【四十八人目】 見つめてくる可愛い後輩に聞きたい。何故、見つめるのか?
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彼女と出会ったのは部活だ。
彼女はマネージャーとして俺の部活に入部してきた。
最初は何も違和感はなかった。
しかし俺が三年で部活をやめる時期が近くなると、彼女は変わった。
「マネージャー」
「あっ先輩。どうしたんですか?」
「暇だから遊びに来たよ」
「またですか? 先輩が来ると、みんなが部活をしなくなるので、そんなに毎日のように来るのは止めて下さいよ」
「だってあいつらと話すの楽しいからさ」
「みんなは先輩と違って忙しいんですよ?」
「じゃあ、マネージャーに会いに来たよ」
「じゃあってなんですか? 仕方なく言うのは止めて下さいよ」
「分かったよ。今日は帰ることにするよ」
「はい。そうして下さい」
「じゃあな」
「はい」
彼女との会話の後にあれは起きる。
そう、彼女が俺を見つめてくる。
一、二、三。
三秒経ったら、彼女は見つめることを止める。
他の人と話をした後に彼女を見ても、彼女はその相手を見つめることはしない。
俺だけなんだ。
彼女は俺に何を言いたいのだろう?
目で何かを訴えているんだと思うんだ。
でもそれを俺は分からない。
◇
「先輩」
ある日、俺が屋上で昼休みを過ごしていた時、彼女が屋上に来て俺を呼んだ。
「マネージャー? どうしたの?」
「……」
彼女は何も言わず、いつものように俺を見つめた。
一、二、三。
あれ?
まだ俺を見つめている彼女。
今日は長い?
いつもは俺との話が終わった時に見つめるのに、今日は会っていきなり見つめてくる。
いつもと違う。
何かが変だ。
「どうしたの?」
俺は彼女を見つめたまま言う。
「先輩」
「何?」
「先輩」
「泣くなよ」
泣きそうな顔の彼女に、俺は泣いてほしくなくて優しく言う。
「先輩」
「ん?」
彼女は泣くのを我慢しているか、目には涙が溜まっている。
それでも彼女は、俺を見つめることを止めない。
だから俺も彼女を見つめる。
「先輩。私が見つめているのは知っていますか?」
「うん。知ってるよ。気付かない奴なんていないと思うけどな? 今だぅて見つめているじゃん」
「私も知っています。そんな私の瞳を逸らさないで見つめてくれる、先輩の瞳を」
「だって見つめられたら眼は逸らせないでしょう?」
「そんなことはないですよ。私だったら、嫌な人は逸らしますからね」
「あっ、そうかもね。君は可愛いから見ていたいのかな?」
「それは冗談ですか?」
「違うよ。君は可愛いくて目が離せなくなるよ」
俺がそう言うと彼女は、俺を見つめることを止め、俺に背中を見せて後ろを向いた。
「どうしたんだよ?」
「先輩はどうしてそんなことを言うんですか?」
「思ったから言ったんだよ?」
「先輩が分かりません。先輩は私を見る時、優しい眼をするんです。それは何故ですか?」
彼女にそう聞かれると返事に困る。
だって彼女は可愛いし、目を離せなくなる時があるけれど、それを恋だと思ってしまっていいのか分からない。
ただ気になる存在。
見ていて飽きない存在。
そんな彼女を見る眼なんて、意識したことがない。
今、彼女の顔が見えなくてすごく不安だ。
彼女はどんな表情をしているのだろう?
彼女は、もしかしたら泣いているのかもしれない?
彼女に、いつものように見つめられたい。
俺はもしかしたら、彼女の眼に依存しているのかもしれない。
彼女に見つめられるのが当たり前になってしまって、彼女に見つめられたい衝動が生まれている。
あれ?
よく考えてみたら彼女の眼じゃなくて、彼女自身に依存しているのか?
彼女の眼だけじゃない。
彼女の笑顔や彼女の怒った顔、色んな彼女の表情が見たいんだ。
だから毎日のように彼女に会いに、部活を見に行っていたんだ。
なんだ。
俺って彼女が好きなんだ。
そう思ったら何故か迷いがなくなった。
彼女が好き。
それが彼女を優しい眼で見る俺の理由。
そして俺は、彼女を背中から抱き締めた。
彼女はビクッと驚いていたが嫌がらない。
「先輩」
彼女は俺の方を向き、俺を見上げて見つめる。
彼女の眼が、何を言っているのかは分かる。
「好きだ」
俺は彼女を見つめて言った。
「私も先輩が大好きです」
彼女はそう言って俺を見つめたまま笑った。
こんな可愛い彼女の笑顔を、俺は忘れることはないと思う。
「君は見つめることが恥ずかしくなったりしないの?」
「それは私の瞳を見て判断してください」
彼女はそう言って俺を微笑みながら見つめた。
その眼と頬を赤くする彼女を見れば分かるよ。
恥ずかしそうにしている彼女は、いつも勇気を振り絞っていたことを。
今頃、気付くなんて俺ってバカだよな。
◇◇
そう言えば。
彼女の泣きそうになっていた理由を聞いた。
それは、俺がもうすぐ卒業するって考えたら、悲しくなって俺に会いに来たんだって。
そして俺の顔を見て、いつものように見つめていたら、俺への想いが溢れてきて、それが涙になったんだって彼女が教えてくれた。
それを話している時の彼女も、また泣きそうだったから、俺は彼女の安心する言葉を言ってあげたんだ。
「俺はいつまでも、君の隣で君を見つめているから泣かないで」
それを言って彼女が泣かない訳がなかったけどね。
俺の隣で泣くのはいいんだ。
だってそんな彼女も可愛いからね。
涙目で俺を見上げてくる彼女は、俺をドキドキさせる。
彼女の瞳に俺は、一生惑わされるんだと思う。
それを嫌だと思わない俺は、彼女から離れることはない。
だって彼女は俺の大切な人だから。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、付き合っている彼女からプロポーズをされた主人公が、馴染みの彼女にその話をすると、彼女は怒り、そして彼と話さなくなる物語。
幼馴染みはどうして話さなくなったのか?




