表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2 strange 4 me  作者: 日下部素
9/11

9.山荘初日4

俺は先ほどの出来事により山荘へと来た道を戻ることとなった。


俺の後ろには久我山も伴っていた。




「西宮先輩!」


久我山が写真を撮っていた西宮先輩に駆け寄って声をかけた。


「突然で恐縮ですがロウさんが体調不良のようです」


西宮先輩は有無を言わず、丸太の椅子に座っている俺に駆け寄ってきた。


「大丈夫かい?ロウ君?」


西宮先輩が心配そうに俺の顔を覗き込んだ。いつもはボーイッシュで活発な雰囲気だが改めて顔を見るとやはりかわいい。


三回生とはいえ、大人びた立ち振る舞いを常にしているが心に引っかかることがあるとこういう表情を見せるのだろうか。


「すみません。少し立ちくらみが……」


奈々幸の能力にあてられただけで心身に問題はない。そのため、心配そうにこちらを眺めているかわいらしい上級生に嘘をつくのは心苦しさがあった。


しかしながら、久我山は俺の身を案じ奈々幸とは一旦別行動をとらそうと画策したわけである。


「西宮先輩、私は来た道を戻って、ロウさんと山荘で休憩してようと思うのですがいかがでしょうか?」


久我山が自然にリースの代表である西宮先輩に進言した。


「そうだな……戻ることには賛成なのだが、久我山君ののみの帯同だとやや心残りだ。初心者コースといえどもここは山中だからね。侮ってはいけないよ」


久我谷は早々に彼女の述べる言葉を察した。


「ご忠告ありがとうございます。ただ私は小学生の頃にボーイスカウトに入っておりましたので山については一家言あります。それとこの山についても少々調べましたので私一人で彼と帯同して下山します」


そう言い切ると西宮先輩は納得した様子だった。


「わかった。それではロウ君が下山できそうなタイミングで降りてくれ。くれぐれも無理のないように。私たちも目的地に着いたらこの道を使って山荘に戻るのでそのつもりでいてくれ」

「はい」


西宮先輩と久我山との話し合いはそこで終了した。そして今に至る。



「体調はいかがですか?」


「根本的に記憶の喪失があいつの能力なんだろ?心身は問題ないさ」


「まだまだ放出者については不明な点が多くあります。宇宙人といっても差し支えないくらいわからないことが多いのです。あまり無理のないように」


「わかってる。……ボーイスカウト、やってたのか?以外だな」

俺が道中、先ほどの会話で気になることを聞いた。


「まぁ……半分くらいは嘘になってしまいますが」


「え?」


予期せぬ答えが返ってきた。


「やっていたのは確かですが3か月程度でやめてしまいました」


「活動が合わなかったのか?」


「いえ。その他の活動が忙しくなり、自然といかなくなってしましました。一家言あるなどと自分でもすらすらと言葉が出たものだと感心しています」


「そこは心を痛めろ」



しばらく歩いていると今度は久我山から話しかけてきた。


「先ほどの部屋での会話ですが、渡良瀬川先輩について何か気になることでもありましたか?」

「あ、そうだったな。新宿で意味深なこと言われたんだよ。『夜、結構いろいろやるからあまり慌てないでくれ』って」


久我山は「はて?」といったような顔をした。


「それは単純にイベントについてサプライズ要素が強いなどの忠告なのではないでしょうか?」

「サプライズする側がわざわざそんなことを言うか?」


「ドッキリ企画なのかもしれません」


クスクスと含んだ笑みを見せた久我山。何を考えているんだかわからんのはこいつの方だったらしい。



しばらく歩いていると山荘まで戻ってきた。


山荘に着くと久我山がやや大きな声で

「やや早いですが戻りました。リースのメンバーです」

といった。


早々に正子氏が出迎えてくれた。


「あら、どうしました?何かありましたか?」


事前に登山ルートを聞いていた伊吹山荘のスタッフはその帰りの早さからすぐさま異変があったかを尋ねた。


「彼が立ち眩みを起こしたので念のため先に戻りました」


「お騒がせしてすみません。今は大丈夫です」


俺は特に問題なかったのでそう伝えたが横に目をやると久我山はいつもの笑みを崩していた。求めていた回答ではなかったらしい。


「ロウさん、念のため自室で休ませてもらいましょう」

久我山が心配そうに声をかけた。


「そうね……もし体調に問題がなければ地下の方を使ってみるのはどうかしら?お部屋だと暇だから」


俺と久我山は正子氏の言葉の意図がよくわからなかった。


一瞬の沈黙の後、彼女はそれを察したらしく、慌てて補足した。


「ごめんなさいね。先輩方に聞いてなかったのかしら。ここには地下に遊戯室や書庫があるのよ」


へー、そうなのかと聞いていると久我山がやや食い気味に正子氏に尋ねた。


「確か個々の地下室はスキー板などの保管室とそのための出入り口だと聞いていましたが……」

そうなのか?俺は何も聞いていないぞ。


「ホームページにはそう書いてあるのだけれど、ずいぶん前に改修工事を兼ねて拡張したの。ここ何もないでしょ?主人が思い切っていろいろ仕入れたの」


正子氏は素直に笑って答えた。


「なるほど……」


久我山はなぜか唖然としていたが何か引っかかることでもあるのかもの言いたげな表情だった。


よろしければブックマーク、☆の評価、感想をいただけますと幸いです。


作者の励みになります。


ここまでお読みいただきありがとうございます。


これからもよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ