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モヤッとする系

彼女はずっと、

作者: つきみ
掲載日:2021/08/01

彼女はずっと、俺の光だった。


ずっと当たり前に傍にいた。

家族だから。

でも俺はずっと負い目のようなものを感じていた。

俺が、彼女から母さんを奪ったから。




母さんと彼女は恋人同士だった。

なのに、一度別れた。


その間に、母さんは彼氏を作った。


そして復縁した。

でもその時すでに俺は母さんのおなかの中に居た。


きちんと避妊をしているつもりでも、間違いは起こる。

きっと母さんと彼氏は避妊に失敗したんだろう。


彼女は間違いなく、とても苦しかったはずだ。

だって愛してる人が、絶対に自分があげられない子種を

他の男から受けたことを、

他の男の染色体をもつ子が愛している人の胎のなかにいることを、

受け止めなければならなかったのだから。


でも、彼女は産もう、と言ったらしい。

母さんも彼女に言い辛かったのだけれど、俺を堕胎することは考えられなかったらしい。

こっそり見つけて読んだ母さんの手帳に書いてあった。

母さんはこの時本当に悩んだみたいで、

彼女を巻き込むわけにはいかないから、離れようかと迷っていたらしかった。


そうして母さんは死んだ。

俺の生とともに。

……難産の上、産後の肥立ちが悪く、そのまま日和見感染症にかかって亡くなったのだという。




俺は彼女の寝息を確認して、本当にきちんと眠っていることを確認してから、

涙の跡をそっとなぞって、小鳥のように、と例えられるようなくちづけを落とした。


俺の初めては彼女にあげた。

とんでもなく罪なことだとは分かっていたけれど、

後悔はなかった。




彼女は彼の気配が完全に無くなったことを確認してから、

その長い睫毛を動かした。


「……どうして」


その瞳に宿っていた色は、後悔と困惑と悲が混じった、昏沌な色だった。

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