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【三十三人目】 違うんだ。美少女の君が俺の妹になったらダメなんだ

「おっ、美少女が俺を見たぞ」

「違うよ。お前のその派手な髪に、目がいったんだよ」


 俺の友達が嬉しそうに言っていたから、現実は違うのだと俺は教えてやる。

 俺の友達の髪色は金髪だ。

 校則違反だが先生達は何も言わない。


 彼を怖がっているからだ。

 彼だけではない。

 俺も怖がられている。


 俺達は俗に言う不良だ。

 俺の髪はみんなと同じ真っ黒だから、一つ年下の美少女が目立たない俺のことを、見ることはない。


「なあ、今日はどうする?」


 金髪の友達が椅子に座り、足を机に乗っけて言った。


「今日は早く家に帰ろうと思っているんだ」

「えっ何で?」

「今日は母親の再婚相手と、その娘が来る日なんだよ」

「再婚だと? お前は再婚してもいいって言ったのか?」

「親が決めたことだから、俺が何か言うつもりはないよ」

「それでいいのか?」

「いいんだよ。もうすぐ籍を入れるって言ってたから、もうすぐ妹ができるみたいだ」

「可愛い妹だったら紹介しろよ」

「紹介なんてするかよ。お前には俺の妹はもったいないんだよ」


「お前は、シスコン確定だな」


 友達は呆れながら言った。

 俺の友達は見た目が不良に見えるだけ。

 少しつり目で少し眉がなくて少し口が悪くて、少し気が短いだけで、他は普通の高校生だ。


 友達がこんな見た目だから、こいつの隣にいる俺も一緒に、不良と呼ばれる。

 何と呼ばれても俺は気にしない。


 急いで家に帰ると、玄関に知らない靴が二つ並んでいた。

 もう、来ているみたいだ。

 俺はリビングへと向かった。


 リビングのテーブルを挟んで、母親と再婚相手が向かい合って座っている。

 再婚相手の隣に制服姿の女の子が、うつむいて座っていた。


「あっ帰ってきた?」

「うん」


 母親は俺の顔を見て、ホッとしていた。

 俺が帰って来ないと思っていたのだろう。


「こちらがあなたの父親になる人で、隣があなたの一つ年下の妹になる子よ」

「そう。宜しくお願いします」


 母親が二人を俺に紹介してくれて、俺は素っ気なく二人に挨拶をした。


「あっこれから宜しく。君の父親になれるように頑張るからね。娘にも優しくしてくれると助かるよ」

「できる限り優しくしますよ」

「それは良かった」


 再婚相手はそう言って妹になる彼女の肩を叩いた。

 すると彼女は顔を上げた。

 その顔を見て俺は固まった。


 だって俺の妹になる女の子は、学校にいたあの美少女だったから。


「なっ、何で君が?」

「どうしてあなたが?」


 俺達は声を揃えて言ってしまった。

 それを聞いた母親が、二人は知り合いなのね良かったわなんて言って、微笑んでいた。


 知り合いなのか?

 ただ遠くから見ていただけなのに。

 でも、彼女は俺のことを知っているのか?

 その事実が何故か嬉しかった。



 その日から彼女と再婚相手は、一緒に住むことになった。

 俺には妹ができた。

 しかも美少女の。


 しかし、新しい家族ができると、今までの生活をしていたらダメなことに気付いた。


「ちょっと、お風呂から出てくる時は、ちゃんとパジャマを着てからにして下さい」

「あっ、ごめん」


 俺はすぐにスウェットを着た。

 彼女に初めて怒られた。


「ちょっと、食べたらちゃんと、流しに食器を持っていって下さい」

「あっ、ごめん」


 俺は急いで食器を流しに持っていった。

 また彼女に怒られた。


「ちょっと、トイレの蓋は閉めて下さい」

「あっ、ごめん」


 俺はトイレに行き蓋を閉めた。

 またまた彼女に怒られた。


「ちょっと、家に帰ったら、すぐに玄関の鍵は閉めて下さい」

「あっ、ごめん」


 俺は玄関へ行き鍵を閉めた。

 またまたまた彼女に怒られた。


「ちょっと、私の洗濯物の中に、あなたの下着が入っていました」

「あっ、ごめん」


 えっ。

 今のは謝るところか?

 洗濯物はいいだろう?


「一緒に洗っても何も問題はないだろう?」

「大問題です。あなたやお父さんのと一緒に洗うのは、嫌なんです」

「おっ、年頃の娘の言葉だ」

「私はあなたの娘じゃありません。洗濯物は一緒にしないでよ」

「分かったよ」


 しかし、妹っていうものは、こんなに面倒なのか?

 俺の今までの生活に戻りたいよ。


◇◇


「俺の妹が、口うるさい母親みたいなんだ」


 俺は学校に着いて、金髪の友達に困った顔をして言った。


「美少女なら我慢しろよ」

「美少女にも限度があるだろう? 昨日なんて洗濯物を、一緒に洗いたくないって言われたんだからな」

「お前は美少女の父親みたいだな」

「だろう? だからそう言ったら、私はあなたの娘じゃありませんって、いつもより怒ってたんだからな」

「何かお前、楽しそうだな」

「えっ」

「前のお前は一人で寂しそうにしていたのにな」

「それはお前と出会った頃で昔の話だろう?」

「そうだけど、そんなお前を見ていたから、今のお前を見ていて嬉しいんだ」


「お兄ちゃん!」


 ん?

 聞き覚えのある声が、教室のドアの方から聞こえる。

 俺は教室のドアを見て驚いた。

 妹?


「もう! お弁当をお母さんから預かってないの?」

「あっ、そう言えば」


 俺は彼女用の弁当を鞄から出す。


「どうして忘れるの? だからいつも私が、言ってあげてるのに」

「何か言ってたかな?」

「えっ、気付いていないの? 昨日もあんなに怒って言ったのに?」

「洗濯物のこと?」

「そうよ。他にもトイレの事とか、お風呂の事もね」

「そうだったのか」

「もう! あなたには私が必要みたいね」

「まっそうかもな」


 俺達の会話を静かに聞いていた金髪の友達が、俺と彼女を交互に見ていた。

 変な奴。


「なっ何か、二人って兄妹というより夫婦みたい」

「えっ」

「えっ」


 友達の一言に俺と彼女は一緒に驚く。


「もし、二人の関係を知らない人が見たら、夫婦にしか見えないと思うよ」

「何処がだよ?」

「弁当箱、洗濯物、風呂、トイレって全部一緒に住んでいないと、文句なんて出てこないだろう?」

「それは家族だからで、夫婦じゃないんだよ」


 俺は友達のおでこにデコピンをして言った。


「いってぇ。じゃあ聞くけど、お前は彼女を妹として見てるのかよ?」

「えっ」


 お前は彼女の前で何てことを言ってんだよ。

 彼女を見ると俺の言葉を待っているようだ。


「そっ、そっ、それは、、、妹として見てるよ」

「へぇ~そうなんだな」


 友達はニヤニヤしながら俺を見ている。

 後で友達に、さっきのデコピンの倍の力で、お見舞いしてやると俺は誓った。


「あっ、友達が待ってるんだった。教室に戻るね。ありがとう。お・に・い・ちゃ・ん」


 彼女は怒ったように、俺をお兄ちゃんと呼んだ。


「お前は妹を怒らせたな」

「はあ?」


 友達は彼女が帰っていくとそう言った。


「俺が折角チャンスをあげたのに」

「何がチャンスだよ。お前は、余計なことをしただけなんだよ」

「血が繋がってる訳じゃないんだから、好きなら好きって言えばいいんだよ」

「それでも彼女は妹なんだよ」

「それなら俺にもチャンスかあるってことだよな?」

「俺の大切な妹が、お前みたいな奴を相手にする訳がないだろう?」

「そんなの分かんねぇだろう?」

「まず、俺が許さない」

「お前がいると、彼女に恋人なんてできないだろうな」


 友達はやれやれと付け加えて、呆れながら言った。


「そうだ。俺は妹が男を連れてきても、許さないよ」

「お前、うぜぇ~」

「うるせぇよ」


 俺は友達に、さっきの十倍くらいの力で、デコピンをしてやった。

 友達は悶絶していた。

 こいつといると楽しい。

 俺は一時、悶絶している友達を見て笑っていた。


◇◇◇


 ある日の学校が終わって、友達と町をブラブラしていた時。


「あれ? お前の妹じゃん」

「えっ何処だよ?」

「待て、あれって隣の男子校の奴らじゃねぇ?」

「あいつら彼女と何してる訳?」

「分かんねぇ」

「それなら聞きに行くか?」

「おいっ、落ち着いて話せよ」

「分かってるって」

「本当に分かっているか?」

「うん」


 俺の彼女に触れたらあいつら全員、許さねぇ。


「なあ、何してんの? こんな人気(ひとけ)のない所で」


 俺は男達に声をかけた。


「はあ? 誰だよお前は?」

「お兄ちゃん」


 彼女が逃げないように、盾になるように立っていた奴が、後ろに立っている俺の方を振り返る。

 そいつが動いたせいで、彼女は俺に気付いて叫んだ。


「何してんの?」

「この子が可愛いからよ、ちょっと楽しまないかって聞いてる所なんだよ」

「へぇ~、俺も仲間に入れてよ」

「はあ? 何処の誰だか分からない奴が、仲間になれる訳がねぇだろう?」

「分かればいいのか?」

「はあ?」

「おい、出てきていいぞ」

「は~い」


 物陰から見ていた金髪の友達が、顔を出して俺の方に歩いてくる。


「えっもしかして噂って本当だったのか?」

「噂?」


 男の一人が怯えながら言ったから、俺はそいつに聞く。


「金髪の男は影武者で、本物は漆黒の髪を持ち、左手の掌に罰印がある、キレると何をするか分からない男」

「俺ってそんな風に言われてたんだ?」


 男の一人の言葉に俺は驚きながら言った。


「俺が影武者ってのがイラッとするんだけど? 俺ってお前のパシリか何かなのか? 俺がいないとお前は止まらないのに?」


 友達は噂を言った男を睨みながら言った。


「久し振りに暴れるかもしれないな」

「手加減はしてくれよ?」

「できるならな」

「彼女が見てるんだぞ?」

「分かってるよ。君は目を閉じてて。すぐに終わるから」


 俺は友達と話をした後、彼女を見て言った。

 彼女は頷き目を閉じた。

 そして俺は暴れた。

 全員、次々と倒れていく。

 

 そして、俺を羽交い締めにして友達が止める。

 俺の動きはようやく止まる。

 彼女を見ると目を閉じているが震えていた。


 彼女には知られたくなかった。

 こんな姿を見ると、みんな逃げていく。

 俺は彼女に触れることができなかった。


 こんなに人を殴った手で、彼女に触れる訳にはいかない。

 友達が彼女の肩を支えながら家へと帰った。

 その日、彼女と顔を合わせることはなかった。


◇◇◇◇


「どう? 美少女の妹は?」


 あの日から一週間が過ぎていた。

 金髪の友達がニヤニヤしながら聞いてくる。


「何を楽しんでんだよ?」

「だってお前が嫌われたら、美少女は俺のモノだろう?」

「嫌われているかもしれないが、お前のモノにならないのは決まっているんだよ」

「でも、俺が彼女を支えて家まで送ったのに?」

「今までの経験上、俺が嫌われると、お前も嫌われていただろう?」

「そうだな」


 俺達の周りの空気が重くなる。

 彼女も今までの人と同じだよな?

 あんな所を見て怖くない奴なんていない。

 嫌われて当然だ。


「お兄ちゃん!」


 彼女の声が聞こえる。

 どれだけ彼女の声が聞きたいんだよ。


「お兄ちゃんってば」

「えっ」


 彼女がいつの間にか、俺の横に来て、耳元で俺を呼んだ。


「今日、一緒に帰ろうよ」


 彼女は、あの日のことなんて無かったかのように、話しかけてくれた。


「えっ」

「妹が言ってるんだから、いいよって言ってやれよな」


 俺が彼女の態度に戸惑っていると、友達がまたニヤニヤしながら言った。

 こいつがニヤニヤする時は何かあるんだが、俺には分からない。

 まあ、大したことではないだろう。


「分かったよ。一緒に帰ろうか?」

「うん。放課後、またここに来るね」


 彼女は嬉しそうに笑って、自分の教室へと戻っていった。

 この一週間、一度も話をしていないのに。

 何で今頃、話しかけてくるんだ?


◇◇◇◇◇


 放課後、彼女は約束通りに俺の教室へ来た。

 靴を履いて校門の前に目をやると、そこには柄の悪い男達が立っていた。


 そいつらを避けながら生徒達は、校門を通っていく。

 隣の男子校の制服みたいだ。

 俺は咄嗟に彼女の手を握った。


 あの日のことがあるんだ。

 彼女は怖がっているかもしれない。

 彼女を見ると俺を見上げて驚いていた。


 俺の手を振り払うことはしないから、嫌がってはいないと思う。


 俺は彼女の手を引いて一歩前を歩く。

 男達を無視しようと離れた所を歩く。


「おい。来てやったぜ」


 一人の男がそう言って俺達を見る。


 俺は意味が分からなかった。

 来てやった?


 俺は彼女を見る。

 彼女はその男に笑いかけている。


「良かった」


 彼女はその男にそう言った。


「知っているのか?」

「うん。この前のあなたが傷つけた人達よ?」

「えっ」

「私は喧嘩はダメだと思ったから話をして、あなた達を仲直りさせたかったの」

「君がこんな柄の悪い男達と話をして、大丈夫だったのか?」

「この人達は悪い人じゃないわよ? それに最初は、あなたの友達の金髪の方と一緒に行ったから、大丈夫だったのよ」

「あいつも知っていたのか。知らないのは俺だけか?」

「ごめんなさい。あなたがいたら話が進まない気がしたから、秘密にしてたの」


 彼女は俺に頭を下げてすぐに顔をあげて、申し訳なさそうな顔をした。


「もしかしてこの一週間って、こいつらと話をしていたから、俺と顔も合わせなかったのか?」

「うん。彼らってば最初は、全然話をしてくれなくて、夜遅くなったりしていたの」

「そう言えば家に帰るのも遅かったな」


 俺は顎に手を当て思い出すように言った。


「私があなたの為に仲直りの機会を作ったのよ? 嫌なんて言わないわよね?」

「仲直りって子供かよ。まあ、仕方ないな」

「それじゃあ仲直りの握手をしてよ」

「だから子供かよ」

「いいの。ほらっ、早く」

「分かったよ」


 俺は一人の男に近づく。

 そいつから緊張感が伝わる。

 怯えているのか?


「俺の妹に触れなければ俺は何もしない」

「そっ、それは分かってる」


 やっぱり、怯えているようだ。


「俺の妹は美少女で男に狙われやすいから、お前も妹が困っていたら守ってやってくれるか?」

「おう!」


 そして俺が手を出すと、男は俺の手を握り握手をした。


「お前の妹は、俺の学校のマドンナになったんだよ」

「えっ」

「だから俺の学校の奴らが、彼女に手を出さないように見張っておくからな」

「それは助かるよ。彼女は俺の大切な存在で、一生守ると決めた相手なんだ」


 俺は彼女の腕を引っ張り、彼女を後ろから抱き締め、俺の腕に閉じ込め言った。


「その言葉は妹じゃなくて、恋人に言う言葉じゃないのか?」


 苦笑いをしながら目の前の男は言った。


「そうだよ」

「えっ」


 俺は当たり前のように答えると、彼女は驚いたように、後ろから抱き締められたまま見上げた。


「最初から妹なんて思っていなかったんだよ」

「えっ、だって言ってたじゃない? 妹だって」

「正直になれなかったんだよ」

「それなら私も正直になるわ」

「何だよ。俺のことは兄貴だって言わないよな?」

「違うよ。私はあなたの妹になる前から、あなたのことを好きだったのよ?」

「えっ俺のことを知っていたのか?」

「うん。あんなに悪目立ちする友達と一緒にいるのに、楽しそうに笑っているあなたが気になって、いつも見ていたの」


 彼女はそんな光景を思い出したのか、ニコニコしながら言った。


「そっか。それなら君は、妹なんかになったらダメだな」

「あなたも私のお兄ちゃんになったらダメだよ」

「俺達は恋人になるんだからな」

「うん」


 彼女は凄く眩しい笑顔で嬉しそうに言った。

 これから俺達には試練が待っている。

 でも彼女がいれば何も怖くない。

 彼女もそう思ってくれている。


 だって俺の手を、ギュッと離れないように握ってくれたから。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

次のお話は、寒い夜に一人で長椅子に座り、いつまで経っても帰ろうとしない女性が気になって仕方ない主人公の物語。

女性が心配で、暖まるまでは家にいてもらうことにしたのだが、女性を家に入れる為に彼は自ら条件をつけた。

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