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【七十一人目】 最初が嫌な俺を美少女の彼女が助けてくれる

ブクマや評価などありがとうございます。

執筆の励みになっております。

 何でも人より上に立つのが嫌だった。

 俺は目立つことが嫌だった。

 だからできるだけ最初にならないように、二番目や三番目、たまには最後を選ぶ。


 それでいい。


 今日も先生が、出した問題を解ける人はいるのか聞いている。

 俺は分かっていても言わない。

 目立つことが嫌な俺が言う訳がない。

 するとクラスメイトの一人が言う。

 間違いだった。


 次もクラスメイトの一人が言うが間違い。

 何でこんな問題も分かんないんだよ。

 俺は少しイライラする。


「私が言うから答えを教えて」


 俺は隣の席の、学校一の美少女に言われた。

 俺が答えを彼女に教えると、彼女は手を上げた。

 彼女が答えを言うと、先生は正解だと言った。


 彼女は先生に褒められた後、俺を見て口パクでありがとうと言った。

 こちらこそありがとうと言いたかった。

 イライラが解消されたのだから。


 しかし彼女は、どうして俺に答えを聞いてきたのだろう?

 チラッと彼女を見ると、窓の外を頬杖をついて見ていた。


 学校一の美少女と、俺は関わることはないんだと思っていた。

 彼女は一番可愛くて、俺にはなりたくない一番の人だから。



「ねぇ、どうしてあなたはいつも我慢をしているの?」


 ある日の放課後。

 俺と美少女の彼女は、日直の日誌を書いていた。

 正確に言うと書くのは彼女で、俺はそれを見ていただけだ。

 その時、彼女は日誌を書きながら言った。


「我慢なんてしていないよ?」

「してるよ。本当は分かっているのに発表しないし、本当は授業についていけない私に、教えてあげたいって思っているでしょう?」

「そっ、それは……」

「あなたは気付いていないんだと思うけど、我慢している時のあなたは、自分の左手の手首を握り締めているのよ?」

「えっ」


 自分でも気付いていないことを、彼女は気付いていたのか?

 それに俺って我慢していたのか?

 俺は一番最初になりたかったのか?


「あなたが言いたくないなら、私があなたの代わりに言ってあげるよ」

「どうして?」

「だって、あなたはいつも苦しそうだから」

「俺が?」

「そうだよ。あなたの苦しそうな顔は、見たくはないの。そして、助けてあげたくなるの」


 彼女に助けてもらう?

 俺がなりたくない一番になっている彼女に、助けてもらう?

 そんなのできない。

 だって俺は、一番から遠い方がいいから。


「大丈夫だから」

「大丈夫じゃないよ。あなたの手首が可哀想よ」

「手首?」


 俺は彼女に言われて手首を見る。

 アザも傷もない。

 何が可哀想なのだろう?


「何も見えないけど、手首は痛がってるよ。あなたの心も」

「心も?」

「本当は言いたいのに我慢して、その我慢が心に溜まって大きくなって痛がっているのよ」

「君は子供みたいなことを言うんだね?」

「あなたはそう言って笑うけど、私は経験したから分かるの」

「君が我慢することってあるの?」

「私だって我慢しているのよ。みんなが私を美少女と呼ぶから、私はみんなの期待に応えるの。そうしていたら私の心が痛くなったの」

「そんな風には見えなかったよ」

「昔の話だからね」


 彼女はそう言って笑った。

 その笑顔から、そんな経験をしていたなんて思えないほど、彼女の笑顔は綺麗で俺まで笑いそうになった。


「だから私はあなたを助けるわ。あなたの代わりに言ってあげるから、私にあなたの言いたいことを教えてよ」


 彼女は俺を助けて何になるのだろう?


「俺を助けて君は何の得があるの?」

「それは……」


 彼女はそう言ってうつむいた。


「私の心を救ったのはあなたなの」

「えっ、俺?」

「私が中学一年生の時に、私は一人になりたくて、近くの公園の桜を見に行ったの。そこであなたが桜に話しかけていたわ」

「えっ、そんな恥ずかしい所を見られていたんだね?」

「恥ずかしい事じゃないわよ。私は、あなたのことを運命の人だと思ったんだからね」

「えっと、それは、その、どういう意味でしょうか?」

「あっ」


 彼女はまたうつむいた。

 彼女の気持ちは分かった。

 でもまずは、あの日、俺が桜に話しかけていたことを、彼女にもう一度言おう。


「君は可哀想だね。こんなに綺麗に花を咲かせても、今の時期しか見てもらえないなんて。でも俺は、君をずっと見ているから、だから安心して好きな時に花を咲かせてもいいよ。君は君がしたいようにすればいいんだよ」

「それよ。私は私がしたいようにすればいいの」


 彼女は泣きそうな顔をして俺を見つめる。


「俺にはまだ、したいようにはできないから、君が助けてくれるかな?」

「うん。いいよ。私がしたいのは運命の人を助ける事だからね」

「俺って君にとってどんな存在なの?」

「運命の人よ」

「それって好きってこと?」

「うん。大好きよ」


 彼女はそう言って笑った。

 その笑顔を見たら、桜に話しかけていたあの日を思い出した。


「ねえ、その桜に話しかけていた日、君を見たかもしれないよ」

「私を?」

「あの日、楽しそうに、スキップをしている中学生の後ろ姿を見たんだ」

「それ私よ。あの日は心が軽くなって、何故かスキップしたくなっちゃったの。見られてたんだ」


 彼女は照れ笑いをした。


「早く日直日誌を書いて、あの桜を見に行こうか?」

「そうね。桜が待っているかもね」


 そして俺達は桜を見に行く。

 まだ蕾しかない桜を見て、二人でお礼を言った。


「彼女に出会わせてくれてありがとう」

「彼に出会わせてくれてありがとう」


 桜はちゃんと聞いてくれている。

 そんな風に思う俺は変なのかな?


 一番になんてなりたくない。

 それに、目立ちたくはない。


 それでも俺は


 彼女の一番になりたい。

 彼女の見ている世界では、目立ちたい。


 だって、彼女には知ってほしいから。



 彼女を好きだってことを。

 俺の存在を。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、婚約破棄をされそうになる主人公の彼は、婚約者の彼女が本当はそう思っていないことは分かっているという物語。

それなのに彼女は悲しそうにその原因を言う。

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