5話 魔法世界の法則検証
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
ロランは、この魔法世界における物理・化学法則と理力眼の能力を検証するために立ち上がった。
直後、ロランは両膝をまげ垂直にジャンプすることで、この世界の重力加速度を確かめることにした。
「…全身が押しつぶされる感覚もないしジャンプしてもそれほど高く飛び上がる事はできない…」
「…結論として重力加速度は元の世界と同じぐらいだな…」
と体感をつぶやくと真の値を確認するため『理力眼』にジャンプした過程をイメージしながら集中する。
すると、ロランの眼前にヘッドマウントディスプレイを装着したときのように風景を透過して数値が表示される。
・重力加速度:1G=9.80665m/s^2
『…やはり重力加速度は元の世界と同じだ…』
『…では、大気の組成はどうだろう…』
と考え、ロランは『理力眼』で大気の組成をイメージし集中する。
先ほどと同様に風景に透過して数値が表示された。
・大気の組成割合: 窒素78.0%、酸素20.95%……
ロランは続けて地面に転がっている石を拾い投げてみた。
『…石はずっと飛び続ける事なく地面に落下する…』
『…重力が働き、空気抵抗がある…』
と考えながら距離と初速度、加速度に関する物理式を『理力眼』でイメージすると数式が風景に透過して表示されるのであった。
・S=V0t+1/2at^2 S:距離(変位)、V0:初速度、a:加速度、t:時刻
ロランはその後も火を燃やしてみたり、水の分子式を確認したりと現時点で可能な限りの物理や化学検証を行った。
その結果、ロランはある疑問を抱いた。
『…この異世界における物理法則や化学法則は元の世界と一致している…』
『…だけど、魔法は物理法則や化学法則といった因果律を超えて発動する…』
『…では、因果律を超えて発動する魔法は物理・化学法則の影響を受けるのか…』
ロランは早く魔法を使用できるようになり魔法が物理・化学法則に影響を受けるのか確かめたいと思った。
『…魔法の適性が無いため今は魔法は使えないが何らかの方法で使用できるようなり…』
『…魔法が物理法則や化学法則の影響を受けるのであれば、魔法による攻撃力を何倍にも増幅できるのでは…』
ロランははやる気持ちを抑え教会への戻ろうとした矢先、アシュリーが後方の木の陰から自分を見つめていることに気付いた。
ロランは『…まずいところを見られたな…』と思いつつ、これ以上怪しまれることを回避するため、アシュリーと一緒に教会に戻ることにした
「…アシュリー…一緒に帰ろう…」
ロランが アシュリーとともに教会に戻ると、肥満気味で体格がいい金髪のデビットと痩せていて神経質な赤髪のロイがロランをひやかし始めた。
「「…東夏殷帝国の猪がアシュリーと一緒に戻ってきたぞ…」」
東夏殷帝国とは、フォルテア王国の東に位置するクリシュナ帝国のさらに東に位置する国であり、領土をめぐって数十年に渡りプロストライン帝国と紛争を繰り返している国家であった。
『東夏殷帝国の猪』とは、東夏殷帝国の兵が魔法を気の流れの一つと捉え、魔法を肉体強化と治癒に特化させ、極限まで鍛え上げた武術と組合わせて、一気呵成に相手に攻め込む戦術スタイルを猪と揶揄した侮蔑の言葉であった。
ロランが、東夏殷帝国の人々と同じ黒髪で黒い瞳であることから、教会の男子達がロランを蔑むために使用する言葉でもあった。
その言葉を聞いたウィルターナ神父はデビットとロイを呼びつけ厳しく注意する。
「…ロランの容姿を馬鹿にしてはいけない…」
「…今度、同じ事を言ったら夕食を抜きにする…」
デビットとロイは意気消沈しその場を去っていった。
一方、ロランはというと3週間前まで40歳を少しばかり超えた男であたっため、子供達の戯言だと気にすることもなく椅子に座り、夕食の前に行う祈りの始まりを待つのだった。
ロランは夕食を摂り終え、水に濡らしたタオルで体と髪の毛を拭き取り、寝巻に着替えてベッドに入る。
ベッドの中でロランは『…理力眼の他の能力が知りたい…そのためには検証だ…』と考えながら眠りにつくのだった。
次回は・・・『第6話 理力眼』です。
・2020/6/20 タイトル修正