【六人目】 彼女と俺は幼馴染みじゃなくて恋人としての方がお似合いだ
「なあ、もう君だけだよ。俺にラブレターをくれないのはね」
「もう。そんな嘘をつくのはやめてもらえるかな?」
俺が話しかけた相手は可愛い幼馴染みだ。
そして俺の好きな人だ。
「あいつらに負けたくないんだよ」
「あなたが変なゲームに参加するからよ」
「これは変なゲームじゃなくて学校行事のイベントだよ」
「そうね。でも変なゲームでしょう? 誰が一番ラブレターを貰えるかなんて」
「貰えるのは嬉しいから、こんなイベントもいいと思うけどな?」
「私は迷惑でしかないわよ。絶対に誰か一人にラブレターを書かないといけないんなんてね」
この学校行事のイベントの仕組みを説明しよう。
女子生徒は学校の中で、一番好きな男子生徒にラブレターを書く。
書いたラブレターをイベントボックスに入れ、生徒会が集計して男子生徒に届く仕組みだ。
ラブレターが一番多かった男子生徒は、学校紹介のパンフレットに顔が載るみたいだ。
「期限がもうすぐなのに大丈夫なのか?」
「大丈夫よ」
「俺を選べばいいのに」
「あなたは嫌よ」
「そんなはっきり言わなくてもいいだろう?」
「だって嫌だもん」
「分かったから。俺が嫌ならあいつにすれば?」
「彼はどうかな?」
あいつとは、俺の友達でこの学校でイケメンランキングトップ3に入る。
◇
「あっ、いた。君にまたラブレターだよ」
「またですか?」
俺は生徒会長にラブレターを二通貰った。
「またラブレター貰ったの?」
彼女がラブレターを貰った俺に話しかけてきた。
「そうだよ。これで何通目だったかな?」
「数えきれないくらいでしょう?」
「そうだな。貰えるのは嬉しいけど、断るのは心苦しいよ」
「まだラブレターを読んでいないのに、どうして断るなんて決めるの? みんな一生懸命に心を込めて書いてるのに。読んでから決めてもいいでしょう?」
「俺もそうしたいけど、俺にはラブレターを貰いたい人がいるから」
「えっそれって好きな人がいるってことなの?」
彼女は驚きながら言った。
「そう」
「それを知ってたら女の子達は、あなたにラブレターなんて書かないわよ」
「えっ、そうなのか?」
「そうよ。だってあなたの心は、好きな人のものなんだから、自分のものにならないのを分かって、ラブレターなんて書くと思う?」
「そうだよな。でも好きな人がいるのを女の子に伝える手段なんてなかったし」
「そうね。あなたも大変なのね。私はあなたにラブレターは書かないからね。一人でも減ればあなたも助かるでしょう?」
彼女は俺の為にラブレターを書かないと言った。
君に一番貰いたいのに。
君を好きだと言ってしまえばいいのに、俺にはできない。
この関係を壊したくないから。
◇◇
「おっ、イケメンが来た」
俺は友達のイケメンが俺の側に来たからそう言った。
「お前もイケメンだろう?」
「俺はお前には負けるよ」
「でも、お前も相当ラブレターを貰ってるだろう?」
「まぁな」
「お前の幼馴染みはラブレターを出したのか?」
「まだなんだ」
「くれって言えばいいだろう?」
「くれって言っても、くれないんだよ」
「それならお前が好きって言ってしまえばいいだろう?」
「それで断られて話さなくなったら嫌なんだよ」
「そんなこと言ってたらお前は、ずっと彼女から貰えないぞ」
「だから今は彼女に、期限が近いから俺にしとけって言ってるんだよ」
「俺だったら彼女を諦めて、好きって言ってくれる可愛い女の子を選ぶけどなあ」
「俺はお前とは違うんだよ」
「あっそ。それじゃあ女の子達が俺を呼んでるから、ちょっと行ってくるよ」
そして友達は女の子達の輪の中心になって話をしている。
あいつは少し遊び人な所があるが根は良い奴だ。
そんな友達を幼馴染みの彼女は苦手と言う。
特定の恋人を作らない、女の子が大好きなあいつに苦手意識が強いんだ。
◇◇◇
「なあ、期限は明日だぞ。期限内に出さないとペナルティがあるんだぞ。大丈夫なのか?」
「だって、どうしても書けないのよ」
「簡単にあなたが好きですって書いて、誰でもいいから早く出せよ」
「そんなこと言われても、ラブレターを誰でもいいから書くなんてしたくないのよ。それこそ私にとってペナルティよ」
彼女はラブレターを書く用の便箋を眺めている。
彼女にペナルティなんて与えたくはない。
彼女が書かないのならどうすればいい?
彼女の代わりに俺が書いてあげればいいのか?
そんなことをして、彼女にバレたら彼女に嫌われる。
どうすればいい?
◇◇◇◇
そしてラブレターの期限の日が訪れる。
今日の放課後までだ。
「もう、ラブレターは書いたのか?」
「まだだよ」
彼女は焦った様子も見せず俺に言った。
「大丈夫なのか?」
「どうにかなるよ」
「ペナルティが何なのか分からないんだぞ?」
「うん。どうにかなるよ」
「俺の気持ちも考えてくれよ」
「えっ」
「俺は君がペナルティを与えられるのを阻止したいのに」
「大丈夫だから」
「何でそんなに落ち着いているんだよ?」
「信じて。大丈夫だから」
彼女は俺を見つめて言った。
彼女を信じてみよう。
「分かった」
◇◇◇◇◇
そしてラブレターの提出期限が過ぎた次の日。
「大丈夫なんだよな?」
「大丈夫よ」
俺が彼女のことを心配して聞くと、彼女は笑顔で言った。
「あっ、いた。君に最後のラブレターだよ」
生徒会長が俺にラブレターを渡してきた。
こんなギリギリにラブレターを書く人が彼女以外にいたなんて。
そう思いながら受け取った。
「あっ、君にも届いてるよ」
生徒会長は俺の隣にいた幼馴染みの彼女にラブレターを渡した。
「えっ、私にですか?」
「そう。君がいつまでもラブレターを書かないから、君の為に彼から君へ書いたみたいだよ」
「えっ」
そう言って生徒会長は帰っていった。
「誰からだろう」
彼女はそう言いながら封筒を開ける。
便箋に書いてある字を見て、彼女は驚いたように俺を見上げた。
俺も封筒を開ける。
そこには見たことのある字が並んでいた。
「あなたがくれたの? 大丈夫だって言ったのに」
「心配だったんだよ。それにバレないと思ってたし」
「分かるわよ。あなたの字を何度も見てるのよ?」
「俺だって君の字だってすぐに分かったよ」
「ねぇ、これってあなたがラブレターの返事をするの?」
「このラブレターのイベントは、女子から男子にだけど俺は違う。俺は君が好きだよ」
「もう、恥ずかしいよ。それにみんなが見てるし」
「いいじゃん。言ってよ」
「そのラブレターに書いてるのに? 意地悪ね」
「君の口から聞きたいんだよ」
「もう。私もあなたが好きよ」
彼女がそう言うとクラスのみんながおめでとうと祝福してくれた。
俺は彼女を抱き締めた。
「ずっと、こうしたかったんだ」
「あなたって本当に私のことが好きなのね」
「当たり前だよ。どんなに可愛い女の子にラブレターを貰っても全然嬉しくなかったのに、君に貰って俺は嬉しくて君を離したくなくなるよ」
「いいよ。離さなくて」
「えっ」
「私はあなたのものなんだからね」
彼女は俺にしか聞こえない小さい声で嬉しい言葉をくれた。
◇◇◇◇◇◇
俺達のラブレターの内容を教えてあげる。
『ずっと好きでした。あなたは?』
『ずっと好きでした。君は?』
彼女と俺のラブレターの内容は同じだった。
やっぱり俺と彼女は幼馴染みよりも恋人がお似合いじゃないのかな、なんて思った俺でした。
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次の物語は、幼い子供の頃に運命の人と出会ったと思ったのに彼女は突然、消えていなくなったという物語です。
彼女ともう一度会えるのか?




