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【七人目】 運命の人と思っていたのに彼女は突然、消えたから全てがもう遅いんだと思っていた

 彼女と俺が出会ったのは俺が六歳の頃。

 彼女の年齢は聞いていないから分からない。

 俺達の出会いは、彼女が転んで泣いている所を、俺が見つけ声をかけたことが始まりだった。



「どうしたの?」

「転んで足が痛いの」

「大丈夫?」

「大丈夫じゃないよ。痛くて歩けないの」

「それなら俺が支えてあげるから家まで送るよ」

「ママが近くの公園にいるの。だからその公園まででいいよ」

「分かったよ。さあ、俺に掴まって」

「うん」


 そして少女を支えながら俺は公園へ向かった。

 それから何度も彼女と遊ぶようになった。



「あなたとは運命の人だね」

「運命の人?」

「運命の人はずっと一緒にいる人なんだって、ママが言ってたの」

「君は俺とずっと一緒にいてくれるってこと?」

「そうだよ。ずっと一緒だよ」

「どうして一緒にいてくれるの?」

「だってあなたは私を助けてくれたからだよ」

「それだけ?」

「それだけじゃダメなの?」

「そんなことはないよ。君は俺の運命の人だね」

「そうだよあなたは私の運命の人だよ」


 小さかった俺達は、運命の人の意味をちゃんと知らないまま一緒にいると誓っていた。

 俺もずっと一緒にいると思っていたのに、彼女は突然、俺の前から消えた。


 毎日、一緒に遊んでいたのに、いきなり待ち合わせの公園に来なくなった彼女。

 毎日、俺は待っていたが彼女は来ることはなかった。


 いつしか俺も小学生になり、学校が忙しくなり公園へ行かなくなった。

 そして俺は大きくなり、彼女が運命の人じゃないのだと気付いた。


◇◇


 彼女との出会いから十年が経った。

 俺は十六歳になっていた。

 彼女のことはほとんど覚えていない。

 顔も声もほとんど思い出せない。


 ある日の日曜日に甥っ子が遊びに来た。

 俺は彼女と出会った公園へ甥っ子と向かった。

 昔はたくさん子供が遊んでいたのに今はゼロだ。


 子供じゃなくて散歩をするおじいさんやおばあさんくらいしかいない。

 俺はすべり台へと甥っ子と向かう。

 甥っ子は楽しそうに滑っている。

 可愛い甥っ子。


 すると俺の後ろで女の子の泣く声がした。

 俺は振り返り女の子の元に近寄る。


「大丈夫?」

「痛い」

「血は出ていないから泣かないで」

「でも痛いもん」

「それなら君の痛いのがなくなるまで、俺が一緒にいてあげるから泣かないでよ」

「お兄ちゃんが一緒にいてくれるの?」

「うん。一緒だよ」

「運命の人だね」

「えっ」

「ずっと一緒にいる人は運命の人だってお姉ちゃんが言ってたよ」

「そうなんだね。君の運命の人が俺なんて嬉しいよ」

「私も嬉しいよ」


 女の子は嬉しそうに笑っている。

 もう、泣いてなんかいない。


「もう、泣いてないね」

「あっ、本当だぁ」

「君の運命の人は俺じゃないんだよ」

「どうして?」

「君とはずっと一緒にはいられないからだよ。俺にはもう、運命の人がいるんだ」

「お兄ちゃんには運命の人がいるの?」

「そうだよ。お兄ちゃんはここで昔、出会った女の子の運命の人なんだ」

「その女の子はどこにいるの?」

「ん? 待ってるんだけど来ないんだ」

「私も待ってる人がいるから来るまで一緒に待とうよ」

「そうだね、一緒に遊んで待ってようね」

「うん」


 そして俺は女の子と甥っ子と三人で遊んだ。

 二人は仲良くなっていた。

 

「あっお迎えが来たよ」


 女の子が嬉しそうに、公園の入り口から急いで走って来る女性を見ている。


「ごめんね。隣の人の話が長くて。待たせたよね?」


 女性は女の子にそう言って俺と甥っ子を見る。


「もしかして一緒に遊んでくれたんですか?」

「あっ、はい」


 女性は俺に聞いてきたから俺はそうだと答えた。


「ありがとうございます」


 女性は笑顔を見せてお礼を言った。

 女の子の親にしては若い人だなあと思った。


「さあ、帰ろうか?」

「もう帰るの?」


 女の子はまだ遊びたいと女性に言っていたが、女性が何かを耳打ちしたら、すんなりと言うことを聞く女の子。


「私、帰るね」

「お世話になりました。ありがとうございます」


 女の子が言った後、女性がまたお礼を言った。


「私の二人の運命の人。バイバイ。お兄ちゃんは運命の人と出会えるといいね」

「バイバイ」


 女の子が大きく手を振って言うと、甥っ子も女の子に大きく手を振って言った。


「君も、もう泣かないでよ」

「うん」


 俺も女の子に小さく手を振って言った。

 そして女の子達は公園の入り口へ向かっている。


「あの男の人は運命の人を待ってるの?」


 女の子を迎えに来た女性は、何故か俺の運命の人のことを女の子に訊いている。


「そうだよ。あのお兄ちゃんは運命の人が来るのを、ここで待ってるんだよ」

「そうなんだね。運命の人が来てくれるといいわね」

「ねぇ、お家に帰ったら待ってるんだよね?」

「うん。待ってるよ」

「早く帰ろうよ」

「そうね」


 女の子に手を引っ張られながら、女性は公園を出ていった。

 俺も甥っ子と一緒に家へ帰った。


 運命の人の話を女の子としたからなのか、昔の彼女のことを思い出した。

 いつも楽しそうに遊ぶ彼女は、俺を笑顔にしてくれていれた。


 だから彼女が来なくなって、俺はすごく落ち込んだ。

 明日は来るはずと思いながら毎日、公園から家へ帰っていた。


 彼女がいないと、楽しかった思い出が懐かしくなって泣きそうになることもあった。

 彼女と遊びたいのに、遊べない苛立ちを彼女のせいにしていた。


 彼女には何か理由があると最初は思っていた。

 しかし時間が経ち大きくなると、彼女は俺のことを嫌いになって、遊ばなくなったんだと解釈するようになった。


 そんな俺はいつから彼女と過ごさないことに慣れたのだろう?

 時間というものは色んなことを忘れさせた。


 そんな忘れていた記憶が女の子のお陰で思い出せた。

 また昔の彼女に会いたくなった。

 昔のように彼女の笑顔を見たくなった。


 昔の彼女のことを思い出した次の日から俺は、また公園で彼女を待つことにした。

 来ることはないと思う。


 でも、もし彼女が運命の人なら、、、


 しかし、公園には散歩をするおじいちゃんとおばあちゃんしかいない。

 公園のブランコに座り、地面を足で蹴ってブランコに乗る。


 小さく前後に動くブランコに昔の思い出を思い出す。

 あれは彼女に元気がなかった日。


◇◇◇


「どうしたの?」


 俺はブランコに座って下を向いている彼女の後ろに立ち、心配しながら訊いた。


「運命の人は離れたりしないんだよね?」

「そうだって君が言ってたじゃん」

「そうだよね。それなら運命の人じゃなかったら、離れたりするってことだよね?」

「まあ、そうなるね」

「離れるってどのくらい離れたら運命の人じゃなくなるの?」

「それは分からないよ。君と俺だって、帰る家は違うから離れるけど、次の日には会うから運命の人だよね?」

「それなら私達で決めようよ」


 彼女はそう言って振り向いた。

 彼女はいつもの笑顔で言った。


「俺達だけの運命の人の距離を決めるんだね?」

「そうだよ。私はもう、決めてるの」

「本当? 教えてよ」

「あのね、私達の運命の人の距離は、次また会う日までよ」

「ん? 距離だよ?」

「そうだよ。私達は帰る家が違っても、次の日にはあなたとここで遊んでいるでしょう?」

「そうだね」

「だからどんなに遠くても次また会う日までは運命の人なんだよ」

「それだと次また会う日が来なかったらどうするの?」


 俺の言葉に彼女は悩みだす。


「大人になれば運命の人なのか分かるんだと思うの。だから今は、次また会う日までは運命の人よ」

「そうだね。また明日、会えば君は運命の人だよ」

「、、、そうだね」


 この次の日から彼女は来なくなった。

 あの日の彼女はどこかいつもと違っていた。

 今、思い出すとそう思う。


 彼女は離れることを俺に伝えているようだ。

 離れても忘れないでほしいと伝えている。

 それなのに、俺は彼女を忘れた。


 全てを彼女のせいにして。

 彼女のことを忘れていく自分は悪くないと。

 自分を正当化していた。


 彼女のせいにしていたことを彼女に謝りたくて、俺はこの公園で彼女を待つ。

 彼女が来なくても、俺は諦めがつくまでここで待つことに決めたんだ。


◇◇◇◇


 いつものように公園へ向かう。

 ブランコに座ろうと思ったら、先客がいた。


 その先客は女子高の制服を着ている。

 この公園には年配者しかいないからなのか、俺の視界にすぐに入った。


 俺は静かに女子高生の後ろに立つ。

 すると女子高生は下を見てぶつぶつと何か言っている。


「来るわけないよね。だってもう、十年だもん。私のことなんて忘れて、可愛い彼女とかいるわよね。運命の人の意味も分からない歳だったし」


 女子高生の言葉を聞いて俺は確信した。

 この女子高生は運命の人だと。


「どうしたの?」

「えっ」


 彼女が驚き振り向こうとした。


「振り向かないで。そのままで、運命の人なのか確認させて」

「うん」


 俺は彼女に言うと、彼女はまた下を向く。


「運命の人の距離は?」

「そんなの簡単よ。次また会う日よ」

「それはいつ?」

「今よ」


 彼女はそう言って振り向く。

 そして俺達は二人で驚く。


「あなたはこの前の、、、」

「君はこの前の女の子のお母さん?」


 俺の言葉に彼女はムッとした顔をする。


「私はあの子の叔母よ」

「若いお母さんだなあとは、思っていたんだ」

「私はあなたを見た時、弟の面倒を見る偉いお兄さんだなぁって思ったわ」

「弟じゃなくて甥っ子だよ」

「もう! 久しぶりに会えたのに最悪な再会ね」

「そんなことないよ。やっと出会えた。運命の人」


 彼女は泣きそうな顔で俺を見ている。

 どこか懐かしい顔に俺はドキッとする。

 彼女は俺を見上げる。


「もう、ずっと一緒にいるからね」

「うん。俺の運命の人」

「そうだね。私の運命の人」

「会いたかったよ」

「私も会いたかったよ」

「もう離れない。いいや、離さないよ」


 彼女が言った運命の人はずっと一緒にいる人。

 それは本当だ。

 どんなに離れていても、心は離れていない。


 心が運命の人を忘れなければまた必ず会えるんだって俺は思う。

 だってまた会いたいと思えば、誰だって会いに行くと思うんだ。


 運命の人と出会った場所に。

 だから忘れないでほしい。

 本当に運命があるなら、必ず二人は出会えるから。


 運命の人は必ず現れるから。

 必ず。

 どこかにいるから。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

ブックマーク登録や評価など、ありがとうございます。

次のお話は、学校で一番の美少女と話すことが増えた主人公の物語です。

主人公みたいなイケメンでもない相手にも、笑顔で話してくれる彼女。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 会えなかった10年が、運命の人なんだとより強く確信させる。 いやぁ、素敵ですね(^^♪ [一言] これからお互いを知っていく二人は、 楽しかったり、辛いこともあったりするんでしょうけど、…
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