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【八十五人目】 望みは先生の恋人になること

ブックマーク登録や評価など誠にありがとうございます。

 俺には好きな人がいる。

 彼女は俺のことをガキ扱いする。

 まあ、歳の差があるし、俺は高校生だから仕方がない。

 俺の好きな人、それは、、、先生。


「先生、今日も遊びに来たよ」

「また君なの?」


 俺は先生がいる保健室へ来た。

 先生は俺のことを覚えている。

 俺が、毎日のように保健室へ顔を出しに来るからだ。


「先生、今日は心が痛いんだよ」

「心が痛いなら、スクールカウンセラーに話した方がいいわよ。私が伝えておこうか?」

「先生、俺は先生が俺のことを好きになってくれないから、心が痛いんだよ」

「私をからかわないで。私は忙しいのよ? 君も早く教室に戻りなさい」

「また先生みたいなこと言って、どうしたの?」

「私は先生なんです」


 先生が顔を赤くして怒る所が可愛い。

 先生が生徒の為に、一生懸命に怪我の手当てをしている所がかっこよく見える。

 先生が俺と話をして楽しそうにしている所が好き。


 先生、俺を好きになってよ。



 ある日の昼休み。

 今日も先生をからかいに行こうと、保健室へ向かおうとした時だった。


「おいっ、聞いたか?」

「何を?」


 俺は友達に声をかけられた。


「保健室の先生、今日が最後みたいだってよ」

「えっ」

「お前、先生と仲良かったよな?」

「うん。でも何で今日が最後なんだよ? そんなこと聞いていないけどな?」

「実家の病院で働くみたいなんだよ」

「病院?」

「看護師にでもなるのかな? 保健室の先生、似合っていたのにな」

「俺、聞いてくる」

「えっ」


 俺は急いで保健室へ向かう。

 俺は先生から聞きたかった。

 どうして俺に言わなかったんだよ?

 あんなにいつも一緒にいたのに。


「先生!」


 俺は保健室に入ると、大きな声で先生を呼んだ。


「なっ、何よ。また君なの? 静かにしてくれなきゃ体調が悪い子に迷惑でしょう?」


 保健室には病人がいるみたいだ。

 いつもはいないのに。

 珍しい。


「だって先生が、、、」

「どうしたの? 今日は何処が悪いの?」

「全部」

「えっ」

「俺の全部が、先生と離れたくないって言って叫んでいるんだ」

「ちょっと待ってよ。そんな話はここではできないから」


 先生は焦っている。

 いつもは体調の悪い生徒なんていないからね。

 でも、他の生徒に聞かれても、俺は何の問題もないけど?

 だって俺は先生が好きだから。


「先生、先生は先生じゃなくなる訳?」

「うん」

「どうして俺に教えてくれなかったの?」

「君には私のことは忘れて欲しかったからよ」

「どうして?」

「君は高校生よ?」

「だから?」

「だからなの」

「意味が分からないんだけど?」


 先生はうつむいて何も話さない。


「先生?」


 俺は先生の顔を見たくて、顎を持ち上げた。

 先生の顔は真っ赤で、そして泣きそうだ。


「先生? どうしてそんな顔をするの?」

「ごめんね」


 先生はそう言って泣き出した。

 何で?

 俺のせい?

 俺が高校生だから?


「先生、ごめん」


 俺はそう言って先生を抱き締めた。

 先生と生徒の関係の俺達だから、抱き締めるなんてことはしてはいけないんだと俺は分かっているから謝った。


 でも先生は、嫌がることもせず俺の腕の中で泣いていた。


「そういうことか」


 病人が寝ているベッドの方から声がしてカーテンが開く。

 見たこともない大人の色気を放つ男の人が出てきた。


「ごめんね、もう遅いよ」


 その男の人に先生は俺の腕の中で言った。


「仕方ないな。彼が大人になったら、また保健室に戻ってくればいいさ。それまでは病院勤務だな」

「うん、ありがとう。お兄ちゃん」


 少し状況を把握できた。

 この男の人は先生のお兄さんで、先生は俺が大人になるまで病院で働くみたいだ。

 何で俺が大人になるまでなんだ?


「おいっ、ガキ」


 先生のお兄さんは、俺を睨み付けながら俺を呼んだ。


「はいっ」

「俺の大切な妹を傷つけたら覚えておけよ? 一生、苦しませてやる」

「はいっ」


 そして先生のお兄さんは、保健室を出ていった。

 怖っ。

 俺って嫌われてる?


「ごめんね。お兄ちゃんは感情表現が下手なのよ。でも気にしないでね。さっきのお兄ちゃんは、あなたのこと少し気に入っているみたいにみえたから」

「さっきの何処が? 怖かったんだけど?」

「ねぇ、それより私の気持ちには気付いたの?」

「お兄さんの言葉から察すると、先生は俺が好きってことだよね?」

「うん、君が好きで君から離れようとしたけど、もう遅かったわ」

「俺は、ずっと先生のこと好きだったから、先生も同じ気持ちだなんて嬉しいよ」

「ねぇ」


 先生はそう言って、俺の腕の中で俺を見上げた。

 涙目で見られた俺はドキッとした。

 可愛い。


「君が大人になるまで大変なことがたくさんあると思うの。それでも君は私を好きでいてくれる?」

「俺がどれだけ先生が好きか知らない訳? 何でも乗り越えるよ」

「良かった。私も君が大好きだから、何でも乗り越える自信があるわ」


 先生は笑ってそう言った。

 可愛い。

 可愛くて仕方がない。


「先生」

「ん?」

「大好きだよ」

「知っているわ。だってその言葉は、何度も聞いているもの」

「そこは、私もよとか言ってくれないの?」

「ダメ、ここは学校よ。それに私は、まだ先生なんだからね」


 学校以外だったらいいのかな?

 先生じゃなかったらいいのかな?


「今日、学校が終わったら一緒に帰ろうよ。先生が車で送ってよ」

「何? なんだか悪い顔をしているけど、何を考えているの?」

「何にも考えていないよ。これからが楽しみだなって、思っているけどね」

「本当に君は、何を考えているのか分からないわ」

「これから少しずつ知っていけばいいじゃん。二人の時間は、たくさんあるんだからさ」

「そうね」


 先生はそう言って小さく笑った。



 その日の俺達がどうなったか?

 まあ、先生が俺を家まで遠回りして送ってくれた。


 長い赤信号で止まった時に先生を名前で呼んだら、先生は驚いて俺を見たから手を繋いだ。

 先生は驚いていたけど嫌がらず、握り返してくれた。


 青信号になって、ハンドルへと手を動かそうとして俺の手を離そうとしたから、俺が手を握る力を強めると、先生は焦っていた。


 すぐに手は離したけど、先生は少し怒ってから言ったんだ。


「君が運転ができるようになったら覚悟をしててよね。お返しをしてあげるわ」

「それは楽しみだなあ」

「もう! 意地悪ね」

「だって可愛いんだもん」

「やだぁ」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤にする先生。

 そんな純粋な先生は、世界で一番可愛い俺の大切な人。


 そんな可愛い大切な彼女は、俺の恋人だ。

読んで頂き誠にありがとうございます。

楽しく読んで頂ければ幸いです。


次のお話は、好きになってはいけない人を好きになってしまった主人公の物語。

諦めるために、会話をすることも、相手のことを知ることもしなかったのに、一人で寂しそうにしている彼女を見ると、気になって仕方がない。

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