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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第2部 第1章 氷海の世界 編
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78話 危険な香り  

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 ワインレッドのテーブルクロスで覆われたテーブルの頂点に位置する椅子にロランが座る。


 顔の右側を生体親和性セラミックスで覆い隠し、ストレートでブロンド髪の"ブリジット"が、()()()()()()()()()の大統領である"ジグムンド・シュミッツ"と国防相である"アルベルト・スペンサー"をロランの右手側に案内する。


 一方、ダークブラウンの髪で虹のような瞳(アースアイ)の"レイチェル"が、()()()()()()()()()の最高評議会議長である"アガルド・ジャコメッティ"と最高評議会副議長である"ブラウリオ・ロドリゲス"をロランの左手側に案内した。


 既に()()()()()()()の皇帝"ラグナル・デ・リンデンス"と宰相である"フレイディス"はアルベルト・スペンサーの右手側の椅子に座り、資料に目を通していた。


 最後にロランは、ヘスティア商会の"クレイグ・コンラート"とメリクス商会の"フェリックス・ライシャワー"、バロア商会の"ニコラス・ブルナー"を"ブラウリオ・ロドリゲス"最高評議会副議長の左手側の椅子に座るよう促した。


 ロランは、皆が席に着いたことを確認するこのメンバーに会議の主旨を話し始めた。


「…皆さんは自己紹介せずとも既にお互いを知っているため、無駄な自己紹介は割愛させて頂きます…」


「…この場はアヴニール国家連合に加盟する国家間の"関税のあり方"、"軍事力や魔法力の均衡"、"古代兵器の管理にあり方"…」


「…"金融問題"、"気候変動"、"食糧や資源問題"について率直な意見を交換する場としたいです…」


 ロランの話を聞いたジグムンドは呆れたように話し出した。


「…まぁ、ロラン君がこの会議を行う事は我がMRSISの予知能力(プレコグニション)部隊が予知していたがここまで早まるとは…」


 するとジグムンドに続いて、アガルドが古代兵器の管理について議論を誘導する。


「…先ずは7,000発の【対消滅ミサイル】の措置について決着をつけたいと思うのだが…」


 ロランは既に配下の魔人・魔物で構成したギャランホルン部隊により、7,000発の【対消滅ミサイル】を監視下においていること、他国では制御が困難なことから手を出さないようジグムンドとアガルドに要請する。


 続いて、ロランは【対消滅ミサイル】から議題を変更するように、リンデンスで採掘される金・銀・天然ガス、水産資源、森林資源の販売価格に対して話を移した。


 リンデンスの鉱山・天然資源の販売価格に関しては商会連合が適正価格で取り扱う事やキメラの研究を行い製造し続けるクリシュナ帝国への対応など、幅広く意見が交換された。


 5時間にわたる白熱した議論が終了した後、ロランは閉幕の言葉を述べ、ブリジットに議事録の作成を、レイチェルにこの"次元・空間・時間"において決定事項を記録するよう指示を出した。


「…今後もこの"黎明会議"は継続していく所存です。この会議の事は他言無用でお願い致します…」


 "黎明会議"より2日後ロランは、王宮からの使者に急遽登城するよう要請された。


 ロランはトイに御者を任せ、馬車に乗り込み王宮へと向かった。


 王宮に着くと、ロランは使者に急かされるまま、国王でるレスターが待つ『謁見の間』通称『太陽の間』へと足早に向かうのであった。


 『太陽の間』の扉の前に立つ衛兵が扉を開ける直前に、ロランは身体から溢れ出る"威圧、魔力や霊力"を抑え込み入室した。


 ロランの姿を確認したレスターはロランを呼び寄せ尋問を始めた。


「…スタイナー伯爵。噂によると伯爵はリンデンス帝国の元老院首座に就いたと聞くがそれは誠の事か…」


 レスターの尋問の内容を聞いた多くの貴族がざわめき始めた。


 貴族達が誹謗中傷するなか、ロランは冷静に返事をする。


「…誠の事でございます。陛下…」


 レスターは怪訝な表情を隠そうともせず、尋問を続ける。


「…ロラン。なぜ上役であるワグナーに相談せず他国の"元老院首座"を拝命したのだ…」


 ロランは間髪を入れず、淡々と答える。


「…過去にも王国の貴族が他国の役職を拝命した前例がございます。故に問題は無いと判断し拝命いたしました…」


 ロランの話に激高したレスターは激高し、謹慎することを指示するのだった。


「…それは150年も前の話である。今回の件、国家反逆罪に相当する行為である......」

「…伯爵に対する罰則が確定するまで、邸で蟄居謹慎(ちっきょきんしん)するように…」


 ロランが、『太陽の間』を出ようした瞬間、レスターはグラスタル領に突如現れた勇者である『悠真(ゆうま)・フォン・グレイチェスカ』に対するし公爵の叙爵(じょしゃく)を始めた。


 王国建国時の法では『勇者』もしくは『竜覇者』となった者は無条件で『公爵』の爵位を与えると定められていた。


 悠真はその慣例に従い公爵を叙爵したのだ。


 本来、1年前に『竜覇者』となったロランも公爵を叙爵されるはずなのだが、年齢が若いという理由だけで、伯爵に甘んじていた。


 ロランは無言のまま王宮を後にした。


 ロランが、レスターにより蟄居謹慎を命じられた一報は瞬く間に各国に広まることとなった。


 リンデンス帝国皇帝"ラグナル・デ・リンデンス"はその一報を聞くや装備を固め、フォルテア王国へ侵攻する勢いであったが、宰相であるフレイディスに諌められ思い止まった。


 だが、フレイディスもロランに対するレスターの措置を許せるはずもなく、ロランに責を問わないよう要望する"親書"を皇帝名でレスターに送るよう進言するのだった。


 メッサッリア共和国の大統領である"ジグムンド・シュミッツ"も最も格式が高い【第一等大統領名誉勲章】と大統領首席補佐官の地位を形式的にロランに与え、レスタ―に対し親書を贈りつけた。


 同様にトロイト連邦共和国の最高評議会議長である"アガルド・ジャコメッティ"も最も格式が高い【連邦共和国最高勲章】と最高評議会第三席議長の地位を形式的にロランに与え、親書を贈ることでレスターに圧力をかけた。


 神聖ティモール教国次期教皇候補として呼び声高い"マグネリオ枢機卿"も最上位の格式である"神聖ティモール教国功労勲章"を形式的にロランに与え、親書を司祭を通じてレスターへ贈ることでロランに()()を作った。


 パルム公国も"アレッサンド・ド・マンパシエ・ツー・ロマーノ"の提案委により、最も格式のある"大聖功労勲章"と大評議会首相をロランに与え、親書をレスターへ贈ることでロランに()()を作るのだった。


 ロランが謹慎させられたことによる異変は王都内でも直ぐに表面化する。


 レスターの措置に不満を抱いた"商会連合"は、各貴族への売掛金・貸付金の回収を強め多くの貴族を廃業させた。


 また、大型馬車による循環運営は中止となり、王都の交通は大混乱を引き起す。


 さらに、商会連合配下のレストランや飲食店は飲食の貴族への販売を中止し、ロランの直営工場では製造を停止したため、品不足が多発した。


 ワーグが激怒しドワーフ達に鍛冶作業と工場・建設現場における技術指導を停止させた為、品不足に拍車がかかり、賃金を得る事ができなくなった市民による暴動が発生し治安が一気に悪化した。


 影響の大きさに驚愕したレスターは急遽、宰相のワグナー公爵、外相のリックストン公爵、内相のトーニエ=スティワート公爵、勇者のグレイチェスカ公爵を集め、協議を行うが解決策が纏まらずにいた。


 困り果てたレスターはトーニエ=スティワート公爵の義理の父であり、王国で最も格式がある家柄であるが、孤高で頑固な性格がゆえに政権より遠ざけていた公爵である"エドワード・フォン・スティワート・ツー・グラム"を呼び寄せ教えを乞う。


 エドワードはレスターに「…ロランに罰を与えず、本来叙爵するはずであった公爵を与えることで鎮静化をすべき…」と進言すると、そそくさと自領に帰ってしまった。


 ロランはというと謹慎の間も()()を使用しリンデンスに赴くと"ガラスハウス"や鉱山の開発を促進し、ホワイトヴィル湖に行くとリプシフターと共に新型魚雷や潜水艦救難艇の試験を行う忙しい日々を送っていた。


 2週間が経過したある日、突如ロランの邸に王宮からの使者が現れた。


 ロランは使者を邸に招き入れると、使者が青ざめる要求をし、国王であるレスターが認めるなら登城すると告げ、使者を追い返した。

 

 そして、本日、ロランは王宮『太陽の間』にて国王であるレスターより公爵を授けられる事になったのである。


 公爵となったロランはレスターより挨拶を促されると落ち着いた口調で、ほんのわずか"シエルヴォルト"、"冥界の王"、"天竜の霊力"、"魔力""テンプテーション"の力を解き放き、貴族達が驚愕する内容を言い放つと『太陽見の間』を後にした。


「…この度、公爵を拝命した"ロラン・フォン・スタイナー"です。リンデンス帝国がアヴニール国家連合に加盟したことにより、王国を取り巻く緊張状態は緩和しました…」


「…けれど、キメラを製造し続けるクリシュナ、王国進攻を虎視眈々と狙うプロストラインは手つかずの状態であり、火種は()()()くすぶっています…」


「…私は皆様と協力し、様々な国難に立ち向かい、王国の国民の生命と財産、そして美しいこの街と王国を守っていく所存です…」


「…そのためにも王国は無駄な経費を削減し必要とする分野に配分していく必要があります…」


「…つきましては"陛下の勅命"により不要と思われる貴族の方をリストアップし下野いただきますので、御覚悟いただきたい…」


 ロランが公爵に叙爵され、不要な貴族達を排除すると宣言した行為は王国民に強く支持され、街は平穏を取り戻したのだが、ほんの少し何かが以前と異なるのだった。

次回は・・・『79話 キメラの樹海』です。

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