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【五十五人目】 来週には必ず言おうと決めて今日も俺は可愛い幼馴染みのことを考える

ブクマや評価などありがとうございます。

 月曜日。


 それは俺が今までやってきたことの集大成だ。

 今日なら大丈夫。

 今回なら大丈夫。

 だって一週間頑張ったんだ。

 俺は自分に言い聞かせる。


 それほど気合いを入れなければできないんだ。

 幼馴染みの彼女への告白は。

 彼女へ告白する時の言葉を考え、何度も口に出して練習をした。


 でもそんな練習も彼女を見ると全てが水の泡になる。


 だって彼女は可愛いから、告白をしようと思うと緊張をして、練習した言葉は俺の頭の何処かへ消えていく。


 そして、もし告白が失敗したら、幼馴染みという関係がどうなるのか心配にもなるんだ。

 だからいつも告白をせずに終わる。

 毎週その繰り返しだった。


「ねぇ、今日の私の星座占いったら、最後だったのよ?」


 彼女は登校途中に、毎朝見る占いランキングが悪いことを、俺に伝えて落ち込んでいる。

 彼女は占いに左右されやすい。


「大丈夫だよ。俺の運を君にあげるからね」

「あなたは一位だったからそう言えるのよ」


 彼女はそう言って拗ねている。

 今は告白は止めておくよ。

 彼女は少し機嫌が悪いからね。

 帰りに言おう。



 そして放課後になった。

 彼女と朝、通った道を歩く。

 いつもの風景。

 いつもの彼女の横顔。


 よしっ。

 今なら言える。


「あのね」

「あのさぁ」


 彼女と同じタイミングで言葉が重なった。


「なっ、何?」


 彼女は焦ったように言っている。


「君からでいいよ」


 俺も焦りながら言った。


「私の話はいつでもできるから、あなたが先でいいわよ」

「俺もいつでもいいから君からでいいよ。レディファーストだよ」

「こんな時だけレディファーストなんて言わないでよ」


 彼女は少し不機嫌になった。

 これはもう、今日も告白はできなくて終わる兆しだな。


「ごめん」

「すぐに謝る所、直したほうがいいわよ」

「でも自分の悪い所を認めてるんだよ?」

「私には謝ればどうにかなるって思っているように感じるわ」

「そんな考えもあるんだね」

「そうだ。今日から一週間、私に謝るのは禁止ね」

「何それ? それをやる俺のメリットは何だよ?」

「そうねぇ~」


 彼女は顎に手をやり、考えだした。


「そんな無理に考えなくても、俺は謝らないなんてできないよ。謝ることをしないのは俺が許せないからね」

「それなら私の秘密を教えてあげる」

「君の秘密? 君が俺に秘密なんてあるの?」

「幼馴染みだからって何でも話す訳がないわよ」

「秘密って何?」

「だから秘密は一週間後に、あなたが謝ることをしなかったらよ」


 彼女の秘密とは?

 俺は彼女の全てを知っているはずだ。

 彼女の秘密って?

 気になる。


「分かったよ。そのゲームをやるよ」

「ゲーム?」

「だって俺が謝れば俺が負けで、俺が謝らなければ君が負けだからね」

「それだと私が勝った時には何もないの? 私にもメリットがほしいわ」

「それなら俺も君に秘密を教えるよ」

「えっ、あなたも私に秘密を持っているの?」

「そうだよ。君が知ったら驚くよ」

「え~気になるよ」


 彼女はそう言いながら、頭の中で俺の秘密を推測しているようだった。



 火曜日。


「今日の占いは後ろから二番目だったよ」


 彼女は今日も落ち込みながら俺に言った。


「昨日よりはいいんだからいいじゃん」

「またあなたは、二番目で良かったんだからいいわよね?」


 朝から彼女の機嫌は今日も少し悪い。


「今日のお菓子は、君の好きなチョコを持ってきたんだ。お昼休みに俺の所に食べにおいでよ」


 俺は!いつも彼女が好きそうなお菓子を持ち歩くんだ。

 彼女が!お菓子を食べる時の笑顔がたまらなく可愛くて、その笑顔が見たくてお菓子を彼女にあげるんだ。


「それって私を太らそうとしているでしょう?」

「そんなことはないよ」

「嘘よ。だって体重が一キロ増えたのよ?」

「それはごめ……」


 危ない。

 ごめんって言いそうになった。

 彼女を見るとニコニコと笑っている。

 彼女は俺に謝らせようとしたようだ。


「君には負けないからな」

「私も負けないわよ」


 火曜日はそんな感じで勝負はつかなかった。

 引き分けだ。


◇◇


 水曜日。


「今日はあなたより一つ上の五位だったよ」


 彼女は少し嬉しそうに俺に言った。


「それなら俺は六位?」

「あれ? 今日は見ていないの?」

「見ていないんだ。妹が風邪をひいていて、妹の看病をしていたからね」

「そうなの? あなたが大変な時に、私は占いを見て嬉しがっていたなんて。ごめんね」

「そうだね」

「どうして笑っているの?」


 彼女は俺の笑っている顔を見て、不思議そうに首を傾げた。


「だって君が謝ったから」

「えっ私は謝ってもいいでしょう?」

「うんいいよ。俺は君の優しさが嬉しかったんだ。ありがとう」


 俺はそう言って彼女の頭を撫でた。

 彼女は照れながら、俺に頭を撫でられていた。

 水曜日も勝負はつかなかった。

 また引き分けだ。


◇◇◇


 木曜日。


「今日の占いは、なんと三位よ」

「すごいじゃん」

「でも、あなたは最後から二番目だったわね」

「そうだね。俺は占いなんて気にはしていないから大丈夫だよ」

「でも今日は気にした方がいいわよ」

「何で?」

「あなたガムを踏んでいるわよ」


 彼女にそう言われ、俺は右足をあげるとガムが伸びた。

 彼女が最後の時は何もなかったのに、何で俺の時は最悪なことが起きるんだよ。


「私、ティッシュを持っているわよ。あげようか?」

「本当? ありがとう」

「このティッシュ、可愛い猫がプリントされているから使わなかったのに、今日は仕方ないわね」

「大事にしてるものをいいの?」

「あなたが大変なんだもん。使わなきゃね」

「ごめ……うん」

「ごめ、うんって何よ?」


 彼女はケラケラ笑っている。

 仕方ないだろう。


「謝れない代わりにうんで返したんだよ」

「あなたって本当に負けず嫌いよね?」

「君も負けず嫌いだよ?」

「私の何処が負けず嫌いなの?」

「たくさんあるけど聞く?」

「聞かないよ。でも、あなたとのゲームは負けないからね」


 彼女はそう言って、大事なティッシュを開けて俺に渡す。

 それを受け取って靴についたガムを取る。


 木曜日は俺の運は最高級に悪かった。

 もし占いで、俺の星座が最後だったら死ぬのではないのかなんて思うような最悪な一日だった。

 

 木曜日も勝負はつかなかった。

 またまた引き分けだ。


◇◇◇◇


 金曜日。


「はぁ」

「溜め息なんてしてどうしたんだよ?」

「だって占いがね」

「占い? 今日の占いは一位だったよね?」

「でもあなたは最後だったでしょう?」


 彼女は、俺の占いの順位を知って溜め息をついているのか?


「俺は占いは気にしないって言っただろう?」

「でも昨日はガムを踏んで、体操服忘れて、お昼に好きなパンが買えなかったし、バケツに足を引っかけてズボンは濡れちゃったじゃない?」

「そんなこと、どうってことないよ」

「私が心配なのはあなたの手よ」

「手?」

「昨日こけた時、地面に手をついた拍子に、ガラスの欠片が落ちていてケガをしたじゃない?」


 彼女は心配そうに俺の手を見ている。


「こんなのかすり傷だよ。絆創膏を貼っているだけだし」

「私が隣にいたら助けてあげられたかな?」

「君が悪いんじゃないんだから、そんな悲しい顔をしないでよ」

「でも……」


 彼女の顔は晴れない。

 どうすれば彼女は笑ってくれるのだろう?


「それなら今日は一緒にいてくれるかな?」

「えっ、いいの?」

「君が嫌じゃないならね」

「隣にいるよ。今日の私は一位だから無敵よ」


 彼女は根拠のない無敵発言をした。

 まあ、笑顔になったから良かった。



 学校からの帰り道、俺達がそれぞれの家に入ろうとした時に、俺は彼女を呼び止めた。

 彼女は不思議そうに俺を見ている。


「今日は迷惑かけてごめ……うん」

「だから何回も言ってるでしょう? 何でも謝らないでって」

「俺は謝っていないよ。うんって言ったんだよ」

「それは分かっているわ。でも迷惑をかけてごめんじゃなくて、今日はありがとうでしょう?」

「あっ、そうだな。ありがとう」

「どういたしまして」


 彼女は嬉しそうに笑って家へ入っていった。


 金曜日も勝負はつかなかった。

 またまたまた引き分けだ。


◇◇◇◇◇


 土曜日と日曜日は学校は休みだ。

 でも彼女は、土日でも俺の部屋に遊びに来たりする。

 しかし今回の土日に彼女は来ない。

 いいのか?

 もうすぐ一週間の期限なのに。


 土曜日と日曜日は彼女に会うことはなかった。

 だから勝負はつかないままだ。

 まだ引き分けだ。


◇◇◇◇◇◇


 月曜日。


「今日の占いは何位だったんだろう?」

「えっ、見ていないの?」

「あなたは見たの?」

「俺は君が見ていると思ったから見ていないよ」

「でも今日は分からない方がいいわ」

「どうして?」

「あなたが、私の秘密をどう思うのか分からない方がいいもの」

「占いを見ていても、俺の気持ちは分からないだろう?」

「そうだけど、もし一位とかだったら希望は持てるでしょう?」

「そうだね。でもどうして君は負ける前提なの?」

「だってそうでしょう?」

「まだ分からないよ。今日は始まったばかりなんだからね」

「えっ、そうね」


 彼女は小さく笑った。

 なんだろう?

 彼女は負けたくはないはずなのに、もう負けたと認めている感じがする。


 どうしてだろう?

 負けず嫌いの彼女が、負けを認めるなんて何かがおかしい。



 今日は放課後に、少しだけ教室に残り二人で話をした。


「やっぱり私の負けね」


 彼女は窓の外に向けていた視線を俺に向ける。


「君は負けず嫌いなのに、どうしてそんなに負けたなんて言うんだよ?」

「だって私は負けず嫌いじゃないからよ」


 彼女は、まだ自分が負けず嫌いだと認めないみたいだ。

 負けたくないってのが顔から出ている。

 悔しそうな顔が。


「それなら君は負けでいいんだね?」

「いいわよ」


 彼女はあっさり言った。

 負けるということは秘密を言うってことなのに、彼女はそれを簡単に受け入れている。

 秘密を話すことは誰でも嫌だと思うんだけどな?


「もしかして君って負けたかったの?」

「えっ」


 図星のようだ。


「もしかして俺が驚くような秘密じゃないの?」

「そんなことはないわ」

「本当に? 本当はピーマンが好きとか?」

「違うわよ。ピーマンは嫌いよ」

「それなら本当は英語が得意とか?」

「それも違うわよ。ライトとレフトのどっちが右なのかなんて分からないわよ」


 彼女は得意気に言っている。

 そこは恥ずかしがるところだと思うんだが。


「もう! 全然違うわよ。私の秘密はあなたに関係することよ」


 彼女にそう言われて俺の秘密のことを考えた。

 俺の秘密は彼女に関係することで、彼女の秘密は俺に関係すること。

 それって俺と同じってこと?

 そんな安易な考えを持ってはいけない。


「俺が嫌いってこと?」

「それは絶対違うわよ」


 彼女は少し大きな声で言った。


「ごめん」

「えっ」

「俺の負けだね」

「どうして? もう私の負けだったじゃない」

「俺は最初から負けていたんだよ。違うな。俺は負けたかったんだ」

「秘密を言いたかったの?」

「そう。ずっと前から言いたかったんだ」

「そんなに前から秘密をもっていたの?」

「そう。臆病な俺が、どうしても口にできなかったことを、このゲームを使って言えるなら、俺は負けていいんだ」

「それならあなたの負けよ。教えてよ、あなたの秘密を」


 俺は深呼吸をした。

 今まで練習してきた言葉は、もう俺の頭には浮かんでこない。

 でもこれが最後のチャンスかもしれない。

 俺が一番言いたい言葉を彼女に伝えればいいんだ。


「俺は君が好きだ」

「えっ」


 彼女は驚いて目を見開いた。

 そんなに驚くことか?


「俺は言いたかっただけだから、また明日から幼馴染みってことにしてくれると助かるよ」

「嫌よ」

「えっ」

「嫌よ」


 彼女は俺に二回、否定した。

 でも彼女の顔は切なくて苦しそうで、言葉と感情が違って見える。


「どうしてそんな顔をするんだよ? 俺は君に伝えたら諦めようと覚悟しているのに」

「だってあなたが幼馴染みのままって言うからよ」

「えっ」

「私は恋人になりたいのに。あなたはなりたくないの?」


 彼女の不安な顔を見ると、彼女を抱き締めたくなった。

 だから彼女を抱き締めた。


「俺は君の恋人になりたいよ。そんなの当たり前じゃん」

「嬉しい」


 彼女は俺に抱きついてそう言った。


◇◇◇◇◇◇◇


 火曜日。


「今日の占いは私が一位であなたは最後よ」

「そっか」

「私が隣であなたを守ってあげるからね」

「それなら俺は君の隣で君を一生、守るよ」


 それを聞いた彼女は笑顔を見せてくれた。

 占いで順位が最後でもいいことはあるみたいだ。

 少しだけ占いを気にするのもいいかもしれない。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、お見合いをさせられ、相手の印象も覚えていないし、結婚なんて興味がない主人公の彼は破談を相手側に伝えた。

そして一人旅が好きな彼は、穴場の旅館へ行くとそこでお騒がせな美女に出会う物語。

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