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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~  作者: 来留美


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【六十六人目】 会社から帰る途中のカフェで本を読んでいる美少女を見るのが日課だった。

 今日も俺は会社帰りに、いつもの道を通る。

 人通りはあまりない。

 そんな道を歩きながら、途中で右側に建つオシャレなカフェを見る。


 いた!

 いつもの美少女だ。


 美少女は、そのカフェのテラス席の、一番左に座り一人で本を読んでいる。

 その美少女は女子高生だ。

 俺が彼女に、声をかけることはないと思う。


 だっておじさんと女子高生だから。

 おじさんが女子高生に声をかけたら、怪しいだろう?

 だから俺は、彼女の本を読んでいる姿を見るだけで満足だ。


 彼女の綺麗な座り方。

 彼女の綺麗な顔。

 彼女の綺麗な指。

 彼女の綺麗な髪。


 見ているだけで心が綺麗になる。

 今日の一日の疲れがなくなる。

 彼女は俺にとって癒しの存在だ。


 今日の彼女はどんな本を読んでいるのだろう。

 彼女の本の表紙は表紙カバーで見えない。

 だから俺は想像をする。


 今日の彼女の読んでいる本は、ファンタジーだ。

 女の子が大切な男の子を探して、旅をする話なんてどうかなぁ?


 女の子は、男の子を探しながら成長していくんだ。

 色んな出会いや別れもあって、ハラハラドキドキする内容で、たまに涙を誘う話もあるんだ。


 そんな話を彼女は一人で、あの席に座って読んでいるんだ。

 さぁ、今日の想像はこのくらいかなぁ?


 俺は、カフェの前の道を歩いているから、彼女が見えなくなる。

 俺は、彼女が見えなくなったことを確認して、足早に家へ帰る。


◇


 次の日、彼女をカフェで見かけなかった。

 今日は、カフェには来ていないみたいだ。

 その次の日も、彼女はカフェに来ていなかった。


 いつもの日課がなくなった俺は、ストレスが溜まりだしていた。

 だから俺は彼女に会えるまで、あのカフェに居座ることにした。

 仕事が終わったら、あのカフェに入り、本を読む。


 彼女と同じように一人で本を読む。

 いつもの彼女の隣の席で、彼女を待ちながら。


 俺は彼女を待つはずだったのに、本に夢中になっていた。

 俺の本は、最近流行りの異世界の話だった。

 最初は彼女が好きそうな話だなぁと思い買った。

 しかし、いつの間にか俺は、読むのに夢中になっていた。


◇◇


 主人公の女の子は、幼馴染みのことが好きだった。

 それなのに、幼馴染みの彼は異世界の住人で、異世界へと戻らなければならなくなった。

 それを知った彼女は、彼を諦めようと彼に自分の気持ちを伝えず別れた。


 それから何年か月日が流れた。

 彼女はまだ、幼馴染みの彼を忘れることができないでいた。

 そんな彼女の元に、一通の手紙が送られてきた。

 送り主は分からない。


 彼女がその手紙の封を開けた時、彼女は柔らかい光に包まれ目を閉じた。

 目を開けた時に、彼女の目の前に幼馴染みの彼がいた。

 彼はそして彼女に言った。


「やっと迎えに行けたよ」


 彼女はそんな彼に笑いながら言った。


「あなたが迎えに来たの? 私があなたの所に来たんでしょう?」


 二人はやっと再開できてその後、抱き合ったけれど、これがまだ終わりではなかった。

 彼は彼女に言った。


「君はこの国の王子の婚約者になるんだ」


 彼の言葉に彼女は驚きながら言う。


「王子様? 婚約者?」


 そんな彼女に優しい笑顔で彼は言う。


「王子の俺と君は結婚をするんだよ?」


 彼女は嬉しくて泣きそうになりながら言う。


「私でいいの? 私は違う世界の人間だよ?」


 そんな彼女の頭を撫でながら彼は言う。


「君がいいんだ。君はこの国に、俺と一緒に住んでくれるかい?」


 そんな彼に彼女はうんと言って頷いた。

 それから彼女には色んな試練があった。

 異世界での生活は全てが違った。

 それに彼女は、王子様と結婚をするのだから、王族になるのだ。


 王族には、身に付けなくてはならない作法やしきたりがあった。

 そんなことを短期間で覚えなくてはいけない。

 彼女は婚約破棄を考えるまで追い詰められていた。


 そんな彼女に気付き、心配した彼が彼女に言う。


「無理しなくていいよ。君は君らしくいればいい。作法はこれから俺が教えるし、しきたりも俺が教えるよ」

「でもそれでは、あなたがダメな王子様って国民に言われるでしょう?」

「俺は君と結婚をしたいんだ。国民が何と言おうと、俺には関係ないよ」

「それは王子様として言っていい言葉なの?」

「今は王子様としてじゃなくて、君の夫になる者として言っているんだ」

「あなたのその気持ちだけで頑張れるわ。ありがとう」


 それから彼女は王子様の婚約者として、周りに認めてもらえるように頑張った。

 どんなに厳しい教育も彼の為だと思い、やり遂げた。


 そんな彼女を誰もが歓迎した。

 しかし彼女は、嬉しいはずなのに悲しい顔をしていた。

 そんな彼女に気付いて彼は言う。


「もうすぐ結婚式なのにどうしたの?」

「結婚式だから怖くなっちゃって」

「怖い?」

「だって私は、この世界の住人になるってことでしょう?」

「そうだね」

「私の家族や友達。大切な人達とは会えないのよね?」

「そうだね。この国のことは、君の世界の人達には知られてはいけないからね」

「そうよね。だから私は怖いの」

「どうして?」

「私はあなたを選べば、私がいないことを悲しむ人がいるの」

「君は自分の世界に帰りたいの?」

「分からないわ」


 彼女は、まだ自分の気持ちに整理がついていないようだ。

 彼女は毎日、考えた。

 彼を選ぶのか、それとも家族や友達を選ぶのか。

 それはこの国を選ぶのか、それとも自分の世界を選ぶのかということになる。


 彼女は結婚式の二日前に、彼を部屋に呼び、言った。


「やっと結論が出たわ」

「俺は君の選んだことに反論はしないよ。それが君が決めたことで、君の幸せだと思うから」

「そう。ありがとう。私はこの国を出るわ」

「そっか。やっぱり自分の世界がいいんだね?」

「あなたのことは好きだけど、それだけではダメな気がするの」

「そうだね。君には家族がいて、友達がいて、大切な人がたくさんいるんだよね?」

「そうよ。あなたといつも通っていた学校も、図書館も、映画館だってあるの。そんな想い出ばかりの場所に行けないなんて悲しいの。想い出の詰まった私の世界を、手離したくはないの」

「分かったから泣かないで」


 泣きながら言った彼女の涙を、彼は拭いながら言った。

 悲しそうに。


「あなたの記憶はなくなっちゃうわね」

「そうだね。この国を出れば、この国にいる人のことを全て忘れてしまうんだ。それがこの国の掟だから」

「それでいいのかもしれないわ」

「どうして?」

「だって、いつかこの選択に後悔をする日がくるかもしれないもの。その時に私は、必ず自分を嫌うと思うの。そんな日がこないならその方がいいわ」

「俺は君と離れたくはないけど、君を縛り付けるつもりはないから、君の選択に従うよ」

「うん。ありがとう」


 それから彼女は、彼の事を全て忘れて自分の世界へ戻った。

 幼馴染みがいたことも忘れていた。


 それからまた月日が流れた。

 彼女はもう大人の女性になっていた。

 仕事も順調だった。

 ただ一つだけ、彼女に足りないものは恋人だった。


 彼女には恋人を作ることができないでいた。

 何故か彼女は、どんな男性に出会っても、惹かれることはなかった。


 そんなある日、彼女は仕事に遅れそうで道を走っていた。

 狭い道でもないのに男性とぶつかってしまった。


「大丈夫ですか?」


 男性に声をかけられ彼女は彼を見上げる。

 その時、彼女はその男性に惹かれた。

 一目惚れをしたのだ。

 その男性は誰なのか。

 それは王子様だけの秘密です。


◇◇◇


 俺は本を一気に最後まで読んでいた。

 外を見ると、もう真っ暗だ。

 そろそろ帰ろうかと、本を机の上に置いて財布を出す。


 レジに行き支払いを済ませる。

 その時、誰かがお店に入る音が聞こえた。

 俺は支払いが終わり、出ようとした。


「すみません。この本はあなたのですか?」


 俺は人に声をかけられ振り向いた。

 そこには、あの女子高生が俺の本を持って立っていた。


「あっすみません。俺のです」

「この本、最後まで読みました?」

「はい」

「私、途中なんです」


 彼女はそう言って、俺にいつも読んでいる本を表紙カバーを取って見せてくれた。

 やっぱり彼女の好きそうな本だった。


「最後は良かったです。この本は読み出したら止まらなかったです」

「そうなんです。私も読みたくて仕方がないんです」

「君ともっと話をしたいけれど、もう遅いのでまた今度で」

「私、ここの隣が家なんです。ここのマスターとは知り合いで、よくここで本を読んでいるので、いつでも来て下さいね」

「分かりました。また明日、来ますね」

「待ってます」


 彼女はそう言って笑顔を見せてくれた。


 彼女とは話すことはないと思っていた。

 彼女を見るだけで満足だと思っていた。

 しかし彼女と話をして、そんなことを本当は、思っていないことに気付いた。


 彼女と話をしたい。

 彼女と一緒に笑いたい。

 彼女と一緒に本の話をしたい。

 彼女と一緒に過ごしたい。


 俺の願望はどんどん増えていった。

 俺と彼女がどうなるのかは、また今度話すことにしよう。

 ヒントを言うと、俺の願望は一つずつ叶っていくんだ。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、何をしていても幼馴染みの声だけは耳に入ってくる、主人公の彼の物語です。

彼はどうして、幼馴染みの彼女だけの声が聞こえるのか。

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