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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~  作者: 来留美


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【四十四人目】 二人の関係は元婚約者と元婚約者の妹

「あのね。私まだ結婚したくないの。だから婚約はなかったことにしてくれる?」

「はあ?」


 俺は今、喫茶店で婚約者に、婚約破棄をされそうだ。

 ん?

 婚約破棄をされたのか?


 でも、まだ俺は婚約破棄を認めていない。

 それならまだ婚約破棄は成立していない。


「それじゃあ。そういうことで」


 えっ。

 彼女は席を立って俺に背を向け歩いていく。

 待って。

 俺、結婚しないって言った?

 そのまま彼女は消えていった。


 どうしよう。

 俺って彼女に捨てられた感じ?

 泣いていい?

 可哀想な俺に誰か胸を貸してくれ。

 できれば女の子でお願いします。


「あっ、いた! お兄さん」


 俺は聞き覚えのある声に振り向く。

 そこには、可愛い天使のような女の子が立っていた。


 その天使は元婚約者の妹。

 この子は俺をお兄さんと呼ぶ。

 しかし、俺は君のお兄さんになることはないよ。

 そう教えてあげたいが、まずは君に癒されたいんだ。


 天使の彼女の髪の毛は、柔らかくサラサラで、黒くて長くいつもいい香りがする。

 顔のパーツは目は大きく、お人形さんのようでパッチリ二重だ。


 鼻は小さく唇はプルップルだ。

 頬はほんのり赤く、声は少し高めだが嫌な感じはしない。

 前髪を上にあげ、おでこはキレイに見えている。


 やっぱり可愛い。

 癒される。


「どうしたの?」

「あっ、お姉ちゃんは何処に行きました?」

「あいつなら俺と結婚はしないって言って、出ていったけど?」

「出ていきました? 遅かったですね」

「ねえ、俺の話をちゃんと聞いていたのかな?」

「えっ」

「俺、君のお姉さんに婚約破棄をされたんだよ?」

「えっ、嘘ですよね?」

「そんな嘘をつく必要が俺にあると思うか?」 

「そうですよね。お姉ちゃんがすみません」

「君が謝らなくてもいいよ」


 天使の彼女は申し訳なさそうな顔をしている。


「それで君はどうしてお姉さんを探しているの?」

「それが、お姉ちゃんから置き手紙があって、、」


 そして天使の彼女は俺に手紙を見せてくれた。


『お姉ちゃんだよ。

 ちょっとだけ旅に出ます。

 死ぬ訳じゃないので心配しないでね。

 そして探さないでね。

            可愛い妹へ』


 元婚約者らしい文章だ。

 さっきの婚約破棄の言葉からして気付いた人もいると思う。


 元婚約者は楽観的だ。

 何事にも大丈夫だと思い行動をし、本当に何でもうまくいっているんだ。


 そんな元婚約者のことを、好きになってしまった俺が悪いのかもしれない。

 元婚約者は思いたったらすぐ行動をする。

 俺と付き合ったのも元婚約者が言ったんだ。


「私達って仲良くなれると思うのよね。どう? 付き合わない?」


 元婚約者は可愛くて俺は好きだったから、すぐに付き合うことになった。

 元婚約者は俺の横でいつも楽しそうに話をしていた。

 本当に俺達は仲良くなった。


 プロポーズは俺からしたんだ。

 元婚約者は本当に嬉しそうに微笑んで、お願いしますって言ったんだ。

 あの時は本当に幸せだった。


 それなのに、何故いきなり結婚したくないなんて言うんだ?

 プロポーズから半年は経っている。

 プロポーズをしてから、すぐにでも結婚をしていればよかったのか?


「なんかあいつらしいよな」

「えっ」

「あいつには何か考えがあるんだよ。俺との婚約破棄も旅に出るのも」

「お兄さんはお姉ちゃんのことを、よく分かっているんですね」

「そうだよ。何年あいつと一緒にいると思ってんだよ?」

「ん~、五年?」


 天使の彼女は、首をかしげて可愛く言った。


「もっとだよ」

「そうでしたっけ?」

「その倍の十年だよ」

「それなら、私はその倍の二十年です」

「そうだね。君は姉妹だからだね」

「妹でも分からないお姉ちゃんのことを、あなたは知っているんですよね?」

「そうだね。君の知らない、あいつの女の顔も知っているよ」

「えっ、そこは言わなくてもいいですよ」

「あっ、そうだね。ごめん」

「いいえ」


 なんか気まずくなった?

 元婚約者と話すノリで天使の彼女に話をすると、少し温度差が生まれる。

 姉妹でもこんなに性格が違うなんて驚きだ。


「君でも良ければ、今から一緒にご飯でも食べようか?」

「いいんですか?」

「どうせ!一人じゃ食べきれないからね」

「行きます」


 天使の彼女の行きますを言った後の笑顔は、元婚約者にそっくりだ。

 そこは姉妹なんだなあって思う。



 そして天使の彼女と俺は俺の家に入る。

 何故、俺の家に入るのかって?

 それは、俺が今からご飯を作るからなんだ。


 俺は簡単なご飯を作るのが得意で、たまに元婚約者や天使の彼女に食べさせてあげたりしていた。


「座ってて、すぐに作るからね」

「は~い」


 天使の彼女は、元婚約者にしか見えないほど返事の仕方も声も笑顔もそっくりだ。

 天使の彼女には申し訳ないが、元婚約者を重ねてしまう。


 俺はそれほど、元婚約者が好きだったんだなあって思った。

 俺はご飯を作る。

 天使の彼女はソファから俺をチラチラと見ている。


「何? どうしたの?」

「お手伝いしてもいいですか?」

「それなら今日は特別にいいよ」

「やったぁ」


 天使の彼女は飛び上がりながら喜んでいる。

 俺はご飯を作る時は、一人でするタイプなんだ。

 だから元婚約者は、このキッチンに立ったことはない。


 それを知っている天使の彼女も、今まで立ったことはない。

 それなのに今日は、俺の横に立ってニコニコしている。


「あっ、エプロンかいるよね? 確かここにあったはず」


 俺はエプロンを探し出し天使の彼女に渡す。


「エプロンは二つあるから、これは君専用でいいよ」

「私専用って!これからもここに立っていいんですか?」

「いいよ。花嫁修業でもする? 俺が先生になってあげるよ」

「お兄さん先生。宜しくお願いします」

「お兄さん先生って、どっちかにしてよ。でも俺は、君のお兄さんになることはなくなったから、先生でいいよ」

「はい。先生」


 天使の彼女から先生と聞くと、なんだか萌えだな。

 うん。

 天使の彼女はいつ見ても可愛い。


 それから天使の彼女と楽しくご飯を作る。

 天使の彼女はなかなか上手で!俺が教えることもあまりなかった。


 天使の彼女は、ずっと俺の隣で楽しそうに笑いながら料理をしていた。

 この俺の隣で楽しく笑う天使の彼女も、元婚約者にそっくりだ。

 また天使の彼女と元婚約者を重ねてしまった。


 ご飯ができて二人で食べる。

 天使の彼女は美味しいと何度も言いながら食べていた。

 そこは元婚約者とは違う。


 元婚約者は味にうるさく、ちょっと塩辛いとか、これはもう少し砂糖がいるわねとか、いちいち文句を言っていた。


 ご飯を食べた後は二人で食器を洗った。

 俺が洗ったものを、天使の彼女が布巾で拭いてくれた。

 元婚約者とはしなかったことを、天使の彼女とするのは不思議だ。


 もしかしたら俺は、元婚約者と一緒にこんな風にしたかったのかもしれない。

 後片付けも終わり二人でソファに座り、テレビを見る。


 天使の彼女とお笑い番組を見て、天使の彼女と同じ場所で笑った。

 これも元婚約者とは違う。


 元婚約者は、俺が笑うところに何で笑うの? なんて言って、あなたはお笑いを分かってないって、俺に説教したことがあった。


 あの頃と比べると天使の彼女と一緒にいると楽しい。

 一緒に笑うって嬉しいんだなって思った。


 お笑い番組が終わり、次はドラマが始まった。

 恋愛ドラマみたいだ。

 天使の彼女は感情移入しているのか怒ったり、笑ったり、不安になったり、泣きそうになったり忙しそうだ。


 俺はドラマより天使の彼女の、そんな感情の変化を見る方が楽しかった。

 ドラマが終わり、ニュース番組に変わった。


 天使の彼女は眠そうに目を擦っている。

 子供みたいな天使の彼女。

 やっぱり可愛い。


「眠いの?」

「いいえ」


 天使の彼女は首を振って答える。

 どう見ても眠いでしょう?


「送るから、帰ろうか?」

「いいえ、まだ帰りません」

「でも眠そうだよ?」

「まだ帰りません」


 天使の彼女は、ムリヤリ目を開け、俺に向かって言う。


「どうしたの?」

「どうもしてません」

「何? 怒っているの?」

「怒っていません」

「じゃあ何? どうして帰りたくないの?」

「お兄さんが可哀想だから、、、」

「俺?」

「お姉ちゃんがいなくなって、お兄さんが可哀想だからです」

「君のお姉さんがいなくても、俺は大人だから大丈夫だよ?」

「その言い方は、私を子供だって言っているんですか?」


 天使の彼女は頬を膨らまして怒っている。


「違うよ。君は年相応の女の子だよ?」

「私はお兄さんの妹ですか?」

「まあ、君も俺のことを、お兄さんって呼んでいるんだから、そうでしょう?」

「私がお兄さんって呼ばなかったら、私は妹じゃないんですか?」

「う~ん、どうだろう? 君は可愛いし、俺にとって癒しの存在だしなあ」

「私がお兄さんの癒しなら、毎日この家に来てもいいですか?」

「どうして?」

「お姉ちゃんにフラれたお兄さんを、癒す為に毎日でも来ます」

「えっとそれは、遠慮するよ」

「どうしてですか? 私じゃダメですか? お姉ちゃんじゃないと、やっぱりダメですか?」


 天使の彼女は泣きそうな顔で言っている。

 癒すのは君だけど、毎日俺の家で君を見ていたら、俺は見ているだけじゃ済まなくなるかもしれないから。


 でもそんなことを彼女には言えないし、、。


「えっと、俺って今日、婚約破棄されたんだよ? 弱っている俺に君が優しくしたらどうなるか分かるでしょう?」

「いいですよ」

「えっ」

「いいですよ。どうなっても」

「いやっ、ダメだって。どうにかなったらダメだよ」

「私がいいって言っているんだからいいんです」

「俺がダメなんだよ」


 俺は少し大きな声で言った。

 天使の彼女はそんな俺に驚き、俺を見つめる。


「俺はちゃんと君のお姉さんのことを整理して、君のことを好きになりたいんだ」

「お兄さん」


 天使の彼女は嬉しいのか泣いている。


「分かったかな?」

「分かりました。だから私は帰りません」

「分かってないよね?」

「分かりましたよ。お兄さんは、私のことが好きなんですよね?」

「まあ、そうなんだけど、、、」


 天使の彼女は泣き止んで、次はニコニコとしている。


「今日は泊まります!」

「何の宣言なの?」

「私がお兄さんの妹を卒業して恋人になる為に、今日は泊まります」

「俺は帰って欲しいんだけどなあ?」

「好きな人と一緒にいたいって思うことは、ダメですか?」


 かっ、可愛い。

 天使の彼女が俺に甘えている。

 いいよ。

 君が一緒にいたいならいいよ。


 、、、なんて言える訳がない。

 本当は言いたいけど。


「今日は帰りなさい。今度、ちゃんと準備をしてからにしようか?」

「今度っていつですか?」

「それは君が俺の恋人になった時かな?」

「私はいつ恋人になれるんですか?」

「それは、もうすぐだから少しだけ待ってくれるかな? 俺は君の事を大切にしたいんだよ」

「分かりました。それなら帰ります」

「良かった」

「その代わり、私の事が好きだって証明して下さい」

「証明って好きって言ったよね?」

「言葉じゃ分かりません」


 天使の彼女は不安な顔で言っている。

 言葉で言っても分からないなら、行動で示せってことなのかな?


「どうすれば分かってもらえるの?」

「キス……です」


 天使の彼女は小さな声で言った。

 自分で言って恥ずかしがってんの?

 いいよ。

 君がキスを望むならしてあげる。


「いいよ。でも自分が言った事に、後悔はしないでくれよ?」

「はい」


 天使の彼女は強がって言った。

 それなら遠慮なくいただきます。

 そして俺は天使の彼女の頬にキスをした。


「なっ、何でですか?」

「これもキスだよ?」

「子供扱いはしないで下さい」


「子供扱いなんてしていないよ。大切に大事に扱っているんだよ」


 俺は天使の彼女にそう言って抱き締めた。


「早くあなたのモノになりたいです」


 天使の彼女は俺の腕の中でそう言った。


 天使の彼女は、自分の言っていることがどういうことなのか、分かっているのだろうか。

 俺はその言葉を聞かなかったことにした。


 天使の彼女にはまだ早い。

 俺もまだ早い。

 俺達にはまだ早い。

 だから今は、この抱き締めている時間を大切にしたい。


◇◇


 それから一ヶ月後、元婚約者が旅から帰ってきた。


「ただいま」

「おいっ、どれだけ心配したと思ってんだよ」


 元婚約者は俺の家に帰ってきたのだ。

 自分の家に帰れよ。


「やっぱり私は、あなたと仲良くなれると思うの」

「はあ? もうお前とは無理だって」

「違うの。ねぇ、私と親友にならない?」

「そういうことならいいよ」

「やっぱり私達は親友なのよ。婚約者は私の妹よ。でしょう?」


 元婚約者はキッチンの方に向かって言った。


「お姉ちゃん気付いてたの?」


 キッチンから彼女が顔を出した。


「当たり前でしょう? あんたの靴とあんたのシャンプーの香りで分かるわよ」

「お姉ちゃん。怒ってないの?」

「どうして怒るの?」

「だって、お姉ちゃんの元婚約者だよ?」

「今は私の親友よ。親友が妹と結婚なんて嬉しいわよ」

「結婚はまだよ」

「えっ、そうなの? それなら親友に一言いいかしら?」


 元婚約者は俺の方を向いて言った。


「何だよ?」

「私の可愛い妹を泣かしたら、許さないんだからね」

「泣かさないって。彼女は俺の最後の恋人になる人だからね」

「えっ」


 俺の言葉に彼女が驚いている。

 意味が分かったかな?

 最後の恋人ってことは、彼女と結婚をするってことなんだけど気付いてくれたかな?


 俺は彼女を見る。

 彼女は泣いていた。


「ちょっと、さっき言ったのに、もう泣かしているなんて悪い男ね」


 元婚約者は俺をポカポカ殴る。

 これって泣かしているのか?


「お姉ちゃん止めて。私の婚約者を叩かないで」


 彼女はそう言って、俺に抱き付いてきた。

 それを見た元婚約者は呆れた顔をして、家に帰ると言って帰っていった。


 その後の俺達はご想像にお任せします。

 まあ、一言だけ言うと。

 幸せになりました。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

読んで頂けたことに感謝しております。


次のお話は、いつも失恋をすると、主人公の彼の家に泣きにくる彼女の物語。

その彼女がバレンタインで告白をすると言っていたので、彼女がフラれて家に泣きに来ることを願う彼に、彼女は泣きに来るのか?

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