【二十八人目】 失敗から学べない俺に可愛い幼馴染みは試練を与えた
ブクマや評価、感想などありがとうございます。
執筆の励みになっております。
「またやってしまった」
俺の口癖はこの言葉。
毎回、同じことを繰り返す。
「あなたって本当に学ばない人よね?」
そして可愛い幼馴染みの口癖はこの言葉。
毎回、同じことを繰り返す俺に毎回、同じことを言う。
「だって、好きになると周りが見えなくなるだろう?」
「それは分かるのよ。でもそれで何度も失敗してるんだから分かるでしょう?」
「俺には無理だ。好きになったらあの子しか見えない。あの子をとられたら後悔するし」
「でも、あの子に嫌われてるでしょう? もう少し抑えたらいいんじゃない?」
「無理なんだ。ミニは俺のモノになるんだ」
ミニとは、幼馴染みの家で買っている猫が産んだ子猫のことだ。
彼女の家の猫が子猫を産むと、俺は毎回欲しくて、抱っこして、遊んで、離さない。
すると子猫達は俺から離れていく。
いつもその繰り返し。
俺はいつになったら猫が飼えるのだろう。
◇
「ミニただいま」
「にゃ~」
彼女がミニにそう言うと彼女に向かって鳴いた後、彼女の足に頭をスリスリとしている。
彼女は毎回、子猫達に好かれる。
羨ましい。
でも、ミニは絶対に俺のモノにするんだ。
何故、俺がミニにこだわるのか。
それはミニが他の子猫よりも体が小さいから。
そして小さい体で、生きようとする姿を見たからだ。
ミニは産まれた時、本当に小さくて誰もが諦めかけていた。
でも俺はミニを諦めなかった。
毛布をかけて、俺の手のひらで暖めたりした。
震える体は俺の掌から俺の体の全てに伝わり、俺はミニを自分のモノにしたくなった。
今では元気にしているが、まだ他の子猫よりも体は小さい。
「ミニ、俺だよ。おいで」
「にゃ」
ミニは短く鳴くと俺にお尻を向けた。
「なっなんだよ。俺がミニを助けたんだぞ?」
ミニは何も言わず俺から離れていく。
そんな素っ気ないミニも好きだ。
そう、思いながらミニを抱き上げた。
ミニは嫌がる。
俺は仕方なく離す。
ミニは逃げるように母猫の所へ行ってしまった。
「ミニ、俺は諦めないからな」
「諦めてよ」
彼女が俺の言葉に呆れながら答えた。
「何で君はいつも好かれるんだよ?」
「それは、あなたみたいに自分の都合で触ったりしないからよ」
「だって見ると触りたくなるじゃん?」
「猫は気まぐれなのよ? 猫に合わせてあげなきゃ」
「我慢ができないんだよ」
「子供じゃないんだから、我慢くらいできるでしょう?」
「できない」
「それなら今日から一週間、ミニに会うのは禁止ね」
「えっ何それ?」
「さあ、今日から一週間は私の家に来ちゃダメよ」
そう彼女に言われ、彼女の家から追い出された。
えっ。
ミニ禁止令?
そんなの我慢できる訳がないだろう?
今、既にミニに会いたいのに。
◇◇
「ミニ、俺のミニ」
「ちょっと、朝からうるさいわよ」
俺は登校中にずっとミニと叫んでいた。
それにイラっとしながら彼女が言っている。
「ミニに会いたい。ミニをギュッと抱き締めたい」
「まだミニの気持ちになって考えられないの?」
「ミニのことしか考えられない」
「もう。あなたはミニの他に好きなモノを見つけなくちゃダメね」
「ミニ以外に好きなモノ?」
「そう。私とかね」
「君?」
「そうよ。私を好きになってよ」
「えっ何でそうなる訳?」
「だってあなたが子猫達に嫌われるのは、私のせいでもあるからよ」
「君のせい?」
「私があなたのせいで悲しんでいるからよ」
俺のせいで悲しんでいる?
俺が彼女に何をしたんだ?
彼女が傷つくことなんて言ったこともないし。
「俺は知らないうちに君を傷つけていたのか?」
「そうよ」
「それならごめん」
「あなたは猫の気持ちも、私の気持ちも、分からないのね」
「えっ」
「もう、いいの」
「猫の気持ちは分からないけど、君の気持ちなら君が教えてくれれば分かるよ?」
「えっ」
「だって君は言葉を話せるんだから」
「そうね」
彼女は笑顔で言った。
彼女が心から笑っているように見えた。
「ところで明日はミニに会えるんだよね?」
「どうかな?」
「えっでも、一週間は経ったよね?」
「そうだけど、私がいるからどうかな?」
「君がいるからってどういう意味だよ?」
「私はあなたに言い続けるよ。好きだって」
「えっ」
「私はあなたが好きよ。今までの弱い私とは違うんだからね」
「どうしたんだよ?」
「私は言葉を話せるんだからあなたに言うの。ミニには負けないんだから」
「ちょっと待ってよ。ミニと君に対する好きは違うよ?」
「違う?」
彼女は首を傾げた。
「ミニは小さくて可愛くて、俺が育てたいと思っているんだ。まるでミニは俺の子供みたいなんだよ」
「それなら私は?」
「君? 君は可愛い女の子」
「それだけ?」
「今はね」
俺はそう言って彼女の頭を撫でた。
「ねえ、誤魔化したでしょう?」
「違うんだ。少しだけ待っていて欲しい。今までミニしか考えていなかったから、君のことを考える時間が欲しいんだ」
「少しだけだよ」
彼女は目を閉じて、頭を撫でられ喜んでいる。
彼女がいつもよりも可愛く見えた。
そして猫耳と尻尾があるように見えた。
ミニに会えないから、彼女に猫の姿を重ねているのか。
それとも彼女が猫っぽいからなのか。
もしかしたら彼女は猫なのかもしれない。
◇◇◇
「ミニ、会いたかったよ」
「にゃ」
ミニは彼女にお尻を向けて短く鳴いた。
「ちょっとミニ? どうしたの?」
彼女は混乱しているようだ。
ミニは俺と一緒に住んでいる。
彼女は久しぶりに俺の家へ遊びに来た。
「ミニ、おいで」
「にゃ~」
ミニは俺の足に頭をスリスリとする。
「前は私にスリスリしてたのに何で?」
「そんなの決まってるよ」
「えっ何なの?」
「君に嫉妬しているんだよ」
「私に嫉妬?」
「そう。君に俺を取られたくないからね」
「ごめんねミニ。私は今から、あなたのご主人様を一人占めしちゃうよ?」
「猫と張り合うなよな」
「だって、ミニも私のライバルなのよ?」
「もう、君のライバルはいないよ」
「本当?」
彼女は俺を疑うように見る。
「ミニは俺の子供みたいで可愛いけど、君は俺の好きな人で隣でずっと笑っていて欲しくて、君は俺の愛してる人だからね」
「私もあなたを愛してるわ」
彼女の足にミニが頭をスリスリとしている。
ミニはやっぱり分かっている。
彼女がいつか俺達の家族になることを。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、悪役令嬢と呼ばれる社長令嬢に歌を聞かせて、あなたが欲しいと言われる彼の物語。
彼女には手に入らないモノはない。
主人公の彼はそんな悪役令嬢のモノになってしまうのか?




