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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第2部 第1章 氷海の世界 編
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76話 連鎖 〜新たなる『能力』の覚醒〜

 ロランはブリュネットの髪を持つ絶世の美女であるが影のある『マー二・エクス・ディアナ』に対して、かけるべき言葉が見つからず時間が必要と考えた。


 「ディアナ……君には全てを説明する。夜まで落ちついていられるかい……」


ディアナは仕方がないという表情を見せながら、

 

 「分かりました。けれど、全てを無くそうとしてはいけませんよ……」


と意味深な返事をする。


 ディアナの返事を聞いたロランはバルトスとジェルドに後を頼んだよという目配せを済ませると足早に【繋門(ケイモン)】を使いワーグのいる鍛冶工房へと移動した。


 ワーグはいきなり空間が裂け、その裂け目からロランが出てきた事に驚いたが、天竜のものと思われる霊力と霊力により増加し続けている魔力が桁違いに増幅している事、その上、強烈な威圧感を放つロランの変容ぶりにも驚いていた。


 それも其のはずである……


 ロランはラダマンティスより与えられた【生命そのものを操作する】能力を得た事により、生命を操る天竜『ヴィータ・ドラクーン』として本当の意味で覚醒し7天竜の内の1柱となっていたからである。


 天竜として覚醒したことにより霊力が桁違いに増加し、霊力により日々増強し続けた魔力も一気に上昇した。


 しかし連鎖はそれだけにとどまらない……


 本来、100年後に取得するはずであった【生命を創成する力】を得たことにより【生命のドラゴン】として覚醒した事と【冥界の王】を称号を得た事の相乗効果により、想定された時期より大幅に早く【理力眼】は【半眼】となる。


 半眼となった事で【理力眼】は、魔法やスキルだけでなく生命力や魔法、魔力や霊力も奪えるようになり、任意の者や無機物に対してそれらを付与できる【新たな能力】を取得した。


 さらに、ロランは人の身でありながら天竜となり、【冥界の王】の称号を持ちながら次期魔王候補であることから闇と魔の者達を引き連れ天界に反逆せぬよう、神々が【神の門(バベル)】の称号を与えていた。


 ワーグはバイツに人払いをさせるとロランを作業台に座らせる。


 すると、ロランは(せき)を切ったように、これまでの出来事をワーグに話し助言を求めた。


 ワーグは困惑し後悔しているロランを責めること無く、孫にでも話しかけるように、


 「答えはもう出ているはずじゃろ、ロラン。どれ、背中を一押(ひとおし)してやろう。上手くいこうがいくまいが正直に全てを話し、全てを受け止めるしかない。それに……」


ワーグはあえて、それ以上の話をしなかった。


 『人生は多くの失敗をして経験を積んでいくものなんじゃぞ……』とは憔悴(しょうすい)しきったロランには言えなかったからである。

 

 ロランとワーグの間に多くの言葉はいらない。ただ、一緒にいるだけで心が落ち着き活力が回復してくる。


 そんなロランとワーグの光景をバイツは微笑ましい光景を見るかの如く、優しい眼差しで見つめていた。


 しばらくして、ロランは活力を取り戻すとワーグに対し

 

 「親方、溶けた金と銀を排出するノズルが各々1つずつ装備した転炉を20個お願いします…それと完成しているガラスハウスの部材を持っていくよ…請求はジェルドにお願いします」


と言うと鍛冶工房の勝手口から裏庭に出たロランは巨人の族長である『ティタニアス』を召喚した後、重力魔法で部材の重さを無くした。


 召喚されたティタニアスは部材の量を見て一族の巨人を3人ほど召喚する。ロランは【繋門】を使用し空間を裂くとティタニアス達に部材を持たせ、ガラスハウスの選定地へと姿を消した。


 ワーグはロランの急速な成長を危惧するものの助言しかできない自分を責めていた。


 一方、ロランはガラスハウスの選定地に部材を運んでくれたティタニアス達に感謝の言葉を述べるとティタニアスの召喚を解いた。


 『それにしても……やはり巨人というべきだね……幅5m、奥行き100mの500平米のガラスハウス20個分の強化ガラスとヒートパイプに枠材……』


 『……砂栽培用の砂床、砂床を支える台座、砂床下の水を回収する棚の枠材にボルトとナット……』

 

 『……永久凍土が融解しないための【べた基礎】で使用するコンクリ―トの運搬が短時間で完了してしまった……10,000平米だと3,025坪か、東京ドームの約5分の1か……』


感慨に浸る(かんがいにひたる)ことなく『ラビュリント王宮』に戻り、ディアナに対する説明の事を考え憂鬱な時を過ごした。


 ロランは『ラビュリント王宮』での夕食を早めに済ませるとランド、エミリアとミネルバを伴い【繋門】を使用し邸へと移動した。

 

 邸には既に飛行船で邸に戻るよう指示したアリーチェ・ルミール・アルジュ達も到着しており、ディアナ・バルトス・ジェルド達とともにリビングでロランを待ち構えていた。


 ロランは腹を決め皆に対し【アカシック・レコード】にアクセスし過去改変を行ったため、これまでの真実が新たな真実で上書きされ、その過程でディアナが許嫁(いいなずけ)になったと丁寧に説明していく。


 その間、【ディアナ、アリーチェ、ルミール、アルジュ、エミリア】の顔は見る見る不機嫌になっていくのだが、【リプシフター、ルディス、ロベルト、ファビアン】は笑いを堪えるのに必死な様子であった。


 ロランはディアナに対し


 「ディアナ、君は半神だから僕が嘘を言っていない事を理解できるよね……」


と同意を求めるも


 「………」


ディアナが無言なため、動揺したロランは矢継ぎ早にルミールに対し懇願に近い同意を求めた。


 「ルミール、君は【審判の天使】だから、僕が嘘を言っていない事を理解できるよね」


ルミールは顔を引き攣らせながら、


 「…確かに龍神様は嘘は申しておりません。ですが【アカシック・レコード】にアクセスし過去を改変せずともラダマンティスとやらの要求を叶える事はできたのでは……」


と返答に困る話をロランに突き付けてきた。


 ロランは困り果てアリーチェを見ると冷たい笑顔を向けられ、アルジュを見ると目を背けられ、エミリアを見ると怒りで溢れた瞳で自分を見返してきたため『もう、最後の手段だね……』と思い


 「僕はエミリアを愛している。だから、ディアナ、君を娶る(めとる)事は出来ない。申し訳ないが冥界に戻ってくれないか……」


この女心を踏み躙る(ふみにじる)ロランに対しディアナは


 「【冥界の王】である貴方様がおっしゃるのであれば、この場は一旦引きましょう。しかし、私は貴方様の許嫁である事は紛れの無い真実であり、今は心から貴方様をお慕いしております。次の満月まで冥界に戻る事にいたしますのでより良い解決策を御考えください……」


 「その間、貴方様が浮気しないようこの『ラミア』をつけさせて頂きます……」


と言うディアナはと自身の足元に闇を作り、足先から沈むように冥界へと消えていった。


 取り敢えず、この状況を凌いだ(しのいだ)ロランは下半身が蛇のラミアに対し


 「……下半身が蛇のままでは目立つから直ぐに人族の姿になるように……それと服も着用するように……」


と指示するとリビングのソファーに腰かけ、寛ぐ(くつろぐ)はずが【アリーチェ・ルミール・アルジュ・エミリア】から2時間近く説教をされることとなる。


 その後、ロランは『ブリジット』を呼び寄せ、客人待遇ではあるものの自分に対し憎しみを抱く『レイチェル・ロンド・冷泉』を秘かに監視するよう指示を出す。


  ブリジットは静かにロランの指示を受け入れるもロランに対し、


 「ロラン様は優し過ぎます...ご自分の命を狙う者を配下に加えるとは…時には...」


と言いかけたが自らの考えを抑えつけるかのように足早にロランの部屋から退出した。


『ブリジットとレイチェル、君達はリプシフターやルディス、エクロプスと同様に多数考えられる人類の可能性の頂点を極めている……』


 『……それに君達には今後重要な役目を担ってもらいたいんだ……いずれ君達も今日の出来事の意味が分かる時が来る…』とロランは椅子に座り、窓から見える星々と満月なのに一部が欠けた月を眺めながら少し先の未来を模索するのだった……

次回は・・・『77話 黎明会議 ~新世界秩序構築へ~』です。

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