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【二十八人目】 失敗から学べない俺に可愛い幼馴染みは試練を与えた

ブクマや評価、感想などありがとうございます。

執筆の励みになっております。

「またやってしまった」


 俺の口癖はこの言葉。

 毎回、同じことを繰り返す。


「あなたって本当に学ばない人よね?」


 そして可愛い幼馴染みの口癖はこの言葉。

 毎回、同じことを繰り返す俺に毎回、同じことを言う。


「だって、好きになると周りが見えなくなるだろう?」

「それは分かるのよ。でもそれで何度も失敗してるんだから分かるでしょう?」

「俺には無理だ。好きになったらあの子しか見えない。あの子をとられたら後悔するし」

「でも、あの子に嫌われてるでしょう? もう少し抑えたらいいんじゃない?」

「無理なんだ。ミニは俺のモノになるんだ」


 ミニとは、幼馴染みの家で買っている猫が産んだ子猫のことだ。

 彼女の家の猫が子猫を産むと、俺は毎回欲しくて、抱っこして、遊んで、離さない。


 すると子猫達は俺から離れていく。

 いつもその繰り返し。

 俺はいつになったら猫が飼えるのだろう。



「ミニただいま」

「にゃ~」


 彼女がミニにそう言うと彼女に向かって鳴いた後、彼女の足に頭をスリスリとしている。

 彼女は毎回、子猫達に好かれる。

 羨ましい。


 でも、ミニは絶対に俺のモノにするんだ。

 何故、俺がミニにこだわるのか。

 それはミニが他の子猫よりも体が小さいから。

 そして小さい体で、生きようとする姿を見たからだ。


 ミニは産まれた時、本当に小さくて誰もが諦めかけていた。

 でも俺はミニを諦めなかった。

 毛布をかけて、俺の手のひらで暖めたりした。


 震える体は俺の掌から俺の体の全てに伝わり、俺はミニを自分のモノにしたくなった。

 今では元気にしているが、まだ他の子猫よりも体は小さい。


「ミニ、俺だよ。おいで」

「にゃ」


 ミニは短く鳴くと俺にお尻を向けた。


「なっなんだよ。俺がミニを助けたんだぞ?」


 ミニは何も言わず俺から離れていく。

 そんな素っ気ないミニも好きだ。

 そう、思いながらミニを抱き上げた。


 ミニは嫌がる。

 俺は仕方なく離す。

 ミニは逃げるように母猫の所へ行ってしまった。


「ミニ、俺は諦めないからな」

「諦めてよ」


 彼女が俺の言葉に呆れながら答えた。


「何で君はいつも好かれるんだよ?」

「それは、あなたみたいに自分の都合で触ったりしないからよ」

「だって見ると触りたくなるじゃん?」

「猫は気まぐれなのよ? 猫に合わせてあげなきゃ」

「我慢ができないんだよ」

「子供じゃないんだから、我慢くらいできるでしょう?」

「できない」

「それなら今日から一週間、ミニに会うのは禁止ね」

「えっ何それ?」

「さあ、今日から一週間は私の家に来ちゃダメよ」


 そう彼女に言われ、彼女の家から追い出された。

 えっ。

 ミニ禁止令?


 そんなの我慢できる訳がないだろう?

 今、既にミニに会いたいのに。


◇◇


「ミニ、俺のミニ」

「ちょっと、朝からうるさいわよ」


 俺は登校中にずっとミニと叫んでいた。

 それにイラっとしながら彼女が言っている。


「ミニに会いたい。ミニをギュッと抱き締めたい」

「まだミニの気持ちになって考えられないの?」

「ミニのことしか考えられない」

「もう。あなたはミニの他に好きなモノを見つけなくちゃダメね」

「ミニ以外に好きなモノ?」

「そう。私とかね」

「君?」

「そうよ。私を好きになってよ」

「えっ何でそうなる訳?」

「だってあなたが子猫達に嫌われるのは、私のせいでもあるからよ」

「君のせい?」

「私があなたのせいで悲しんでいるからよ」


 俺のせいで悲しんでいる?

 俺が彼女に何をしたんだ?

 彼女が傷つくことなんて言ったこともないし。


「俺は知らないうちに君を傷つけていたのか?」

「そうよ」

「それならごめん」

「あなたは猫の気持ちも、私の気持ちも、分からないのね」

「えっ」

「もう、いいの」

「猫の気持ちは分からないけど、君の気持ちなら君が教えてくれれば分かるよ?」

「えっ」

「だって君は言葉を話せるんだから」

「そうね」


 彼女は笑顔で言った。

 彼女が心から笑っているように見えた。


「ところで明日はミニに会えるんだよね?」

「どうかな?」

「えっでも、一週間は経ったよね?」

「そうだけど、私がいるからどうかな?」

「君がいるからってどういう意味だよ?」

「私はあなたに言い続けるよ。好きだって」

「えっ」

「私はあなたが好きよ。今までの弱い私とは違うんだからね」

「どうしたんだよ?」

「私は言葉を話せるんだからあなたに言うの。ミニには負けないんだから」

「ちょっと待ってよ。ミニと君に対する好きは違うよ?」

「違う?」


 彼女は首を傾げた。


「ミニは小さくて可愛くて、俺が育てたいと思っているんだ。まるでミニは俺の子供みたいなんだよ」

「それなら私は?」

「君? 君は可愛い女の子」

「それだけ?」

「今はね」


 俺はそう言って彼女の頭を撫でた。


「ねえ、誤魔化したでしょう?」

「違うんだ。少しだけ待っていて欲しい。今までミニしか考えていなかったから、君のことを考える時間が欲しいんだ」

「少しだけだよ」


 彼女は目を閉じて、頭を撫でられ喜んでいる。

 彼女がいつもよりも可愛く見えた。

 そして猫耳と尻尾があるように見えた。


 ミニに会えないから、彼女に猫の姿を重ねているのか。

 それとも彼女が猫っぽいからなのか。

 もしかしたら彼女は猫なのかもしれない。


◇◇◇


「ミニ、会いたかったよ」

「にゃ」


 ミニは彼女にお尻を向けて短く鳴いた。


「ちょっとミニ? どうしたの?」


 彼女は混乱しているようだ。

 ミニは俺と一緒に住んでいる。

 彼女は久しぶりに俺の家へ遊びに来た。


「ミニ、おいで」

「にゃ~」


 ミニは俺の足に頭をスリスリとする。


「前は私にスリスリしてたのに何で?」

「そんなの決まってるよ」

「えっ何なの?」

「君に嫉妬しているんだよ」

「私に嫉妬?」

「そう。君に俺を取られたくないからね」

「ごめんねミニ。私は今から、あなたのご主人様を一人占めしちゃうよ?」

「猫と張り合うなよな」

「だって、ミニも私のライバルなのよ?」

「もう、君のライバルはいないよ」

「本当?」


 彼女は俺を疑うように見る。


「ミニは俺の子供みたいで可愛いけど、君は俺の好きな人で隣でずっと笑っていて欲しくて、君は俺の愛してる人だからね」

「私もあなたを愛してるわ」


 彼女の足にミニが頭をスリスリとしている。

 ミニはやっぱり分かっている。

 彼女がいつか俺達の家族になることを。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

次のお話は、悪役令嬢と呼ばれる社長令嬢に歌を聞かせて、あなたが欲しいと言われる彼の物語。

彼女には手に入らないモノはない。

主人公の彼はそんな悪役令嬢のモノになってしまうのか?

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