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【六十二人目】 いつも上目遣いになってしまう幼馴染みは身長が低くて素直で可愛い子

ブクマや評価などありがとうございます。

「ねぇ、どうして人って人の悪口を言うの?」


 可愛い幼馴染みは、俺に上目遣いで言ってきた。

 俺より身長が低い彼女は自然とそうなってしまう。

 それが可愛いから、俺はニヤけてしまう口元を手で隠しながら、彼女を見下ろすんだ。


「言いたいんだよ。言えばスッキリするんじゃないのかなあ?」

「私はスッキリなんてしないよ。嫌な気持ちになるよ?」


 彼女は上目遣いで悲しそうな顔をする。


「どうしたの? 何かあったの?」

「友達が塾のお友達に、頭が悪いって言われたみたいなの」


 彼女は上目遣いで口元に手を当てる。

 嘘をついている証拠だ。

 彼女は嘘をつくと、口元を手で隠して嘘がバレないようにする。


 口元をバレないように隠すのは、俺と同じ。

 ただ俺はニヤけ顔をバレないように、彼女は嘘がバレないように、理由が違うだけだ。


「それならその悪口を言われた友達に、勉強を頑張ってその悪口を言った子を見返せばいいって言えばいいんだよ」

「そしたら彼女は元気になるのかなぁ?」


 彼女は上目遣いで首を傾げている。


「彼女には自信もつくから、前の彼女よりも元気になるかもしれないね」

「そうなの? それなら早く勉強を頑張らなきゃ」


 彼女は上目遣いで、自分に言い聞かせるように言った。


 彼女が言う友達の話は彼女のことだとバレバレだ。

 でも俺はそのことには触れない。

 だって彼女の良い所だから。

 素直で誰よりも優しくて、誰よりも可愛い彼女の長所。



「ねぇ、どうして人って忘れるの?」


 彼女はいつものように、上目遣いで俺に言う。


「人だけじゃないよ。生き物はみんな忘れるよ」

「そうなんだけど友達がね、忘れ物が多くて困っているの」


 彼女は口元を隠しながら話す。

 バレバレな嘘をついている。


「忘れ物が多いのは何度も確認をすれば、なくなるんじゃないのかな?」

「友達は、確認をしているのよ? それでも忘れるのよ」

「それなら他の人に確認をしてもらえばいいよ」

「他の人?」

「うん。親や兄妹、俺のような幼馴染みとかね」

「そうね。自分で忘れ物をなくせないなら、他の人に頼ればいいのよね?」

「そう。彼女は彼女なりに、忘れ物をなくそうと努力はしているんだから、絶対に協力をしてくれるよ」


「そうね。それならさっそく、お兄ちゃんにお願いをしようかなぁ?」


 彼女はニコニコしながら言った。

 最後にはいつも自分のことだとバレバレなのに、彼女はそれには気付いていない。


 本当に素直で可愛い彼女だ。


◇◇


「ねぇ、どうして人は好きな人に好きって言えないの?」


 桜が風で舞う季節に、彼女は上目遣いで俺に聞く。


「君はどう思うの?」

「あれ? 今日は答えを教えてくれないの?」


 彼女は上目遣いで驚きながら言った。


「今日は君の意見も聞きたいんだよ」

「そうなの? 私は好きなら言うよ。じゃないと伝わらないでしょう?」


 彼女は上目遣いで俺の目を見ながら言った。


「それなら、どうして好きって言えないなんて俺に聞くの?」

「私の友達が、好きって言って今までの関係が壊れたら怖いねって言っていたの」


 彼女が俺に上目遣いで質問をして、友達の話をする時はほとんど手で口元を隠すのに、今日はしない。

 彼女は本当のことを言っているようだ。


「君が思うようにすればいいんだよ」

「でも友達にそんな風に言われたら、怖くなっちゃったの」


 彼女は上目遣いで怯えながら言っている。

 まるで怯える子猫のように見えた。

 守ってあげたいと思ってしまう。


「それなら君が好きな相手に、好きって言ってもらえれば怖くないの?」

「そうだね。好きな人の気持ちを先に知っていれば、何も怖くはないわね」


 彼女は上目遣いで、さっきまで怯えていた顔はなくなりニッコリ笑顔になった。


「君は誰に好きだって言ってもらいたいの?」

「ん? それはあなただよ。あっ」


 彼女は上目遣いで俺の質問に答えて、自分が恥ずかしいことを言ったことに気付いてうつむいた。

 

「そうなんだね。だったら言ってもいい?」

「え?」


 彼女はうつむいていた顔をあげて、驚きながら上目遣いで俺を見上げた。


「俺は君が好きだよ。素直で優しくて、誰よりも人の気持ちを思いやる君を、俺は大好きだよ」


 彼女は何も言わずに、上目遣いの目には涙がいっぱい溜まっている。


「どうしたの? 君はさっき言ったよね? 好きなら好きだって言うんでしょう?」

「私もあなたが大好きよ」


 彼女はそう言って笑ったんだ。

 すると涙が頬を伝った。

 俺はその涙を親指で拭った。


 今日は卒業式だった。

 彼女とは最後の日。

 明日から俺達は別々の大学、別々の土地へ行く。

 そんな最後の日に、俺達はお互いの気持ちを知ったんだ。


 桜がおめでとうと言うように、俺達の周りを風に乗って舞っている。

 彼女の髪に乗った桜の花びらを俺は取る。


「これからも君のその上目遣いは俺のモノだね」

「上目遣い?」


 彼女は上目遣いでそう言った。

 彼女は知らなくていい。

 俺と彼女の身長差は十五センチ。

 彼女は必ず上目遣いになる。


 こんなに離れているのに、俺には嬉しい上下差。

 もし俺達の間に距離がなかったら、彼女はもっと可愛いんだろうなぁ。

 そう思いながら俺は彼女に少しだけ近づいた。


 その差は上下差よりも距離があるから、ゼロにするのは難しい。

 俺と彼女の前後差。

 前後差がゼロになれば、心の距離もゼロになるのかな?


 今は彼女の上目遣いを楽しもう。

 だから口元の手はいらない。

 彼女には分かってほしいから。

 君は俺がニヤけるほど可愛いんだって。


 彼女は俺の顔を見て笑っている。


「あなたはいつもその顔をするわよね?」


 彼女は嬉しそうに言っていた。

 彼女には隠せていなかったみたいだ。

 俺も彼女と同じで、何も隠せていないのかもしれない。


 彼女にだけは。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、いつも笑っているクラスの美少女の、泣く顔が見たくなった主人公の物語。

笑っている顔を崩してやりたい。

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