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【八十二人目】 日記には誰かの心が詰まっている。

 俺は高校の三年間、時間があるときは図書館へ通っている。

 図書館へ行く理由は、ほとんどの人が本を読むことだと思う。


 しかし俺は、もう一つの理由がある。

 それは、図書館で働くバイトの女の子目当てだ。


 彼女は俺より少し年上だと思う。

 そんな彼女は、笑顔がとても可愛い女の子だった。

 彼女を見たくて図書館へ通っている。



 そんなある日、彼女が本を落としてしまったから、近くにいた俺はすぐに拾ってあげた。


「ありがとう。君って、よくここに来ているわよね?」

「えっ、覚えているんですか?」

「まぁね。この図書館は居心地が悪いから、長居する人なんていないでしょう?」

「あっ、そうですよね。この図書館は夏は暑いし、冬は寒いし、いつでも湿気がすごくてカビ臭いんですよね」

「君も、そう思っていたの? それなのに、この図書館に来るなんて本当に本が好きなのね?」

 

 彼女はニコニコしながら、僕に話をしてくれた。


「まぁ本を読むのを楽しんでね」


 彼女はそう言って仕事へと戻った。

 彼女と初めて話をして嬉しかった。


 俺は近くの椅子に座った。

 彼女と話せて嬉しい気持ちを、少し落ち着かせようと思った。


 俺が座った横の椅子の上に、本のようなモノが乗っていた。

 俺はそれを手に取りページを開いた。


「本じゃないよね?」


 それは綺麗な字が並んでいる。

 何なのか分からないから、俺は開いたページを読む。


『十二月

 クリスマスが来た

 サンタさんは

 私の所には今年も来ない

 だって私のお願いは去年と同じだから』


 その本は日記だった。


 勝手に読んではいけないはずなのに、俺は次のページをめくっていた。

 この日記の持ち主が、どんな人なのか気になった。

 そして綺麗な字をもっと見たいとも思った。


『一月

 お正月

 彼は何をしているのかな?

 私は彼のことばかり考えている

 彼は彼女のことばかり考えている』


 日記の持ち主は、片想いをしているのだろうか?

 そしてまたページをめくる。


『一月

 冬休みが終わって学校が始まる

 やっと彼に会えた

 彼はやっと彼女に会えた

 会えたのに心は晴れない、、、悲しい』


 悲しいの文字が少し滲んでいる。

 日記の持ち主は泣いたのだろうか?

 俺まで悲しくなる。


 そして当たり前のようにページをめくる。


『二月

 バレンタインがやってきたよ

 私は今年もチョコを作るの

 でも今年も彼には渡さない

 いいえ、渡せないの迷惑だから』


 せっかくチョコを作ったのに、もったいないな。

 俺にくれれば俺が食べたのに。

 でも日記の持ち主は、彼に食べてほしいだろうなあ。

 愛が詰まっていそうだ。


 そして勝手に動く手が、ページをめくる。


『三月

 卒業の季節がやってきました

 彼から卒業すると今年も決心する

 でも彼を見たらそんな決心は何処かへ消えていく

 桜の花びらが風に舞って、何処か遠くへ飛んでいくように』


 諦めて次の恋に進めばいいのに。

 でも俺が、日記の持ち主のような恋をしていたら、諦められないだろうなあ。

 諦めたいのに諦められないなんて、苦しいだろうなあ。


 そしてこれが最後だと思いながら、ページをめくる。


『四月

 また新学期が始まる

 私の彼への想いも大きくなってまた始まる

 彼はいつも、あの笑顔の可愛い彼女を見ている

 私もいつも、あの一つだけあるソファに座る彼を見ている

 彼が私を見てくれるまで、私はこの日記をやめないし、彼を諦めることも見ることもやめない

 サンタさんには叶えられない私の願い』


「どうか彼と話すきっかけをください」

「えっ」


 俺は声のする方に顔を上げると、俺より少し年下の女の子が立っていた。


「サンタさんが、やっと私のお願いを叶えてくれた」


 彼女が誰なのか訊かなくても分かる。


「この日記はもう書かなくていいね」

「えっ」

「俺は君を見ているから」

「でも、、、」

「ちゃんと見ているよ。あの彼女は、俺の憧れの人だっただけだよ。君の、この日記の持ち主の気持ちを知ったら、嬉しくなったよ。俺のことばかりで」

「今日は、いつものソファには座っていないんですね?」

「うん、一緒に座る?」

「はい」


 彼女は少し赤い顔で嬉しそうに笑った。



 二人の出会い(彼女の片想いの始まり)


「もう! どうして上にあるのよ」


 私は必死に背伸びをして、上の本棚にある本を取るのに苦戦中。

 周りには誰もいないし、肌寒いし、カビ臭い。

 少し怖いから、早く本を借りて帰りたいのに。


「あと少しなのに。どうして私の身長は、もう少し伸びてくれなかったのよ。それに、この本棚もいけないのよ」


 私は自分の身長に文句を言う。

 そして、本棚にも文句を言う。


「本棚が悪いよね。ごめんね」


 私の後ろから手が伸びてきて、私の欲しい本を誰かが取ってくれた。

 そして、その人はクスクスと笑いながら言った。


「あっ、すみません。ありがとうございます」


 私は後ろを振り向き、その相手を見た。

 優しい眼差しに、私は動けなくなった。


「次からは、取ってほしい本があったら言ってよ。俺はいつも、あのソファにいるからさ」

「あっ、はい」


 彼は、じゃあねと言うと、ソファに座った。

 そして彼はどこか遠くを見ている。

 さっきの優しい眼差しで。


 彼の視線の先を見ると、そこには図書館でバイトをしている女の人がいた。

 彼女は笑顔が可愛い人で、とても美人さんだ。


 一瞬で、彼は彼女を好きなんだと分かった。

 そして一瞬で、私は片想いが始まるんだと分かった。


『四月

 彼に恋をした

 彼の眼差しが好き

 彼の優しさが好き

 彼の笑う顔が好き

 私の片想いの始まり』

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

次のお話は、遊園地で助けてもらった相手を忘れられない主人公の物語。

鏡の迷路で迷う主人公を、手を繋いで出口まで助けてくれた女の子。

その女の子の手の温もりしか分からない。

顔も名前も分からない相手をどう探す?

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― 新着の感想 ―
[一言] あらぁ(*´∀`*) もう(*´∇`*) ふふふ、温かい気持ちになりました♪
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