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【五十四人目】 喜びながら俺の手が好きと言う君は幼馴染みの美少女

ブクマや評価などありがとうございます。

「泣くなよ」

「うん」


 俺と幼馴染みの彼女が幼い頃、彼女が泣いていたのを見て、俺は彼女の頭を撫でて慰めた。


「あなたの手が好き」


 彼女はそう言って、俺に撫でられるのを喜びながら言った。

 だから涙なんて、もう止まっている。


 それが俺達の昔の話。

 そして現在、俺達は高校生になった。


「ねぇ、緊張してきちゃった。手を握って」

「また? これで何回目だよ?」

「だって、みんなの前で新入生代表の挨拶を言うんだよ?」

「でも、さっきも手を握ってやっただろう?」

「いいじゃない。減るもんじゃないんだし」

「そういう問題じゃないんだよ」

「いいから早く」


 彼女は俺の手を握る。

 俺は仕方なく手を握る。

 彼女は喜んでニッコリ笑った。


 あの幼い頃から彼女は、何かある毎に俺の手に触れる。

 彼女の手を握ったり、彼女の頭を撫でたり、彼女と手を繋いで学校から家まで帰った時は、正直心臓がバクバクでヤバかった。


 だってほとんどの人が異性と手を繋ぐなんて、恋人になった時くらいだろう?

 そのくらい手を繋ぐというのは、特別な相手だからするんだ。


 彼女は幼馴染みの俺と手を繋ぐ。

 ただの幼馴染みの俺とだよ?

 俺の身にもなってくれよな。



 そして入学式が始まり、彼女の出番がやってきた。

 彼女は緊張しながら壇上へ上がる。

 彼女がこちらを向いて一礼をして顔を上げると、男子共からお~という声が聞こえた。


 その声は男子共が彼女の顔を見て、口から勝手に出た言葉だ。

 口を閉じることを忘れ、彼女を見ているんだ。


 彼女は美少女なんだ。

 だから男子共は彼女に見惚れていたんだ。



 ある日、俺の部屋で彼女とテレビゲームをして遊んでいた時。


「ねぇ、また手が大きくなったわよね?」

「そうか?」


 彼女は、俺と彼女の手を合わせて、大きさ比べをしている。

 当たり前だが俺の方が大きい。


「この前は、小指にあんまり差がなかったのに、少し差ができたわ」

「俺は男だから、すぐ大きくなるんだよ」

「小さな頃は、可愛くて優しさが溢れる手だったのに、今はゴツゴツしてて少し硬い手よね?」

「なんだよ。嫌ならもう握ってやらないけど?」

「嫌だなんて言っていないじゃない。今の手は、あなたが部活を頑張ってきた証拠でしょう? 私はそんなあなたの手も好きよ」


 彼女はそう言って、重ねる手の指の間に指を入れて絡ませてきた。

 俺の指と指の間に、彼女の華奢で細く白い指が入ってきてドキドキした。


「そんなに俺の手が好きなのかよ?」

「うん。大好きよ」


 彼女はいつも、大好きと簡単に口にする。

 でも彼女は、それほど俺の手が好きなんだ。

 俺の手があれば俺がいなくても、彼女は気にしないのかもしれない。


 俺の気持ちなんて考えず、俺と手を繋ぐ彼女だから。


◇◇


 それから彼女は、俺の手を必要とすることもなく一ヶ月が経った。


「ねぇ、大変なの」


 彼女はバタバタと走ってきて、俺の部屋へ勝手に入ってきた。


「何が大変なんだよ?」

「明日、告白するわ」

「何だよ。いきなり」

「だから、あなたの手で私の頭を撫でてよ」


 彼女はそう言って、俺の手を彼女の頭に置いた。

 彼女は勝手だ。

 俺の気持ちも知らないで。

 俺に、君の告白の成功を祈れってことなのか?


「勝手に俺の手に触れるなよな」


 俺はそう言って彼女の手を振り払った。


「どうしたの?」


 彼女は心配そうに俺を見ている。


「いい加減にしろよな。この手は、お前だけの為にあるんじゃないんだよ」


 俺は彼女に冷たく言った。

 彼女にはこれで分かるだろう。

 俺が嫌がっていることを。


「知ってるよ?」

「えっ」

「知ってるよ。あなたの手は、私の為にあるなんて思っていないよ。だってあなたの手は、みんなを幸せにできるもん」

「みんな?」

「そうだよ。あなたが毎朝、野良猫ちゃんを撫でたり、転けて泣きそうになっている女の子の頭を撫でたり、試合に負けた後輩を慰める為に背中を優しく叩いたり、テストで悪い点を取って落ち込んでいるクラスメイトに肩を軽く叩いたり。だから、あなたの手はみんなのモノなのよ」

「でも君が一番、俺の手を必要としているよね? みんなのモノだと分かっているなら、そんなに必要とするのはおかしいよね? まるで独り占めしようとしているみたいだ」


 俺がそう言うと彼女はうつむいた。


「知ってるけど、やっぱりあなたの手が必要だから」

「俺の手だけなんだね」

「えっ」

「俺の手があれば君は満足なのか?」

「どうしてそうなるの?」

「だって君は告白するんだろう? 成功すれば君は、俺を必要としなくなるんだよ」

「成功しても何も変わらないわよ?」

「でも、もし俺が君の恋人になったら、手を繋いだりするのは幼馴染みでも、してほしくはないけどね?」


 俺の言葉に、彼女は意味が分からないのか首を傾げている。


「君は告白するんだろう? 好きな人にね」

「えっ」


 彼女は驚いた顔をしている。


「俺は、君の告白を応援できないから、手は触らせないよ」

「私が何時、好きな人に告白をするって言ったの?」

「何時って、さっき告白をするって言ったじゃん」

「告白はするわよ。でも告白をするのは先生によ。宿題が難しいってね」

「先生?」

「そうだよ。でも、あなたの勘違いで良いことを聞いちゃったわ」


 彼女はニコニコと笑いながら言っている。


「良いこと? 俺、何か言ったかな?」

「うん。私の告白を応援できないってことは?」


 彼女は俺の顔を覗き込んで見ている。

 俺に言わせようとしている。

 好きだって。


 言わない。

 まだ言わない。


 だけど少しは彼女に伝わってほしくて俺は彼女の頭を撫でた。

 彼女は喜びながら俺の手の上に手を乗せた。


「ちゃんと伝わってるよ。何年、あなたの手に触れてきたと思っているの?」


 そして彼女は俺を見上げて言うんだ。


「大好きよ」


 やっぱり彼女は美少女でどんな顔も可愛いけれど、今の笑顔は一番可愛いんだ。

 だって俺の為に笑うんだからね。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、大好きな幼馴染みに告白をしようとして、いつも言えない主人公の彼の物語。

そんな彼に彼女が一週間、謝ることを禁止させた。

それができたら、彼女の秘密を教えてくれると約束をして。

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