【七十九人目】 手紙から始まる恋も面白い
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「あれ? 封筒?」
俺は学校に着いて、引き出しの中に教科書を入れようとした時、封筒を見つけた。
真っ白な封筒には何も書いていない。
俺は封筒を開けて一枚の便箋を取り出す。
周りには誰もいない。
俺は誰よりも先に学校に着くから、教室には誰もいない。
『この手紙はあなたへの愛を表す為にある手紙です。あなたが私を見つけてくれたのなら、私はあなたに伝えます。好きだと』
「何だ? 俺に言っているのか?」
手紙の内容の意味が分からない。
俺がこの手紙の相手を見つける?
どうやって?
顔も名前も分からない相手をどう探せと?
俺がその手紙を封筒に入れた時、教室のドアが開いて友達が入ってきた。
「何でお前がその封筒を持っているんだよ?」
「えっ、これってお前のなのか?」
「違うよ。その封筒は、最近流行っている願いの封筒だよ」
「願いの封筒?」
「そう。願いを書いた紙を封筒に入れて、願いを叶えたい相手に送るんだ」
「名前も書いていないのにどうしたい訳?」
「名前は書いたらダメなんだよ。だから何処かにヒントがあるはずなんだよ」
俺は封筒を裏と表と見たが何もない。
それなら中だと思って、逆さにしたけど封筒の中には何も入っていない。
「何処にもヒントはないんだけど?」
「その便箋の文字に見覚えはないのかよ?」
「見たこともないと言うより、人の文字なんて覚えていないよ」
この手紙の謎を解かなければ、この手紙の願いは叶わない。
俺は封筒の封を締めようとした時、違和感を覚えた。
何か封の所についている。
よく見るとそれは糊が乾いた跡だった。
この封筒を開けた時、封なんてしていなかった。
糊なんて必要ないはず。
俺が糊を見ると、光の当たり具合いでピカピカと光っていた。
その糊の跡は文字に見える。
『リカシツ』
理科室に行けば何かあるのか?
俺は理科室へ急いだ。
友達が何処にいくんだよと言っていたが、俺は答えない。
何故なら、一人でこの手紙の相手に会いたかったからだ。
理科室に着いたが相手はいない。
まだ謎があるのか?
理科室を歩き回って何かヒントがないのか探す。
さっきは糊の跡でこの場所が分かった。
それなら糊の跡を探せばいいのか?
俺はまず机に糊がついていないのか確認をする。
目で見ながら、そして手で触って確認をしていく。
机には何もなかった。
次は椅子だ。
一つ一つ、丁寧に確認をする。
たくさんある椅子を確認するには時間がかかる。
半分ほど確認をした所で、授業が始まりそうになり教室へ戻った。
授業なんて頭に入らない。
早く手紙の相手を知りたくて仕方がない。
放課後になって、また理科室へと向かう。
朝の途中から椅子の確認を始める。
「あっ、あった」
やっと見つけた。
椅子の上に糊の乾いた跡があった。
横から上からと見ながら、光の加減で書いている言葉を見つける。
『ココ』
この席の人ということか?
俺は、クラスメイトの誰がここに座るのか思い出す。
この席は男子だ。
出席番号順に座るから、この席は全てのクラスで男子が座る席だ。
男子が俺に告白ってことなのか?
俺は男子と恋愛をするなんて考えたこともないから、この手紙の相手を探すことをやめた。
手紙の相手には悪いが、探さないということは、諦めてほしいということだと気付いてほしい。
◇
それから一ヶ月ほど経った。
手紙のことなんて忘れていた。
「この席、教室と同じ席だよ」
俺は理科の授業で、二階にある理科室に来ている。
女子のクラスメイトの声を聞いて、俺は手紙のことを思い出した。
「理科室と教室が同じ席ってどういう意味なんだよ?」
俺はクラスメイトの女子に訊く。
「私達の教室は、この理科室の下でしょう? だから同じなのよ」
そうか。
そういうことか。
何で気付かなかったんだろう?
俺ってバカだ。
俺は急いで、糊の跡がついている椅子があった場所へ向かう。
しかし糊のついた椅子はない。
せっかく、気付いたのに。
椅子がなくなっている。
手紙の相手は諦めたのか?
それでも俺は諦められない。
俺はもう一度、理科室の椅子を全て確認する。
放課後の誰もいない理科室で。
「あっ、あった」
糊のついた椅子は場所が変わっていた。
俺はすぐに上の階の教室へ向かう。
この席の誰かが俺を待っている。
教室について息を整える。
そして教室のドアを開ける。
俺は理科室と同じ席を見る。
いた!
そこには美少女がいた。
彼女は、誰からも慕われて可愛いと言われている美少女だ。
彼女が俺に手紙をくれた相手?
「君が?」
俺がそう言うと彼女は小さく頷いた。
「ごめんね。遅くなって」
彼女は首を大きく振って許してくれた。
「手紙の意味を教えてくれるかな?」
「私はあなたが好きです」
「どうして俺なの?」
「それは、あなたが私を助けてくれたからです」
「俺が?」
それから彼女は、俺が彼女を助けたストーリーを教えてくれた。
彼女は友達に、可愛いって得だよねと言われていたそうだ。
彼女はいつも、何も言えず苦笑いをしていた。
そんなある日、いつものように彼女が、可愛いって得だよねと言われて何も言えずにいると、俺がボソッと言ったそうだ。
「可愛いのも大変だなって言って、私の心を軽くして救ってくれました」
「そんなことってあったかな?」
「ありました。私を救ってくれたあなたを、私は好きになりました。だから手紙を送りました」
彼女はニッコリ笑って俺に言った。
彼女の笑顔は可愛い。
こんなに可愛い彼女が、俺を好きだなんて信じられない。
「君の笑顔を見たら、思い出したよ」
「本当ですか?」
彼女は嬉しそうにしている。
「俺は思うんだけどさ、可愛いことが特なのかは、君しか分からないことだよね? 君が自分の口で言うなら分かるけど、友達が言っているんだよ? それに君は、何も言っていなかったからね、嬉しくはないんだろうなあと思ったんだよ」
「誰も私の気持ちなんて考えてくれません。私のことを羨ましく思うだけなんです。私だって色々あるのに、、、」
「でもそれは、君がニコニコ笑っていたからかもね。友達は何でも言っていいんだと思ってしまうんだよ」
「笑うことはダメなことですか?」
「ダメじゃないけど、傷ついているなら笑わないで悲しんでもいいんじゃないかな?」
「悲しむ?」
「そう。だって君は傷ついたんだから、相手に気付いて欲しいでしょう?」
「はい」
彼女は元気に答えた。
やっぱり嫌なことは嫌だと、はっきり言わなければ分からない。
彼女にはそれが足りなかったんだよ。
彼女が自分の気持ちをちゃんと表現できれば、解決するはず。
いつもニコニコだけじゃ、相手には伝わらない。
「ところで、君の手紙の願い事って何なの?」
「それは、あなたが私を見つけてくれることです」
「それは叶ったよね?」
「はい。でも、もう一つあります」
彼女はそう言って、また真っ白の封筒を俺に渡してきた。
「また謎解きがあるの?」
「いいえ」
彼女はそう言って笑った。
俺は封筒を開けると、便箋が入っていた。
『好きです。私をあなたの隣に置いて下さい』
隣に置くってどういうこと?
まるで置き物のように置くのかな?
やっぱり、また謎解きだ。
まあ、すぐに分かるけどね。
「俺は、ずっと君の隣にいるよ」
俺がそう言うと、彼女は嬉しそうに笑って、はい! と言った。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、おちこぼれと呼ばれる主人公の物語。
そんな彼に、いきなり婚約者だと言う年下の女の子が現れた。




