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【七十五人目】 卒業するのは学校だけじゃなくて幼馴染みの彼女からもするみたいだ

ブクマや評価など誠にありがとうございます。

執筆の励みになっております。

 もうすぐ卒業式だ。

 俺はもうすぐ高校を卒業する。

 桜もポツポツと咲いている。


 いつもの通り慣れた道を、幼馴染みの彼女と歩く。

 この道も彼女と、あと何回一緒に歩けるのだろう?


「もうすぐ卒業だね」

「そうだな」


 俺は前を見ながら話す。

 彼女を見ることはない。

 何で見ないのだろう?

 あと少しで、彼女とこの道を歩くことはなくなるのに。


「ねぇ、卒業しても、違う場所に行っても、幼馴染みだよね?」


 彼女が、俺の方を見て言っているのが横目で見て分かる。


「そうだな。それは変わらないと思うよ」

「そっか」


 彼女の声のトーンが、少し下がった気がした。


「何? 嬉しくない訳? もしかして幼馴染みが嫌だった? 俺のことが嫌いだったとか?」

「何でそうなるのよ」


 彼女は前を見る俺の肩を叩く。

 それでも俺は彼女を見ない。

 俺の反応が薄いのは、俺が喋りたくないと勘違いをして、彼女は黙って歩く。


「あっ、見て」


 彼女はいきなり立ち止まって言った。

 俺はそんな彼女を見た。


「やっと見てくれたわね」


 彼女はそう言って笑った。


「何だよ。騙したのかよ?」

「違うわよ。ほらっ、あれを見てよ。あの桜の木だけ満開なのよ」


 俺は彼女が指を差す方を見る。

 公園にたくさんの桜の木があるのに、その一本だけが綺麗に咲き誇っている。

 まるで私だけを見てと言っているようだ。


「見に行こうよ」

「でも学校に遅刻するだろう?」

「今日ぐらい、いいじゃない。最後の思い出よ」


 彼女はそう言って俺の手を握る。

 彼女と手を繋ぐのは幼稚園の頃くらい久し振りだ。

 何故かドキッとした。

 彼女の手はいつの間にか、俺より小さくて細くなっていた。


 いやっ、俺の手が彼女よりも大きくなっていただけだ。


「綺麗ね」


 彼女は俺と手を繋いだまま桜を見上げて言った。

 俺はそんな彼女を見ていた。

 彼女の横顔は桜よりも綺麗に見えた。


「見過ぎよ。私は桜じゃないわ」


 彼女は桜を見上げながら言った。

 俺は彼女の言葉で我に返る。


「ごめん」

「いいよ。その代わり、、、」


 彼女は言葉を途中で言わず、俺を見つめた。


「その代わり何?」

「幼馴染みから卒業してよ」

「どういう意味?」

「私は、あなたの幼馴染みじゃ嫌なの」

「やっぱり俺が嫌いだったのかよ?」

「違うって言ったでしょう?」

「それなら何だよ?」

「私はあなたが好きなの」

「えっ」

「だから私を見てもいいけど、幼馴染みから卒業してよ」


 彼女の顔は不安でいっぱいの顔だった。

 そんな彼女の顔を、俺は見たくなくて顔を背けた。


「そうなんだね。私は、あなたの幼馴染みのままなのね」


 彼女はそう言って、俺に背を向け公園から出ようと歩いていく。

 違うんだ。

 俺が君に不安そうな顔をさせていると思うと、目を背けたくなっただけ。

 俺は君が、、、。


 俺は彼女に離れてほしくはなくて、彼女の腕を引っ張り抱き寄せた。


「違うんだ。俺は君にそんな顔をさせたくなくて、それを見たくなくて背けただけなんだ」

「どういう意味?」

「分からないけど、俺は君には笑っていて欲しいし、俺から離れないで欲しいんだ」

「離れないのは無理でしょう? もうすぐ卒業だよ?」

「離れないのは無理でも、君が俺を想っていてくれればそれでいいんだ」

「そんなのずっと前から私は想っているよ?」


 彼女はそう言って俺を見上げて笑った。

 俺はその顔をずっと見ていたいんだ。

 これが恋だと言うのなら、俺はずっと前から彼女を、幼馴染みとして見ていなかったんだと思う。


「幼馴染みから卒業するよ」


 俺がそう言うと、彼女は抱き寄せていた俺の腕から抜け出し、桜の木を見上げた。

 そして桜の花びらが風で舞っているのを見つけ、手を伸ばした。


「ねぇ、卒業証書だよ」


 彼女はそう言って、さっき取った桜の花びらを俺に見せた。


「卒業証書?」

「そうだよ。あなたは幼馴染みの関係を卒業するから、卒業証書が必要でしょう?」

「そうだね」


 俺は、彼女が手の平に乗せた桜の花びらの上から手を重ねた。


「なっ何をしてるの?」

「君も幼馴染みから卒業だろう?」

「あっ、そうだね。二人とも卒業だね」

「そう。そして新しく恋人になるんだ」


 俺はそう言って、彼女の指の間に指を入れ恋人繋ぎをする。


「手を繋ぐ前に、桜の花びらをノートに挟んでもいい?」

「えっ、何で?」

「押し花にして、しおりにするわ。大事な卒業証書だからね」


 彼女は嬉しそうに、桜の花びらをノートに挟んでいる。

 ノートをバッグに入れたら彼女は俺を見る。


「私達は、もう恋人なの?」

「そうだよ。だから、ほらっ」


 俺は彼女に手を差し出す。

 その手に彼女の細い指が絡んで、恋人繋ぎをする。


「恋人は卒業しないからね」


 彼女はそう言って、少し頬を赤く染めた。


「恋人から卒業しなかったら夫婦になれないよ?」

「もう!」


 俺の言葉を聞いて、彼女は拗ねている。

 でもそれは、恥ずかしさの裏返しだ。


 彼女は昔から、恥ずかしくなると拗ねる。

 俺の前でだけで。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、主人公の隣の席に、可愛い転校生の彼女がきた。

主人公は一人が好きだったのに、彼女と秘密の場所で過ごすことで彼の気持ちは変わっていく。

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