アレン
ーーー朝の太陽の光が差し込み始め、
まだ薄暗いが気持ちのいい朝を迎える。
身体を起こしベッドの端に座り、
大きく伸びをする男。
この短髪黒髪の男の名はアレン
年齢は15歳。容姿はそこそこイケメンで平民の子
ただ、このアレン。
魔法の力が使えるこの世界で魔法を一切使えない。
魔物の溢れるこの世界で魔法を使っての戦闘が主流となっており、
アレンは必死に剣術を磨いてきた。
アレンは立ち上がり、鍛錬用の木刀を手にして
自室を後にする。
外に出ると鍛錬のために毎朝行っている
近くの川まで向かうため、村のなかを歩く。
「セイッ!ハッ!セイッ!ハッ!」
木刀を振るいながらも、覇気のある声を出すアレン。
次第に朝日が登り辺りが完全に明るくなる。
少し休憩するため川の水で顔を洗う。
「アレンくーん!」
その声に振り返ると、茶髪を肩ぐらいまで伸ばし、
ワンピースにブーツを履いた、幼なじみのユミナが手を振りながら小走りでこちらに向かってくる。
その手には手提げの籠が握られている。
「おはようユミナ。毎朝ありがとうな。」
「ううん。好きでやってることだから大丈夫。もう朝ごはん食べる?」
ユミナは毎朝、アレンに朝ごはんを作って持ってきている。
「ああ、もう頂こうかな。」
「わかった。じゃあ食べよっか」
近くの木陰に移動し、ユミナと共に座る。
「はい、いっぱい食べてね!」
「おっ!今日も美味しそうだな!ありがとう!」
ユミナからサンドイッチをもらいそのまま口に運ぶ。
「うん!美味しいよユミナ!」
「そっか良かった!」
アレンのその言葉にやや頬を染め笑顔で返事をするユミナ。
その笑顔をアレンは毎日見ているのだが…慣れない。
さすが村で一番と言って良いほど人気のある可愛さといったところかな。
アレンも少し頬を染めるのであった。
「ところでアレンくん。明日からセイクリッド学園に入学だけど準備できてるの?」
「ああ、できてる…といってもウチは両親がいないし、荷物もそんなないからなー」
アレンの両親は堕天使に殺されていた。その頃まだ幼かったアレンは
心優しい村人達のおかげで今日まで元気に育ってこられた。
アレンはとても感謝していた。
両親がいない…という発言でユミナは少し表情を曇らせた。
「ユミナ、気にする必要はない。両親はいなくなってしまったが、俺はこの村の人たちに良くしてもらった。みんなを家族のように思ってる。」
「うん。でも…ううん。ありがとう。」
ユミナは心優しい女の子だ。人のために動くことができる。
それがユミナに好意向ける人が多い理由だろう。
「おーい。お前ら!朝から見せつけてくれるなー」
畑仕事帰りのおじさんが俺たちを茶化してくる。
「そんなんじゃねーよおっちゃん!」
照れた様子で返すアレン。ユミナをチラと見ると
同じように照れながら俯いていた。
「えっえーっと。今日もお弁当ありがとな。そろそろ戻ろうか。」
「うん……」
お互いに照れながら家路についていた。