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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第2部 第1章 氷海の世界 編
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77話 黎明会議 ~新世界秩序構築へ~

 【アリーチェ・ルミール・アルジュ・エミリア】というロランの運命を左右できる女性達による"意識を刈り取る勢い"の説教が終わり、ロランは1人リビングで考えを巡らせていた。


 『ディアナが今度(やしき)に現れる日は29.5日後の満月の日か…それにしても…』


時間に"ゆとり"はあるものの【アカシック・レコード】にアクセスし情報を改変する手段はリスクがあまりにも高く使用できないため、思考の迷宮に陥っていた。


 『はぁ…ディアナには申し訳ないが相談役で我慢してもらおう……』


 『……ディアナの件もだが、今回のリンデンス帝国訪問で確信した現状の世界秩序では【潜在的に莫大な地下資源を持ち農業や産業の勃興力を持つ国家が事もあろうに新世界秩序の中核を担えない】という事実だ……』


 『リンデンス帝国が【アヴニール国家連合】に加盟して重宝されるのはせいぜい数カ月のみ、直ぐに数合わせのポジションに追いやられてしまう事は明白……』


 『……新世界秩序を構築するには、"経済"・"軍事"・"魔法力"のいづれかにおいて秀でた国家や組織、個人の意見が反映されるべきなのである…』


 『…現状の仕組みでは駄目だ。新たな世界的規模の組織の創設が必要だ……』


という結論に至った。


 早朝、ロランはジェルドに指示し皆をリビングに集合させた。


 ロランは皆の顔をゆっくりと見渡し家族に話しかけるような口調で話し始めた。


 「ディアナの件で分かった…僕達はもっと強靭にならなければならない……」


さらにロランは話を続ける。


 「…圧倒的な『力』、圧倒的な『支配力』、何より圧倒的な『情報収集と分析能力』が必要だ……」 


 「…目標を実現する為『理力眼』の新たな能力を使用しこれより皆に新たな能力を付与していく…」


と話し終えるとロランは千里眼の能力を持つ『オム・マーラ』に【テレパス】と【探知】の能力を付与し、ジェルド率いるRedMistやアリーチェ・ツュマ率いるLVSISのメンバー、レイチェルならびにエミリアに対し【テレパス】の能力を付与した。


 『理力眼』による能力の付与を終えるとロランはテレパスを使用しオムとツュマに指示を出した。


 "…オム・マーラ。君には千里眼と探知の能力をフルに生かしてもらう…広域並びに特定重要対象の監視並びに敵地情報収集を命じる…部隊は30名とする…"


 "…はっ…"


"…ツュマ帰還して早々済まないがオムをサポートし、オムに近い能力を保有する能力者をスカウトしてもらうよ…”

 

 "…はっ…"


 レイチェルやエミリア、ミネルバは本当に『頭の中に声が聞こえてくる…』と思いながら慣れない感覚に気分が悪くなった。


 指示を終えるとロランはランド、エミリア、ミネルバを連れ【繋門(ケイモン)】を使用し『ラビュリント王宮』に戻る。


 『ラビュリント王宮』でラグナル・デ・リンデンス皇帝とフレイディス宰相と共に朝食を摂り終えるとロランはラグナルに人払いを要請する。


 ラグナルは本日のガラスハウス建設と鉱脈からの金・銀の精錬についての打ち合わせと考え、直ぐに人払いを指示をする。


 ロランは部外者がいなくなったことを確認すると唐突に、【繋門】を使用し目的地まで瞬時に到達できようになった事、新世界秩序を構築する為"非公式の組織"を創設するので参加して欲しいと話し始めた為、不意を突かれた両名は驚愕し戸惑った。


 「…ロラン殿…少し待たれよ。その組織は言わば"秘密結社"のような組織に聞こえるのだが…」


とラグナルはロランの真意を計りかね尋ねると


 「…私が言うべき事ではないのかもしれませんが、貴国が【アヴニール国家連合】に加盟頂いても政策の中核を担う事はできないしょう…」


ラグナルとフレイディスは怪訝な顔をするがロランは構わずに


 「…ですが新世界秩序構築には真に『力』を保持した国家、組織、個人の意見や考え方、何より『力』が必要なのです。よって、ラグナル皇帝とフレイディス宰相をお誘いしたという次第です…」


と当たり前の事を話すかの如く涼しげに説明する。


 「…時間をかけて理解いただければと思います…では本日の目的である"ガラスハウスでの砂栽培農法"と建設方法をご覧いただきましょう…」


と言うとロランは【繋門】を農地候補地へと接続する。


 農地候補地には既に資材が積まれている。


 ロランはラグナルとフレイディスに"ガラスハウス"建設の方法を説明していく。


 「…始めに農地下の永久凍土が"ガラスハウス"内の温度で溶けださないようコンクリートで"ベタ基礎"を作成します…」


ラグナル、フレイディス、ランド、エミリア、ミネルバは興味津々でロランの説明を聞く。


 「…強度を上げるため鉄筋を縦と横が重なるようにこのように組み上げ結束線で固定します。次に型枠を"べた基礎"の形に沿って組み上げ最後にコンクリートを流し込みます…」


皆はロランの説明と流れるような作業に見惚れていたが『全体が完了するには時間がかかるだろうな』と思っていると突然ロランが巨人族の長である"ティタニアス"を召喚した。


 召喚されたティアタニアスは【セメント、砂、砂利、水】を混ぜ大量のコンクリートを練り上げると一気に型枠に流し込んでいく。


 ティタニアスがコンクリートを流し終えたところで、ロランは現在地から45m離れた地点に移動すると魔法鞄から"べた基礎"を取り出し永久凍土に設置した後、


 「……コンクリートは固まるまで5日かかるのでこれ以後の作業はこちらで行うことにします…」


と言うと"べた基礎"に等間隔に開けた穴に"ヒートパイプ"を設置していく。


 ロランが"ヒートパイプ"を設置し終えるとティタニアスは"べた基礎"から突き出ているアンカーボルトに鉄筋を差し込んでいき、ロランがナットを締めコンクリートに鉄筋を固定させる。


 軽量の鉄筋で"ガラスハウス"の骨格を組み上げるとティタニアスは強化ガラスを骨格に"はめ込み"、器用にナットを締めて固定していく。


 ロランはというと"砂栽培農法"の砂床を軽量鉄筋で組み上げ、メラー海の"海砂"を水属性魔法を使用し大量の水で塩を洗い流して得た"砂"を敷き詰め始めた。


 既に強化ガラスに覆われているため"ガラスハウス"内の温度は、地熱を地上に運ぶ"ヒートパイプ"の効果により暖められてきた。


 呆気に取られる皆に対し

 

 「…本当は"ティタニアス"ではなく"クレーン"を使用し鉄骨と強化ガラスを組み上げていきますからね…宜しいですか…」


ラグナルとフレイディスは、この"ガラスハウス"を数千個建設していけば、農業を軌道に乗せていくことができると確信した。


 ロランは2人の納得した顔を見てから"ティタニアス"の召喚を解くと、再び【繋門】を使用し今度は鉱脈が存在する地下へと向かった。


鉱脈に到着するや否やランドとロランは"ツルハシ"を持ち、金と銀を含む鉱石を採掘していく。


ある程度の鉱石が確保できたところで、ロランは鉱石を転炉に入れ溶解させる。


 転炉の側面に取り付けた"2つのノズル"から溶解した金と銀が排出され、目の前で"金"と"銀"の延べ棒が製造されていく工程は、再びラグナルとフレイディスを驚愕させた。


 "ノズル"にはロランが【混成分解魔法】により溶解した金と銀の合金から"金のみ分解し排出"と刻印したノズル"と"銀のみ分解し排出"と刻印した2種類のノズルを製作したため、効率よく金と銀を精錬し抽出することができた。


 無論、ロランはゴーグルと防毒マスクを装備し、金銀の合金を含んだ鉱石を溶けた鉛の中に入れ金銀と鉛の合金を作り、動物の骨で作成した骨杯の上に溶解した"金銀と鉛の合金"を乗せることで表面張力の大きい金銀の合金を抽出する方法も実践してみせた。


 金と銀の精錬の他、ロランは三度【繋門】を使用し皆を"バルブ付き天然ガスパイプ"の先端が地上から1m50cmの高さに設置された"天然ガス"産出地へ連れてくると、


 「…このバルブをひねると地下の油田から"天然ガス"を取得できます…きちんとした設備を整えれば"ヨウ素"も取得できます…」


とロランは話を続ける。


 「…これでリンデンスは"ガラスハウスによる農業"、"金や銀、天然ガスといった資源"、ロストシップ殲滅によって可能となった"漁業"、タイガの"林業"というように農林水産業や資源開発が急速に発展し直ぐに"経済強国"となるでしょう…ラグナル皇帝はこれらの富を背景に再び世界進出を目論見ますか…」 


ラグナルはフレイディスを制しロランに


 「…ふっロラン君も意地が悪い。はぁ…御主の言う"新世界秩序を構築する組織"に参加しよう…その代り…ロランよ…御主には元老院首座となってもらいたい…1年に数回元老議会に出席してもらうだけで良い…」


 「…それと開発した鉱脈の2割の所有権を与える…首座となり所有権を受け取ることが組織に参加する条件とする…」


との申し出をしてきた。ロランを除く一同は、この申し出は"成立しない"と考えていたのだがロランは皆の考えを裏切るように、


 「…承知しました…」


と一言だけ答え皆を驚愕させた。


 驚愕するのも当然である。リンデンスにおいても公爵、侯爵、伯爵といった爵位階級は存在するが行政視点で見た場合、元老院首座とは皇帝、宰相につぐ地位であり皇帝の"相談役"という役目を兼ねる要職であったからである。


 3日後、『メッサッリア共和国』の"ジグムンド・シュミッツ大統領"と"アルベルト・スペンサー国防相"、トロイト連邦共和国"アガルド・ジャコメッティ"最高評議会議長、"ブラウリオ・ロドリゲス"最高評議会副議長、ヘスティア商会の"クレイグ・コンラート"、メリクス商会の会頭である"フェリックス・ライシャワー"、バロア商会の"ニコラス・ブルナー"のもとに【一通】手紙が届いた。


 手紙には同封した"…タリスマン(護符)を任意のドアに貼り付け扉を開けて欲しい……"とだけ書かれていた。


 各々は【繋門】を付与されたタリスマン(護符)をドアに貼り付け扉を開ける。


 すると、ワインレッドのテーブルクロスがかかった縦長のテーブルの頂点に仮面をつけた美女と見たことも無い光沢をおびたスーツを着た美女を連れたロランがいた。


 こうして"新世界秩序を構築する"【黎明会議】が幕を開けたのであった……

次回は・・・『78話 危険な香り』

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