09
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白い天井と点滴の管。殺風景な壁を確認してこの場所を悟る。警察病院か。思考がクリアになり、何が起きたかを徐々に思い出す。遊園地に行って、女と戦って……あいつは!?
「いっつ!」
脇腹と肩に激痛が走る。白い包帯を巻かれた俺の体は起き上がることを拒絶していた。どうやら戦いは終わったらしいので大人しく体に従うことにした。さんざんこき使ってしまったからな。ゲームなら恐らく十近くレベルアップしてるはず。手を伸ばしてナースコールと押した。バタバタと足音が聞こえる。しかし現れたのは白衣の天使ではなくむさ苦しいスーツ姿の先輩だった。
「あれ、先輩どうしてここに」
「何言ってんだ! お前昨日何があったか覚えてないのか?」
先輩は血相を変えて俺の方に詰め寄ってくる。暑い、離れてくれ。病人だぞ俺は。
なんとか先輩をパイプ椅子に座らせて、俺も体を起こす。どうやら話さなければならないことが多くありそうだ。
「殺される寸前の俺を助けてくれたのが先輩、という解釈でいいんですよね」
俺はかすれ気味の声でそう先輩に問いかけた。倒れる直前に聞いた、空気を切り裂く音は拳銃の発射音だ。あのタイミングで俺の居場所までたどり着けるのは先輩以外にあり得ない。
「ああ。その通りだ」
「でも早すぎます。俺は二時間戻ってこなければ捜査してくださいと頼んだはずですが」
あの時点では一時間も経過していなかったはずだ。いくらなんでも早すぎる。
「あの状況で、俺が二時間も待ってると思うか? 知られていなかっただけで、あそこは真っ黒な場所だったんだ。お前から電話をもらった時点ですでに向かってたよ」
流石としか言いようのない勘と行動力だ。ためらいのない、的確な拳銃使用といい、憧れる要素がまた一つ増えてしまった。まあ、絶対口にはしないが。
「そんなことより、真相を教えろよ。お前らが一緒に行った肝試しの話は聞いたが、それ以上はどいつもこいつも口を割らねえんだ」
先輩が体をぐいっと近づけた。先輩の圧力で傷が悲鳴を上げる。
「わかりましたよ。分かってることを全部話します。この事件はあの女が遊園地に住み着いたことから始まりました。そこまではいいですよね?」
「もちろんだ」
「正確な時期はわかりませんが、周辺の行方不明者リストと照合すれば、大まかな時期はつかめるはずです。いずれにせよ、あいつは半年以上前からあの遊園地を根城にして、殺害を続けていました」
「あいつがとんでもないことは理解している。俺が知りたいのは、お前らがなぜ目を付けられたか、だ」
当然の疑問。そう、それこそが今回の事件で最も重要なポイントなのだ。
「ええ。俺もそこが疑問でした。過去に逮捕したこともない、あんな犯罪者との接点なんかあるはずがなかったんです……ただ一人を除いて」
「ただ一人……? どういうことだ!」
「川本美桜、彼女こそが俺たちをあの地獄へと導いた張本人です」
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