【二十二人目】 カードが示す幼馴染みの相手は俺なのに彼女はいつまで経っても信じない
自分の好きな人が恋人と別れたら人はどう思う?
可哀想で慰めてあげたくなる?
別れてくれて嬉しいけど、それを好きな人に気付かれないようにする?
俺は違う。
俺は笑ってやるんだ。
「ハハッ。別れて良かったじゃん。これで分かっただろう? 俺の恋人になればいいんだよ」
俺は大好きな幼馴染みに笑いながら言った。
「私は傷ついているのよ? 慰めてくれないの?」
「俺は君が別れて嬉しいのに、慰める訳ないじゃん」
「本当に、あなたって最低ね」
「君が悪いんだよ。君は俺の恋人になった方が幸せになるのが分かっているのに、俺を選ばないからだろう?」
「あなたの恋人になったら、いっつも心配で逆に不幸になるわよ」
「何でだよ? 俺は君だけだよ?」
「何を言ってんのよ。ほらっ、また女の子が来てるわよ」
彼女は教室のドアの前で、誰かを探しているのか、キョロキョロしている女子を指差した。
「彼女は俺に相談に来ているだけだよ」
「それが私を不幸にさせるのよ」
「なんだよそれ?」
「女の子が待ってるわよ」
彼女は呆れた顔で言った。
俺は女子の所へ行き、女子と一緒に隣の空き教室に入る。
「今日は何?」
「彼との相性を見てほしくて」
「いいよ。名前と生年月日を教えてくれるかな?」
俺が女子に生年月日を訊く理由は、カードで人を占うのが得意だからだ。
そして俺の占いは当たるらしい。
それから女子が絶えず相談にくるようになった。
「まずは、この占いの結果は君の心の助けになるだけで、最後は君がちゃんと自分で決断をするんだよ?」
「はい」
「それじゃあカードの結果を言うよ。君と彼は上手くいかないよ」
「えっ、でも諦めたくないんです」
「でも、君に悪いことが起こるって出てるよ?」
「それでも私は諦めたくないです」
「君に悪いことが起こるのは防げないかもしれないけれど、ラッキーアイテムは黄色の物だから、いつも身につけていれば大丈夫だと思うよ」
「分かりました。ありがとうございます」
女子は帰っていった。
すると、すぐに空き教室のドアが開き、誰かが入って来てすぐに鍵が閉められた。
俺は相手を見なくても知っている。
この相手は部屋に入ると必ず鍵をする。
「もう、次を占うのか?」
「うん」
俺が顔を上げると、彼女が立っていた。
「占っても結果はいつもと同じだと思うけどいいのか?」
「あなたは私に、他の人と付き合ってほしくないから嘘を言っているのよね?」
「嘘じゃないよ。本当に君の相手は俺なんだって」
「まずは占ってよ」
「分かったよ」
彼女の名前も生年月日も、何度も占っているから覚えている。
「まずは、この占いの、、、」
「結果は君の心の助けになるだけで、最後は君がちゃんと自分で決断をするんだよ? でしょう?」
「うん。これは必ず守ってほしいんだ」
「分かっているわ。だからあなたの恋人になってないのよ」
「そうだな。まあいい。それじゃあ、カードを見るよ」
「うん」
俺はカードを見た後、彼女には見えないように伏せた。
彼女にはカードを見せても分からないのに、見せたくないと思うほど、嫌なカードだった。
「何? どうしたの?」
「それが、、君が俺を選ばなかったら、君には不幸が一生続くみたいだ」
「それって私は一生、幸せになれないってことなの?」
「そうだよ」
「嘘よ」
「本当なんだ。カードがそれを表しているんだよ」
「でも、あなたは私を幸せにしてくれるようには思えないわ」
「それならどうしたら俺を恋人にしてくれるんだよ?」
「占いをやめたらよ」
「分かったよ。やめるよ」
俺にとって、占いを必ずやらないと死ぬ訳でもないから簡単だと思った。
それにそれで彼女を守れるのなら。
彼女を占ったら、危険を表すカードが出てきたんだ。
彼女は俺が必ず守る。
◇
「ねぇ、あなたと恋人になっても何も変わらないわよね?」
俺達は下校中に少しだけ公園に寄って、ベンチに座って話をしていた。
「まあ、いつも一緒にいるからね」
「恋人だったら手を繋いだり、好きよなんて言うのにね。私達にはそれが似合わないわよね?」
「そうかな?」
俺は彼女の手を握った。
「えっ」
彼女は驚いて俺を見つめた。
「俺は君をずっと前から好きだよ」
「なっ、何を言ってんのよ。恥ずかしいじゃない」
「君は?」
「そんな真剣な顔で言われると怖いわよ」
「だって君は、俺の言葉を本気だと思っていないからね」
「本気だと思っているわよ」
俺の気持ちを本気だと言う彼女からは、本心を聞いたことがない。
俺は本心を言っているのに。
「それなら俺のこと好きだって言えるのか?」
「ここで私があなたのことを好きって言ったら、あなたは一生、占いができなくなるわよ?」
「いいよ」
「ダメよ。あなたには占ってほしいわ。色んな人を幸せにしてほしいからね」
「俺は君がいればそれでいいんだよ」
俺の言葉は彼女に響かない。
何故?
俺には君だけでいいのに。
「あなたは気付いていないの? 占いをした後、結果を教えに来てくれる女の子達の幸せな顔を見て、あなたは嬉しそうにしているのを」
「俺が?」
「あなたは占いをやめられないわよ。私がやめさせないからね」
「それならどうして、俺の恋人になる条件で占いをやめさせたんだよ?」
「あなたに、占いをすることがどんなに大事なことなのか気付いてほしかったの」
彼女は占う俺を嫌いなんだと思っていた。
でも、それは勘違いだったのかな?
彼女の顔を見ると、勘違いじゃない気がするんだけどな?
「それなら君は条件無しで、俺の恋人になってくれるのか?」
「私はあなたの恋人にはならないわよ」
「どうして?」
「私は邪魔だからね」
「邪魔?」
「そうだよ。私があなたの恋人として隣にいたら、女の子達もあなたに頼み難いでしょう?」
「俺のことが嫌い?」
「好きだよ。だから幼馴染みとして、あなたの隣にいるのよ」
「何それ?」
俺はそう言って、彼女を置き去りにして家へと帰った。
好きなのに。
彼女に届かない。
自分の部屋でカードを手に持って、俺は自分を占おうとして手を止めた。
自分を占うのだけはダメだ!
俺はカードの占いを彼女以外の女子相手に始めた時、自分を占うことだけはしないと決めていた。
自分を占ってしまったら、何でも占いに頼ってしまいそうだったから。
あの日カードに頼ったから、彼女が俺から離れていったんだ。
俺が自分で決断しなかったから。
◇◇
「ねぇ、昨日の放課後にクラスの男子に、告白されちゃったの」
俺達がまだ中学生の頃に、彼女が俺に言った。
顔を赤くして、恥ずかしそうに。
「占ってみようか?」
「うん」
この頃は、彼女だけを占っていた。
自分の占いは彼女の為だけに、してあげたかった。
それなのに俺はこの時、彼女じゃなくて自分を占ったんだ。
彼女には、彼女を占っていると嘘をついて。
その時のカードは、裁きのカードが出た。
彼女にはそのままを伝えると、何か思い当たることがあるようだった。
その次の日、彼女はその男子と付き合い始めた。
俺のカードは当たった。
彼女に嘘をついたから、俺は裁かれた。
俺の好きな彼女を奪われた。
俺の大切な彼女を奪われた。
彼女は俺を好きだと思っていなかった。
だから俺は占いをする前に女子に言うんだ。
俺の占いは心を救ってあげるだけ。
決めるのは君、本人なんだってね。
あの日の俺に言うように。
占いに頼ったバカな俺に言うように。
◇◇◇
『ガチャ』
「大変よ」
俺の部屋にいきなり母親が入ってきて言った。
俺は母親の言葉を聞いて、何故か占いに使うカードを握り締めた。
手が震える。
どうすればいいのか分からない。
でも足は動く。
早く行かなければいけないと思った。
そして俺は走った。
彼女がいる所へ。
彼女がいる場所は病院だった。
彼女は学校から帰る途中に、車と接触事故を起こしたみたいだ。
車が狭い道を制限速度を守らず走っていて、彼女は避けたが間に合わなかったみたいだ。
彼女の病室に入り、俺は眠っている彼女の顔を覗いた。
顔色は良さそうだ。
額に大きな絆創膏が貼ってある。
彼女の顔を見たら少し落ち着いた。
俺が彼女を一人にしなければ、一緒に帰っていれば。
カードを握り締めて、俺は彼女を見つめていた。
「んっ」
「大丈夫か?」
彼女が目を覚ました。
「心配し過ぎよ。顔が怖いわよ?」
「だって、俺のせいだろう?」
「あなたのせい?」
「君を一人にしたからじゃん」
「あなたのせいじゃないわ」
「でも、、」
「ねぇ、あなたの占いに使うカードを、一枚だけ私が引くの。そのカードが表すことが、これからの二人ってことにしない?」
「これからの二人?」
「うん。私とあなたの関係がこれからどうなるのかってことよ」
「分かったよ。それなら一枚だけ引いて」
俺は両手でカードを広げた。
彼女は迷いながら一枚を引いて俺に渡した。
「見せるよ」
俺は彼女にカードを見せた。
「ん~? なんだろうこれ?」
彼女はカードの意味なんて知らないから、見ても分からないみたいだ。
俺はカードを見て驚いた。
そのカードを彼女は見たことはない。
いつも彼女を占うと出てくるカードなのに。
彼女が見たことがないのには、理由がある。
そのカードを見せる時は、俺が決断した時だと決めていたから。
そっか。
やっぱりこのカードなんだね。
決断の時だね。
「意味は何なの?」
「どうせ君は信じないだろうけど、、」
「何? 気になるじゃない。早く教えてよ」
「うん。いつもと同じだよ」
俺は彼女の耳元で言った。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
彼女が引いたカードは、愛を表すカード。
愛といっても、色んな愛の形がある。
だから俺は一つの愛を彼女に捧げるよ。
「君を一生、幸せにするよ」
「うん。でも占いはやめないでね」
「うんって言いたいけど、君は嫌そうに見えるよ?」
「だって、女の子と二人で占いをするんだもん」
「それは心配いらないよ。だって俺が占いをするのは、占いをした後、君が空き教室に入ってきて鍵を閉めるからね」
「それのどこが心配いらないの?」
「その後は君と二人きりで、何でもできるじゃん」
「なっ、何でも? 占いだけよ」
彼女は顔を真っ赤にして言った。
「でも、手を繋ぐくらいならいいよ」
彼女が照れながら言ったから、俺も恥ずかしくなって、顔が赤くなったと思う。
今、気付いたけど。
いつの間にか彼女と手を繋いでいた。
彼女は俺の手をギュッと握ってくれた。
俺も握り返して、何故か可笑しくなって、二人で笑った。
二人ともホッとしたんだ。
色んなことが起きて、それでもちゃんと解決して。
二人は恋人になって。
照れ笑いなのかもしれない。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
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次のお話は、昔、一緒に遊んだ女の子が、今はどうなっているのか気になっている彼の物語です。
女の子は美少女になっていて婚約者だと言う。
彼には婚約者になった覚えはない。




