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【九人目】 大学生の俺と女子高生の彼女は幼馴染みなのに何も知らない

 俺には三歳下の幼馴染みがいる。

 彼女は可愛い妹のような存在だ。

 彼女はいつも俺の後ろをついてきた。


 しかし、俺が中学生になると彼女と遊ばなくなった。

 俺が中学校を卒業すると、彼女が中学校へ入学してきた。


 俺と彼女はいうもすれ違いだった。

 だから俺達は、いつしか会うこともなくなった。


 そして現在は俺が大学生で彼女は女子高生だ。

 彼女が、どんな女の子に成長したのかさえ俺には分からない。

 それほど彼女とは会っていない。


『ピンポーン』


 俺の家のインターホンが鳴った。

 家族は外出中だから俺が出る。

 玄関のドアを開けると、可愛い女子高生が立っていた。


「お願いがあるの。今日、学校にお弁当を持って来てくれないかな?」


 可愛い女子高生は困った顔をしながら言った後、俺に頭を下げてた。


「えっと、どちら様ですか?」

「えっ、私よ。隣の家のあなたの幼馴染みよ」

「嘘だろう? あんなに小さかったのに?」

「あれから何年、経ってると思ってるの?」

「まあ、そうだよな」

「ねえ、来てくれるの? 私、早く学校へ行かなくちゃ遅刻しちゃうの」

「弁当くらいだったら持って行くけど、その弁当はどこにあるんだよ?」

「お母さんが持って来るから、それを学校まで持って来てね」

「分かったよ。早く行きな。遅刻するんだろう?」

「うん。ありがとう」


 彼女はそう言って走って学校へと向かっていった。



 彼女が言っていた通りに、彼女の母親が弁当を持って来た。

 俺は弁当を持って彼女の学校へ行く。

 彼女に連絡をしていたから、校門の前で彼女は待っていた。


「ありがとう」

「暇だったし、いいよ」

「お母さんが私のお弁当を間違って持っていったのよ」

「君のお母さんは昔から、おっちょこちょいなところがあったからね」

「覚えてる? あなたと私を間違えた時を」

「覚えてるよ。あの時は背丈も同じくらいで、髪も二人とも短かったから、後ろから見たら似てるかもしれないけど、俺を君と間違えて家に連れて帰ろうとしてたんだよな?」

「あの時は誘拐だと騒がれたんだよね」


 彼女は昔を思い出したのか、クスクスと笑っている。


「君が俺の腕を引っ張るからね」

「だってお母さんが、あなたを連れて帰ろうとするのが嫌だったの」

「君が泣いていたのはそういうことだったんだね?」「そうだよ。私がお母さんって呼ばなかったら、お母さんは気付かなかったよ」

「本当だよ。君のお母さんは確認不足なんだよ」

「今も確認なんてしないで、私のお弁当を持っていったんだから。成長しない人だよね」

「そうだね。でも、それに比べて君は成長したね?」

「えっ」

「大人になったよ」

「嬉しい」


 彼女は本当に嬉しそうに笑った。

 それから彼女と少し話をして俺は家へ帰った。


◇◇


『ピンポーン』


 今日は訪問者が多いなあ。

 俺はそう思いながら玄関のドアを開けた。

 そこにいたのは朝と同じ光景の、可愛い女子高生の幼馴染みだった。


「また何かお願い事でもあるの?」

「うん」

「どうしたの?」

「鍵がないの」

「何の鍵?」

「家の鍵よ」

「えっ、それって家に入れないってことだよね?」

「うん。バッグの中にあると思ったらなかったの」

「君も確認不足だね」

「いつもは入っているのよ」

「分かったよ。君の親が帰って来るまで、俺の家にいていいよ」

「ありがとう」


 彼女はそう言って俺の家へと入った。


「あなたの部屋を見せてよ」

「俺の部屋なんか見て、何が楽しい訳?」

「あなたのことを知りたいからよ」

「俺のことを知ってどうするつもりなんだよ?」

「過ぎた時間を取り戻すの」

「えっ」

「教えてよ。私の知らないあなたを」

「いいよ。おいで」


 そして俺は自分の部屋に彼女を入れた。


「男の子の部屋ってこんななんだね。案外、綺麗に片付いてるわね」

「今日、暇だから掃除したばかりなんだよ」

「そうなんだね。卒業アルバムはないの?」

「あるよ」


 俺は本棚から卒業アルバムを見つけ彼女に渡す。


「私と同じ中学校だね」

「そうだよ。同じ地区なんだから」

「でも私はいないもん」

「それは仕方ないよ。三歳違うからね」

「もう少し早く生まれていたら、あなたと同じ時に中学校に通えたのになぁ」

「もし同じ時に同じ学校に通っていたら、俺達ってどうなってたんだろう?」

「それは、そうなってみないと分からないよ」

「それならどうなっていたいと思う?」

「う~ん。あのままずっとあの関係が続いてたら良かったなぁ」


 彼女は少し考えた後、ニコニコしながら俺に言った。


「あのままって、君が俺の後ろをついてくるのが可愛くて、妹のように可愛がっていた頃?」

「妹?」

「そうだよ。俺のことをお兄ちゃんなんて呼んだら、君は俺の可愛い妹だって、いろんな人に言ってただろうなあ」

「お兄ちゃん」


 彼女が俺を見つめて言った。

 そんな彼女にドキッとしてしまった。


「なっ、何だよ。今はもう妹には見えないからな」

「それなら私のこと、どう見えるの?」

「今どきの女子高生だよ」

「妹じゃなくなったのはいいけど、可愛いがなくなったわね」

「君は昔から、今もずっと可愛いよ」

「えっ」


 彼女は照れて顔を赤くしている。


「そこは変わらないよ」

「どうしてそんなことを言ってくれるの?」

「だって本当にそう思っているからね」

「あなたは可愛い人は好き?」

「可愛いって色々あるだろう? 顔や仕草や性格が可愛い人。でも俺は可愛いより、心の優しい人がいいよ」

「心の優しい人?」


 彼女は首を傾げて言った。


「自分にも、相手にも、動物にも、弱者にも、強者にも、誰に対しても変わらず優しい心で接している人だよ」

「そんな人っているの? 誰だって誰かに嫉妬して意地悪したくなったり、傷つけられたから仕返ししたくなったり、相手に秘密にしたくて嘘をついたり、いつでも優しい心で接したりはできないよ」


 彼女は困った顔で言う。


「それでいいんだよ」

「それだと心優しい人じゃないわよ?」

「優しい心を持っているから、悪いことに気付いて悪いことはしないし、相手が傷つくのなら本当のことを隠す、優しい嘘だってあるんだよ」

「それなら、あなたが言っている心の優しい人って、誰でも当てはまるんじゃないの?」

「誰でもじゃないよ」

「えっ」

「学校で自分に意地悪していた男の子を、野犬から守っていた小さな女の子のことだよ」

「それって、、、」


 彼女は驚いた顔をしている。


「君だよ」

「私?」

「俺は君のことが好きだったんだ」

「昔の私がでしょう?」

「どうしてそんなこと言うんだよ?」

「だって私は昔の私じゃないわよ? あの頃のように優しい心なんて持っていないよ。それに今の私をあなたは知らないでしょう?」


 彼女はうつむきながら言う。


「それなら今の君を俺に教えてよ」

「昔とは全然違うかもよ?」

「いいよ。だって俺が好きなのは君だから。どんな君でも俺は好きだよ」

「私は昔からず~っとあなたが好きよ」


 彼女は自慢気に言った。

 そんな彼女が可愛くて頭を撫でた。

 彼女は妹扱いしないでよなんて言っていたけど、俺は頭を撫でるのを()めない。

 だって彼女に触れていたかったから。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

ブックマーク登録や評価など、ありがとうございます。

次のお話は、好きなモノがコロコロ変わる可愛い幼馴染みを好きな主人公の物語です。

彼女の好きなモノを毎回、嫌いになる彼。

何故、彼は彼女の好きなモノを嫌いになるのか?

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