表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/198

【五十九人目】 ロウソクから始まる恋なんて最初だけ燃えて儚く消えるんだ

ブクマや評価など本当にありがとうございます。

 俺は学校に着いて、自分の机の上に何かあるのに気付いた。

 それはピンク色で花の形をしている。

 よく見ると花の真ん中に芯が立っている。

 これはロウソクだ。


 これは新しい、いじめなのか?

 いじめと言えば、花瓶に入った花が置いてあるとかはよくテレビとかで見る。


 しかし俺の机の上にはロウソクがある。

 俺の机は仏壇になったようだ。


 俺はそんなに、誰かに嫌われていたのだろうか?

 目立つこともせず学校生活を過ごしていた俺を、誰が嫌うのだろう?


 俺は知らない所で、誰かを傷つけていたのだろうか?

 俺はロウソクには気付かないフリをして、椅子に座った。


 クラスのやつらを見ても、誰も俺を見ているやつはいない。

 いじめをする奴は俺の様子を見て楽しむはずだ。

 横目でチラチラと左右を見るが、誰も俺の様子を見ている者はいない。


 このロウソクの意味は?

 よく分からずロウソクを見つめてしまった。


「あっ、あった」


 俺は大きな声が近くから聞こえて顔を上げた。

 そこには学校で有名な美少女がいた。


「そこにあったのね。そんなにそれを気に入ったのかしら? でも返してくれる? 私のなの」


 美少女は俺にそう言った。

 気に入る?

 何を?


「何を返せばいいのか分からないんだけど?」

「えっ、そのアロマキャンドルだよ」

「アロマキャンドル?」

「あなたがさっきまで見つめていた、その机の上にあるものよ」


 彼女はそう言ってロウソクを指差した。

 アロマキャンドル。

 そう言えば聞いたことがある。

 火を灯すと良い香りがするやつだよな?


「俺は、このロウソクの意味が知りたかっただけなんだよ」

「意味?」

「このロウソクは俺へのいじめだと思っていたんだけど、もしかして君が僕をいじめていたってことでいいのかな?」

「えっ、まってよ。そんなことないわよ。私は、この机に置き忘れちゃっただけだよ」


「そうなんだね。それならこれは返すよ」


 俺はそう言って、彼女にアロマキャンドルを渡す。

 でも彼女は、それを受け取らない。


「いらないの?」

「違うの。このキャンドルのせいで、あなたは心が傷ついたのよね?」

「そうだね。いじめだと思っていたからね。でも、誰がこんなことをするのか気になっていて、探すのに夢中でもあったから、もう気にしていないよ」

「それでも傷ついたのよね?」

「でも、もう気にしていないよ」

「ダメ。私はあなたに、このキャンドルの香りを楽しんでもらうわ」

「どうしてそうなるのかな?」

「あなたには、アロマキャンドルの悪いイメージを消してほしいの」

「悪いイメージなんて持っていないよ?」

「でも机の上にあった時に、いじめだと思ったのよね? 少しでも傷ついたのよね?」


 彼女は必死に俺に話す。

 自分の好きな物を、嫌いになってほしくないのだろう。

 彼女の勢いに負けて、何も言えなくなる。


「分かったよ。じゃあ、このアロマキャンドルはもらうよ」

「それもダメ」

「えっ」

「これは私のお気に入りなの。だから一緒に楽しみましょう」

「一緒にってどういう意味?」

「今日の放課後、誰もいなくなったら、このあなたの席で一緒に楽しもうよ」

「よく分からないけど放課後にここに集合だね?」

「うん」


 そして彼女は自分の教室へ戻っていった。

 アロマキャンドルは置いていって。


 俺がアロマキャンドルを持って、帰っていたら彼女はどうするつもりなんだろう?

 俺が遅くまで学校に、残っていると思っているのだろうか?


 俺の何処を信用して、アロマキャンドルを置いていったのだろうか?



 それから放課後になり、クラスに誰もいなくなった。

 俺は彼女との約束を守っていた。

 約束を破ったら、彼女に何を言われるか分からないから、仕方なく残ってあげたんだ。


 少しして彼女が教室に入ってきた。

 彼女はマッチを持っていた。


「なんでマッチなんか持っているの?」

「理科の授業で借りてきたのよ」

「それはやっちゃダメだよ」

「ちゃんと返すから今回だけ許してよ」


 彼女は俺に謝ってきた。

 俺に言われても困る。

 だって彼女が、そのマッチでキャンドルを灯すなら、俺も共犯者になるのだから。


 そして彼女はアロマキャンドルを、俺の机の真ん中に置きマッチで火を灯した。

 ゆらゆら揺れる火はとても可愛く見えた。

 しばらくすると良い香りが俺達を包んだ。


「良い香りね」


 彼女は、目を閉じて香りを楽しみながら言った。


「そうだね」

「どう? これでアロマキャンドルのことを好きになってくれたかしら?」

「元々嫌いじゃないけど、他の香りも試したくなったよ」

「それなら他のも一緒に楽しもうよ」

「それは俺でいいのかな?」

「あなたがいいの!」


 彼女は可愛い笑顔で言った。

 美少女の笑顔は、俺の想像を遥かに超える可愛さだ。


 次の日は、また違う花の形のアロマキャンドルを、彼女は持ってきた。

 それと一緒にチャッカマンも持ってきた。

 学校にチャッカマンを持ってくるのは、彼女以外にいないだろう。


 次の日も、また次の日も、彼女はアロマキャンドルを持ってきて、俺と一緒に香りを楽しんだ。


◇◇


 そんなことが続いていたある日のこと。


「あなたに言いたいことがあるの」

「何?」

「アロマキャンドルを、これからもずっと一緒に楽しんでほしいの」

「うん。いいよ。俺もアロマキャンドルが好きだし」

「それは、アロマキャンドルの炎が消えたら終わりでしょう?」

「それなら、新しいキャンドルを灯せばいいんじゃないかな?」

「新しいモノなんてないのよ」

「どうしたの?」

「私には新しいモノなんてないの。私は一人だし、あなたも一人よ」

「キャンドルの話じゃなかったの?」

「私達のことだよ」

「それは考えさせてよ。君はこの学校でも有名な美少女で、俺は目立たないように過ごしていたから、もし君とのことが誰かに知られたら、俺の静かだった生活が変わってしまうんだ。それが怖くて、、」

「そっか。ごめんね」


 彼女は落ち込みながら教室を出ていった。

 追いかけたかったけれど、ちゃんと答えを出すまでは、彼女に優しくするのは失礼だと思った。



 それから彼女と、アロマキャンドルを楽しむことはなくなった。

 だから彼女が、今はどんな気持ちで過ごしているのかも分からない。


 俺は彼女のことを考える。

 彼女と一緒にいても、ロウソクのように最初は燃えて、最後は儚く消えていくのなら、最初から火なんて灯さない方がいいのではないのかと思った。


 考えても答えは出なくて、彼女はもう俺のことなんて諦めて、次の人がいるのでは、、、なんて思い始めていた。


 だって彼女をたまに見ると、可愛い笑顔を見せているから。


「なあ、知ってるか?」


 俺は自分の席で次の授業の準備をしていると、クラスの奴らが話をしていたのが聞こえた。


「この学校の美少女は、もう誰かのモノになったんだってよ」

「えっ、男がいるのかよ? せっかく狙っていたのになあ」

「違うんだよ。その相手は彼女を待たせているんだってよ」

「待たせる?」

「何で待たせてるのか分からないけど、彼女が友達に言ってるのが聞こえたんだけど、キャンドルの火が消えるまでは待っているんだってよ」

「なんだよそれ?」

「俺も意味は分からないけど、その待たせてる奴だったら分かるのかなあ?」

「それなら彼女は諦めるから、俺の代わりに次の可愛い女の子を探せよ」

「バカ言うなよ。お前も一緒に探すんだよ」


 クラスの奴らはそんなことを言いながら、教室を出ていった。

 彼女は俺を待っている?


 俺は彼女になんてヒドイことをしているんだ。

 彼女はまだ待っていてくれている。

 彼女に俺の気持ちを伝えよう。


◇◇◇


 俺は彼女に伝える為に、朝早く学校へ行った。

 俺は自分の教室で、クラスの奴らが来るのをなんとなく見ながら外を眺めていた。


『ガラッ。バタバタ』


 誰かが教室のドアを開け、走っている音がした。


「これは何?」


 俺は声がする方を見ると、彼女が手に抱えきれないほどのアロマキャンドルを持っていた。


「それ? 君の席が分からなかったから、君のクラス全員の机の上にアロマキャンドルを置いたんだ」

「どうしてそんなことを?」

「君の炎が消えないように。このキャンドルを灯し続ければいいかなぁって思ったんだよ」

「それを灯しているときは、私の隣にあなたもいるの?」

「うん。いるよ」


 俺の言葉で彼女は嬉しそうに笑った。

 クラスの奴らが、驚いて見ていたがそんなの気にならない。

 俺は彼女だけしか見えないから。


 彼女が俺の心に火を灯してくれた。

 この炎が消えないように、俺は彼女と一緒に過ごすんだ。


 彼女の炎が消えそうだったら、俺が炎を分けてあげるし、俺の炎が消えそうだったら、彼女が炎を分けてくれると思う。


 そうすれば俺達の炎は、一生同じ勢いで燃え続けるんだ。


 しかし、美少女の彼女と一緒にいることは、大変なことがたくさんありそうだ。

 でも彼女が隣で笑っていてくれれば、俺は大丈夫なんだと思う。


 彼女の笑顔はこのアロマキャンドルのように、僕を明るく照らしてくれるから。

 良い香りと共にね。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、元恋人にやり直そうと言われ困っていた主人公の彼は、恋人がいると嘘をつく物語。

しかし恋人なんていないはずの彼の前に、私が彼の恋人ですと言ってきた女子高生がいました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ