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最終話です。
街頭のテレビが速報を伝える。交差点で信号を待っていたサラリーマンがスマホから視線を上げて、電動キックボードに乗る若者がハンドルから手を放して、テレビのニュースを見つめる。
『先ほど、昨日神山市の遊園地において殺人の容疑で逮捕された容疑者が警視庁の留置場で死亡しているのが発見されました。死因は判明していませんが、この異例の事態に対し、警視総監は全力で調査に当たると述べており――』
信号が変わり、サラリーマンは歩き出す。若者の乗るキックボードに驚いた老人が小さく悲鳴を上げた。一人の女がその様子を無表情で眺め、ビルに挟まれた路地へ入る。都会の光りを象徴する交差点から、都会の闇を象徴するような小汚い路地で、女はスマートフォンを取り出した。古い雑居ビルの隙間から空を眺め、女は電話をかける。
「私です。申し訳ありません、失敗しました。協力者は逮捕され、ターゲットの刑事から捜査情報を聞き出すこともできませんでした」
「はい。直接の誘いは断られたので協力者を通じて呼び寄せたのですが、失敗しました」
「もちろんです。協力者はすでに処理しましたし、そこから漏れることはありません」
「寛大な処分に感謝します。直ちに次の手に取りかかります」
「それでは失礼します。全ては教祖様のために」
女は通話を終え、スマートフォンをしまう。路地から交差点を眺めた女はやがてにっこりと笑った。
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございました。
これで完結です。
少しでも楽しんでいただけていれば幸いです。
また別の話でお会いできるのを楽しみにしております。
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