【四十六人目】 本物より写真がいいと言う幼馴染みの言葉の意味を知った俺
ずっと俺の幼馴染みとして過ごしている彼女。
俺にとってずっと好きな人。
彼女は俺の気持ちなんて知らないんだ。
だって、ほらっ。
また俺の部屋で、好きなアイドルの写真を見せてくる。
「格好いいでしょう?」
彼女の目はハートマークになっているようだ。
彼女の目には俺なんて見えていない。
今日もアイドルの写真しか見ていない。
「そんなに好きならコンサートとか行けばいいじゃん?」
「それは行かなくていいの」
「折角、本物を生で見られるのに?」
「いいの」
彼女はニコニコしながら俺を見て言った。
彼女の目には俺は映ってはいないのだろうな。
「明日は友達の家に泊まるから、俺の家に遊びに来ても俺はいないからな」
「えっ、そうなの? 残念ね。明日は学校が休みなのにな」
「どうせ俺の部屋に来ても、写真を見るんだろう?」
「それだけじゃないでしょう? あなたと話をしたり遊んだりするじゃない?」
「君は、いつも写真を見ている印象しかないんだけど?」
「そんなことはないわよ」
彼女は頬を膨らませ怒って言っている。
そんな彼女が可愛くて頭を撫でる。
彼女は、私はあなたのペットじゃないわよと言って、また頬を膨らませ怒っている。
◇
次の日は朝から友達の家へ遊びに行った。
「お前、幼馴染みの彼女はいいのか?」
友達の部屋で友達が俺に話しかける。
「あいつは俺より、アイドルが好きなんだよ」
「でも彼女って、お前以外の男子とへ話さないよな?」
「それは、あいつには少し、人見知りな所があるからだよ」
「そうなんだな。彼女っていつもお前と楽しそうに話をしているから、好きなのかと思っていたけど、そうでもないんだな?」
好き?
彼女が?
ある訳がない。
俺みたいな何処でもいるような普通の顔だぞ?
彼女は何処にでもいないような貴重な美少女なんだぞ?
俺なんかを相手にするかよ。
「好きなのは俺だよ」
「知ってるよ」
「知ってるなら、彼女にどうすれば好きになってもらえるのか考えろよな」
「お前は何様だよ。だいたい告白すれば早いじゃん」
「はあ? それは却下」
「なんでだよ」
「幼馴染みじゃなくなるからだよ」
「もしかして、フラれたら彼女を失うって思ってんのかよ?」
当たり前だ。
気まずくなって話さなくなって、俺の部屋にも遊びに来なくなるんだ。
そんなのフラれるよりショックだ。
だから俺は言わない。
彼女を失うくらいなら言わない方がマシなんだよ。
「彼女が俺の生き甲斐なんだよ」
「変な奴だな」
「これが俺なんだよ」
『プルルル』
俺のスマホが鳴っている。
液晶画面を見る。
彼女からだ。
「あいつから電話だ」
「顔がニヤけているぞ」
「うるさい」
俺はニヤけている顔を引き締め、彼女からの電話に出た。
「もしもし」
「あっ、私だけど今、何処にいるの?」
「友達の家だけど?」
俺は彼女と話せる嬉しさを押さえながら、平常心を保ちながら話す。
「もう、お泊まりに行ったの?」
「そうだけど?」
「顔が見たかったのに、、、」
顔が見たい?
どういう意味だ?
「えっ」
「あなたの家に、写真を忘れちゃったのよ」
アイドルの顔が見たかったのかよ。
俺に言っているんだと期待したじゃん。
なんか恥ずかしくなった。
「写真なんて、沢山持っているだろう?」
「あの写真がいいの。後でおばさんに言って、あなたの部屋に行き、取ってもいい? 」
「うん。好きにすればいいよ」
「分かったわ。写真を取ったら、また電話をするわね」
「何で? 用事はないだろう?」
「あっ、そうだね。あなたは友達と楽しんでいるのよね? ごめんね」
彼女の声が悲しそうだ。
だから彼女がしたいようにさせようと思った。
「そんなことはないけど、俺に電話する必要はある訳?」
「うん、あるよ。だって声が聞きたいもん」
声が聞きたいって、俺は君の恋人なのかよ?
そんな話は聞いたことがないけどな?
「分かった。また後で、電話したいならしてきなよ」
「うん。じゃあね」
そして電話を切った。
彼女の言葉はどうしていつも、俺を期待させるんだ?
なんなんだよ。
横を見ると、友達がニヤニヤとしている。
「何でニヤニヤしてんだよ?」
「彼女は絶対に、お前が好きなんだって思わないか?」
「何でそうなるんだよ?」
「声が聞きたいのは、好きだからだよ」
電話で話をしている会話を聞くなよな。
まあ、聞こえたんだと思うけどな。
「でもあいつは、アイドルが好きなんだよ?」
「そのアイドルって名前は分かるのか?」
「うん。最近、人気が出てきたアイドルグループの一人だよ」
「顔が見たいからネットで検索しようぜ」
そして友達はネットで検索をした。
一番最初に名前が載っていた。
サイトを開いて、俺達はそのアイドルの顔を見た。
「何かお前に似ていないか?」
「俺に似ているか?」
友達は、俺とそのアイドルの画像を見比べながら言った。
俺がアイドルに似ている訳がない。
こんな普通の俺なんかが似ていたら、そのアイドルが可哀想だ。
「やっぱり彼女は、お前が好きだって。次に電話が来た時に聞いてみろよ」
「何でそうなるんだよ?」
「いいから確かめてみろよ!」
それから俺は彼女の電話を待った。
心臓はバクバクだ。
『プルルル』
スマホが鳴った。
液晶画面には彼女の名前が出ている。
俺は深呼吸をして電話に出た。
「もしもし」
「あっ、私だよ」
「うん」
「写真を取ってきたから、もう大丈夫だよ」
「そっか」
「どうしたの? 何かあったの?」
彼女は俺の異変に声だけで気が付いた。
「写真は今、見ているのか?」
「うん。見ているよ」
「そんなに好きなのか?」
「うん大好きよ」
「どっちが?」
「どっちって何と比べるのよ?」
「俺とそのアイドルのどっちが好きなんだよ?」
「えっ」
彼女は驚いた後、答えを教えてはくれない。
「どうして答えてくれない訳? アイドルって言わない訳?」
「気付いたの?」
「何が?」
「アイドルの彼の顔と、あなたの顔が似ているってことよ」
「うん」
「そうなんだね。それなら言わなくても分かるでしょう?」
「分からないから聞いているんだよ」
「それなら、毎日あなたの部屋に行って、あなたの声を聞いて、あなたの顔を見ていても気付かないの?」
「待ってて。電話では、こんな大事な話をしたくはないんだ。今から帰るからさ」
「うん」
俺は友達に、今日は帰ると言って自分の家へ帰る。
友達の家を出る時に、頑張ってこいよと友達に言われた。
そして、早く彼女に会いたくて家まで走った。
俺が家へ着くと、彼女が俺の家の前で待っていた。
「おかえり」
彼女は嬉しそうに笑った。
「ただいま」
俺はそう言って、彼女の手を引いて俺の部屋へ向かう。
「先に俺の気持ちを聞いてほしいんだ」
俺は部屋に着いて、彼女の方を向き言った。
「うん」
「俺は君の事が好きなんだ。幼馴染みじゃなくて、ずっと好きな人だったんだよ」
「私もだよ」
「でも君は、アイドルが好きだっただろう?」
「うん。あなたに似ているアイドルが好きなの」
「俺に似ているって、そのアイドルが可哀想じゃん」
「だって似ているんだから仕方がないよ」
「ところで、俺に似ているから、アイドルの写真をいつも見ていたのか?」
「それは違うよ」
「それなら何で、いつも写真を見るんだよ?」
「こうするからよ」
彼女はそう言って、いつものようにアイドルの写真を見る。
「こんな風にあなたを背景に写真を見るフリをして、あなたを見ていたの。気付いていたかしら?」
「だからいつも俺は、君の写真の裏側しか見ていなくて、そのアイドルの顔を知らなかったんだな」
「やっぱり写真より本物が一番よ」
彼女はそう言って笑った。
こんな可愛い彼女が恋人なんて、俺は幸せ者だよ。
それから彼女は写真を見なくなった。
その代わり、毎日のように俺を見て嬉しそうに笑っていた。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、魔法使いに憧れている可愛い幼馴染みに、魔法にかかったと演技をしたら、彼女はどうするのか試してみた主人公の彼の物語。
いつもはできないことを彼は彼女にします。




