あるしね〜」
冒険者協会に着いた。
冒険者ギルドにはいつもお師匠様だけで行くので、私が入るのは初めてだ。
「オズワルド様、着いたよ〜」
シンさんと私たちが中に入るとザワザワとしていた室内が一瞬静まった。
「オズワルド様!どうされたのですか?」
受付からお姉さんが飛び出してくる。
「ちょっとヘマして、シンに助けてもらったんだ。もうポーションは飲んだから、少し休むわ」
オズワルド様はそう言ってシンさんの背中から降りた。
すかさず受付のお姉さんがオズワルド様を支える。
「シン、今日はありがとう。悪いが、獲物を解体場に置いたらアンジェを家まで送って行ってくれるか?」
「別にいいよ〜」
「あと、アンジェの家のことは他言無用で頼む」
「オズワルド様の頼みならしょうがないね」
お師匠様は私に向き直って言った。
「アンジェ、シンの素材を置いたらシンに家まで送ってもらいなさい。マリアには後日わしから説明すると言っといてくれ」
「わかりました、お師匠様。お大事にしてください」
お師匠様は受付嬢のお姉さんに付き添われて2階に上がって行った。
「大丈夫かな…」
「あの人は年だけど、すごく丈夫だから大丈夫でしょ」
「さぁ送ってくよ」
私はシンさんの後ろに続いて冒険者ギルドを後にした。
解体場にグリフォンを置いてから我が家に送ってもらった。
2人とも血まみれのスゴイ格好ですれ違う人は皆ギョッとした顔をするけどシンさんは気にしてないようだ。
私は女の子なので少し恥ずかしい。
「え?ここがアンジェちゃんち?めっちゃデカくない?」
「貴族って聞いたけど、スゴイな」
シンさんは呆然と我が家を見上げた。
「シンさん、今日は本当にありがとうございました」
「イヤイヤ、アンジェちゃん大丈夫?怖かったんじゃない?」
シンさんは私に向き直って言った。
「怖かったけど、大丈夫です」
「いいね〜、強いね。そういう子好きだわ」
「アンジェちゃんのこと気に入ったから、困ったことがあればいつでも言ってね。じゃあ、またね」
シンさんはそう言って手を振りながら去っていった。
さて、次の問題はこの血が飛び散った私の様子をどう説明するかだ。
下手なことをいえば、私だけでなくお師匠様も責められて、しばらく外出禁止になるだろう。
しかしこの状況はどうにもできない。
「まぁ!お嬢様。そのお姿は一体どうされたのですか?」
さっそくマリアに見つかってしまった。
「お怪我はどこですか?」
マリアは血相を変えて私の体を調べた。
「怪我はしてないから大丈夫!コレは魔物の血だよ」
マリアはほっとした様子でそれから怒り出した。
「こんな血だらけになるなんてどんな状況だったのです!オズワルド様はどこですか?」
や、やばい。
「お師匠様はちょっと都合が悪くなって、他の人に送ってもらったの。マリアには後日説明するって」
マリアは私を抱き寄せた。
「こんなに汚れて、お疲れでしょう。まずはお風呂ですね」
私は、マリアに連れられて浴室へと直行したのだった。
読んでいただきましてありがとうございました。
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