【百一人目】 ルールはただ一つだけ~婚約破棄の為に嘘をつく~
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「むかつく」
俺は一人で静かに居酒屋の個室でお酒を飲んでいた。
そんな俺の耳に大きな声で、豪快にお酒に酔っている女性の声が隣の部屋から聞こえた。
「私は二番目だったの?」
隣の女性は失恋でもしたのだろう。
しかも、浮気でもされたのかもしれない。
そんな女性がどんな人なのか想像しながら大きな声の独り言を聞いていた。
「私だって幸せになるんだから。何が結婚よ。何が君以上に好きな人ができたよ」
女性はどんどん泣きそうな声になっていた。
慰めてくれる友達もいないのだろうか?
「どうして私の友達と結婚をするのよ?」
女性は友達も失ったようだ。
なんて可哀想なんだろう。
「私の人生ってどうしてこんなに、いいことなんてないのよ?」
彼女は男運がないだけだと思う。
恋愛をできる彼女はまだ良い方だと思うんだ。
俺なんて恋人がいない歴が年齢と同じなんだからさ。
「昔から彼氏には浮気されるし、友達だと思っていた人には嘘をつかれるし、仕事では雑用をさせられるし、飼ってる猫は逃げるし、大事な時に雨を降らせる雨女だし」
「ぷっ」
ヤバイ。
彼女の雨女という発言に笑ってしまった。
雨女ということが、浮気と同じレベルで嫌ということに笑ってしまったんだ。
「誰? 私を笑ったの? 何よ! 私の独り言を聞かないでよね。変態」
変態?
俺が?
笑ったのは悪いと思うが変態はないだろう?
「君が大きな声で独り言を言っているから聞こえたんだよ」
「大きな独り言でごめんなさいね。でも、あなたが寂しく一人で飲んでいなかったら、私の大きな独り言も聞こえなかったでしょう?」
「俺は君と違って一緒に飲む相手はいるけど一人で飲みたい時があるんだよ」
「わっ、私だって一人で飲みたいから飲んでるの!」
「あっそ」
酔っ払いに絡まれたくなくて、これ以上は話すことを止めようと俺は素っ気なく返事をして黙った。
「私だって一人で飲みたい、、、時が、、、あるわ、、、よ」
彼女は泣きながら俺に言っている。
俺だけではなくて他の部屋の人達にも聞こえるはずだ。
「それなら俺達と飲もうよ」
彼女の部屋へ男が何人か入ってきたのが聞こえた。
「えっ、誰よ、あんた達。私みたいなオバサンの相手より若い女の子の方がいいでしょう?」
「そんなことはないよ。お姉さんが俺達に色んなことを教えてくれるでしょう?」
男達も酔っ払っているようだ。
彼女は一人で大丈夫だろうか?
「ちょっ、ちょっと。何処を触ってんの?」
「ん? 酔っ払ってるから分からないんだ」
「はあ? えっ、ちょっと、やめてよ」
彼女の嫌がる声が聞こえる。
こっちは静かに一人で飲むのを楽しんでいるのに、うるさいな。
「きゃっ。嫌だって」
彼女の嫌がる声しか聞こえない。
彼女の声しか俺の耳には入ってこない。
助けなければ。
俺は隣の部屋のドアを開けた。
彼女は男から逃げるように部屋の隅にいた。
「その人、今から俺と飲むから返してくれる?」
「なんだよ、お前?」
「その人の婚約者」
「あっそ」
そして男達は大人しく部屋を出て行った。
「あんたも失恋したからって隙を作るなよな」
「好きでこんな風になってる訳じゃないわよ。私だって、私だって」
彼女の目には涙が溜まっていた。
これが隙を作っているのだと彼女は分かっていないのだろう。
ただ、今は悲しいんだ。
ただ、今は怖いんだ。
そんな彼女の頭を優しく撫でた。
「怖かったんだよね? ごめん」
「えっ」
「安心してよ。俺は君には何もしないから。だから泣いてもいいよ」
「う、、、ん」
彼女はうなずいて泣き出した。
我慢していたんだろう。
彼女が泣き止むまで俺は頭を優しく撫でた。
「ありがとう」
「どういたしまして」
「お礼に一杯奢るわ」
「俺はキープしているボトルで飲んでいるから遠慮しておくよ」
「でも、それじゃあ恩返しができないじゃない」
「恩返しは君が幸せになることでいいよ」
「私の幸せ?」
彼女は首をかしげて言った。
その仕草が可愛く感じた。
よく見ると彼女は美人だ。
「そう。君の人生で浮気されても、嘘をつかれても、猫が帰って来なくても、雨ばかり降っても、それを不幸だと思わないで、幸せになる為の糧になっているんだと気付いてほしいんだ」
「あなたの恋人は幸せでしょうね?」
「俺の恋人? そんな人はいないよ」
「えっ」
彼女は驚いて俺を見上げた。
まだ目には涙が残っていて、とても色っぽく見えた。
「そんなに驚くこと?」
「だって、あなたみたいな素敵な人に、恋人がいないなんてもったいないわ」
「それなら君が俺の恋人になってくれる?」
俺は冗談のつもりで言った。
彼女が笑い飛ばしてくれれば、彼女の笑顔が見れるなら、それでいいと思っていた。
「いいよ」
「えっ」
「いいけど恋人じゃなくて、婚約者になってよ」
「婚約者?」
「浮気をした彼に、あなたを婚約者だって紹介したいの」
「恋人として紹介すればいいじゃん」
「ダメよ。向こうは結婚をするんだから、私も結婚する相手を紹介しなきゃね」
「君はそれでいいの?」
「あなたはいいの? 偽物の婚約者になって大丈夫?」
俺の問い掛けに対して、彼女も問い掛けてきた。
「偽物?」
「そうよ。あなたは冗談で私に恋人になるって聞いたでしょう? それが婚約者になっちゃったけど大丈夫?」
偽物の婚約者なのか。
そうだよな。
今日、初めて会った人を婚約者にするなんてあり得ない話だよな。
「俺はいいよ」
「それなら決まりね。一つだけルールを作るわ」
「うん。何?」
「絶対にお互いを好きにならないこと」
「偽物だからだね」
「そうね。私達は偽物婚約者よ」
「分かった」
それから俺は自分の元いた部屋へ戻り酒を飲んだ。
彼女はすぐに帰っていった。
酒のせいで変な約束をしてしまった。
彼女の顔を思い出すと酒が進んだ。
可愛い彼女の涙や、悲しい顔、怖がっている顔、彼女の弱さを知った俺には、彼女を好きにならないことなんて、できるのだろうか?
彼女の顔を思い出す度に酒が進むのは彼女の顔を忘れる為。
彼女への気持ちが大きくならないようにする為なんだ。
彼女から連絡があり、偽物の婚約者でも少しは、お互いを知らなくてはいけないと言ってデートをすることになった。
デートなんてしたことがない俺にはどうすればいいんだ?
デートといえば水族館かな?
来週の日曜日に近くの水族館の入口付近で待ち合わせをした。
彼女は天気予報では雨だから屋外のイルカショーは見れないかもと言っていたが、日曜日は晴天になった。
青空の下で彼女が来るのを待った。
俺は待ち合わせの時間より少し早く来てしまった。
彼女を待っている時間が何故かドキドキして落ち着かない。
どうしてなんだろう?
デートが初めてだからなのか?
それとも彼女に早く会いたいからなのか?
違う。
彼女は偽物の婚約者だから、そんな浮かれた気持ちなんて持ってはいけない。
「ごめんなさい。私ったら遅れたかな?」
彼女が走ってきて息を切らしながら言った。
俺の為に走ってきてくれたのか?
「まだ遅刻じゃないよ」
「そうなの? 良かった。中に入ろうよ」
「そうしようか」
そして俺達は水族館の中へ入る。
「私、昔から水族館って苦手なの」
「えっ、それなら他の所にすればよかったのに」
「いいの。あなたとなら水族館が怖くないと思える気がしたの」
「怖いんだね?」
「うん。薄暗くて魚の目が光ってるでしょう?」
「それなら魚は見ないようにしようか?」
「気にしないで。私は、あなたがいれば大丈夫だから」
彼女の言葉は俺を勘違いさせる。
彼女はまるで俺といれば何も怖くないと、俺にずっと一緒にいてくれと言ってるように感じてしまう。
恋人なんていたことがない俺には彼女の言葉は俺を惑わせる。
彼女にとっては何でもない言葉や仕草も、俺にとっては全てに意味があるように感じるんだ。
彼女が魚を見て怖がりながらも、俺の隣から離れないのも。
彼女がペンギンを見つけた時に、俺の手を引いて水槽に近づくのも。
俺の心臓はドキドキしていた。
女の子と手を繋ぐことさえしたことがない俺が、デートをするのだからドキドキするのは当たり前だった。
「もうすぐイルカショーだから行ってみようか?」
「でも、私が行って大丈夫かなぁ?」
「どうして?」
「だって雨女だからね」
「今日は青空だったじゃん」
「そうだけど私が一歩、外に出ると雨が降ったりするのよ」
「大丈夫だよ」
俺は落ち込む彼女の手を引いて、イルカショーを見る為に屋外のプールへ向かった。
外に出ると青空が広がっていた。
「ほらっ、青空だよ」
「本当だね」
彼女は嬉しそうに笑って言った後、一番前に座りたいと言って座った。
一番前は濡れると係員に言われたが彼女は気にせず座った。
イルカショーが始まると彼女は可愛いや、凄いと言って楽しんでいた。
そんな彼女を見ると俺まで楽しくなった。
「それでは一番前の皆様イルカ達が雨を降らせますよ。準備はよろしいですか?」
イルカショーの最後を締めくくるのはイルカ達が雨を降らせるという演出だった。
彼女はそれを聞くとバッグから何かを出した。
「これがこんな形で使われて、嬉しいわ」
「折り畳み傘?」
「うん。私は雨女だからいつも持ち歩いているの」
「そんなに雨が降るんだね」
「そうなのよ。でも、この折り畳み傘があって嬉しいと思ったことは、今日が初めてよ」
彼女は嬉しそうに言いながら折り畳み傘を開いて俺と彼女の前で広げた。
「折り畳み傘だから、もう少し近づかなければ濡れるよ」
「そうよね。もっと、こっちに来てよ」
俺は彼女に腕を引っ張られ、彼女に近づく。
彼女はそのまま俺の腕に腕を絡ませた。
彼女との距離はゼロだ。
俺は、また彼女にドキドキさせられた。
彼女は小悪魔だと思う。
俺を惑わせて楽しんでいるのだろうか?
彼女はドキドキなんてしていないようだ。
彼女にとって、こんなことは慣れているのかもしれない。
彼女には、この前まで恋人がいたのだから。
俺と彼女は偽物の婚約者なんだ。
彼女にドキドキしてはいけない。
彼女を好きになってはいけない。
彼女とは別れが必ずくるのだから。
イルカショーが終わり、俺は彼女の家まで送ることになった。
帰り道に色んな話をした。
「私ね、仕事で大事なプロジェクトを任されたの。私しかできないって言われてね」
「すごいね。雑用ばかりを任される君じゃなくなったんだね」
「そうなの。、、、あれ?」
「どうしたの?」
「あの子、リンちゃんにそっくりなの」
「リンちゃん?」
「うん。私の飼っていたネコちゃんよ」
「前に逃げたって言っていた猫? 何処にいるの?」
「あの、白い車の下にいる、黒猫ちゃん」
彼女が指差す車の下に黒猫がいた。
「首輪に名前を書いているから確認すれば分かるんだけど」
「俺って、昔から猫に好かれるんだ。ちょっと近づいてみるよ」
「本当?」
彼女は心配そうに俺を見た。
「大丈夫だから。待ってて」
俺は黒猫に近づく。
黒猫は警戒しているようだ。
手を差し出すと俺の手を引っ掻いたが、俺は手を引くことはしなかった。
何度も大丈夫だよリンちゃんと言いながら黒猫の体に触れて車の下から出して抱き上げた。
俺の腕の中で暴れるが喉を優しく撫でながら、彼女に近づくと喉を鳴らし始めた。
「君のことは好きみたいだよ」
俺は彼女にリンちゃんを渡した。
リンちゃんは嬉しそうに喉を鳴らし、彼女に甘えているようだった。
「リンちゃん。どうして逃げたりしたの?」
「リンちゃんは外に出てみたいって思ったんだよ」
「私を嫌いになった訳じゃないんだね」
「それはないよ。だって今のリンちゃんを見ると君に抱かれて嬉しそうだからね」
「嬉しい。私もリンちゃんが大好きだよ」
彼女はリンちゃんをギュッと抱き締めて言っている。
「ねぇ、私の家でお茶でも飲んでいかない?」
「えっ、それは遠慮しておくよ。久し振りにリンちゃんに会えたんだから俺は邪魔だと思うんだ」
「あなたには拒否権はないわよ」
「どうして?」
「リンちゃんのせいで怪我してるもの」
「あっ、このくらい大丈夫だよ」
「ダメ。消毒させて」
彼女は俺の傷を消毒するまで俺から離れないと言い出した。
俺にとっては彼女が離れないということは嬉しいことだが、そんなことを彼女ができる訳もないことを分かっている。
しかし彼女が俺の手当てをすることを諦めることもないようだから、俺は仕方なく彼女の家へと入る。
彼女はリンちゃんにエサをあげて、俺にソファに座るように指示をした。
テキパキと行動する彼女を見ていると、最初に出会った彼女とは違う感じがした。
あの日は本当に彼女は傷ついていたのだろう。
大好きな人に裏切られ、心が助けてと叫んでいたのかもしれない。
だから、あんなに隙があったのかもしれない。
俺はあの日、彼女を助けることはできたのだろうか?
「ごめん」
「えっ、どうしたの?」
「あの日、君はすごく傷ついていたんだよね?」
「あなたと出会った日のことね?」
「そう。俺は君にヒドイことを言ったよね? 隙を見せるなって」
「そうね。ヒドイことを言ったけど助けてくれたわ」
「俺って君を助けてあげられたかな?」
「あなたは私を男達から助けてくれたわ。だから恩返しなのよ」
「君が幸せになってくれることが恩返しだからね」
「そうね。私の幸せがあなたのお望みだからね」
彼女はそう言って引っ掻かれた腕を手当てしてくれた。
傷が痛いのか、心が痛いのか分からない。
彼女の幸せは俺が彼女の偽物の婚約者になること。
俺は彼女にとって偽物でしかないんだ。
「ねぇ、何を考えているの?」
「えっ」
「あなたの顔が傷ついているように見えるの」
「俺は傷ついてなんかいないよ。傷ついているのは君でしょう?」
「あなたもよ。私達はお互いに傷ついているのよ」
「俺は腕に傷がついてるだけだよ」
「本当に腕の傷だけなの?」
「腕だけだよ。俺は君の幸せの為に偽物の婚約者になるんだから、早く傷を治さなければいけないね」
「私の傷は癒えないよ」
「どうして?」
「私は幸せになりたくないからだよ」
彼女は何かを我慢しているのか、苦しそうに言った。
どうしてそんな顔をするんだよ。
俺にどうしろと言うんだよ。
「君が幸せにならなかったら、俺はずっと君の偽物の婚約者のままだよ?」
「偽物でも傍にいてくれるならいいわ」
「どういう意味?」
「あなたが必要なのよ」
「偽物として必要ってこと?」
「違うよ」
「君は失恋したばかりだから心が弱っているんだよ。ただの勘違いだよ」
「どうしてそんなことを言うの?」
「だって俺達の出会い方が、そう思わせただけだから」
俺の一言に彼女はうつむいた。
傷つけるつもりはないけれど、ちゃんと言っておかなければ彼女が俺のせいで傷つくんだ。
俺と付き合って彼女が失恋から立ち直った時に俺を好きになれなかったらどうする?
そんなの俺が耐えられないから。
彼女が立ち直った時に俺は改めて彼女に言うよ。
好きだって。
「私は雨女じゃないし、会社でも必要とされているし、リンちゃんには嫌われていないよ」
「そうだね。君は変わりだしているんだ」
「うん。あなたのおかげよ」
「俺じゃないよ。君自身が変わろうと努力しているからだよ」
「あなたが教えてくれたからよ」
「俺は何もしていないよ」
「あなたは私の大切な友達よ。今は」
彼女の今はという付け足しの言葉が気にはなったが、それよりも、早くこの場所から逃げたかった。
「嘘をつかない友達になるよ。そうすれば後、一つだけだね。浮気をしない恋人ができれば君は幸せになるんだ」
「うん、そうね」
「今の君ならすぐに見つかりそうだね」
「うん、そうね」
「俺は君の友達で偽物の婚約者なんだからいい人が現れたら教えてくれよ」
「うん、そうね」
「それじゃあ、今日は帰るよ」
「うん、そうね」
さっきから彼女は返事をするだけだ。
どうしたのだろう?
気にはなったが、俺は早く帰りたかった。
彼女の顔を見ていると、友達なんかになりたくないって言ってしまいそうだから。
君が好きだって言ってしまいそうだから。
俺はソファから立ち上がり玄関へと向かう。
彼女はうつむいたまま俺の後ろをついてくる。
その後ろをリンちゃんがついてきていた。
なんだろう?
この雰囲気は?
このまま俺は帰っていいのか?
「待って」
彼女はそう言って俺の後ろから抱きついてきた。
そんな彼女の行動に俺は固まってしまう。
こんな経験は初めてだから。
どうすればいいのか分からない。
「離れたくないよ」
「そんなこと言われたら、俺も勘違いしてしまうよ?」
「勘違いしてもいいよ。私の気持ちは本物だから」
「本物?」
「今は友達って言ったけど、私は今すぐでもあなたの恋人になりたいの」
「さっきも言ったけど、、、」
俺が勘違いと言おうとすると彼女は俺を抱き締める力を強めた。
「違うもん。勘違いなんかじゃないもん。あなたは私を助けてくれたし、リンちゃんも助けてくれたよ。私の折り畳み傘があんな使い方になるなんて初めてだったよ」
「でも君が冷静になった時に、俺を選んだことを後悔なんてされたら俺は立ち直れないよ」
「後悔なんてしないよ。このまま、あなたを帰らせる方が後悔すると思うの」
「俺なんかでいいの?」
「あなたがいいの。優しいあなたが」
俺は彼女の方を向く。
彼女は恥ずかしそうにうつむく。
そんな彼女が可愛い。
「君は俺の恋人?」
「うん」
彼女はうなずきながら言って俺を見上げた。
彼女の前の恋人は、どうしてこんな可愛い彼女を裏切ったりしたのだろう?
彼女はこんなに可愛くて、美しいのに。
「触れてもいい?」
「そんなこと聞かなくても私はあなたのモノよ」
「ずっと思っていたんだけど、君って小悪魔だよね?」
「あなたの前だけね」
彼女はニコッと笑って言った。
「やっぱり小悪魔だ。そんな小悪魔な君は元カレにどんな仕返しをしようとしてた訳?」
「そんなの決まってるよ。本物の婚約者を紹介するの」
「偽物じゃないんだね」
「そうだよ。あなたは本物の婚約者でいいの?」
「当たり前じゃん。俺は最初から本物の婚約者になりたかったからね」
「それならルールを一つだけ」
彼女はそう言って俺に向けてウインクをした。
「ルール?」
「浮気は絶対ダメだよ」
「そんな簡単なルールでいいわけ?」
「うん。あなたが私だけを見てくれる。それが私の幸せだから」
「君の幸せが恩返しだからね」
俺はそう言って彼女の左頬に手を添えた。
そんな俺の手に彼女が手を添えた。
俺達は見つめ合って顔が近づく、、、。
お読みいただき、誠にありがとうございます。
楽しくお読みいただけましたら執筆の励みになります。
〜次話予告〜
アクション映画が好きな主人公が出会ったのは、同じアクション映画が好きな女の子。主人公も女の子も恋人に映画のせいでフラれてしまう。そんな二人がフラれた理由は恋愛映画を観なかったからだと結論を出し、二人で見るようになる。主人公は女の子が好きになったけど、女の子は大学の教授が好き。




