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【四十人目】 願いは一つだけ。叶えてくれ俺の女神様

 彼女を何かに例えるなら。

 それは美しい女神様だ。

 彼女は俺に優しく笑いかけるんだ。

 彼女は俺に優しく接してくれるんだ。


 彼女はこんな目立たない俺に、人間として対応してくれるんだ。

 だから彼女は俺にとって女神様だ。


 あっ、今日も女神様は俺に向かって、笑顔で手を振っている。

 そんな女神様は美少女だ。

 どうか美少女で女神様の彼女が、いつまでも俺に、優しく笑いかけてくれますように。


「何を拝んでいるの?」


 女神様は俺を見て笑っている。

 俺は女神様に向かって、手を重ね拝んでいた。


「君は女神様だからだよ」

「また何かのキャラクターを私に重ねているの?」

「そうだよ。今回は、俺が気に入っているゲームの、大人しい人見知りの女の子だよ」

「彼女はあなたとはどんな関係なの?」

「友達からいつかは、恋人になる予定の女の子だよ」

「その女の子とデートはするの?」

「するよ。デートで親密度を上げるんだ」

「そんなことをしなくても、現実は私と仲良くなっているのに。どうしてゲームの中で女の子と仲良くするの?」


 女神様は少し拗ねたように言った。


「君は女神様だから、俺の相手をしてくれるけど、他のクラスメイトの女子達は、俺のことなんて無視だからね」

「それはあなたの事を知らないからよ」

「俺はそれでいいよ。ゲームの中で女の子とデートしている方が、俺の好みの女の子だし楽しいからね」

「ゲームの中の女の子にはこんな風に触れられないのに?」


 女神様はそう言って、俺の制服の袖を引っ張った。


「それは俺に触れてる訳じゃなくて、俺の制服に触れてるだけじゃん」

「そっ、そうね」


 女神様は顔を赤くして、俺の制服の袖から手を離した。



 さあ、今からゲームの中の彼女とデートだ。

 今日は遊園地でデートみたいだ。

 最後に観覧車に乗った。

 彼女に手を繋ぎたいと言われたから、選択肢でいいよを選んだ。


 彼女は嬉しそうに笑っている。

 俺は今日の女神様の行動を思い出した。

 画面の彼女と手を繋いでいるより、女神様が袖を引っ張った時の方が、何故かドキドキすると思ってしまった。


 すると画面の中の彼女が、顔を赤くして拗ねるように言った。


『あなたは私以外の女の子とも、こんなことをするんでしょう? 私はあなたを好きなのに、あなたは違うんでしょう?』


 俺がしているゲームは、色んな女の子の中から好きな子を最後に選ぶゲーム。

 俺はこの女の子とはまだ親密度は低い。


 しかし、女の子の言葉は女神様を思い出させた。

 女神様が俺の袖を引っ張るあの場面を。

 ドキドキしたあの場面を。


 画面の中の彼女の顔を見て俺は、画面の中の彼女じゃなくて、女神様の気持ちを知りたくなった。

 どんな想いで俺の袖を引っ張ったのか?

 何を伝えたかったのか?


◇◇

 

「今から会える?」


 俺は女神様に会いたくて、電話をした。

 女神様は驚いていた。

 俺が女神様に、近くの公園で会おうと言うと、女神様は今から行くよと言ってくれた。


 俺はドキドキしながら公園へ向かう。

 こんな気持ちは初めてだ。

 緊張して、それでも女神様に会えることに心がワクワクして、不思議な感覚だ。

 俺は先に公園に着いた。


 あっ、女神様が笑顔で向こうから走って来る。

 走らなくても俺は逃げないのに、と思いながら女神様が目の前に来るのを待った。


「ごめんね。待たせたかな?」


 女神様は心配そうに俺に言った。


「大丈夫だよ。ところで、どうして走って来たの?」

「だってあなたに会いたくて」

「ねえ、どうして君は俺に優しいの?」

「えっ」

「どうして君は俺に笑顔で話しかけてくれるの?」

「えっと」

「どうして君は女神様なの?」


 俺は女神様を見つめ言った。


「女神様は、あなたのゲームの中の、女の子のキャラでしょう?」

「違うよ。君は俺にとって女神様なんだ」

「それは私が、あなたのゲームの中にいる女神様ってことなの? あなたはそうやって、いつもゲームの中に逃げるのよ」


 女神様は悲しそうな顔をして言った。

 画面の中の彼女達はこんな顔をしない。

 だって俺は、画面の中の彼女達の、喜ぶ選択肢をちゃんと知っているから。


 でも女神様は違う。

 どうすれば女神様が喜ぶのかなんて、俺は知らない。

 だから女神様がしたかったことを、俺はするんだ。

 それなら分かるから。


「えっ」


 女神様は驚いている。

 でもそれは、当たり前だと思う。

 だって俺は女神様の手を握ったから。


 女神様がしたかったのは、俺の袖に触れることじゃなくて、俺の手に触れること。


「俺は君としか仲良くならないよ」

「現実ではでしょう? ゲームの中の女の子とは仲良くなるでしょう?」


 女神様は、また拗ねたように言った。

 観覧車の中で見た、画面の中の彼女と似たような顔だ。


「ゲームの中に逃げることは、もうしないよ。だから俺は君だけだよ」

「えっ」

「君は俺だけじゃないの?」

「私はずっとあなただけが好きだよ」

「どうしてこんな俺が好きなの?」

「それはあなたが、泣いているクラスメイトの女子に、ハンカチを渡して、ハンカチは捨ててもらっていいからって言っていたのを見て、好きになったの」

「何それ? 君みたいな女神様なら、もっと運命を感じるような理由じゃないの?」


「その後の話があるの」


 女神様はニコニコしながら言った。


「えっその後のことを知っているの?」

「その後すぐに女の子は、あなたのハンカチをゴミ箱に捨てたのよね? あなたの前では捨てなかったけどね」

「そう。ハンカチを捨てられた俺が、可哀想な話なだけじゃん」

「そんなことはないわ。だってその後あなたは言ったの。良かった、涙が止まってってね」

「えっ聞こえていたんだ?」

「うん。ちゃんと聞こえていたよ。あなたは微笑んでいたの。その顔を見て私は、あなたを好きになったんだよ」


 女神様はあの時のことを思い出しているのか、微笑んでいる。


「君はやっぱり俺の女神様だ」

「それなら女神様からあなたへお願いがあるの」

「なんでしょうか?」


 俺はふざけながら、女神様の前で片膝を地面につけ、女神様を見上げた。


「あなたは優しい人よ。だから明日から学校では、みんなにあなたのことを、知ってもらえる努力をしてくれるかしら?」


 女神様は自分で想像し、女神様を演じてくれる。


「はい。それでは、次は俺から君にお願いをするよ」


 俺は立ち上がり女神様を見つめる。


「どうしたの?」


 俺が立ち上がったことにより女神様は俺を見上げる。

 今度は俺が上から女神様に言う。


「願いは一つだけ。俺にずっと優しく笑いかけてくれないかな?」


 女神様は俺の言葉に驚いている。

 そしてその顔はすぐに笑顔になった。


「一生ならいいよ」

「女神様。君の笑顔は一生、俺のモノ」

「私はあなただけの女神様よ」


 女神様はそう言って眩しい笑顔を見せてくれた。


 俺の女神様。

 俺の願いは一つだけ。

 どうかいつまでも優しく笑っていてください。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。感謝です。


次のお話は、婚約破棄をされた主人公の彼は、何故かワンピースを泥だらけにした可愛い彼女と出会う。

彼女には何故か全てを話したくなる、そんな雰囲気があった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 甘ーいお話ですね。 ゲームから現実へ。 恋が実って良かったです!
2022/06/07 17:10 退会済み
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