10.山荘初日5
俺たちは一旦自室である202号室に荷物を置くとすぐさま遊戯室なる地下室へと向かった。
玄関からすぐに視界に入る階段は三階までつながっており基本的にはこの階段を使って旅客は階を行き来する。
一階は食堂、男女トイレがそれぞれあり、その他にはこじんまりとした受付カウンターがあり後に明夫氏(正子氏の夫、山荘のオーナー)から聞いたことではあるがスタッフ用の寝室と事務所も一階にあるとのことだった。
ここに来た当初は移動のため、山荘に対する興味よりも気分の悪さと疲れが勝り、それぞれのことまで目がいかなかった。
どこに地下室への階段があるのかが初めて訪れた俺らからすると見当がつかなかったため正子氏に尋ねた。
「ごめんなさいね。普段は閉めているからわからないわね」
そういって、リビングで作業していた彼女はスタスタと歩いていき右手に階を行き来する階段の真横までまで来た。
戻ってきてしまったと感じた俺は素直に言葉にした。
「どこに階段が?」
「ここよ」
そういうと壁が勝手に開いたように見えた。実際は、ほかの壁と同化しており小さな引き戸の取っ手を使って正子氏が開いたのだ。
その奥には地下への階段があった。一瞬、そこは真っ暗闇であったがセンサーでもついているのか照明が勝手につき一気に見通しがよくなった。人が二人が並んでも簡単に降りれそうな階段があった。また階段は右回りになっており今いる場所からでは地下室を確認できなかった。
「おお」
久我山が珍しく驚いてみせた。俺には作った表情ではないことがなんとなくわかった。
「備品は丁寧に使ってくれるとありがたいわ。遊戯室に入ったら注意事項を読んでおいてね。それじゃあ、ごゆっくり」
そういって彼女はもといたリビングへと戻った。
「それでは参りますか。いざ、遊戯室へ」
「何があるやら」
俺と久我山はめずらしい造りの構造に好奇心が隠せないでいた。
右曲がりのカーブをなぞり下っていくとそこには階段と同じ大きさの幅がある廊下があり、左手には左右開けるタイプの引き戸があり、廊下は突き当りが左右に分かれていた。
奥の方には『←出入口・倉庫・書庫/トイレ→』というプレートが壁に掛かっていた。
左手の引き戸の上にはわかりやすく『遊戯室』と書かれていた。
俺らはすぐに引き戸を開くとそこには思いのほか、暇つぶしのためのアイテムが取り揃えてあった。
やや小さなカジノテーブル、麻雀卓、大型テレビ、卓球台、ボードゲーム各種、ダーツなどもありやや驚かされた。
「これはすごいですね。一日中、ここにいてもすべてをやり切れるかわかりませんね」
久我山は部屋を回りながら感心しながらそう言った。
「まぁ、天候によっては一日中、こもりっきりということも考えられるからそのためのものなのかもしれないな」
「ありましたよ注意事項」
久我山はテレビの前に備え付けられたソファとテーブルの方まで歩き、パウチ加工された注意事項の紙を発見した。
「……いたって普通のことですね。利用時間、備品の管理、騒ぎすぎないようにとのことも書かれています」
「ほかの客も使うか譲り合ってくれことなんだろう」
「そうですね。……そうしたら何からやりますか?」
久我山は存外楽しそうに尋ねてきた。
「二人しかいないし、まずはダーツでもやるか」
「おっと、久々にこういう遊び場に来るので忘れていましたがこの場面を他のメンバーにみられると良くは思われないので少し遊んだら自室に戻りましょう」
俺は自分自身が体調不良という設定を失念していた。
「確かに1時間程度で切り上げるか」
そういうと俺らは早速、遊び始めた。
一区切りついたところで部屋の時計へと目をやった。
「3時50分か……」
「そろそろ自室に戻りましょう。一応、休んでいた体を取らないと。まぁ、ばったり会っても大丈夫なように準備はしていますが」
俺らは遊んでいた卓球台を片付けて、遊戯室を出た。
「あちらはどうなってるか見ておいてもいいですか?」
久我山はそういって先ほどの廊下の突き当りを指さした。
俺がうなずくと二人でそちらへと向かった。
簡易な案内のためのプレートの通り、プレートの右手にはトイレ、左手は奥まで続いており突き当りにはガラス戸の玄関があるらしかった。
久我山はそのまま、玄関の方に進むと途中で右手に『書庫』とプレートがかかった扉を見つけ開いた。
「……おお。こちらも立派な書庫ですね」
久我山は書庫に入り、俺も続いて入った。
「すごいな。ちょっとした図書室だな」
漫画、雑誌、新書、図鑑、ハウツー本など書庫と書かれている以上、当たり前なのかもしれがびっしりと壁を覆うように本棚があった。
部屋の中央には本を読むための机とソファも用意されていた。その横には比較的背が小さく幅広い本棚も対をなしておいてあった。
「ここは地下室ということからあまり考えていませんでしたが窓があるのですね」
本に目を向けていた俺は久我山の方を向いた。
そちらには採光のための窓なのか左右両開きの曇りガラス戸が備えられていた。
久我山が窓ガラスのカギを開いて扉を引くともう一つガラス戸があった。
「なるほど、雪などの対策のために二重になっているのですか」
その扉を開くとそこは金属の格子がはめ殺しになっていた。外からも中からも人やある程度の大きさの動物は入ってこれなさそうなものだった。
「まぁ、空気の入れ替えや掃除のときに開くのかもしれない」
久我山はそれを確認するとすぐに扉を閉め、俺らは書庫を出た。
念のためと言って、久我山は廊下を階段がある方向とは逆の右手に進み、今度は広めの玄関
に出た。
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