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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第2部 第3章 謎めく古代遺跡 編
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99話 カオスコントロール (1)

 宇宙(そら)の静寂がロランに負の感情を抱かせる。


 『新たに"ラプラス・ルーン・テラ"というサブコードを手に入れた途端……』


 『世界はアルベルトを排除する事で"大乱の未来"へと収束しようとしている……』


 『全ては無駄な事なのか……』


 ロランの想いを察したルミールは全てを悟ったかのように心を溶かす言葉をかけるのだった。


 「龍神さま……誰にも世界の全てを救世(ぐぜ)する事はできません……」


 「ただし……龍神さまなら多くの助けたいと想う者を助ける事が出来ます……」


 ルミールの言葉で冷静さを取り戻したロランは周りを見渡す。


 そこにはロランが進む道に最後まで付き従うと覚悟する『ルミール、バルトス、マルコ、クロス、フェネク、レイチェル』の姿があった。


 『ふっ……僕はまだまだだ……』


 背中を押してくれる皆の気持ちを受け取った後のロランの行動は迅速であった。


 先ず、繋門(ケイモン)を使用し空間を切り裂くとレイチェルのLaboに接続し人類に生贄(いけにえ)にされた『レクシー・クロエ』と『ラプラス・ルーン・テラ』が眠りにつくカプセルを移設した。


 その後、ロランはジェルドにテレパスを送り公爵全員に対し3時間後王宮中央棟にて緊急会議を開催する召集通知を行うよう指示を行い。


 ルディスに対しは大統領暗殺容疑で身柄を拘束された『アルベルト・スペンサー』に関する情報を精査しレポートに纏めるよう指示を出した。


 一連の指示を終えるとロランは一刻を争う状況であるものの繋門は使用せず、敢えて(あえて)Knight Ravenで帰還する事にした。


 Knight Ravenで帰還する理由は、大気圏再突入時のデータを取得するためとメッサッリアとトロイトに対し即時に兵器転用できる高度な技術を保有している事を知らしめるためであった。


 ロランは皆を連れKnight Ravenに乗り込むと『エアストテラ』に向けロケットエンジンを始動させる。


 大気圏へは機体の角度を調整しマッハ5の速度で投入を行ったため、機体外壁は予想よりも高い500℃の温度にさらされた。


 しかし機体に使用したミスリルベースの合金は溶ける事もなく機体内は水属性魔法と風属性魔法により冷却する構造としていた為、操縦席と機内の温度は常時25℃であり快適であった。


 『魔法は本当に便利だね……便利過ぎるがゆえ技術が発展しなくなるのも分かる気がする……』


 地上に着くとロランはジェルド、ツュマ、ルディスを地下の戦闘指揮所に集合させる。


 「ルディス…早速で悪いけど大統領暗殺容疑で身柄を拘束されたアルベルトの状況を教えて欲しい……」


 「畏まりました……」


 ルディスからの報告を要約するとアルベルトの身柄拘束はMRSIS所属の予知能力(プレコグニション)部隊が予知した"1年後に大統領を暗殺するという予知"に基づく拘束という内容であった。


 「アルベルト殿は国防大臣であり不逮捕特権があるはず……」


ジェルドの端的な話に納得しながらロランは話を続ける。


 「ジェルドの言う通り……それに予知による身柄拘束は公式には認められていない……」


 ロランは目頭を人差し指と薬指で挟みながらしばし考え込む。


 『一先ずサブコードの探索よりアルベルトの身柄開放を優先しよう……予知による身柄拘束ではメッサッリアの軍部が納得しないだろう……』


 考えが纏まるとロランはジェルドとツュマに第一級攻撃態勢をとるよう指示した後、ルディスに対しは今後緊張状態が高まるメッサッリア共和国と西クリシュナ共和国における諜報活動を強化するよう指示を出すと戦闘指示所を後にした。


 その後、ロランは正装するとトイに御者を頼み、公爵による緊急会議に出席する為王宮中央棟へと向う。


 王宮に向かう馬車の中でロランは今後の対策について考える。


 『これから行う会議で公爵全員の同意を得た後、陛下にアルベルトを釈放する旨記した書面に署名と魔力印を施して頂こう……』


 『特使として僕と……今回は"恐怖そのもの"を同行させ、メッサッリアと騒動の黒幕に対し(くさび)を打つ……』


 王宮に到着するとロランは足早に中央棟に入り公爵達が待つ【追憶の間】に向かった。


 【追憶の間】に設置された議長席に着くとロランは皆にアルベルトが表舞台から去れば世界は確実に大乱に向かうと力説した。


 すると当然と言えば当然であるが勇者である『悠真・フォン・グレイチェスカ』から援護射撃を受ける事になった。


 「ロラン卿の話が真実であれば世界を大乱から守るため我らはアルベルト殿を救わなければならないと思います……」


 勇者であるグレイチェスカの純粋な想いとは異なるが、ロランの盟友であるエドワードからも本音といえる極論が展開された。


 「私はフォルテアの美しい自然と優しい民が心から大事である……ゆえにアルベルトが犯罪者かどうかなど問題でなかろう……フォルテアの国益上救わなければならんと思うが……」


 最年長のエドワードのこの一言で議論は幕を閉じた。


 ロランは全ての公爵の名が綴られた(つずられた)議決書を持ちエミリアの父君であり外務大臣であるリックストンと共に国王が座す『謁見の間』へと向かった。


 『謁見の間』に入室すると正面に王座に座したレスターの姿が目に入った。


 ロランはリックストンと共にレスターの前に進むと片膝をつき臣下の礼をとるのであった。


 すると国王であるレスターがロランに用件を尋ねてきた。

 

 「久しぶりであるの……ロラン卿……本日は何用であるか……」


 ロランはメッサッリアの国防大臣であるアルベルトが予知に基づき身柄を拘束された事、アルベルトが表舞台から去ればパワーバランスが崩壊し世界が大乱に向かう事を力説した。


 「……で卿よ……我は何をすれば良いのか……」

 

 「陛下にはジグムンド大統領宛に国防大臣であるアルベルトの嫌疑を再考し即時に身柄を開放する旨の嘆願書に御署名いただき魔力印を施して頂きたく存じます……」


 自らの手で国家間の紛争を抑えられるにも関わらず、国王の権威を損ねないよう自分を頼ってきたロランの行動を"是"としたレスターはロランの依頼を受諾する。


 「良かろう……他に願いはあるか……」


 「はい……今回の特使として私を指名頂きたく存じます……」


 レスターはメッサッリア共和国の大統領首席補佐官でもあるロランが自ら特使になることを要望した事に疑問を持ち真意を尋ねた。


 「ロランよ……なぜ外務大臣であるリックストンでなく自らを特使にするよう進言するのだ……」


ロランはレスターの質問に対し半分真意を述べるに留める。


 「アルベルトが身柄を拘束された事によりメッサッリアでは政府と軍部が一触即発の状態であります……そのような危険な地に未来の父君を送らせたくないのです……」


 ロランの返事を聞いたレスターは予想だにしない内容であった為、暫し面食らっていた。


 『未来の父君を向かわせたくないか……()()()()()()()()()()がまぁ良かろう……』


 これ以上質問しても真意は語らぬと判断したレスターは呆気なくロランが特使になることを許可するのであった。


 「ロラン卿よ……そなたの願い許可しよう……」


 ロランと共に『謁見の間』を後にしたリックストンは"未来の父君"についてエミリアとの仲を正式に許可した覚えはないと言いたかったのだがロランの表情を見て言葉を飲み込んだ。


 ロランの頭の中はアルベルトの名誉を回復することに集中し選別した同行者への連絡と思いついた対策を歩きながらテレパスで行った。


 "バルトス…マルコ…クロス…フェネク…クリスフォード……バレンティナ"

 

 "邸に到着しだい馬車にてメッサッリアへ向かう……準備をするように……"


 テレパスによる指示を終えたロランは予知は100%でない事を"カント魔法大学における魔法学教授であり魔法学において世界中で一目置かれるクリスフォード"に説明させる事を考えていた。


 『クリスフォードには権威ある魔法学者として予知が外部から人為的に操作できる事を説明してもらう……』


 『確か…確率論的に決定されない未来であっても予知能力者(プレコグ)に対し外部から"現在"を数値化した初期値をほんのわずか変更した情報を与え続けることにより……プレコグ達は無限に存在する未来から決定事項の未来として変更された数値に基づく未来をイメージとして選択し予知してしまう……』


 『カオスの初期値鋭敏性を利用した"カオスコントロール"という操作が可能であることを……』


 ロランは怒りを抑えそうと必死であった……


 友の名誉を穢された(けがされた)事に……

 

 そして想う……


 メッサッリアと今回の黒幕に対し"絶対的な恐怖"で対応しようと……

・2019/09/29 スペースプレーンという単語を整合性を図るためKnight Ravenに修正

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