【八十四人目】 猫ときどき美少女
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俺の休日の日課は、仕事でのストレスを忘れるために、公園のベンチに座って日向ぼっこをすることだ。
そしてもう一つは、俺の膝の上にいる真っ白な猫を撫でること。
この白猫は俺の飼っている猫ではない。
この白猫は人に飼われている猫でもない。
この白猫は野良猫だ。
首輪もないから多分、野良猫だ。
ある日、俺がベンチで日向ぼっこをしていると、フラフラと歩いてくる白猫がいた。
それがこの、俺の膝の上で寝ている猫だ。
俺は桜を見ながら、おつまみの煮干しを片手にビールを飲んでいた。
花見を一人でしていたんだ。
ビールはお昼だから、一本だけにした。
俺は、フラフラと歩く弱っている白猫に、煮干しをあげた。
白猫はすぐに一匹を食べてしまう。
何匹かあげると白猫は、俺の膝の上に乗って喉をゴロゴロと鳴らした。
可愛い白猫に、俺は喉を撫でてあげると、次は眠そうにしていた。
その日は、一人での花見だったが、一匹増えるだけで、一人よりも花見が楽しいことに気が付いた日になった。
それから白猫は、俺がこのベンチに座ると、俺の膝に乗るようになった。
◇
今日もベンチに座っている。
しかし白猫は来ない。
何かあったのかもしれない。
俺は辺りを見回した。
人気もない場所に、白猫の気配もしない。
寂しい公園だ。
この日は、白猫の姿を見ることはなかった。
そしてまた、次の週の休みの日に、ベンチに座ろうとしたのだが座れない。
俺の目の前のベンチには、美少女が横になっていたんだ。
ちゃんと座っていれば、その美少女の横に座ったのだが、横になり寝られていては座る場所がない。
今日こそは白猫に会えると思ったのに、会えないのかな?
俺が諦めて帰ろうとした時だった。
「どうして帰るの?」
「えっ」
寝ていたはずの美少女が、俺の洋服の裾を掴み見上げていた。
美少女の上目遣いは可愛さ倍増だ。
「えっと、、、君がそこで寝ているからだよ」
「じゃあ、ここに座ってよ」
彼女はそう言い、少し頭を宙に浮かし、その頭の下のベンチをトントンと叩いている。
俺にそこに座れと?
君の頭はどうするんだよ?
「俺は帰るからいいよ」
「帰らないで」
美少女にそう言われたら帰れない。
俺は仕方がなく、彼女の頭の下に座った。
当たり前だが、彼女は俺の膝に頭を乗せた。
膝枕というものを初めてした俺。
何故かドキドキした。
美少女は目を閉じて仰向けになっている。
美少女の顔がよく見える。
長い睫毛に整った眉。
ぷっくり唇は少しピンク色。
ハリのあるとても綺麗な白い肌。
長い黒い髪はサラサラしてそうだ。
「猫ちゃんみたいに撫でてよ」
「えっ」
俺が彼女を観察していると、彼女が目を閉じたまま言った。
「いつも、あなたの膝の上にいる白猫ちゃんのことよ」
「何で知っているの?」
「だって私は、あの白猫ちゃんだからだよ」
「えっ」
嘘に決まっている。
この美少女が白猫だなんて。
しかしよく見ると、猫の耳に尻尾まで見えるような気がする。
「まだなの?」
彼女は、僕が撫でるのを待っている。
撫でるくらいならいいかと思い、彼女の頭を仕方なく撫でる。
「俺は君が白猫だなんて信じていないからね」
「それなら次は、白猫ちゃんの姿であなたに会いに来るわ」
「いいよ。でも君が、白猫として会いに来たなんて俺が分かると思う?」
「そうよね。それなら私に、身に付けられるモノを頂戴よ」
「身に付けられる物?」
「そうよ。猫といえば、首輪とか、名札とか、リボンとか、色々とあるでしょう?」
「それならこれだ」
俺は、手に持っていた煮干しの包装についているリボンを、彼女の手首に巻いた。
「どうして手首なの? 首輪じゃないの?」
「君はペットじゃなくて女の子だから、首輪はちょっとできないよ」
「そうなのね。私は首輪でもいいのになぁ」
「俺ができないからこれでいいんだよ」
「それなら次のお休みはいつなの?」
「また一週間後だよ」
「分かったわ」
彼女はそう言って、大きな目で俺を見つめてきた。
何?
俺、何かしたかな?
「私ってあなたより若すぎるかしら?」
「そうだね。君は、まだ学生でしょう?」
「そうだよ」
「やっぱり君は、猫なんかじゃないんだね?」
「猫ちゃんの世界にも学生はいるわ」
彼女は起き上がって必死に言っている。
そんな彼女も可愛い。
「俺はおじさんで、君は若い女の子。他人にはそう見えるんだよ。俺にもそう見えるけどね」
「あなたはおじさんじゃないわ。それに、私達の関係に年齢は問題ないでしょう?」
「そうだね。君は猫なんだから、俺より寿命が短いから成長も早いだろうね」
「そんな悲しいことを言わないでよ」
彼女は俺の横に座って悲しい顔で言っている。
「ごめん」
俺はそう言って彼女の頭を撫でた。
彼女から、ゴロゴロと喉がなる音が聞こえそうだ。
それから彼女と日向ぼっこをし、サヨナラをした。
彼女はまた来週ね、と言って帰っていった。
◇
次の休日がやってきた。
俺は公園のベンチに座り本を読む。
すると白猫が俺の膝の上に乗ってきた。
白猫は俺の膝の上で、ゴロゴロと喉を鳴らしている。
白猫の喉を撫でてあげて気付く。
美少女にあげたリボンを、白猫は首輪としてつけている。
この白猫が美少女とは思えないが、この白猫と美少女には繋がりがあるようだ。
俺は白猫を撫でながら本を読む。
今日の休日は白猫に癒された。
この前の休日は?
美少女に癒されたのか?
俺は、猫にも美少女にも癒されていたんだ。
どちらと会っても俺は嬉しいんだ。
◇
そしてまた次の休日がやってきた。
今日はどっちが来るのだろうか?
そう思いながらベンチに座り、本を読む。
「ねぇ、信じてくれたかしら?」
いきなり、ベンチに座る俺の目の前に、美少女は立ち言った。
「君が猫でもそうじゃなくても、俺はどちらでもいいんだよ」
「どうして?」
「俺はどっちも好きで、どっちも撫でると癒されるからね」
「白猫ちゃんと私のどっちが好きなの?」
「両方だよ」
「白猫ちゃんよりも私の方が好きだって思うことはあるの?」
「どうだろうね? 君がもう少し大人になったらそうなるかもね」
「嬉しい」
彼女は本当に嬉しそうに笑った。
「ほらっ、おいで」
俺は自分の膝をポンポンと叩く。
彼女は頷いてベンチに横になり、俺の膝に頭を乗せた。
今日は目を開けて俺を見上げていた。
「どうしたの?」
「私、白猫ちゃんが羨ましかったの」
彼女の言葉で、彼女が白猫ではないことが分かった。
まあ、俺も信じてなどいなかったが。
「君は可愛いよ。猫にはない可愛さがあるよ」
「それなら私を一番に好きになってくれるの?」
「そうだね。いつかはそうなるんだと思うよ」
「本当?」
「うん。君は可愛い猫のような俺の癒しなんだからさ」
俺はそう言って、彼女の頭を撫でながら彼女を見つめた。
彼女は嬉しそうに微笑んでいた。
そんな彼女は美少女だ。
俺にはもったいないほど可愛い。
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次のお話は、大好きな保健室の先生のところへ、毎日のように会いに行く高校生の主人公の物語。
先生が学校を辞めると友達から聞いた主人公は、先生のところへ確認をするために保健室へ行き、先生の想いを知る。




