【二十七人目】 先に彼女に出会っていないから、もう遅いと諦めていたらそれは俺の勘違いだった
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俺が彼女と出会ったのは、俺の兄貴が家に、彼女を連れてきた時だった。
彼女を見た時、俺は彼女を好きになった。
美少女の彼女は俺に会うと笑顔で挨拶をしてきた。
そんな笑顔に俺は惚れたんだ。
俺は高校二年生で、兄貴は大学二年生。
そして彼女は高校三年生だ。
彼女と兄貴の出会いの話なんて俺は、聞いていないから分からない。
だが俺と彼女が出会ったのは、兄貴よりも後なのは確かなんだ。
もし、俺が彼女と先に出会っていたら、彼女は俺の隣にいたのだろうか?
◇
「弟くん」
彼女が俺の部屋に入ってきた。
「勝手に入って来るなよな。また兄貴とケンカしたの?」
「そうなの。先輩が私にイライラしてるのよ」
「また、あなたの優柔不断が出たんでしょう?」
「何で分かるの?」
「だって、毎回じゃん」
「もう! 弟くんには分かるのに、何で先輩には分からないのかな?」
「兄貴があなたをちゃんと見ていないからだよ」
「ねぇ、それって弟くんは、私をちゃんと見てくれているってことなの?」
「あっ、俺は頭が良いから、あなたの考えも分かるんだよ」
「弟くんが何かムカつく発言した」
彼女は頬を膨らませて拗ねている。
「君は何してんだよ。話は終わっていないだろう?」
兄貴が俺の部屋のドアを開けて彼女に言った。
「だって、先輩がイライラしていたから、、」
「毎回、君が悪いんだろう?」
「私は先輩に決めて欲しいの」
「これは君が自分で決めることだろう?」
「もう! 無理だもん」
彼女と兄貴は口喧嘩を始めた。
「二人が仲良いのは分かったから、俺の部屋から出てケンカしてくれる?」
俺はそう言って二人を部屋から追い出した。
「もう! 先輩のせいだからね」
「君が悪いって言ってるだろう?」
俺の部屋から出てもケンカをする二人は恋人だ。
俺は兄貴の恋人を好きになってしまった。
だから諦めなければならない。
忘れなければならない。
◇◇
「弟くん」
ある日、彼女はまた俺の部屋へ勝手に入って来た。
「えっ、ごめん」
彼女はすぐに俺の部屋から出ていった。
彼女が出ていった理由は、俺が女の子を部屋に入れていたから。
彼女はお邪魔だと思ったんだ。
これでいいんだ。
これで彼女のことは忘れられる。
女の子の正体は俺の後輩。
後輩の彼女とは仲が良く、ゲームを貸す為に来てもらっただけだ。
そこに丁度、兄貴の恋人である彼女が来たから、作戦成功だ。
これで俺の部屋へ勝手に入って来ないだろう。
そしてもう、話すことはないだろう。
その日から俺の好きな彼女は、俺の部屋には来なくなった。
◇◇◇
「お前って恋人できたのか?」
リビングのソファでのんびりしていたら、兄貴に訊かれた。
「いないけど、どうして?」
「彼女が言ってたけど、彼女の勘違いなのか?」
「彼女にはそう、思わせておこうよ」
「でもお前って彼女のこと好きだったんじゃないの?」
「えっ、そんなことはないよ」
兄貴の恋人を好きなんて言える訳がない。
俺が兄貴に勝てる訳がないんだ。
兄貴は俺よりも頭が良くて、イケメンで、優しくて、大人だから無理なんだ。
「絶対そうだと思って、彼女に言ったら嬉しがってたのに」
「彼女に言う? 何で?」
「何でって彼女はお前が、、、」
「お前が何?」
「いやっ、何でもない」
「途中で言うのはやめてほしいんだけど?」
「それならまず、お前に聞きたいことがある」
「何?」
「お前は、彼女に初めて会った時のことを覚えているか?」
「兄貴がこの家につれてきた時だろう?」
「やっぱり、お前は忘れているか」
「えっ」
忘れている?
彼女に会ったのは、あの日が初めてだと思うんだが?
違うのか?
「彼女と出会ったのは、俺が先じゃなくてお前が先なんだよ」
兄貴はそう言って昔の話をし始めた。
「俺とお前がまだ小さい頃に、俺が怪我をして病院に入院したのは覚えているか?」
「あっ、そんなことがあったかも」
「その時、お前は母親が俺にとられたと、拗ねていただろう?」
「そう。それで俺は一人で中庭に行って、同じくらいの歳の子と遊んだんだ」
「そう、それが彼女だよ」
「えっ、だってあの子は、男の子だったような気がするんだけど?」
「それが彼女なんだ。彼女が嬉しそうに、俺に話してくれたんだ」
◇◇◇◇
俺はあの日のことを思い出す。
あの日、あの子のことを忘れたくなくて、名前を聞いたんだ。
「ねえ、僕に君の名前を教えてよ」
「ユウだよ」
「ユウ? いい名前だね」
「ユウの名前はいい名前なの?」
「うん。君にピッタリだよ」
「初めていい名前って言われたよ。いっつも意地悪な男の子に、男か女か分からない名前って言われてきたから」
「ユウの名前は可愛いし、カッコいいんだよ。みんなは君の名前が羨ましいんだよ」
「そうなの?」
「うん。だから君は自分の名前を嫌いにならないで。ずっと好きでいて。僕も好きでいるからね」
「うん。大好きだよ」
あの子が俺の好きな彼女?
嘘だろう?
◇◇◇◇◇
「兄貴。思い出したけど、俺が彼女を好きだと彼女が嬉しいと言うのは何故? 兄貴達は恋人だろう?」
「はあ? 違うよ。彼女は、、、」
「彼女は何? さっきから何で途中で言うのやめる訳?」
「俺の口からは言えないんだよ」
「でも、気になるんだよ」
「それなら彼女から聞けばいいじゃん?」
「彼女? だっていないじゃん」
「いるよ。お前の後ろに」
俺は兄貴に言われて、後ろを振り向く。
俺の後ろには彼女が立っていた。
今日は来ていなかったはずなのに。
何でいるんだ?
「ここで話すより、お前の部屋で二人で話せば?」
兄貴はそう言って、自分の部屋へと戻っていった。
「俺の部屋に来る?」
「うん」
そして俺の部屋へ入る。
初めて彼女が、俺の部屋に勝手に入らなかった気がする。
「何から話せばいいか分からないんだ」
「うん」
彼女も何から話せばいいのか分からないのか、いつもより口数が少ない。
俺が一番聞きたいのは何だっけ?
「ねえ、君の名前を教えてよ」
「ユウだよ」
「ユウ? いい名前だね」
彼女は嬉しそうに笑っている。
「私はあの日の彼をずっと探していたの」
「えっ」
「どうしても彼にもう一度、会って言いたかったの」
「何て言いたかったの?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「そして私はあの日から君のことが好きよ」
「俺だってあなたが好きだよ」
「それならもっと早く言ってくれれば、私だって悩まなくて済んだのに」
俺のせいなのか?
彼女が悩むからだろう?
しかし、何に悩むんだ?
「何に悩むの?」
「そんなの決まってるでしょう? 私は君に昔の話をして、好きって言うのか言わないのかを悩んでいたの。だから先輩は、いつもイライラしていたのよ」
「えっ、君の優柔不断で兄貴がいつもイライラしてた原因は、俺のことだったんだ?」
「そうなの。先輩は早く言えってそればっかりで、私の気持ちなんて考えてくれてなかったのよ」
彼女は思い出したのか少しムッとして言っている。
「兄貴は早く君の気持ちが、俺に伝わって欲しかったんだよ」
「どうして、そんな風に思えるの?」
「兄貴には分かっていたんだよ。俺達が同じ気持ちだってことをね」
「それなら言ってくれればいいのにね」
「言ってたんでしょう?」
「あっ、そう言えば言ってたかも。私が悪かったんだね」
「違うよ。俺があなたを忘れていて、勘違いしていたからなんだよ」
「勘違い?」
彼女は不思議そうに俺を見た。
「そう。あの日のあなたは、男の子だって思っていたことと、あなたは兄貴の恋人なんだって思っていたことだよ」
「何でそんな勘違いをしたの?」
「あの日のあなたは、男の子みたいに髪が短かったし、いつも仲良く兄貴とケンカしていたから、恋人なんだと思ったんだ」
「でも今の私はどんな風に見えているの?」
彼女は首を傾げて不安そうな顔で見てきた。
「今のあなたは、誰よりも可愛い女の子で、俺の恋人にしたい大切な人だよ」
「嬉しい。私は君より先にそう思っていたんだよ?」
「あなたには負けたよ」
「私の勝ちね。ご褒美は?」
「何がいい?」
「ん~、何がいいかな? 私の好きなプリンを買ってもらうのもいいけど、君が私の宿題をしてくれるのもいいわね。それか私の隣に一生、一緒にいてくれるなんてどう?」
「そんなの全部、簡単だよ」
「それならもっとたくさんご褒美をお願いするよ?」
「いいよ。俺はあなたの為なら何でも叶えるよ」
「それならあなたのお陰で好きになった、私の名前を呼んで」
彼女は顔を赤くして言った。
「ユウ。大好きだよ」
「私もあなたが大好きよ」
そして彼女は俺に抱きついてきた。
そんな彼女を俺は抱き締めた。
◇◇◇◇◇◇
「今日のおやつはプリンだ」
彼女は嬉しそうにプリンを食べている。
今日というより、おやつはいつもプリンのような気がする。
そんな彼女は年上には見えない。
「ねぇ、兄貴と出会った時のことを教えてよ」
「先輩とは、プリンの取り合いが最初だったよ」
「君はいつもプリンのことだね?」
「そんなことはないわ。それなら先輩も、いつもプリンのことばかりよ?」
「兄貴ってプリンが好きなんだね?」
「そうよ。プリンのことでの喧嘩が一番、多いかもね」
彼女はプリンのことだと、何時間でも話をしそう。
「それで兄貴との出会いの話は?」
「コンビニで私の大好きなプリンを、先輩が持っていたの」
「兄貴が持っていたなら他のにすればいいじゃん」
「そのプリンが残り一個だったの。だから私は譲ってほしいって言ったの」
「それで兄貴は?」
「綺麗な顔で笑顔を作って、これは自分のだからって言ってレジへ向かったの」
兄貴の笑顔を見ても、何とも思わない彼女は凄いよ。
彼女のプリンへの執着心よ恐るべし。
「私はイラッとしたから、言ったの」
「えっ、何か聞くのが怖いんだけど?」
「そんなに変なことは言ってないよ? ただ大きな声でどうして浮気をしたの? って言っただけだよ?」
「こわっ。兄貴を一瞬で悪い奴にしたんだね?」
「そうかな? でもプリンは食べられたから良かったよ」
彼女にはプリンがあればいいのかな?
プリンに負けた気がするよ。
「どうして落ち込んでいるの?」
「だって、プリンに負けた気がするよ」
「そんなことはないよ? あなたは私の中で一番必要な人で、大切な人よ」
「プリンよりも?」
「うん」
「それならプリンを一口頂戴」
「いいよ」
彼女はスプーンにプリンを乗せて、俺の口へ運ぶ。
彼女が食べさせてくれたプリンは世界で一番、美味しかった。
「間接キスだね」
彼女が照れながら言った。
そんな彼女を見たら、俺も照れてしまった。
プリンは俺のライバルだけど、彼女が俺に食べさせてくれるなら、好きになってもいいかな?
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、主人公の彼が何度も同じ失敗をする物語です。
そんな彼に失敗を次に生かしてほしくて、幼馴染みの彼女が試練を与えます。




