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【八十四人目】 猫ときどき美少女

ブックマークや評価など誠にありがとうございます。

執筆の励みになっております。

 俺の休日の日課は、仕事でのストレスを忘れるために、公園のベンチに座って日向ぼっこをすることだ。

 そしてもう一つは、俺の膝の上にいる真っ白な猫を撫でること。


 この白猫は俺の飼っている猫ではない。

 この白猫は人に飼われている猫でもない。

 この白猫は野良猫だ。

 首輪もないから多分、野良猫だ。


 ある日、俺がベンチで日向ぼっこをしていると、フラフラと歩いてくる白猫がいた。

 それがこの、俺の膝の上で寝ている猫だ。


 俺は桜を見ながら、おつまみの煮干しを片手にビールを飲んでいた。

 花見を一人でしていたんだ。

 ビールはお昼だから、一本だけにした。


 俺は、フラフラと歩く弱っている白猫に、煮干しをあげた。

 白猫はすぐに一匹を食べてしまう。

 何匹かあげると白猫は、俺の膝の上に乗って喉をゴロゴロと鳴らした。


 可愛い白猫に、俺は喉を撫でてあげると、次は眠そうにしていた。

 その日は、一人での花見だったが、一匹増えるだけで、一人よりも花見が楽しいことに気が付いた日になった。


 それから白猫は、俺がこのベンチに座ると、俺の膝に乗るようになった。



 今日もベンチに座っている。

 しかし白猫は来ない。

 何かあったのかもしれない。

 俺は辺りを見回した。


 人気(ひとけ)もない場所に、白猫の気配もしない。

 寂しい公園だ。

 この日は、白猫の姿を見ることはなかった。


 そしてまた、次の週の休みの日に、ベンチに座ろうとしたのだが座れない。

 俺の目の前のベンチには、美少女が横になっていたんだ。

 ちゃんと座っていれば、その美少女の横に座ったのだが、横になり寝られていては座る場所がない。


 今日こそは白猫に会えると思ったのに、会えないのかな?

 俺が諦めて帰ろうとした時だった。


「どうして帰るの?」

「えっ」


 寝ていたはずの美少女が、俺の洋服の裾を掴み見上げていた。

 美少女の上目遣いは可愛さ倍増だ。


「えっと、、、君がそこで寝ているからだよ」


「じゃあ、ここに座ってよ」


 彼女はそう言い、少し頭を宙に浮かし、その頭の下のベンチをトントンと叩いている。

 俺にそこに座れと?

 君の頭はどうするんだよ?


「俺は帰るからいいよ」


「帰らないで」


 美少女にそう言われたら帰れない。


 俺は仕方がなく、彼女の頭の下に座った。

 当たり前だが、彼女は俺の膝に頭を乗せた。

 膝枕というものを初めてした俺。


 何故かドキドキした。

 美少女は目を閉じて仰向けになっている。

 美少女の顔がよく見える。


 長い睫毛に整った眉。

 ぷっくり唇は少しピンク色。

 ハリのあるとても綺麗な白い肌。

 長い黒い髪はサラサラしてそうだ。


「猫ちゃんみたいに撫でてよ」

「えっ」


 俺が彼女を観察していると、彼女が目を閉じたまま言った。


「いつも、あなたの膝の上にいる白猫ちゃんのことよ」

「何で知っているの?」

「だって私は、あの白猫ちゃんだからだよ」

「えっ」


 嘘に決まっている。

 この美少女が白猫だなんて。

 しかしよく見ると、猫の耳に尻尾まで見えるような気がする。


「まだなの?」


 彼女は、僕が撫でるのを待っている。

 撫でるくらいならいいかと思い、彼女の頭を仕方なく撫でる。


「俺は君が白猫だなんて信じていないからね」

「それなら次は、白猫ちゃんの姿であなたに会いに来るわ」

「いいよ。でも君が、白猫として会いに来たなんて俺が分かると思う?」

「そうよね。それなら私に、身に付けられるモノを頂戴よ」

「身に付けられる物?」

「そうよ。猫といえば、首輪とか、名札とか、リボンとか、色々とあるでしょう?」

「それならこれだ」


 俺は、手に持っていた煮干しの包装についているリボンを、彼女の手首に巻いた。


「どうして手首なの? 首輪じゃないの?」

「君はペットじゃなくて女の子だから、首輪はちょっとできないよ」

「そうなのね。私は首輪でもいいのになぁ」

「俺ができないからこれでいいんだよ」

「それなら次のお休みはいつなの?」

「また一週間後だよ」

「分かったわ」


 彼女はそう言って、大きな目で俺を見つめてきた。

 何?

 俺、何かしたかな?


「私ってあなたより若すぎるかしら?」

「そうだね。君は、まだ学生でしょう?」

「そうだよ」

「やっぱり君は、猫なんかじゃないんだね?」

「猫ちゃんの世界にも学生はいるわ」


 彼女は起き上がって必死に言っている。

 そんな彼女も可愛い。


「俺はおじさんで、君は若い女の子。他人にはそう見えるんだよ。俺にもそう見えるけどね」

「あなたはおじさんじゃないわ。それに、私達の関係に年齢は問題ないでしょう?」

「そうだね。君は猫なんだから、俺より寿命が短いから成長も早いだろうね」

「そんな悲しいことを言わないでよ」


 彼女は俺の横に座って悲しい顔で言っている。


「ごめん」


 俺はそう言って彼女の頭を撫でた。

 彼女から、ゴロゴロと喉がなる音が聞こえそうだ。


 それから彼女と日向ぼっこをし、サヨナラをした。

 彼女はまた来週ね、と言って帰っていった。



 次の休日がやってきた。

 俺は公園のベンチに座り本を読む。

 すると白猫が俺の膝の上に乗ってきた。

 白猫は俺の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしている。


 白猫の喉を撫でてあげて気付く。

 美少女にあげたリボンを、白猫は首輪としてつけている。

 この白猫が美少女とは思えないが、この白猫と美少女には繋がりがあるようだ。


 俺は白猫を撫でながら本を読む。

 今日の休日は白猫に癒された。

 この前の休日は?

 美少女に癒されたのか?


 俺は、猫にも美少女にも癒されていたんだ。

 どちらと会っても俺は嬉しいんだ。

 


 そしてまた次の休日がやってきた。

 今日はどっちが来るのだろうか?

 そう思いながらベンチに座り、本を読む。


「ねぇ、信じてくれたかしら?」


 いきなり、ベンチに座る俺の目の前に、美少女は立ち言った。


「君が猫でもそうじゃなくても、俺はどちらでもいいんだよ」

「どうして?」

「俺はどっちも好きで、どっちも撫でると癒されるからね」

「白猫ちゃんと私のどっちが好きなの?」

「両方だよ」

「白猫ちゃんよりも私の方が好きだって思うことはあるの?」

「どうだろうね? 君がもう少し大人になったらそうなるかもね」

「嬉しい」


 彼女は本当に嬉しそうに笑った。


「ほらっ、おいで」


 俺は自分の膝をポンポンと叩く。

 彼女は頷いてベンチに横になり、俺の膝に頭を乗せた。

 今日は目を開けて俺を見上げていた。


「どうしたの?」

「私、白猫ちゃんが羨ましかったの」


 彼女の言葉で、彼女が白猫ではないことが分かった。

 まあ、俺も信じてなどいなかったが。


「君は可愛いよ。猫にはない可愛さがあるよ」

「それなら私を一番に好きになってくれるの?」

「そうだね。いつかはそうなるんだと思うよ」

「本当?」

「うん。君は可愛い猫のような俺の癒しなんだからさ」


 俺はそう言って、彼女の頭を撫でながら彼女を見つめた。

 彼女は嬉しそうに微笑んでいた。

 そんな彼女は美少女だ。


 俺にはもったいないほど可愛い。

読んで頂き誠にありがとうございます。

楽しく読んで頂けたら幸いです。


次のお話は、大好きな保健室の先生のところへ、毎日のように会いに行く高校生の主人公の物語。

先生が学校を辞めると友達から聞いた主人公は、先生のところへ確認をするために保健室へ行き、先生の想いを知る。

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