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【七十四人目】 世界が可愛い女子高生のお陰で色付いていく

ブクマや評価など誠に、ありがとうございます。

毎日、執筆の励みになっております。

 俺はずっと一人だった。

 白と黒の世界で一人。

 俺の気持ちを分かる人なんていない。

 だから俺は、他の人の気持ちも分からない。


 それでいい。

 俺は一人でも何も困らない。

 色がなくても問題はない。


 そんな俺は大学生になって、もっと孤独になった。

 家族のことも気にならなくなった。

 一人に慣れてしまったのだろうか?


 周りは楽しそうで、綺麗で色んな色があるのだろう。

 それが俺の世界では、白より黒が増えて、孤独を強く感じるようになった。


「あれ? お兄さん?」


 俺は前から来る、見覚えのある女子高生に声をかけられた。

 彼女は俺の妹の友達だったよな?

 名前は知らない。


「やっぱりだぁ。大学の帰りですか?」


 彼女はニコニコと笑って言う。

 何が楽しいのだろうか?


「そうだけど」

「じゃあ、家に帰ります?」

「他に行く所はないからね」

「それなら一緒に帰りましょうよ」

「一緒に帰る?」


 俺は一人がいいんだよ。


「そうです。学校のプリントを届けに、目的地は同じなので一緒に帰りましょう?」

「学校のプリント? 何で?」

「お兄さん、もしかして自分の妹が、風邪で学校を休んだのを知らないんですか?」

「へぇ~そうだったんだ」


 朝は、妹を見かけないと思っていたが、部屋で寝ていたからだったのか。


「お兄さん、ヒドイです。もしかして私のことも、本当は誰だか分からないんじゃないですか?」

「見たことはあるけど、名前は知らない」

「ヒドイ」


 彼女は落ち込みながら歩く。

 彼女は感情を、体を使って表現するみたいだ。

 落ち込む姿が、後ろから見ていると可哀想になってくる。


 でも俺には関係ない。

 彼女がどれだけ落ち込んだとしても、彼女は色のある世界にいるのだから、俺が心配した所でなにもならない。

 世界が違うのだから。


「お兄さん」


 彼女はいきなり振り向いて俺を呼んだ。


「何?」

「心配して下さいよ。私は落ち込んでいるんですよ?」

「俺が心配して君の何になるの?」

「そんなの、嬉しい気持ちになります」


 彼女はそう言って笑った。


 俺が心配したら嬉しい?

 そんなことがある訳がない。

 こんな白黒しかない俺の世界から彼女を心配したら、彼女まで白黒の世界になってしまう。


「ダメだよ。俺には君を心配することはできないよ」

「どうしてですか?」

「君も白黒になるからね」

「白黒?」


 彼女は首を傾げて言った。


「何でもないんだ」

「う~ん。白黒といえば、あの場所に行きましょうよ」

「あの場所?」

「時間は、あるんですよね?」

「まあ、することはないからね」

「それなら行きましょう」


 彼女はそう言って俺の腕を引っ張る。


「何処に?」

「それは行ってからのお楽しみです」


 彼女はそう言ってウインクをした。

 キレイに片目だけ閉じてウインクをした彼女は、可愛かった。


「着きましたよ」


 彼女がそう言って着いた場所は、俺ん家の近所の楽器を売っているお店だった。

 彼女は俺の腕を引っ張り中に入って、入り口の近くのピアノの前で止まった。


「ピアノ?」

「はい。白黒といえばピアノの鍵盤です」

「そういう意味じゃないんだけどなあ」


 でも、俺と彼女の前には白と黒しかない。

 色のある彼女の世界と色のない俺の世界が、重なっているように感じた。


「いいじゃないですか。私はピアノが好きなんです」


 彼女はそう言ってピアノの前にある椅子に座り、鍵盤の上に綺麗な白く長い指を乗せた。

 するとその彼女の指は動き出す。

 軽やかに鍵盤の上で動く指に、俺は目を奪われていた。


 見ることに必死で、音色を聴いていなかった。

 慌てて音色を聴いてみると、その音色は俺の心も奪った。


 何と言えばいいのか分からない。

 ただ俺の世界に一色だけ増えたんだ。


 白と黒と彼女の唇の色と同じで赤色が。

 白黒の世界に赤色の花が咲いていく。


「おっ、お兄さん?」


 彼女は俺を見て驚いている。

 そして手が止まった。

 音色が止まると、俺の世界の赤色の花も咲かなくなった。

 もっと赤色の花がほしい。


「続けて」

「でもお兄さん泣いていますよ?」


 そう。

 彼女が驚いたのは、俺が泣いていたからだ。

 そんなことは気にせず、音色を聴いていたい。


「続けて」

「はい」


 彼女は俺の気持ちを分かってくれた。

 彼女は、また綺麗な白く長い指を動かし、音色を響かせる。


 これがいい。

 この音色が俺の世界に色をつけていく。

 赤だけではなくて、黄色や青色も出てきた。

 白黒の世界に色がついていく。


 彼女は楽しそうにピアノを弾いている。

 俺も弾きたくなった。

 彼女の指がある横に指を置いた。


「弾けるんですか?」

「全然。だから教えてよ」

「分かりました」


 彼女はそう言って俺の人差し指を持った。

 そして俺が弾くパートを、俺の人差し指を動かしながら教えてくれた。


 それから、彼女が教えてくれたように鍵盤に触れる。

 俺にも音色は出せた。

 彼女の音色と俺の音色が重なった。

 その時、俺の世界は白黒から色とりどりの世界へと変わった。


「ありがとう。俺は寂しかったみたいだ。そして自分勝手だったよ」


 俺はピアノを弾きながら彼女にお礼を言った。


 相手の立ち場に立ち考えなかった俺だから、白黒の世界しか見えなかったんだ。

 相手のことを想いながら、同じペースでピアノを弾く彼女に教えてもらったよ。


 一人では色は限られる。

 二人では色は増える。

 一人では目の前しか見えない。

 二人では前も後ろも、全てが見える。


 人の立ち場に立つということは、色んな角度から見ること。

 色んな角度が見ると、色んな色が見える。


 彼女と同じカラフルで綺麗な世界が。


「こちらこそありがとうございます」

「どうして君がお礼を言うの?」

「だって、お兄さんの笑顔を初めて見れたからです」


 俺の笑顔?

 俺、笑ってたんだ?

 俺、笑えるんだ?


 俺の世界は、白黒から色んな色がある世界へ変わった。

 それは彼女のお陰だ。

 彼女に感謝をして、彼女を一生幸せにしたいと思った。


 目の前には、白黒の鍵盤が並んでいるが、それはその色で合っている。

 横を見ると笑顔の可愛い彼女がいる。


 彼女はキラキラと輝いて見えた。

 俺の世界にはキラキラ輝くものは、まだ彼女だけだが、彼女といれば必ず見えるはず。


 だって彼女は、俺の隣でこんなに光り輝いているのだから、他も輝かせてくれるはず。


「私の名前は思い出しましたか?」


 彼女はピアノを弾きながら言った。


「俺、君の名前を聞いたことがないから、分からないよ」

「あっバレました? お兄さんには、名前は教えていないんですよ」

「俺って君に騙された?」

「お兄さんは騙されるタイプですね」


 彼女はそう言ってクスクスと笑ったけど、その後小さな声で言ったんだ。


「そんなお兄さんが大好きですよ」

読んで頂き誠にありがとうございます。


次のお話は、もうすぐ卒業をする幼馴染みの二人の物語。

二人で見る桜は綺麗だが、それよりも彼女の横顔の方が綺麗で、見惚れていた主人公。

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