【三人目】 正月休みがほしいけど隣に笑顔の彼女がいてくれるから休みなんてやっぱりいらない
正月休みなんてない俺の仕事場。
正月は忙しくなる。
でも俺には癒しがいるから大丈夫。
彼女は学生のバイトの女の子。
彼女は可愛く笑うんだ。
彼女がいれば仕事も頑張れる。
彼女にお礼を言いたいほど、感謝さえしている。
「あっ、店長。今日も忙しいですよね?」
彼女が俺に聞いてきた。
「そうだね。正月なのにバイトに入ってくれてありがとうね」
「大丈夫ですよ。店長もお仕事でしょう? 私だけじゃないですよ。今日も一緒に頑張りましょうね」
彼女は可愛い笑顔で言った。
今日も頑張れるよ。
「あっ、店長。今日も送って頂けるんですか?」
「うん。夜は危ないし、寒いからね」
「それなら帰りにお話があります」
「何? バイトを辞めるとか言わないよね?」
「そんなこと言わないですよ。私はこのバイトが好きですから」
彼女はそう言って笑顔を見せて、仕事の持ち場へと向かった。
俺はお店を閉めた後、彼女と一緒に帰る。
夜は危ないし寒いので、俺が彼女を車で家まで送るんだ。
「店長、お疲れ様でした」
彼女が助手席に乗って言った。
「お疲れ。今日も忙しかったね」
「そうですね。でも店長と働いて楽しかったです」
「嬉しい言葉を言ってくれるね」
「本当に楽しいんです」
彼女は笑顔を見せてくれた。
いつも笑っていて疲れないのだろうか?
「それなら俺も、君と働けて癒されるよ」
「私が癒しですか?」
「そう。君の笑顔は俺の癒しなんだよ」
「私の笑顔ですか?」
「毎日、君に感謝してるんだよ」
「良かったです。私が少しでも店長の役に立ててるのなら」
「それで話ってなんなの?」
「えっと、その」
「ん?」
彼女は何故か話すのを渋っている。
やはり、バイトを辞めるのか?
「あのっ、店長に恋人はいますか?」
「俺? いないよ。仕事ばかりで恋人なんて作れないよ」
「これから恋人を作る予定はないんですか?」
「恋人を作る予定って、そんなの分からないでしょう?」
「あっ、そうですよね」
「君には恋人いるの? 訊かなくても可愛い君には恋人はいるんだろうね」
「いません」
彼女はハッキリと答えた。
「そうなんだね。君は可愛いのにね」
「そんなの店長しか言わないですよ。私の学校には、私よりも可愛い女の子がいっぱいいるんですよ?」
「そうなの? 俺が学生の時なんて可愛い女の子は一人くらいしかいなかったよ。その子には恋人がいたから俺には一生、近づけない人だったよ」
「その人と私のどちらが好きですか?」
「好き?」
「あのっ、いやっ、そのっ」
彼女は焦りながら言った。
その焦り様で分かるよ。
俺に勘違いさせないようにしようとしているのがね。
「分かってるよ。君が俺なんかを相手にしないのは。君の好きは顔のことだろう?」
「えっ」
「どうだろう? 君の方が可愛いよ」
「店長、違います」
「違う?」
「恋人として見るならどちらがいいですか?」
「恋人?」
「私は店長のことが好きですよ?」
「えっ」
運転中なのに彼女を見てしまった。
そしてすぐに運転に集中する。
「店長。動揺してます?」
彼女はクスクス笑いながら言っている。
「大人をからかうなよな」
「からかってないですよ?」
「君は学生で、俺は大人のおじさんだよ?」
「それがどうしたんですか? 年齢って関係ありますか?」
「それなら君は気にならない? 一緒に歩いていて、親子なんて言われて傷つかない? それに俺は店長だから君だけに優しくすることはできないよ?」
「大丈夫ですなんて、自信を持って言えないですが我慢します」
「俺は君には我慢してほしくないよ」
「でも私は店長が好きです。恋人になりたいです」
「君の気持ちは嬉しいよ。でも君と恋人にはなれないよ」
「店長のバカ」
「えっ」
「店長はバカですよ」
彼女は今にも泣きそうな顔で俺に言った。
俺は車を路肩に停めて彼女と向き合った。
「俺はバカじゃないよ。ちゃんと大学に行けるだけの頭はあるよ?」
「頭は良いかもしれないですけどバカです。恋愛はバカ過ぎるほど何も分かっていないです」
「恋愛は君も俺と同じくらいだろう?」
「私は店長よりはバカじゃないです」
「君は大人の男に興味があるだけだよ」
「店長は私の真剣な告白を、そんな言葉で断るんですか?」
俺は彼女の一言にドキッとしてしまった。
俺は大人だからと、彼女の気持ちも考えず答えていた。
彼女が勇気を出して伝えてくれた言葉を、俺は真摯に受け止めず、大人だからと失礼な態度をとってしまった。
「ごめん」
「えっ」
「あっ、そういう意味のごめんじゃなくて、君の気持ちも考えずに答えてごめん」
「いいえ。でも私の為だからって言って断るのはやめてください。私を好きか嫌いかちゃんと考えて答えて下さい」
「あっ、そうだね。答えは少し待ってくれるかな?」
「いいですよ」
俺は彼女を家まで届けて自分の家へ帰る。
明日も仕事はあるのに、彼女のことを考えると眠れなかった。
次の日、俺は体調を崩した。
でも仕事には行かなければいけない。
熱が出たくらいで休めない。
「店長? 顔色が悪いようですよ?」
職場に行くと、誰もがそう言ってくる。
今日は彼女は休みだ。
良かった。
彼女に心配させてはいけないから。
俺はそれからなんとか、仕事を終わらせた。
ボーッとする頭で車に乗り、なんとか家へ帰る。
明日は仕事は休みだから家で寝てれば治るだろう。
そして家に着くと、ベッドに入りすぐに眠った。
どのくらい寝たのか分からない。
インターホンの音で目が覚めた。
俺は重い体を動かし、玄関のドアを開ける。
そして目の前には彼女がいた。
「何で?」
「店長の体調が悪いって社員さんに聞いたんです」
「どうして俺の家を知ってんの?」
「社員さんに聞きました」
「そうなんだね。来てくれて嬉しいんだけど、うつしたらいけないから、君は帰った方がいいよ」
「本当はどうなんですか?」
「本当?」
「私のことよりも店長自身の気持ちはどうなんですか?」
彼女は少しムッとした顔で言っている。
「俺は立っているのも辛いから、早く寝たいし、お腹も空いたし、君の笑顔を見られるなら元気が出そうだよ」
「分かりました」
彼女はそう言って俺の部屋へ入る。
「えっ」
「いつも頑張っている店長の願いを叶えてあげようとしているんです」
「でも、男の部屋に入るのは、、、」
「店長は寝てて下さい」
「ねえ、聞いてる?」
「それはこっちの台詞です」
彼女の威圧感に俺は負け、ベッドで寝ることにした。
彼女のことは気にしないようにしよう。
「きゃっ。熱い。どうして? 何で?」
彼女の困った声のせいで眠れない。
俺はキッチンへ向かう。
彼女は一生懸命にお粥を作っているようだ。
「大丈夫?」
「寝てて下さい。大丈夫です」
彼女は不器用ながらも、お粥はできた。
彼女のお粥は美味しかった。
「君が来てくれて本当に助かったよ」
「役に立てて良かったです」
「どれだけ君が俺のことを好きなのか分かったよ」
「本当ですか?」
「うん。俺の薬は君の笑顔だよ」
「店長、大好きです」
彼女はそう言って笑顔を見せた。
とても癒される。
「俺も君と同じようにバカ正直になっていい?」
「バカ正直?」
「そう。俺も君のことが好きだよ」
「知ってます」
「えっ」
「店長は私を見る時に優しい笑顔を見せてくれるんです。他の人には絶対に見せない笑顔です」
「嘘。俺ってバレバレだった?」
「私にはバレバレです。でも私にしか見せない笑顔なので他のバイトの子には気づかれてないですよ」
「今年は俺にとって初めてなことばかり起きそうだよ」
「初めて?」
「そう。女子高生の恋人ができて、同じ職場の子が恋人で、そして今までで一番可愛い女の子が恋人になったことだよ」
「そして、女子高生にバカ正直に好きって言われ続けるのも初めてでしょう?」
「そうだね。それと、もう一つ初めてなことがあるよ」
「何ですか?」
彼女が俺の顔を覗き込んだ。
「可愛い女子高生の恋人と、一緒にすること全部が初めてだよ」
「嬉しいです」
彼女は顔を赤くして照れて笑った。
この後、体調も良くな彼女を家へと送った。
「店長」
「ん?」
彼女が車から降りる前に俺を呼んだ。
「本当は店長を名前で呼びたいんですけど、バイト中に名前で呼んだら大変なので呼び方は店長にします」
「うん。君は正直者だからね」
「店長」
「ん?」
「大好きです」
「俺も好きだよ。明日もバイト宜しくな」
「はい。店長に会えるならバイトなんて苦じゃないです」
「俺もだよ」
彼女は俺に手を振って家へと入っていった。
車の中は彼女のシャンプーの匂いなのかいつも良い香が漂っている。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
ブクマや評価などありがとうございます。
次のお話は、幼馴染みとは思春期を迎えてからずっと話をしていない主人公。
そんな二人に距離が近くなる出来事が起こります。




